君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

とうとうここまで来ました。
ソルの運命や如何に?


《人形》

 

 

ユージオside

 

 

 僕らはソルをあの場に残して昇降盤を使い、とうとうセントラル・カセドラル最上階に着いた。しかし、間が悪かった。

 僕らが最上階に入った時、この部屋の主であるアドミニストレータは丁度ベッドから出てきたからだ。

 

「あら? ……なるほど、ソルは失敗したのね。少し意外だったわ」

 

 顔色一つ変えずに話すアドミニストレータの支配者特有の圧に尻込みしてしまいそうになるのを堪え、いつでも剣を抜けるよう鞘に手を置く。

 

「まあ、あの子にはまだまだ改良する余地があるから良いけどね。後でじっくりと時間を掛ければ……」

「あれが、最高司祭アドミニストレータか」

「そうです。六年前と、何一つ変わっていない」

 

 そうだ、僕は一人じゃない。頼れる仲間が居る。こうして肩を並べるだけで力が湧いてくる気がする。……もう一人の親友の為に、彼が剣を振らずに済むようにも……。

 

「ベルクーリとファナティオはそろそろリセットする頃合だったけれど、アリスちゃんはまだ六年くらいしか使ってないはずよね。論理回路にエラーが起きてる様子もないし、やっぱりあのイレギュラーユニットの影響かしら? 面白いわね」

 

 何を言っているのかは解らないけど、アドミニストレータの余裕な表情と鏡のような瞳に僕らはただ黙っていた。

 

「ねえアリスちゃん。あなた私に何か言いたいことがあるのよね? 怒らないから言ってご覧なさいな」

「……っ!」

 

 アリスは深呼吸して、片目を覆う手拭にそっと触れる。あれは確かソルがキリトにいつも渡していた手拭だ。

 アリスは意を決した顔でアドミニストレータに向き直ると、その凛々しい声を響かせた。

 

「最高司祭様、栄えある我らが整合騎士団は本日を以て壊滅致しました。私の隣に立つ、僅か二名の反逆者達の剣によって。そして貴方がこの塔と共に築き上げた果てしなき執着と欺瞞故に。我が究極の使命は、剣無き民の穏やかな営みと、安らかな眠りを護ることです。然るに最高司祭様、貴方の行いは人界の人々の安寧を損なう物に他なりません」

 

 アドミニストレータは興味無さげに応えると、また意味のわからない言葉を並べる。

 

「ふうん。やっぱり論理回路のエラーじゃ無さそうね。敬神モジュールは……機能の殆どを失っているけど一応まだ機能している。それに……あの者が施した〈コード871〉を自発的意思で解除している。処分せずに解析してみても面白そうね」

 

 アドミニストレータの邪悪な笑みに震えていると、キリトが剣を床に突いて話し始めた。

 

「クィネラさん。あなたはそう遠くない未来にこの世界を滅ぼす」

「あらあら、あのちびっ子が何やら吹き込んだようね。この私が滅ぼすの?」

「そうだ、何故ならあなたの誤ちはダークテリトリーの総侵攻に対抗する為に整合騎士団を作り上げたこと、それ自体だからだ」

「ふふ、いかにもあのちびっ子が言いそうなことね。不憫だわ。そこまでして私を追い落としたいあの子も、うかうかとそれに乗せられた坊やも。…………そもそも、私はこのアンダーワールドをリセットさせる気は勿論、最終不可実験を受け入れるつもりなんて無いの。その為の術式はもう完成してあるわ。つい先程、保険も手に入ったしけど、それは今はいいわ。……喜びなさい、誰よりも先にあなた達に見せてあげるから」

 

 そう言うと、アドミニストレータは紫の結晶を取り出した。

 

「真に私が求める武力には記憶や感情は疎か、考える力すら要らない。ただひたすらに目の前の敵を屠り続けれるだけの存在であればいい。つまり、人間である必要は無いわ。さあ、目覚めなさい、私の忠実なる下僕、魂無き殺戮者よ。リリース・リコレクション!」

 

 アドミニストレータが《記憶解放術》を行使すると、柱に飾られた武具が次々と呼応する。その全てが集うと剣で構成された何かが現れた。

 アドミニストレータが持っていた紫の結晶が空洞に入ると、それは蠢き始める。脚と思われる物が四本、腕と思われるのが二本有る。

 その威圧感に、肺が苦しくなる

 

「有り得ない……同時に複数の。しかも三十もの武器に対して、これ程の大掛かりな完全支配術を使うなど……術の理に反しています」

 

 アリスは目を見開く。

 

「ふふふふ。これこそ私の求めた力、永遠に戦い続ける純粋なる攻撃力。名前は……そうねぇ、ソードゴーレムとでもしておきましょうか」

「剣の……自動人形……」

 

 未知の存在に畏怖している中、キリトはこいつを知っている口ぶりだった。でも、僕にはそんなことを気にする余裕は無い。

 

「剣の一本一本が神器級の優先度を持っている。このソードゴーレムに勝てるかしら? 私が貴重な記憶領域をギリギリまで費やした、最強の兵器に」

 

 巨大で、不気味で、恐ろしい敵に震えが止まらない。

 

「さあ、戦いなさいゴーレム。お前の敵を滅ぼす為に!」

 

 アドミニストレータが命令すると、ゴーレムが轟々な金属音を鳴らしながら接近してくる。僕は剣を抜くが、ゴーレムのあまりの威圧感に固まってしまう。

 

「やあああああ!」

 

 アリスのお陰で奴の右腕の攻撃は防げた。でも、相手は剣、金属だ。アリスは反動で弾かれる。

 そこに、決定的な隙が生まれてしまった。

 

「くっ!」

 

 次の攻撃がアリスを襲う。このままでは彼女は胸を貫かれ、そして…………

 

(アリス!)

 

 

『待たせたね。みんな!』

 

 その時、陽炎がゴーレムの剣を防いだ。陽炎の輪郭が鮮明になるにつれて、僕らは目を瞠る。

 

「「「ソル!!」」」

 

 アリスを守ったのは下の階で眠っているはずの親友。ソルだった。

 

「はぁ!」

 

 ソルが剣を振り抜くと、ゴーレムは向かいの壁まで突き飛ばされる。ゆっくりと構えを取るソルに、僕らは釘付けになった。

 

「……ソル、何故あなたも私に剣を向けるのかしら?」

「……解らない。だが、お前を裏切りたい訳じゃない。ただ我は、我の直感に従う。我の直感が、彼らを助けろと叫び続ける限り」

 

 そう言うと、ソルは僕らの方を向いた。

 

「さっきはすまなかったな。どうにも貴殿らを斬る気には到底なれなかったが、手を上げたのは事実だ。微力ではあるが、力を貸そう」

「ソル……まだ記憶が……」

「ったく、お前はいつもそうだ。肝心な時は必ず助けに来てくれる。ありがとうな」

「……あなたの記憶はまた後程取り戻すとして。正直、頼りになります」

 

 僕ら四人で肩を並べる。僕ら幼馴染がやっと揃ったことに感動しながらも。剣を構える。

 

「では、まずはあのデカい奴を処理しよう」

 

 ソルは剣を垂直に持つと、術式を述べた。

 

「我、罪と秩序を司る騎士なり。我が戦の記憶は屍山血河。我が道の行先は鎧袖一触。ならば、我が全てを以て汝を斬り伏せよう。エンハンス・アーマメント」

 

 僕の知る詠唱とはまた違った句を唱えて《武装完全支配術》を行使した。すると、ソルの赤錆色の剣が輝き出す。

 

「我が《戦憶の剣》は《記憶投影》の剣。さあ、その姿を顕せ、《千刃の剱》!」

 

 輝いていたソルの剣は見たことの無い、反りのある片刃の剣に姿を変えていた。

 

「刀……だと」

 

 キリトはあれが何か知っているみたいで、とても驚いている。

 

「千刃よ、煌めけ!」

 

 ソルが刀を振るう。風圧すら起こらない緩やかな太刀筋だった。しかし、次の瞬間にはゴーレムから無数の金属音が鳴り響く。

 

「これは……」

「一体何が……?」

 

 僕らの混乱を前にゴーレムは音を立てて崩れ落ちる。体の剣もボロボロで、数多の罅が入り、今にも壊れそうだ。

 

「《千刃の剱》が司るは斬撃の記憶。我が斬撃、その全てを叩き込んだ」

 

 

~~~~~~~~~~

ソルside

 

 我は目覚めた時からある違和感を感じていた。ぽっかりと穴が空いているようで。我の中の何かが狂っているようで。クィネラに命令を施された時もそうだった。

 

 下の階に居る者を殺せと命令されても、我にそれを実行したいとは感じなかった。ただ命令は実行しなくてはならないから。でも、この肉体はそれを拒否しているように感じれた。

 

 三人と対峙した時、何故か懐かしさを感じた。《黒》《青》《金》、どれも美しい”色”であった。

 この()は彼らと出会った時、()()()()()のだ。我はそれを一瞬闘志と見受けたが、違ったようだった。

 

(我は彼らと知り合いなのか?)

 

 剣の声は聞こえないが、そう訴えて来ているのが伝わった。

 

(それに……変な感じだ……)

 

 この肉体は、彼らに剣を向けようとしない。それどころか、クィネラに剣を向けそうになる。

 剣を交えた時ですら、それは変わらなかった。

 

 

 

(暖かい)

 

 気付けば三人は上に進み、自分はいつの間にか寝ていた。

 そして胸の所に穴の空いた鎧を見て、我は確信した。

 

(彼らはきっと、我の大切なものなのだろう)

 

 我はこの衝動のまま、我が愛剣《戦憶の剣》の《武装完全支配術》を行使する。

 

「エンハンス・アーマメント!」

 

 

 

 空間と位置の記憶を使って上に戻ると、間一髪でサーティ……いや、アリスが攻撃されるのを防げた。そして我の胸中は安堵で一杯になる。

 三人と肩を並べると本来の有様に戻ったようで、とても安心した。だから今は……今だけでも、我はこの衝動に身を任せたいと思えた。

 

「《千刃の剱》が司るは斬撃の記憶。我が斬撃、その全てを叩き込んだ」

 

 《千刃の剱》は我が扱える記憶の中で最も殲滅に特化した物だ。それでもまだ剣塊の天命は僅かに残っているということは、あれら一本一本が神器級の優先度を持つということ。

 

「……面倒な」

「そこまでよ。止まりなさいソル」

 

 もう一振しようと振りかぶったところで、クィネラは我に命令した。すると、まるで石になったかのように体が動かなくなる。

 

「くっ……何を……」

「あら? 五月蝿い口ね、黙ってなさい」

「!!!!!!」

 

 この肉体は意思が宿りはするが、どうやら奴の命令に抗うことは出来ないらしい。口を必死に動かすが、声が出ない。

 

「どうしたソル!」

「不思議ねぇ、エラーが有ったとは見られないけど私に剣を向けられるなんて」

 

 そうしている間にも、剣の塊は起き上がってくる。

 

「まあいいわ。取り敢えず足を落としときなさい」

 

 命令された剣の塊は高く飛び上がって、その剣で我の左太腿を斬った。

 

「…………!!!!!!!」

 

 痛みに脂汗が出る。叫ぼうとしても声が出ない。

 我の左足は斬られた所から下を無くし、斬り飛ばされた下部分はあえなく光へと散っていった。

 

「ソル!」

「この私があなたほどの戦闘力を野放しにする訳が無いじゃない。安心しなさい、ちゃんと私の言うことに絶対服従の設定を()()()させてあげたから」

「お前ぇ!!」

 

 キリトが吼える。怒りに身を任せて剣の塊に斬り掛かるが、呆気なく弾かれ反撃にあう。壁に激突し、傷口からは大量の血が出ている。

 

(キリト……)

 

「はああああああ!」

 

 アリスは背後から斬るが、同様に弾かれ、胸を穿かれる。二人ともが致命傷であった。

 

(アリス……)

 

 残るユージオに剣の塊は金属音を鳴らして迫る。このままでは、ユージオも……。

 動こうとするが、心臓を握り潰されているような痛みに襲われる。頭痛と相まって、我は命令に抗えない。

 

『短剣を使うのよ、ユージオ。床の昇降盤に刺しなさい! 時間はあたしが稼ぐから、急いで!』

 

 突然として巨大な蜘蛛が現れる。蜘蛛は剣の塊に奮闘するが、数秒も経たずに腹を穿たれ死んでしまった。

 

『よかった……間に合った。最後に……一緒に……戦えて……うれ、し……』

 

 そう言い遺し、蜘蛛は小さくなる。

 ユージオが刺した昇降盤を見れば、そこには扉があった。扉が開かれると、出てきたのは一筋の雷だった。雷は剣の塊を壁まで突き飛ばす。

 しかし、クィネラの表情はむしろ嬉しそうだ。

 

 次に扉から出てきたのは、司書人のような服装のまだ幼い少女であった。




戦憶の剣

其の剣は、ある一人の少年の記憶を元に創られた。
其れに込められた記憶は、幾億にものぼる戦いの記憶。

人類がこれ迄の歴史を辿ったとて、ここまでの戦いを潜り抜けた者は居ないだろう。

属性は《記憶投影》
膨大なこれ迄が汝に万力を与えるだろう。



千刃の剱

其の剱は、ある剣士が無眠無食で敵を屠り続けた記憶を元に創られた。
其れに込められた記憶は、敵の命を途絶えさせる無慈悲な刃。

例え軍勢が攻めてきたとて、彼らは何も出来ずにその命を散らせるだろう。

属性は《滅殺斬撃》
不可視不可避の斬撃が汝を一騎当千の剣士にするだろう。
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