とうとう終幕です。
ソルの運命は……
後書きを追加しときました。よければ少し戻って見てください。
「術式を模倣しようが、そのような貧相な剣一本で私の殺戮兵器に対抗できるはずもない。一撃でへし折ってあげるわ!」
アドミニストレータに攻撃命令を出された剣塊が待機状態から戦闘状態へと移行する。
数回打ち合ったが、ユージオは互角に渡り合えている。
気配の喪失を感じ取って見れば、カーディナルは既に光となっていた。
それに感化されたユージオは、剣身を大きく、翼を広げた。青く輝く、人の愛を力に変えて。
(ユージオ……)
ユージオの渾身の一撃は剣塊の奥に挟まっていた紫の結晶を破砕し、剣塊を粉々に粉砕した。
ユージオの勝利に喜ぶも、彼はまだ戦おうと浮き上がった。
「あら、やる気なの坊や? 隙間をつついて私の人形を崩したくらいで随分強気じゃない」
ユージオは淡い光を纏いながら、また翼を広げる。
「やめろ……行くな……ユージオ!」
キリトの悲痛な叫びが聞こえる。このままじゃユージオは……。
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キリトside
ユージオはアドミニストレータの雷撃に真っ向から突っ込む。それでも彼の勢いは止まらない。
「小僧があぁぁ!」
アドミニストレータの細剣とユージオが激突する。一瞬拮抗するが、ミシミシと嫌な音でユージオに罅が入る。元に戻れるかもわからないのに、ユージオはその身が砕けようとアドミニストレータを討ち取らんとしている。
でも、それだとユージオは…………俺の親友が…………。
俺はただ見ていることしか出来なかった。衝撃波が発生するあの激突を止めることも出来なかった。
「あ…………」
刹那、幻覚を見た。ユージオの剣身の周りを翔ぶ赤い蝶。そいつが剣先に止まると、燃えるような赤い光と共に何かが衝突した。
「スイッチ!!」
赤い騎士、片脚を失ってしまった俺の親友。
彼はアドミニストレータの剣を破壊した。横切った赤色と交差するように穿いた青い光は、アドミニストレータに右腕を失わせた。
その後の強烈な衝撃波によって俺は壁に叩きつけられる。
煙が収まって見えた光景は、今にも折れそうな巨大な剣と、剣を杖代わりにして立つ赤い騎士だった。
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嫌な予感がした。このままでは我は
『ねえソル』
『どうしたアリス?』
『御伽噺では、ゴブリンやオークなんかが村を襲ってくるでしょ? もしそんなことがあったら、ソルは私を守ってくれる?』
『え? 何をそんな当たり前のことを聞くんだ?』
『~~~/// ソルはいつもそうよね!?』
『何故僕が怒鳴られてるかわかんないけど、勿論、アリスもキリトもユージオも、全員守ってみせるさ。それがどんな危機であろうと、この命に変えても』
『……ソルはそういう奴よね』
『ん?』
『はぁーもう! じゃあ必ず助けてよ? 私だけじゃなく、キリトやユージオも!』
『うん! 約束するよ!』
『おーい! ソルー、アリスー!』
『どーこ行ってんだー!』
『キリトたちだ、行こうアリス』
『うん!』
「………………ぁ!!!!!!!!」
命令を守る為の制御プログラムが我の心臓を人質にする。痛みで意識が飛びそうになるが、お構い無しにプログラムに抗う。
「がああああああああぁぁぁ!!!」
一度、我は
「スイッチ!!」
天命を変換して放った一撃はアドミニストレータの細剣を破壊し、ユージオがアドミニストレータに一撃を加えることに成功した。
剣から青い帯が解かれると、傷だらけのユージオが人の姿に戻っていた。死んでいないことに安堵し、《罪禍の剣》の記憶を解放して傷を引き受ける。ユージオの傷は消え、ぐっすりと眠っている。
「心臓を自ら潰して私の命令を破棄するなんて。ソル……やっぱりお前の制御は難しかったようね。完全な操り人形になることを期待していたけど、もういいわ。お前はここで殺す」
「ハッ! この心の臓が幾度破裂しようと、我は剣を取り立ち上がってみせる!」
怒り心頭なアドミニストレータは斬られた右腕を剣に変換すると、我の眼前に降りて来た。
流石に負荷がかかり過ぎたのか、剣を杖に立つことで精一杯な我にアドミニストレータの剣を避けることは出来かった。
(ここまでか……。だが、悪くない)
アドミニストレータの剣先を目で追いながら、我は半分諦めていた。
(欲を言えば、
我はこの記憶達にとっくに気付いていた。我は創られた人格であることも、元幼馴染達に剣を向けたことも。後悔だと受け取ることも出来るこの感情の名前は知らないが、今の我の心持ちは軽かった。
(頑張って……キリト、アリス、ユージオ)
三人の大切な人達に心の中で別れを告げ、来たる剣が我の首を刈り取る時を待つ。
~~~~~~~~~~
キリトside
(俺は……何度同じ誤ちを繰り返すつもりなのか)
ソルが斬られる時、また俺は見ているだけだ。いつもそうだった。ソルに背負わせて、ソルに頼り切りで、アインクラッドでだって俺の命を何度も救われて。
(今こそ、俺がソルを……あの時の約束を果たす……!)
極限の集中状態の中、周りの景色がゆっくりと動く。抜剣して、ソルを庇おうとするアリスの前に出てアドミニストレータの剣を受ける。
「ふっ!」
後ろに跳んで衝撃を逃す。ソルに駆け寄るアリスを見て、指示を出す。
「アリス、ソルを頼んだ」
「キリト……」
心配そうな顔でソルは言う。大丈夫だ、と笑ってみせると、安心して気絶するように眠った。
「すみません……私も、限界のようです」
「後は俺に任せてくれ」
アリスはソルの傍で護るように眠る。シャーロットやカーディナルに紡がれたこの命、必ずや繋いでみせる。
「流石にそろそろ不愉快になってきたわ。お前たちは何故そうも無為に、醜く足掻くの? 戦いの結末はもう明らかだというのに。決定された終わりに行き着く過程に、どんな意味があると言うの?」
「過程こそが重要なんだ。這いつくばって死ぬか、剣を握って死ぬかがね。俺たちは人間だからな」
心意を使いSAOの姿《黒の剣士》に成る。
「黒ずくめのその姿、まるで暗黒騎士ね。いいわ、あくまで苦痛を望むと言うのなら、お前にはとても長くて惨い運命を与えましょう。早く殺してとひたすら懇願したくなる程の」
「それじゃ足りないな。……俺の愚かさを償うには」
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啖呵切って任せろとは言ったが、アドミニストレータの片手剣、細剣、刀と多種なソードスキルで追い詰められる。
「くッ……」
『おいおいキリト。また手助けが必要みたいじゃないか』
声が聞こえた。俺は慌ててソルを見るが、彼はまだ眠っている。声の主を探していると、俺の頭上から一振の剣が降りて来た。
『ほら、行くよキリト。みんなを救うんだ』
「ソル……」
ソルの《戦憶の剣》、その記憶の中のソルが俺に語り掛けて来る。
『背負わなくてもいい、そう言ったのはキリトだろ? そんな気負わなくてもこれからの結果を誰も責めたりしないよ。ほら、ステイクールだ』
「……ああ、そうだな。お前はほんと……いつもそうだ」
《戦憶の剣》を取ると、眩い光でその剣は新たな姿を顕した。
純白の、一切の穢れの無い剣。鍔に彫られた黒い星と赤い陽はいつも一緒に居た俺たちのようで。手の中に良く馴染む。気付けば傷も治っており、力が湧いてくる。
「何故だ、何故そうやって愚かにも運命に抗うのだ?」
「それだけが、抗うことだけが俺が今ここに居る理由だからだ」
「此処は私の世界だ。招かれざる侵入者にそのような振る舞いは断じて許さぬ。膝を附け! 首を差し出せ! 恭順せよ!」
アドミニストレータの心意が剣に力を与える。でも俺には関係無い。
「違う、貴方はただの簒奪者だ。世界を、そこに生きる人々を愛さない者に支配者たる資格はない」
俺は二振りの剣を構える。
「愛は支配なり。私は全てを愛する。全てを支配する」
『違うな。断じて違う。愛を支配などと驕るな!』
会話は終わった、後は剣で決着をつけるだけだ。
「はああああ!」
「ふぅん!」
俺が得意の二刀流、アドミニストレータが隻腕であることもあって剣戟は俺が少し押していた。
「小癪な……小癪なあぁ!」
距離を取って、俺とアドミニストレータはお互い突進系ソードスキルを放つ。
「はあああああ!」
互いの剣先を削り、肩にを抉る。アドミニストレータは残った左腕を、俺は右腕を斬り落とされる。
「おのれええぇぇ!!」
両腕を失ったアドミニストレータは髪を操って俺を縛り上げる。
『決めるよキリト』
「ああ…………」
『「リリース・リコレクション!!」』
ソルの白い剣が輝く。その光に当てられたアドミニストレータの髪は細かな粒となって消えていく。
「せやあああああ!!」
俺は剣をアドミニストレータの胸に突き刺した。粒子の収束が起き、爆発する。
至近距離の爆発に巻き込まれ、壁に激突する。
アドミニストレータを見ると、胴体に大きな風穴を空け、体が粒子になりながらもまだ生きていた。
「よもや、記憶結晶で創った武器は金属では無いなんてね。……意外、まったく意外な結果だわ。ここに残るリソースを掻き集めても追いつかない傷を負うなんてね。こうなれば、仕方ないわ」
「な、なにを……?」
フラフラと歩くアドミニストレータ。俺ももう限界で、剣を持つことも出来ない。
彼女が床から呼び出したのは、俺が長く探していた外部と繋がるコンソールだった。
「なっ!」
俺が最初の目標として目指していたものを目にして驚く。
「予定より随分と早いけれど、一足先に行かせてもらうわね」
邪悪な笑みを浮かべながらアドミニストレータは髪を器用に操ってコンソールを操作する。
すると、光の柱がアドミニストレータを取り込んだ。
「じゃあね坊や。また会いましょう。今度は……お前の世界で」
「ま、待て!」
止めようとしても、膝を着いてしまう。もし仮にアドミニストレータがあちらに行ってしまえば、何が起きるか想像もつかない。止めるしかないが、俺はもう立ち上がれない。
(くそ! あと少し、あと少しなんだ!)
光に連れられて昇るアドミニストレータを見上げていると、今日何度目かもわからない
「舞い踊るは蝶の如く、命脅かすは蜂の如く」
いつの間にか白い剣は赤錆色の剣へ戻っており、ソルはアドミニストレータの背後からその首を刈り取った。
「リリース・リコレクション!」
駄目押しに記憶解放術を行使すると、光に包まれた後、アドミニストレータの姿は何処にも無かった。
「終わった……のか」
「ああ、終わったよ。キリト」
ソルは片脚で器用に立ちながら、俺の方に歩いてくる。
「……んん、キリト? ソル?」
ユージオが目覚める。傷だらけになっていたはずだけどそんなもの見当たらない。
「リリース・リコレクション」
ソルの両刃剣の記憶解放術で、俺の無くなった腕が元に戻る。ソルの剣に関してはよくわからないが、きっと回復系の術なんだと思い込んでいた。
―カシャン。
「……え?」
「……ソル?」
ソルの右手の篭手が落ちた。見ると、ソルの右腕があるはず場所に有るはずの膨らみは無い。
「む? ……気にするな。それよりキリト、あれがコンソールだ。お前の目的を果たせよ」
~~~~~
キリトがコンソールを操作していると、時間の流れが変化したのを感じた。我の身体を確認するように触れるユージオは気付いていないようだ。
(……今のは?)
そして、突然銃声が響く。
(……銃ってなんだ?)
また知らない記憶に困惑していると、キリトは叫ぶ。
「いいか菊岡、あんたは……あんたのした事は!?」
(菊岡……)
「どうしたのソル? 何が起こってるの?」
「……わからん。でも、嫌な予感が──」
ユージオの問に最後まで答えられなかった。頭に直接鳴り響くような警戒信号に跳ねられるように動き出す。
「キリトぉ!」
目一杯の力でキリトを突き飛ばす。でも、我の予感は的中してしまった。
──ブー!!ブー!!
けたたましいアラーム音と、視界を覆う光の柱に我とキリトは意識に干渉を受ける。
「ソ…………ル…………」
キリトの悲しそうな顔と、此方に懸命に手を伸ばすユージオと、まだ眠るアリスが我の見た
罪禍の剣
其の両刃剣は、ある咎人の記憶を元に創られた。
其れに込められた記憶は、犯し続けて来た原罪と命傷。
赦しを求めたとて、その穢れを祓うことは出来はしないだろう。
属性は《罪傷受換》
付き纏う代償が汝を咎人から永遠に解離しないだろう。