サブタイトルからわかる通り彼女が参戦です。
ようやっとオリジナル展開に入りそうで安心安心。
キリトside
「ソルの様子はどうだ?」
「一度声を出したんですが、それ以外は何も……」
「何時声を出した?」
「確か……出撃直後です」
「エルドリエがやられた時か……」
俺は補給部隊の護衛中、ルーナからソルの経過を聞いていた。ソルがくれた白い剣のお陰でこうして無傷でいられるが、無ければ浅くは無い傷を幾つか貰っていただろう。
白い剣は俺の《夜空の剣》より高い
「キリト先輩、見回り行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい。気を付けろよロニエ」
兵の三割と整合騎士五人での移動は順調だった。しかし、敵は全軍を使い俺たちを追いかけるている。一度相手の進行を遅らせる為、この林で迎撃する予定だ。
「敵襲、敵襲ー!!」
ロニエの大声に急いで外に出る。外には数十人の暗黒騎士が俺たち補給部隊を囲んでいる。俺はロニエと対峙していた暗黒騎士の顔にどこか見覚えがあった。
「お前……《PoH》か!?」
「あん? ……もしかしなくても、《黒の剣士》じゃねえか。こんな所で会うなんて奇遇だな」
気味の悪い笑みを浮かべるPoH。俺は二振りの剣を構える。よりによって《
「お前が居るってことはあれか? もしかして
「あいつって誰のことだ?」
「わかってるクセに、《蜃気楼》だよ。だとしたらあれだぜ、最高のショーになっちまうぜ?」
「ソルを《蜃気楼》と呼ぶな!!」
怒りに吠える。俺は今にも襲いかかろうと踏み込んだ時、空にオーロラがかかる。
オーロラの中から、一人の少女が降り立つ。彼女も、俺にはよく知る人だった。彼女が手を伸ばすと、暗黒騎士の下の地面が裂ける。底無しの大穴に暗黒騎士は全員落ちていった。
「マジかよ。《閃光》様もいんじゃねえか」
PoHも例外なく落ちていく。完全に見えなくなるまで見届けて、俺は息をついて剣を鞘に収める。
「キリト君!!」
「アスナ!」
俺達は再会に抱き合う。
「ステイシア……様」
「貴方は、神様……ですか?」
後ろのロニエとティーゼが恐る恐るアスナに訊ねる。俺とアスナは一度見つめ合い、俺は微笑みながらアスナを紹介する。
「いや、彼女は神様なんかじゃないよ。彼女はアスナ、俺と同じ外の世界の人間だ」
「外の……世界……」
「キリト先輩と同じ……」
どうやら、ベルクーリにした話をもう一度する必要がありそうだ。いや、他の整合騎士達にも聞かせるべきだろう。そう思い、彼女らを連れて本部の天幕に向かう途中、アスナが思い出したように話した。
「ねえキリト君。ソル君の容態はどうなの?」
「…………見てくれた方が早いな。こっちだ」
アスナと一緒にソルの居る馬車に入る。ソルの現状を見たアスナは言葉を失った。アスナとソルは直接交流する所を見たことは無いが、大切な仲間と思っているはずだ。そのソルが、この有様なんだ。
アスナは手を口に当てて絶句している。
「キリト先輩、そちらの方は?」
「彼女はアスナ。ああ、大丈夫。俺の彼女だよ」
ルーナの殺気にビクリと震えて、素早くアスナを紹介する。ルーナからすれば、アリスですらこの馬車に入れたくないらしい。
「アスナ、比嘉さんから何か聞いていないか?」
「……回復が絶望的なこと。でも、STLに接続された人のフラクトライトを参照すれば、ソル君のフラクトライトを修復出来る可能性があることくらい……」
「何!? それは本当かアスナ!」
驚きについアスナの肩を掴んでしまう。
「ええ、彼が助かる可能性はゼロじゃないって」
「良かった、本当に良かった……」
ソルの左手を取る。右は、俺の傷を移したせいで無くなった。でも、彼が起きる可能性がある。それだけで十分だった。
「そうだアスナ。一度、ソルのフラクトライトに動きがあったと思うんだが、比嘉さんはそのことについて何か言ってなかったか?」
「え? ううーん……。そんなことあったの? 何も言ってなかったよ」
「そうか……、ありがとう」
ソルが目覚めたのはフラクトライトの活性によるものでは無いとしたら……。いや、比嘉さん達が気付いていない可能性も……。
俺が考え込んでいると、馬車の扉が開いた。
「キリト……説明なさい。彼女は誰です?」
アリスがルーナ顔負けの殺気を放って立っていた。俺は冷汗を流しながら必死に話す。
「彼女はアスナ。俺の彼女だよ。ソルとは外の世界で知り合いみたいなもんだ、な?」
「え、ええ」
早口で話す俺にアスナは若干引きつつも、何とか弁解する。
「ならば良いのです。会議をすると兵を走らせておいて、何を道草していると思いきや……。早く行きますよ、小父様達が待っています」
「ありがとう。すぐ行くよアリス」
「アリス……!?」
これからの会議、かなり重要なものになりそうだ。
~~~~~~~~~~
アスナを混じえた会議では、俺の中で外の世界の現状とこれからの目標を明確になった。
「それじゃ、私はこれで」
「ああ、おやすみアリス」
「おやすみ」
アリスとユージオと別れて、アスナと同じ天幕に向かう。ユージオを一人にしてしまうが、流石に今日はアスナと居たかったから我儘を言った。
「キリト君。この世界での話、聞かせてくれる?」
「……ああ、話すよ、全部。ソルやユージオやアリスと過ごした、今日までの全てを」
次の日、アスナのお陰で戦況は一変した。《地形操作》で創った底無しの峡谷は、ダークテリトリー軍の進行を防いだ。
「これで安全に……って訳にも行かないか」
「そうだねキリト。《ワールドエンド・オールター》に行くにしても、きっと敵は追いかけてくる」
峡谷が与えたのは一時期の安息だけ。目的を果たす為にも、敵との激突は避けられない。
整合騎士姿のユージオと準備していると、通達の兵の声が駐屯地に響く。
「敵軍が峡谷を越えます。直ちに武装し、東に向かうように!!!」
「行くぞユージオ!」
「ああ!」
俺は馬に乗れないが、ユージオの乗る飛竜の後ろに乗って出陣する。
敵軍の影が見えてくると、俺は目を瞠った。敵は細い綱をどうにか向こう側に繋いで、命綱も無しに綱渡りをしている。整合騎士、レンリのブーメランで次々と千切れ、落ちていく暗黒騎士や拳闘士は悲鳴を上げて奈落へと落ちていく。
「これは……」
「これが、戦争なんだね……」
一本、また一本と綱が斬られる。その光景がこれは戦争であり、命が失われる容易さを見せつけてくる。
「キリト! あれは……」
「あれは……」
人界軍が綱を切って回っていると、峡谷のこちら側に広がる荒野に無数の赤い光が降り注ぐ。
「「「「ウオオオオオオオオ!!」」」」
その光は赤い鎧の暗黒騎士達だった。その数、およそ数千……いやまだ増える。
「外部からのプレイヤーだ……」
「それって……」
「恐らく、《暗黒神ベクタ》の策だ。外部の人間をこの世界にログインさせて、アリス以外のこの世界の住民を皆殺しにするつもりだ」
「な…………」
~~~~~
「ぁ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
赤き青年は吼える。愚かにも無知で、醜くも血を求める罪深き来訪者を赦さない為。大切な人達を護る為。
~~~~~
「突っ込むよキリト」
「やってやろうぜ相棒」
俺たちは剣を抜いて地上で赤い兵士と接敵する。一人倒すのに苦労は無いが数が多すぎる。包囲されてしまえばひとたまりもない。
数の差で、少しずつこちら側の死者が出始める。アスナが《地形操作》でダークテリトリー軍と赤い兵士との間に巨大な岩山を作って彼らを守る。昨日話した時、負担が凄くて使えないと言っていた。かなり無理していると思いアスナを探して駆ける。
「大丈夫かアスナ!」
「ええ」
アスナと合流し、背中合わせで敵を迎え撃つ。
人界軍が押されている時、俺たちを包囲する赤い兵士が炎に爆ぜると、一人の拳闘士が近付いてくる。
「取引だ」
「取引?」
「そうだ。あの岩山やデケェ地割れを作ったのはお前だな?」
「ええ」
「いいか、後ろの地割れに狭くていいからしっかりとした橋をかけろ。そうすりゃ四千の拳闘士が赤い兵士どもを一人残らずぶっ潰すまでお前らと共闘してやる」
「共闘……ダークテリトリー軍が?」
想定外の申し出に驚く。怪しいが、彼は右目から血を流している。つまり、右目の封印が無くなっている。
「その人、多分嘘はつかない」
整合騎士シェータの一言もあり、俺は裏が無いと確信する。
「俺もいいと思うぜ。……負荷は大丈夫か?」
「あと一回くらいなら大丈夫。わかりました、峡谷に橋をかけます」
アスナが剣を掲げ、七色のオーロラが走ると、峡谷に橋がかかる。
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ユージオside
「はあっ!」
赤い兵士の練度は高くない。僕でも対処できている。
キリトから剣技を教わっていたように、ソルから教わったのは《体術》だ。いつの間にそんなもの身に付けたのか疑問だったけど、キリトの言う外の世界で身に付けたものだと分かった。ソルが教えてくれた《体術》は言わば万能型の技術だ。決闘から実戦、果てはこうした混戦も想定されたもの。ソルが外でどんなことをしていたのかは知らないけど、きっと想像も出来ないようなことをしてきたに違いない。
「嬢ちゃん!」
ベルクーリさんの声に振り向くと、アリスが黒い飛竜に捕まって連れ去られて行く所だった。
「アリス!」
ベルクーリさんが三頭の飛竜を使い追いかけるのに、僕もついて行く。
~~~~~
「……………………リリース・リコレクション」
青年は唱えた。ガラクタのような魂を震わせてすり減らす。
警告音を大音量で鳴り響かせていた剣は光を纏う。宙に浮き、一振の剣を新たに生み出した。生み出された剣は、霧のように消える。
「…………」
まだ……青年は目覚めない。
~~~~~
キリトside
アリスが連れ去られた報告を受けた俺たちは、赤い兵士を拳闘士達に任せてアリスを追う。
──ジリリリリリリリリリリリリ!!!!
ソルの馬車から警告音が鳴り響く。直後、直進するまま大穴を突っ切ろうとした時、また赤い光が現れた。
「またか……」
音に驚きながらも人界軍は警戒態勢に入る。
──ジリっ…………。
鳴り響いていた音が止む。その時、空から光が産まれる。太陽のように眩しい輝きを放つその中に、彼女は居た。
その大弓から放たれた弾丸は、俺たちを囲む赤い兵士を一瞬のうちに殲滅させた。
「連射出来ない……。上等じゃない、単発の武器の方がしっくり来るってものだわ」
降臨したのは、俺たちの知る彼女だった。《死銃事件》で出会った、氷のスナイパー。
「お待たせ、アスナ」
「…………シノノン」
アスナとシノンは抱き合う。
頼りになりすぎる援軍に、俺は腕を組んで見守った。