君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

今回は原作シーン無いです。
いやあまり原作入れるとパクリみたいでイヤなんすよ。
タグの原作既読推奨はそゆこと。


ではどうぞ


《蜃気楼》

 

 

――二千二十四年四月

 

 アインクラッドは五十九層まで攻略されていた。

 キリトはまた少し立ち直り、最近アスナと一緒にいるのが多くなった。今のキリトの心の支えはアスナなのだろう。僕ではどうやってもキリトの支えにはなれなかった。僕が女だったら言葉が届いて、キリトを支えられたのかな……。いや、ありもしないもしもを捏造したって虚しいだけだ。

 今日も悪戯に命を削る日々。一人でいる時はローブを身に着け、潜るように剣を振るう。そこに意味を望んではいない。迷宮区のマップを公開するのも、オレンジプレイヤーに襲われそうな人を助けるのも自身の衝動に身を任せた結果だ。

 誰かの為にとマッピングしていないし、助けたいと思って人助けをしていない。()()()()()()()()はできたが、()()()()()()は見つけられなかった。()()()()()()()()があるだけでも贅沢なんだ、欲しがるのは人間の本質か。

 

 

 

 今日の標的は最近活発に活動している《笑う棺桶(ラフィンコフィン)》。リーダーは《PoH》、幹部に《ジョニー・ブラック》、《赤目のザザ》等がいる殺人(レッド)ギルド。全体的に逃げ足が速く、()()できたのは十数人だけだ。特に幹部クラス以上が速いのなんの。追い付くのに三時間かかったこともあった。

 

「……面倒くさ」

 

 追いかけっこは得意じゃないんだ、鬼の方は特に。見即斬の心得で行くとしよう。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 僕は19層の森の中を全速とまではいかないが疾走する。ルートは奴らの痕跡が残る道筋だ。僕の《追跡》スキルの練度は完全習得に迫るほど高い。奴らまでの距離約50m。接触まで3……2……1……。

 

 

(居た居た……)

 

 僕は腰の刀を抜刀し、奴らの首を斬ろうとした時。

 

「ソル?」

 

 何故か居たキリトが僕を見た時呟いたおかげで、僕の刀は黒いポンチョのフード男に防がれた。……嫌なタイミングで会っちまったもんだ。

 

「キリト……。空気を読めよ」

「ソル! お前何してる!」

 

 僕はこの場に居る奴ら、《笑う棺桶》の《PoH》《赤目のザザ》《ジョニー・ブラック》という待ち焦がれた面子を挟んでキリトと会話をする。

 

「おいおい、こりゃあ《蜃気楼》様じゃねえか」

 

 黒ポンチョフードの《PoH》が僕を見てケタケタと笑いながら言う。奴の両側に居るザザとジョニーは臨戦態勢で殺意を向けてくる。《蜃気楼》と聞いたキリトは目を丸くして驚いて僕を見る。

 

「《蜃気楼》だって……」

「お前が来ちまったならもうお終いだな」

 

 驚くキリトを他所にPoHは左手の指を鳴らすと、他二人が退いていく。ザザにエストックを向けられていた見知らぬプレイヤー二人が解放され、ふらふらと膝を突いた。

 

「また逃げられると思ってんのか?」

 

 散り散りに逃げようとする三人に刀を振るう。三人別の方向に逃げるからか、刀はPoHの片腕を落とすに留まった。

 

「……Suck」

「Die」

 

 足の止まったPoHにトドメを入れる為に刀を振る。鈍く光を弾く刀身は、ソードスキルの輝きを放つことなくPoHの首に吸い込まれる。

 

「待てソル!」

 

 キリトの叫びに今まさに敵の命を刈り取らんとした刀が空間で静止する。止まったのはたったの一瞬だが、その一瞬でPoHは姿を消し、直視することが出来ない距離まで逃げていた。

 僕は直ぐにも追いかけようとスキルを使おうとしたが。

 

「おい! ソル! 説明しろ!」

 

 キリトの怒声が僕の体を再び止めた。その間にも奴らは離れていく。流石に追いつけない距離になってしまったので、溜息をつきながらキリトと向き合う。

 

「説明って、何を?」

「お前が《蜃気楼》であることと、今しがた起きたことについてだ!」

 

 キリトの顔は真剣そのもので、彼の言動に共感出来ない僕は疑問符を出しながら首を傾げる。

 

 

~~~~~~~~~~

キリトside

 

 

 俺が《圏内事件》の真相に気付き、19層の丘の上で《笑う棺桶》と対峙した時だった。PoHの背後に人影を見つけたと思うと、見間違える訳がない、俺のよく知るソルが刀を迷いなく振ろうとしていた。

 俺の目線と呟きでPoHは刀を防いだが、俺が居なかったら間違いなく首を跳ねられていた。何よりソルの太刀筋に何の躊躇いも感じなかった。

 

 

「おいおい、こりゃあ《蜃気楼》様じゃねえか」

 

 衝撃だった。《蜃気楼》という名前は少し前からプレイヤーの間で噂になっている。フードを深く被った男が犯罪者や殺人者を捕縛、又はPKしているという噂だ。実際に()()に危ないところを救われた人も居て、目撃者も数名居る。複数形なのはあまりの頻度で所構わず目撃されるので、どこかの集団なのではと言われているからだ。しかし、目撃した者は皆、口々に霞のように掴めそうになく、生きながら死んでいるようだと言った。

 俺は興味がなく、ただの噂程度にしか思ってなかった。だが、ソルが関わってるとなると話は別だ。

 

 俺にとってソルは大切な相棒だった。一層のボスを倒した後、一人で進もうとした俺の隣に居てくれたのはソルだ。圏外に行く時、いつも心配だからと一緒に居てくれたのはソルだ。《月夜の黒猫団》が全滅した時、狂った俺を最後まで止めようとしてくれたのはソルだ。《背教者ニコラス》に挑んだ時、常に俺を守れる位置に居てくれたのはソルだ。あの時も、この時も、俺が不安になったり、落ち込んだりした時にはソルは傍に居てくれた。だからソルがPKをしている《蜃気楼》だと聞いた時は信じられなかった。いや、信じたくはなかった。

 

「おい! ソル! 説明しろ!」

 

 俺はPoHに斬りかかるソルに叫んだ。大切な相棒にこれ以上人を斬って欲しくない。俺は必死だった。

 

「説明って、何を?」

「お前が《蜃気楼》であることと、今しがた起きたことについてだ!」

 

 《笑う棺桶》の三人は逃げてしまって、この場には俺とソル、《圏内事件》の当事者であるヨルコとカインズと関係者のシュミットが居る。

 

「そこの奴らのことはいいのか?」

「いや、今はお前のことだ」

 

 事後処理はしなくてはいけないが、そんなことよりもソルのことが気がかりだった。

 

「いつからこんなことをしている?」

「……十二月から」

 

 十二月……俺がクリスマスイベントの為に無理にレベル上げをしていた時期だ。

 

「何故こんなことをしている?」

「僕に出来ることは全てしなくてはいけないから」

 

 今まで見てきたソルとは雰囲気が違う。彼の言動には強い使命感がある。でも、何処か危なっかしい。

 

「別にお前がやらなくてもいいことだろ?」

「いや、僕がやるべきだ」

「何故?」

「僕は要らない子だから」

 

 ソルの言葉を聞いた途端、俺の顔がカッと熱くなるのを感じた。

 

「巫山戯んな!!!」

 

 俺は怒りのまま怒鳴る。ソルは何のリアクションもせずに俺をじっと見ている。ソルの諦めたような、全て解っている顔が余計に俺を怒らせた。

 

「お前が要らないだと? そんなこと誰が言った!」

「……顔も名前も覚えていない誰かさ。僕には()()んだよ、キリト」

「だからどうした!! お前は要らないなんてこと無い! 絶対にだ!」

 

 ソルは抜刀されていたままだった刀を納刀する。(はばき)が鞘に当たって短い金属音が鳴る。ソルの表情は慈愛に満ちていて、薄く笑う。

 

「ありがとうキリト。やっぱり君は優しいね」

「……《蜃気楼》の他のメンバーは知ってるのか?」

「メンバー? 《蜃気楼》は僕一人のことだが……それがどうかした?」

 

 さも当然かのようにソルは答える。俺の背中に悪寒が走る。関心がなかった俺ですら《蜃気楼》のPKを数件知っているのだ、実際は恐らくより多いだろう。それをソルたった一人の所業だと言うのだ。既に彼は人に手をかけている、その事実に俺は眩暈を起こした。

 

「ソル……お前は…………」

「安心してよキリト。大丈夫、君たちは無事に帰れる」

 

 ソルの言葉を上手く聞き取れない。安心? 帰る? 何処に?

 

「やりたいことも沢山あるだろ? 一つ一つ叶えていけば良い」

 

 わからない。ソルが何を言ってるのかわからない。なんでそんなことを? お前はどうなんだ?

 

「僕の全てで、君を帰すよ。約束する」

 

 いつもと同じ優しい笑顔。ソルは変わっていない。……本当に? 今俺が話してるのはいつものソルなのか?

 

「だから安心してよキリト」

 

 ソルは俺に背を向けて踵を返す。俺は彼に何をすればいいのか分からなかった。言葉をかけたり、手を掴んで止めたりすれば良かったのかもしれない。でも、俺は何もせずに見えなくなるソルの背中をただ呆然と眺めた。




あえて言及してなかったけどこんなオリ主です。
設定とかはペチペチ出してくんで見守ってやってくだしぃ。


ではまた!

《蜃気楼》
罪を犯した者は恐れた。
自らの罪深き行いでは無い、罪が連れてくる死、其の者に。
彼は許しでは無い、彼は赦しでは無い。
悔い改めることなど忘却したようだ。
死は直ぐ其処だ、痛みはないのか、安堵した。
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