アインクラッドではオリ主の過去の深掘りはしません。
ゆっくりしていってね。
ではどうぞ
キリトside
ソルはあの後もいつも通りだった。一緒にレベル上げをして、他愛ない会話をする。ソルは狂ってしまったのか、元から狂っていたのかは分からない。不気味なくらいの変化の無さが俺は怖くなった。
俺たち攻略組は《笑う棺桶》のアジトに向けて行進している。事の発展となったのは《笑う棺桶》のアジトの位置が密告されたことにある。《笑う棺桶》には攻略組も手を焼いていて、この際一掃せよと最前線のギルドのほぼ全てが参加した掃討戦が計画された。基本ソロの俺にも参加要請が来て参加することにしたが、ソルが居ることには強く反発した。しかし、攻略組きっての高レベルプレイヤーであるソルは貴重な戦力として参加させない訳にはいかないと返されてしまった。俺はこの掃討が無事に終わることを願うことしか出来なかった。
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ソルside
掃討戦に参加した僕はキリトの参加を強く拒んだ。僕が彼の分の働きをすると言っても聞く耳持たず。結局キリトは掃討戦に参加することになり、僕の神経は全て彼の安全に費やされることになった。
そもそも、この作戦の元となる密告の出処が不明なのも僕を不信にさせる。たまたまアジトを発見したプレイヤーであることは無いだろう、《PoH》はそんな阿呆じゃない。だとすると…………
「此処だ。お前達、準備はいいか?」
先頭を歩くフルプレートの男が指揮を執る。此処には《血盟騎士団》の《神聖剣》は居ないようだ。僕は腰の刀をゆっくりと抜刀する。次第に見えてくる刀身はその中にもう一つの世界を写し、覗き込むと暗褐色の瞳が此方を見ている。結晶の回廊が引かれた洞窟へと進む集団に混じり、息を少しずつ無くす。
開けた場所に出ると、数人のプレイヤーを発見した。攻略組の奴らは包囲して拘束しようと動き出す。瞬間、僕の直感が警鐘を激しく鳴らした。僕は急ぎ見える数人から
そこからは最悪だった。止まずに重なる剣戟の音。幸い、此方に死者は出ていないようだ。キリトも応戦している。しかし、それは長くは続かなかった。
「いやだ、うわぁぁぁぁ!!!」
悲鳴と共に一人の紅白の騎士がポリゴンとなって消えた。動揺は波紋のように広がり、攻略組は殺人に躊躇の無い殺人者に押されだした。ある筈の無い僕の心臓は鼓動を速くし、身体が嫌に冷たくなった。思考は薄く白くなり、ただこの頭に入ってくる
(僕がやらないと)
拘束せよとの命令が出ていたからか、《笑う棺桶》の負傷は少ない。しかし、攻略組はレベル差のおかげだけで生きている状況だ。誰かが手を出してしまうのは時間の問題だ。
「はァァァァァ!!」
この騒音が鳴り響く空間で、何故かキリトの声が頭に入った。嫌な予感がする方に振り向くと、キリトが鍔迫り合いになって切羽詰まった表情をしていた。
僕は勘に従い直進する。キリトが誰かを斬りそうになる、その前に僕は彼の周りの《笑う棺桶》を斬り崩した。首が二つ、胴体が一つが空に舞い、二つに別れた半身や残りが地面に垂れ落ちた。
「大丈夫だよキリト。僕がやるから」
僕は出来る限りの笑顔でキリトに言う。
そこで、僕は躊躇いを棄てた。
逃げる気配に気付き、回り込む。ポンチョフード――《笑う棺桶》リーダーの《PoH》だ。
「よう《蜃気楼》。楽しんでくれたか?」
「…………」
合点がいった。こいつは自身で密告し、自分のギルドを潰すようにしたのだ。開戦で軽く包囲されたのはそのせいだろう。
「どうした? 楽しすぎて声も出ねぇか?」
「…………」
フードを被っていても解る。こいつは僕で遊んでいる。恐らく今の僕を理解出来ている唯一の人物だろう。
「その表情、本当にサイッコーだぜ? ギルドを丸々捧げた甲斐があったってもんだ」
「……遺言は終わりか?」
《笑う棺桶》はこいつ以外の
「ああ、もう悔いはねぇぜ。最期にお前と殺り合えるんだからよぉ!」
「……そっか」
僕は首に襲いかかってくる奴の包丁を避け、同時に刀を下から奴の脇に滑り込ませて包丁を持っていた奴の右腕を肩と別離させる。上に昇った刀を降ろして、左も同じく別離させる。PoHは観念したのか、膝を着き首を差し出してきた。
「俺で
「……そうだな」
「これで俺はお前の一部となり、お前は完全に俺たちに
死に際にもお喋りなコイツの言葉を
が、僕の手首を誰かの手が掴んだことで刀は動くことを失念した。
「……キリト?」
「もう……もう終わったんだ。……ソル……もういいんだよ」
キリトの目には微量の雫が潤っていた。今にも泣きそうな彼は、僕の手に指を入れると手から刀を取り上げた。
「キリト……コイツだけは……」
「お前はっ……泣いてるんだよ!」
僕は左手で左頬を拭うが、水滴が指に付着することは無かった。キリトは表情を柔らかくして僕の右頬に左手で触れる。その手には、確かに水で濡れた感触があった。僕は右頬のキリトの手にゆっくり手を重ねる。
「こんなになるまでお前が背負う必要は無い」
キリトの言葉に僕の心はザワついた。いいのだろうか、僕に必要なんて無いのだろうか。僕の心がその在り方を変えようと蠢く。
「《黒の剣士》ぃ! 邪魔してんじゃねぇ!! おい《蜃気楼》!!! お前は既に俺らと同類だ、もう変われない。変わることなんて出来ねぇんだよ!!!」
変わることを願ってしまった僕の心はその言葉に引き留められた。舞い上がったしまった心を落ち着かせる為に、僕はここから立ち去ることを選んだ。
「ソル! 耳を貸すな!」
僕は転移結晶を手に取り、青い光に身を任せる。キリトが手を伸ばしてくるが、僕はキリトを見たまま動かなかった。
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キリトside
俺は転移するソルに手を伸ばすことしか出来なかった。あの時、ソルは確実に心を開いてくれていた。だが、そこにいるPoHの仕業でソルの心は再び閉ざされてしまった。
「クク、惜しかったなぁ《黒の剣士》」
下卑た笑いをするPoHに苛立ちを隠せない。あと少し、ほんの少しだけでソルの心を救うことが出来た気がしたからだ。
「おいPoH、ソルと何を話していた」
PoHを拘束しつつ尋問する。やけにソルに親しげな態度をとろうとしていたのだから、ソルの何かを知っているはずだ。
「《蜃気楼》は俺と同じだ。俺らに言葉は要らねぇ。俺はアイツを愛してるからなぁ」
なんとも的外れな回答に眉を顰める。こいつは何も話すつもりはない。ソルがPoHとの間に何があったか、それは本人に聞かないと分からないようだ。
俺は、ソルにはこの世界でも生きてほしい。ソルが俺を死なせないなら、ソルは俺が死なせない。この気持ちは恩返しであり、俺の願いだ。必ずしもソルを救ってみせる。
ソルは俺の……相棒だから…………。
ソ■
僕は咎人です。
僕は人殺しです。
変わ■ことは出来ません。