ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第12話 ギスギスな関係

 春の風が、ふわり吹かれて髪を靡かせている。まだ肌寒い風を受けながら、玄関外で1人待つ者が居る。

 

「かなた君お待たせ、待った?」

 

「ううん。時間はまだまだ余裕あるから大丈夫だけど…何でソラ?」

 

 今日から新学期。かなたとましろは学校に行く為に、私立ソラシド学園の制服に身を包んで登校する準備をしている。いざ出発となるのだが、何故かましろの隣にはソラが居る。

 恐らく途中まで見送るのだろうと思い、かなたもましろも特に気にする事なく、談話しながら通学路を歩く。

 

 と、いうのがいつまででも続いている。

 

 ──あれ?あれれ?

 

 そんなソラにかなたは微塵も気にしていないが、反対にましろはいつまで経っても家に引き返す気配の無い事に少し戸惑っている。

 家を出る前に、ソラはスカイランドにも学校は存在しており、自分も通っていた事を言っているので、特に注意する点など言う事なかったのだが。

 

 ましろはそっとかなたに視線をやり、アイコンタクトだけで会話をする。

 

 ──か、かなた君。ソラちゃん、本当に学校の事分かっているのかな?このままだと、一緒に登校するけど…。

 

 ──多分、校門の前までじゃないかな?

 

 ──だ、だよね!まさか、そんな事ないよね!

 

 嫌な予感がするが、それは杞憂で終われば良いと願いつつ、真ん中に居るソラを挟んで目をパチパチしている内に学校に着くのだった。

 

 2人は校門前で立ち止まり、ソラにふと一声掛ける。

 

「えっと、ソラちゃん。お見送りはここまでで大丈夫だよ?」

 

「このままだと、ソラも一緒に校内に入ることになるよ?」

 

「えっ!?学校は誰でも入れる場所っていうのが、スカイランドじゃ常識なのに!?」

 

 こんな事だろうとは思っていたけど、ここまで嫌な予感が当たるとは。凄いのか凄くないのか、どちらか分からなくなるものだ。

 

 とはいえルールはルールだ。ソラには悪いが、これ以上は進めない。

 スカイランドとは違う事を、2人がソラに説明すると慌てて頭を下げる。

 

「入れないとは知りませんでした!すみません!」

 

 別にソラが悪い訳ではない。2人も、知っている事前提で何も説明無しに連れて来てしまっているこちらにも非はある。

 今後の事も考え、ソラをもう少し外の世界に連れ出した方が良いと密かに思うかなた。

 

 それよりも今は、まだ朝の登校時間なのだがHRが始まる時間はちょっとずつ迫って来ている。少しばかり急ぐ様にしなければ、2人とも遅刻となってしまう。

 

「細かい事はまた帰ったら説明するとして、もう行かないといけないから」

 

「うん、ありがとうソラちゃん。ここまでのお見送り」

 

「いえ!ではお2人共、お勉強頑張って下さい!」

 

 手を振って、ちゃんとソラが帰って行った事を確認してからやっと2人は謎の緊張感から解放される。

 春の新学期という事もあり、校内には桜の花が少し芽吹いており、風で儚くも美しく散っていく花びらを眺めながら、ましろはかなたへ振り向く。

 

「ちょっとびっくりしちゃったね」

 

「大事にならないだけで良かったよ。帰ったらちゃんと説明しないとね」

 

 それから無言の時間が続く。ソラが帰ってから2人との会話が殆ど無くしてしまった。かなたはあまり気にしていない様だが、ましろは落ち着かない様子でソワソワしてしている。

 

 先日のかなたとのやり取りの事を気にして、どこか気不味いと感じているのだろう。とはいえ、別にこれまでとはあまり変わらず接している。朝だって、ちゃんと目を合わせて挨拶もしたし、先程だって会話もしている。弾んでいるとは言い難いが、それでもコミュニケーションは取れている。

 

「今日も良い天気だね。空が晴れ渡っていて」

 

「ソラだけに?」

 

「あはは、はぁ…」

 

 面白い面白くないは置いといて、とにかく会話が続かない。そもそも続かない話題を振ってしまっている時点で、それまでなのだが。

 

 そんなましろの様子に、かなたが気付かない訳がない。

 

「元気無いけどどうしたの?体調悪いのか?」

 

「ううん、そうじゃないよ。えっと、その…」

 

 今、目の前に居る人物に頭を悩ませているなんて言えない。口をモゴモゴと動かしては、この言えないもどかしさを何とかしたい気持ちが溢れ出る。

 

「ましろ?本当に大丈夫?何か凄い事になっているけど」

 

「うぇ!?」

 

 自分でも気付かない程に考え込んでしまっており、いつの間にか上半身が横へ横へと曲がっていた。腕までも組んでおり、慌てて体勢を整えて何事も無かった様に立ち振る舞う。

 

 ちょっと、恥ずかしかった。

 

「な、何でもないよ!早く教室に行こうか!」

 

「嘘付くなよ。明らかに動揺している。考え事なら一緒に頭悩ますよ!」

 

 スタスタと早歩きで、下駄箱から教室に続いて行く階段を登って行く。その後をかなたも心配の声を上げながら、ましろの後ろをピッタリとキープしながら後を追う。

 

 少しましろが歩く速度を上げれば、それに伴ってかなたもまた歩く速度を上げる。

 

「何で逃げる?」

 

「逃げてないよ!かなた君が追い掛けているんだよ!」

 

「誤解を招く様な言い方をしないで!?てか、教室が同じ何だから方向が一緒なのはしょうがない事だろ?」

 

 とうとうましろは、かなたから振り切ろうと廊下で駆け出した。それに続き、かなたも走り出してちょっとした鬼ごっこが始まったのだ。

 

 ましろは角を曲がって階段を駆け上る。更に少しでも距離を開かせるのに、段を一段飛ばす形で跨ぐ。大きく踏み込んだりするのに、体力が削られるが引き剥がせれるのなら構わない。

 

 狙い通り、いくらましろより足の速いかなたでもましろに追い付けれなくなって来ている。後少し、最後の段に足を掛けた時だった。

 

 ──あっ!

 

 最後の最後で足を滑らせてしまい、そのまま後ろ側にへと引っ張られる様に落ちて行く。

 

 重力に従って落ちて行くその様は、とてもゆっくりでふんわりとしている。この体勢で床に落ちでもしたら、大怪我どころの騒ぎではない。

 下手をして、打ちどころが悪ければ最悪"死"もあり得る。そんな最悪な事を考える時間が何故かある。周りの風景が遅く見える。

 人間、死を目前にするとこういう現象が起こり得ると言われているらしい。

 

 本当かどうか定かではないが、現にその現象が今起きているのだ。

 

 どうする事も出来ないこの状態。素直に落ちてしまおうと受け入れようとした時、ふと視界の端に人影が映り込んだ。

 

「ましろ!!」

 

 名前を叫ぶかなたの姿がそこにはあった。大きく両手を開き、落ちるましろを全身で受け止めた。

 

「セーフ…って、うわ!」

 

 受け止めれたのは良かったのだが、その勢いだけは止められずにかなたも後ろに体勢を崩す。

 ただ普通に転んでしまうのは、先程のましろと変わらなくなってしまう。咄嗟に、自分から後ろにジャンプしてちょっとでも受け身が取れる様に体勢を整える。

 

「あ痛!?」

 

 ジャンプしたお陰で、足から着地して衝撃を緩和する程度には受け身を取る事に成功したの。しかしながら、受け身の取り方が下手くそだった為に、壁に背中を打ちつけてしまう。

 

「かなた君大丈夫!?」

 

 幸いな事に、ましろには怪我などはなかった事が良かった。しかし、あまりにも危険行為だった。

 

「俺は大丈夫だよ。それよりもごめん」

 

 運が良かっただけとしか言いようがない。事の重大さを痛感したかなたは、謝罪の後にましろを起き上がらせる。

 

「追い掛けてごめんね。もうしないから」

 

 それ以降、かなたはましろに迫る事は無くなった。が、この時ましろは思った。「何故もう少し、かなた君に素直になれないのか」と。言いたい事は沢山あるのに。

 

 もっと、もっと、もっともっと……もっと────。

 

 

 ////////

 

 

「ましろ?」

 

「な、何?」

 

 お昼休み、ましろはお弁当も広げずに窓の外を眺めていた。その様子を不思議と思い、かなたは一声掛けてみたのだ。呼ばれた本人は、ぼーっとしていたせいもあって、名前を呼ばれて少し驚いている。

 

 そんな驚かせるつもりはさらさら無かった。

 

「言いたくないなら言わなくても良いけど、何黄昏ているの?お昼食べないと、午後の授業を乗り切れないよ?」

 

「ちょっと…考え事してたの。えっと、ソラちゃん今なにしてるんだろーって」

 

 言われてみれば気になる。いつもは、かなたとましろがどちらか必ず付いている。けれど今は、2人共学校に行っており、その間は歳の近い人が1人も居ない。友達とも言える人もまだ。

 

 となると、ヨヨのお手伝いをしているか、エルのお世話をしているかの2択になる。ただ待つとしても、それでもかなたとましろが帰って来るまでに約8時間とかなりある。

 

 これまでは、何をするにしても3人だったのだ。

 

「何気に、ソラとよく居るのってましろだよね。案外、ソラも同じ事考えていたりして」

 

「だと良いね」

 

 

 ////////

 

 

 放課後のチャイムが鳴り、帰り支度をするましろの背中を軽く押すのだった。急な事にましろの頭の中は、クエスチョンマークが1つ2つ浮かばさせていた。

 

「ソラの事が気になっていたんでしょう?早く帰ってあげたら?」

 

「そうだね。かなた君も一緒に──」

 

「俺は今日、先生に呼ばれて手伝いをしないといけないんだ。先に帰って構わないよ」

 

 そういう理由なら仕方ないと思い、ましろはかなたに軽く手を振って教室を飛び出して行った。

 廊下に出て振り返ると、用事の為に移動するかなたの背中を目にする。本当は一緒に帰りたかったのが本音だった。

 

 いつも近くに居るのに、今は何故か遠く感じてしまう。そんな風に思う。

 

 この何とも言えないぎこちない関係は、いつまで続き、いつ終わりを迎えるのか不明。1日でも早く、以前の様に話せる様になりたいと思うばかりのましろだった。

 

 一方のかなたはと言うと、こちらも同じ様な考えをしている。

 

 ──自分からあんな事言った手前、何も言えた事ではないけど流石に心配だ。

 

 ましろをプリキュアに変身させない為に、付き合いの長い相手に「嫌い」と言う言葉を投げ掛ける脅した。結果として失敗に終わり、嫌な奴の印象になってしまった。

 それでも名残というものがお互いにはあり、普通に接して会話を続けている。だけどそれが、ましろにとっては逆効果になっている。

 

 ましろが折角自分で選び取った選択だというのに、かなたという存在がその邪魔をして無駄な思考を巡らせてしまっている。気まで遣わせている。今はまだこの程度で済んでいるが、時間が経つにつれてその溝は大きくなり、最後にはもう2度と修正出来ないものになってしまう。

 

 ──いっそ、距離を置いてみるのも良いかな。ましろ達を守れれば、何がどうなろうと気にしないし。

 

 そろそろ職員室に到着する。そんな時だった。

 外から大きな音が耳に届いたのだ。何事かと思い窓の外を見ると、学校を出てすぐの場所でランボーグは現れていた。

 それに応戦すべく、プリキュアに変身した2人の姿も目にした。

 

 こうしてはいられないと思い、かなたはスカイトーンを取り出そうとしたのだが、生憎今は手元には無い。此処は学校であり、いつもの様に首にぶら下げるのは校則違反の恐れと思い、学校に居る間は鞄の中に仕舞い込む事を決めていたのだ。そして鞄は教室にある。

 

 急いで教室に戻り、スカイトーンを引っ張り出す。

 このまま変身しながら、窓から飛び出そうと思って身を乗り出すがその足を直前で止める。

 

 言わずもがな、既にスカイとプリズムがランボーグを浄化して戦いを終わらせていたからだ。そんなに長い間目を離していたつもりではなかったが、何はともあれ何事も無く終わったのであればそれはそれで良し。

 

「ヒーローの出番は無し、か。まぁ、それに越した事ないけど」

 

 ただ、明日からは鞄ではなく、ポケットの中でも入れて常に肌身離さず持ち歩こうと決めた。今回みたいな状況にまたなってしまった時、1分1秒でも早くに動けれる様に。

 

 窓の外から遠目だが、変身を解いたソラとましろが手を繋いで帰って行くのが見えた。見えなくなるまでその様子を見届けてから、ようやくかなたも帰り支度をするのであった。

 

 校門を出て、ぶらぶらしながら下校していると一台の大型の高級車が路肩に止まった。一体誰が停めたのかと思い、ふと気になって横目で運転席を見てみると、見知った人物がこちらを見ていた。

 

「そこの可愛い少年、私の車で送って行くよ!」

 

「何しているんですか、あげは姉ちゃん?此処、駐車したらいけない場所だと知っているよね?」

 

「だから早く乗った乗った!」

 

 呆れながらも、かなたは助手席に乗ってあげはは車を発進させる。

 

「ましろんは?」

 

「迎えに来たソラと一緒に帰ったよ。多分、もう家に着いてるんじゃないかな?」

 

 窓の外を見ながら適当に返答するかなたの様子に、あげはは気になった。

 

「もしかして、ましろんと喧嘩したの?」

 

「喧嘩じゃない。まぁ、それに近い事なんだけど…」

 

「珍しいね…というより、2人が喧嘩するなんてもしかしてだけど初めてじゃない?」

 

 あげはの言う様に、ましろとこんな風にギスギスとした関係になったのは今回が初めて。だから今も、これからもどう接していけば良いのか考えている。

 関係が深ければ深い程に、亀裂が入った時にそれを修復するのは困難を極める。

 

 故に──、

 

「あげは姉ちゃんだけが頼りだよ…」

 

 情けなく呟いたところで、信号が赤になって車が一時的に止まる。それを見計らって、あげははかなたの肩を指先で軽くつつく。

 

 何かと思い、かなたはあげはの方へ振り返ると右頬にあげはの指が当たった。

 

「かなたん、引っ掛かった!」

 

 にひっと笑顔な彼女を見て、思わず心拍数が跳ね上がる。多分だけど、顔色も赤くなっていると思う。

 自分では分からないが、それを誤魔化す為にまた窓の外に顔を移す。

 

「かなたん、今度の休み暇?てか、空けといて!」

 

「何でまた?」

 

「あげは姉ちゃんと────デートだよ!」

 

「デートね、はいはい………はぁ?!デートだって!?」

 

 突然の申し出にかなたは困惑するが、あげはの強烈なアタックに負けて後日、デートをする約束を交わすのだった。

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