ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第14話 私は、ソラ・ハレワタールです!

 あれから、ソラの初めての授業開始のチャイムが鳴り響いた。

 その授業内容は万事順調…とは言い難い。決してソラが、この世界の知識や体力問題で馴染めず苦戦している訳でもない。寧ろ、かなたやましろ達と遜色ないレベル…いや、それ以上の能力を発揮して奮闘している。

 

 では、何に対して上手く行っていないのかというと、それは誰もが通る道。人との関係だ。

 

 ソラが2人に言っていた通りに、下手に目立たず、且つスカイランドの事を知られずに仲良くなろうという作戦で学校生活を送ろうとしている。

 

 ある国語の授業では、ましろから教えて貰ったことわざの意味を答えようとして手を挙げるつもりだったのだが、目立たない様にする為にわざとその手を引っ込めたり。

 

 体育でのスポーツテストでは、周りの子達のレベルに合わせて加減をしていたのだが、ふとしたきっかけで男子以上のとんでもない記録を叩き出す。

 

 名目上それだけなら良いが、その記録の内容というのが、また桁外れのものばかり。

 

 短距離、幅跳び、ボール投げと言った屋外でやるテストは一般どころかスポーツ選手以上の記録を出している。

 それだけには留まらず室内でのテストでは、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈も同様の結果。中でも、良い意味でも悪い意味でもズバ抜けていたのが握力測定。まさか、針が振り切り機械そのものを壊すという驚きのものとなった。

 

 元々ソラは、ヒーローを目指して心身共に鍛えており、それなりの身体能力の持ち主だという事は予め知っている。けれども、その結果全てが超人という域に達しているというのはあまりにも予想外過ぎた。

 

 これには、かなたもましろもどう擁護すれば良いか分からなかった。

 

 結果、どの種目も学園の記録を全て塗り替えてしまい、目立たないどころか目立つ事間違いなしで、ソラの思惑とは真逆となってしまった。

 

 授業が終わり、ソラは目に見えて落ち込んでいた。

 

「そんなに落ち込む事ないって。胸を張れる記録なのは確かなこと。俺と比べたら男の子としての威厳が損なわれるよ…」

 

「はぁ…私がかなたさんだったら、丁度良い結果を残していたに違いありません。どうやれば、あの様な普通の記録に収めれるのでしょうか?」

 

「おーい、ふさげた事を言うんじゃありません。全部嫌味に聞こえるよー」

 

 少々ソラの言い方に腹を立てたのか、ソラの両頬をグリグリと弄り出す。

 充分に満足してかなたが頬から手を離すと、これから先の事を想像して更に落ち込む。

 

「こんな事では、皆さんと友達になる事は一生叶わないかも知れません!」

 

「そんな大袈裟な」

 

「では、どうすれば友達になれるか教えて下さいかなたさん!!」

 

 今度はソラがかなたの両肩を掴み、そのまま壁際まで押されては懇願する。そこまで詰め寄って来るとなると、ソラの気持ちが本気という事が良く伝わる。

 ただ、その本気過ぎる気持ちがかなたからするとちょっと怖いくらい。

 

「別に悩む必要なんてないよ。ほら」

 

 かなたが指差す方へ振り返ると、クラスメイトの子達がソラに会いたくて駆け寄って来たのだ。

 

「すっごくカッコ良かったよ!」

 

「今度、俺に宙返り教えてよ!皆も教えて欲しいって!」

 

「グイグイ行き過ぎ!ソラちゃん、恥ずかしがり屋なんだから」

 

 自分が思っていたクラスメイトの反応とは違って、困惑して思わずどうすれば良いかかなたとましろに目で訴える。

 それに対しかなたは頷き、ましろは笑顔で返答した。後押しされ、ソラは少しだけ自分に正直になって答えてみた。

 

「はい!私で良ければ!」

 

「やった!」

 

「それじゃあ、また後でね」

 

 先程のスポーツテストについて話し終えると、お昼を食べにクラスメイトは教室へと戻って行った。

 

「そうだソラちゃん、ちょっと着いて来て」

 

 ひと段落つき、ソラの心に余裕が生まれるのを見て取れたましろは、ソラをある場所へと案内した。

 

 廊下の角を曲がり、階段を登って上の階へと目指して行く。そして最終的に辿り着いた場所は、この学園の屋上。

 此処に来てソラは何があるのか気になった。かなたは、ましろは何故ソラをこの屋上に連れて来たのか知っていた。

 

 この学園の屋上は、ましろがお気に入りの場所として良く訪れる場所。

 

「ソラちゃんこっち。見て」

 

 言われるがまま、ましろの言う様に校舎の下を覗く。そこでソラが目にしたのは、校舎で取り囲まれる中庭の中央。そこには満開に花を咲かせる桜の木が一本立派に植えられていた。

 

 春の風によって吹かれ、散りばめられるその光景はとても美しく、綺麗で心に残る。

 

「これ、なんて言う木ですか?」

 

「桜だよ。この学園が出来た時から、ずっとあそこにあるんだって」

 

 初めて見る桜に目を奪われていると、ましろはソラに"ある事"を言う。それは、いつかの日に言ってくれた言葉そのもの。

 

「ソラちゃん、もっとクラスでも自分の事出して良いんじゃないかな?ソラちゃんは、今の私のままで良いって言ってくれたよね」

 

「えっ?」

 

「誰しも最初から上手く友達が作れる訳じゃない。例えばましろとかがそうだよ」

 

 かなたがこれから何を言おうとするのか、ましろはすぐに分かった。そしてここからは、代わりに本人であるましろの口から言う。

 

 入学当初ましろは、いつも側に居てくれたかなたを除けば中々友達が出来ず、それは疎か焦りと緊張で喋り掛ける事すらままならなかった。

 

 そんな時、かなたに連れて来られたこの学園の屋上で見てしまったのだ。この心から本当に綺麗と思える場所に。

 桜を見て、肩の力が抜けてようやくクラスメイトに話し掛ける事が出来、そして友達が沢山出来た。

 

「ソラちゃんも、もっと肩の力を抜いていつものソラちゃんで良いと思うな」

 

「いつもの、私……2人共ありがとうございます!お陰で吹っ切れました!ここからは、いつもの私にチェンジします!」

 

 ましろの話を聞いて、ソラも肩の荷が降りて心身共に軽くなった。いつもの元気が戻って何よりだ。

 

「それにしても、2人は私が思っている以上に仲が良いのですね。羨ましいです」

 

「えっ?そ、そうかな?」

 

「はい。付き合いが長いという事は、それだけお互いの事を理解して、信頼していると言えます。私も、いつかそうなれたら良いなと」

 

 チクリと、ましろの胸が痛む。ソラが思うより、自分達はそこまで大した事はない。現に2人は今、周りに気付かれない程度にチグハグな関係となっている。今のましろからすると、何気なくかなたと話せているソラが羨ましいと思う限り。

 

「まだ出逢って間もない。これからもっと知って仲良くなれば、ソラが思う以上に仲良くなれるよ」

 

「では、これからはかなたさんとも沢山話しますね!ましろさんも、今以上に友達になりましょう!」

 

 かなたとましろにそう宣言するが、その前にソラはやるべき事があると言い、一度教室に戻って行く。

 

 

 ////////

 

 

「皆さん、お食事中すみません!」

 

 屋上から教室に帰って早々、ソラは教壇の前でクラス全員に呼び掛ける。一体どうしたのかと、教室内に居るクラスメイト達はソラに一斉注目する。

 その反応を示した事を確認したソラは、自分の名前を黒板にデカデカと書き出した。

 

「転校の挨拶を、もう一度やらせて下さい!」

 

 既に挨拶を済ませているのに、どうしてわざわざ2回目をやる必要があるのか騒めく。

 しかし、この2回目の自己紹介の挨拶は、ソラにとってとても大事なこと。

 

「ソラ・ハレワタールです!ましろさんの家でお世話になっています!」

 

 ここまでは朝、HRで言った内容と全く同じ。本命はこの後。

 ソラは、屋上で2人に言われた事を思い返しながら言葉を紡ぐ。

 

「でも私は、恥ずかしがり屋ではありません。私は、早くこの学校に馴染みたくて、皆さんと仲良くなれるのならそれでも良いと……でも、気付いたんです」

 

 それは、クラスメイトと馴染む為に。

 

「やっぱり、ちゃんと自分の事を知ってもらわなきゃダメだって」

 

 それは、ソラがソラらしくある為に。

 

「私は!ヒーローを目指しています!だから、体を鍛えていて運動には自信があります!」

 

 それは、皆と友達になりたい為に。

 

「私は、此処に来たばかりで慣れない事も多くて。でも、ましろさんやかなたさんと友達になって、新しい事を沢山知って、この学校に通うのも凄く楽しみで!」

 

 スカイランドに関する事は秘密にしなければならないが、何も自分自身まで偽る必要性は何処にも無い。最初から無かったのだ。

 

「だから、もし、良かったら──皆さんと友達になりたいです!宜しくお願いします!」

 

 これが、これこそが、ソラ・ハレワタールという人なのだ。

 

 ソラの一心の想いを受け取ったクラスメイト達は、1人2人と、拍手をして次第にその波が広がる。ソラを改めて、このクラスメイトの1人として迎え入れてくれた証だ。

 

 人の心の温もりを改めて感じたソラは、嬉しさと、これから楽しい事が沢山待ち受けているだろう初めてに心を躍らせる。

 

 だがしかし、そんな心地良い雰囲気に水を差す出来事が発生する。

 

「皆、大変だ!何か、転校生っぽいのがもう1人いるみたいだけど…」

 

 慌てて教室に入って来た子によれば、かなり特徴的なモヒカン頭の人が、購買のパンを買い占めたり、学食の料理にも同様に手を出してどうにも出来ない状態だった。

 

 その内容は聞いただけで、かなた達は一体誰の仕業なのか見当がついた。そうと分かれば善は急げだ。

 

「ソラちゃん、行こう!」

 

「はい…って、かなたさんは此処に居て下さいね。危ないですから」

 

「えぇ!?」

 

 ソラ達の後をついて行くつもりだったのだが、その本人達にまさか止められるとは思わなかった。

 

「『えぇ!?』って、かなたさんは変身出来ないですし」

 

「それでも──」

 

 食いつこうとするかなただったのだが、何か思って口を閉じた。伸ばそうとしていた手は、拳を作って、その表情は何処となく悔しそうにしている。

 

「憧れは、いつだって手の届かない所にある」

 

「えっ?」

 

「何でもない。頼んだよ、ヒーローガール!」

 

「はい!」

 

 ソラはかなたに背中を押されつつも、通り過ぎると同時に軽くウィンクをして「心配しないで」と安心もさせる。

 ソラにそうされたら、任せる他ない。かなたはそれに返す様に、キラキラとした瞳でソラを見つめる。

 

「かなた君…」

 

 ただ何気ない普通のやり取り。だけどそれに、ましろは違和感を感じていた。自分とは違うソラとの接し方に。

 もし、ソラと自分との立場が逆なら、あの時の様に是が非でも戦わせないどころか、変身させない様に必死になっていた。

 

 けれど今回は違った。何となくだが、かなたはソラの事を特別視している気も。

 

 

 ////////

 

 

 突然校内現れた、カバトンとランボーグ相手に見事な連携で返り討ちにしたソラとましろ。その様子を言われた通りに、屋上から見守っていたかなた。

 何事もなく終わった事に、安堵の息を吐く。

 

「流石、正にふたりはプリキュア」

 

 ソラとましろの絆は日を追う事に強く、硬く、切れる事無く結ばれていくのが良く分かる。

 これなら、かなたがわざわざ出るまでもなくランボーグを浄化を果たせるだろう。

 

 それはとても良い事なのだが、かなたはそれを素直に喜べなかった。自分の出番が少なくなる=近くで守れないという構図が成り立ってしまう。

 

 かなたは2人を何としても守りたい。特にましろは。

 

 下を見ると、クラスメイトと上手く馴染めているソラの姿。それに気付いたのか、ソラはかなたの方へ見上げて大きく手を振っていた。

 

「ソラが側に居るから、これ以上無いくらいの安心感はある。だけど──」

 

 手を置いていた落下防止の柵を強く握り締めると、グシャリと鉄を諸共せず変形させた。かなたのポケットの中で、淡くスカイトーンが光っている。それが影響して、一時的にかなたの力を上げたのだろう。

 

「安全ではない。そう、"安心"と"安全"は似ている様で全く違う」

 

 下で待っている2人の元へ、かなたはゆっくりと歩いて行くのだった。




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