ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第15話 デートなんだからテンション上げてこ!

「この日を待っていたよ!かなたん!」

 

「える!」

 

 先日約束通り、かなたはあげはとのデートをする為に、丸一日満喫する為に朝早くから虹ヶ丘家の前で待機していた。

 あげはが高々と声を張り上げるのに反応して、かなたが抱いているエルも便乗して声を出した。

 

「ごめんね。今、家でエルちゃんをお世話出来る人がいないから」

 

 いつもお世話をしているソラは、ましろにお願いをして勉強をしている。ヨヨは、いつも通りスカイランドに帰れる方法の為にてが離せないでいる。

 そこで任されるのがかなたのだが、かなたもあげはとのデートがある為、考えた結果一緒に連れて行けば何も問題は無いと踏んで今の状況となっている。

 

「全然OKだよ!寧ろ、私もエルちゃんと遊びたかったから万々歳だよ!」

 

 そう言ってくれて助かった。あげはの性格を考えたら「駄目」なんて言う事はまず無いが。それでも、2人っきりを楽しみにしていた事を考えると、そういう事もあるというのを頭の隅に潜ませていた。

 

 何がともあれ、エルも含めてこれで思いっきりデートが出来るというものだ。

 

 車に乗り込み、何故か虹ヶ丘家にあったチャイルドシートでエルを固定させて準備万端。

 さぁ、いざ発進と思っていたのだが、あげははハンドルを握って全く動かそうとしなかった。

 

「かなたん、何処に行く?」

 

「行き先決めて良いの?」

 

「勿論だとも!」

 

 それならと、かなたは考えてみる。エルも楽しめる場所を、大雑把に思い浮かべる。更にそこから簡単に計画も立ててみた。

 

「最初はショッピングでも回ってから、その後公園でエルちゃんと遊ぶ。少し時間を見計らってお昼を取ってから、動物園にでも行ってみる?ちょっと遠いかも知れないけど?」

 

「おー、かなたん頼りになるー!」

 

「存分に頼って下さいね。じゃあ、行こっか」

 

「える!」

 

 エンジン音と共に車が発進される。これから楽しい楽しいデートの始まり。

 

 ショッピングモールまでは、車で移動といえど約30分はどうしても掛かる。その間は車内でお喋りタイムと洒落込む一同だった。

 

「デートだけど、今日はありがとうあげは姉ちゃん」

 

「良いって良いって!それにお礼を言うのはまだ早いよ。真面目だなぁかなたんは」

 

「あげは姉ちゃんも充分に真面目だよ」

 

「お、言うね!」

 

 後部座席でエルの相手をしつつ、他愛の話しを続ける。特に、見ない間に色々と変わっていたあげはの事についての質問が多かった。

 

「それにしてもあげは姉ちゃん、今更だけどいつの間に免許なんて取ったの?」

 

「それでも最近だよ。高校卒業した後、すぐにって感じ」

 

「カッコいいな。ねぇねぇ、教習所通っている間、何か面白い事とかあった?」

 

 資格取得の為に勉強をして通っているのに、どうして面白要素を求めてくるのか不思議だった。それでも、可愛いかなたの為に記憶を遡って思い出してみる。

 

 そして、一つだけあった。

 

「面白いかどうかは分かんないけど、すっごい人なら1人居たよ」

 

「実技筆記共に満点とか?」

 

「筆記は分かんないけど、実技がもうヤバかった。その人ね、教習所内で『教官殺し』と噂知れる程にその、運転がね…」

 

 教官殺しとはなんぞやと疑問符だらけのかなただったが、あげはが嘘を言ったり話を盛っている訳でもない事は知っている。だからこそ、余計に疑問符が大量に浮かぶ。

 

「私もその様子を見てたのだけど、アクセルとブレーキが極端過ぎて先生の首の骨がポッキリ逝っちゃう人が続出してね」

 

「大変だね…」

 

「て、思うじゃん?他人事みたいに思っていたら、急なアクセルで教習所に突っ込んで来たんだよ!私も偶々その場に居て、心臓飛び出すかと思ったよ!」

 

「路上に出れないじゃん」

 

 あげはは、指でまだまだ話はこれで終わらないみたいな仕草をして話を続ける。

 

「実はその人、実技は路上に出れるまで行けたんだよね。これも噂らしいんだけど、教習車で人を撥ねたってというのが」

 

「はぁ!?も、もうその時点で駄目じゃん!」

 

「実技試験ってね、先生と他試験を受ける人含めて1台に3人乗るんだ。私、その人と一緒に試験受ける事になって、とても生きた心地がしなかったよあの時は…」

 

「生きてて良かったね」

 

 遠い目をしているあげはに、それくらいの言葉しか掛けれなかった。

 後で知った話なのだが、どうやらその人は現在連載中の漫画家らしい。

 

 そんなトンデモ話を聞かされている間に、最初の目的地であるショッピングモールに到着した。

 此処のショッピングモールは、少し前にソラとましろの3人で来た所。前回行けれなかった場所も含めて、此処で沢山遊ぼう。

 

「えるぅ!」

 

 初めて目にするものばかりに、エルは興奮が抑えられずに声に出し、スリングから身を乗り出していた。そんなエルを抑えながら、かなたとあげはは最初に何処に寄るか歩きながら考える。

 

「そういえば、あげは姉ちゃんって普段どんなメイクしているの?」

 

「お、意外だね。かなたんがメイクとかに興味を示すのは。ましろんの影響?」

 

「そういうのじゃないって。ただ、女の子が普段どういうメイクをしてるのか知れば、必然的にプレゼントするメイク道具も分かるかなって。後は、女の子を理解するという意味でもあるよ」

 

「ましろんと、ちゃんと仲を取り戻したいって思ってるんだね。良いよ、協力するから。このあげは姉ちゃんに任せなさい!」

 

 そこまで気合いを入れなくても構わなかったが、それだけかなたに親身になってくれて考えてくれている事に感謝しかない。

 

「ただ1つアドバイスするなら、ましろんはPretty Holicていうお店のコスメを気に入ってるから、買うならそこが良いかもね。私もそこで買っているから」

 

 一緒に居た時間がかなたより少ないとはいえ、やはりあげはだ。ましろの好きなものを熟知している。

 

「おっと、このお店も品揃えが良いね」

 

 そうこう話している内に、モール内にあるコスメショップに到着した。店の外からでも分かるくらい品揃えが豊富で、男の子であるかなたから見ても興味が出てしまう。

 

 いざ入店してみると、Pretty Holicと同じくらいのお客の数で賑わっていた。

 

「このブランドも結構有名でね、友達が良く使っているんだ」

 

 あげはの説明を聞きながら、かなたは棚に置かれてある見本の商品に手を伸ばして、いか程の質が直に確かめる。

 見た目も綺麗で、中を開ければ女性受けしそうなデザインとなっている。

 

 しかし残念な事に、それに伴って値段も結構張るものばかり。物によっては、小さなリップ1つだけでも数千円からしたりと驚きの価格。

 

「良い反応。確かに結構お金掛かっちゃうけど、その分質は良いんだよね。所謂、高級品っていうやつ」

 

 とてもじゃないが、子供のお金で買える代物ではない。見本の商品を棚に戻し、恐る恐るお店から出る。

 変な反応をしながら退店したかなたを見ていたあげはは、1人ニヤついていた。

 

「ま、まぁPretty Holicの方が今時の流行に遅れを取られず、可愛いコスメが沢山あるから!」

 

「はいはい。言い訳しなくても、最初から、かなたんがこのお店で買えない事は分かっていたから」

 

「分かってて言わなかったのかよ…」

 

 かなたが向かう先のお店が、どんな所か最初から分かっててあげはは黙って見届けていた。

 ましろにはそういう悪戯心は見せない癖して、かなただけ見せつける。

 この2人の関係性は、いつまで経っても昔会った時から変わらず。あげはに振り回されている役を、年下のかなたが担っている。

 

「える、えるぅ」

 

 胸の中で抱いているエルが、服を引っ張ってウズウズしていた。まだ、ショッピングモールについて間もないが、エルは遊びたくて仕方ないらしい。

 付き合ってもらっているエルの事も考え、少し予定を繰り上げてその要望に応えてあげる事にした。

 

「元気ハツラツだね!確か、モール内にちょっとしたキッズスペースがあるからそこに行こう」

 

 あげはを先頭に、かなたはショッピングモール内にあるキッズスペースへと向かって行くのだった。

 

 

 ////////

 

 

 少し広めのあるキッズスペース。そこにはやはりと言うべきか、子連れの親が圧倒的に数を多く占めていた。その様な光景をジッと見ていたあげはは、少々小恥ずかしい事を口にする。

 

「かなたん、私達も子連れの親子に見えるのかな?」

 

「…俺の身長考えて下さい。ソラやましろとそう大して変わらないよ。どちらかと言うと、妹か親戚の子供のお世話を任されている姉弟だよ」

 

 何をくだらない事を言っているのだ、と思いながらもエルを床に降ろして、適当にある玩具を一緒になって使い遊ぶ。

 

 何かしら面白い事が起きれば一緒に笑い、上手に出来れば褒めてあげたりと。

 ただ遊ばせるのだけではなく、自分も一緒になって感情を表せたら、その分エルも楽しくなる。

 

 そんな様子を一歩後ろから見ていたあげは、2人の様子に懐かしみの目を向ける。

 

「大きくなったね。昔は、かなたんの面倒は私が見てたのに」

 

「あげは姉ちゃん、おばさんみた──」

 

 年上の女性に大してその発言が禁句であり、即座に反応したあげは両手で、かなたの肩を握り潰そうと力を込める。これ以上何か言おうものなら、容赦はしないという優しい警告だ。

 

「でも、本当に無事に育って良かったよ。あの時は不幸が重なりまくって、かなたんが将来グレないか心配で心配で」

 

「…本当にあげは姉ちゃんには感謝してるよ。あれからあげは姉ちゃんが引っ越すまでずっと、俺に付き添ってくれたから。ましろやヨヨ婆ちゃんだけじゃない。あげは姉ちゃんも居たから、今の俺がある」

 

「えるぅ?」

 

 2人が、何の話をしているのかさっぱり分からないエルにとっては首を傾げるしかなかった。

 

 かなたが、のんびりと過ごすこの時間に思い耽っていると、外から騒がしい声や音が聞こえてきた。

 

 何事かと思い、外の様子を見て来ようと3人はその場を移動する。

 その道中、行き違い人の群れを避けながら耳を傾けているとある事を口にしていた。「怪物!」だとか「此処は危険だ!」などの悲鳴混じりの喧騒が響く。

 

 ようやく騒ぎの中心に辿り着いた。予想通りと言うべきか、そこにはカバトンと暴れるランボーグが居た。

 

「まさか、プリンセスの方から来るなんてオレってついてる!プリキュアの姿も居ない。ゆっくりと、プリンセスを頂くのねん!」

 

「あげは姉ちゃん、回れ右!!」

 

 かなたとあげはは、来た道を急いで戻りながらカバトンから逃走する。

 当然、カバトンとランボーグは追い掛けて来る。

 

 逃げながらもあげはは、ランボーグが出た事を知らせる為にヨヨに電話をして応援を呼ぶ。

 

「よし、ましろん達は急いで来るって!だから私達は──」

 

「あげは姉ちゃん危ない!」

 

 2人の頭上から何かが降って来た。かなたは、あげはの腕を強引に引いてその場から退避する。

 降って来たのは巨大な野球ボール。今回カバトンが誕生させたランボーグは、野球グローブを媒体としたランボーグ。その為右手には木製のバット、左手には野球ボール。

 

 かなたは、あげはの腕を引くと同時に物陰に隠れてソラとましろが来るまでこのままやり過ごそうと考える。

 

「あげは姉ちゃん、落ち着いて良く聞いて。多分だけど、このままだと俺達を見つけられるのは時間の問題。だから助っ人を呼ぶ。俺が呼べば一発だ、ものの数秒で飛んで来る。言ってる事分かるよね?」

 

「うん、そうだね…この状態じゃなかったら…」

 

 あげはの言う今の状態というのは、かなたがあげはを押し倒す様にして伏せている事である。

 顔も近く、息をするだけで吐息が掛かる程に2人は密着している。

 

 かなたは真剣になっているが、それが逆に恥ずかしさを更に向上させている事に本人は気付いていない。あげはは、良く自分からかなたと接する事が多いが、ここまで距離が近いのは初めてである。

 

 かなたの言っている事は耳に入っている。しかし、それを整理するにはあまりにも胸の鼓動がうるさく、返事もままならない。

 

「えるぅ…」

 

「わっ、ごめんエルちゃん!」

 

 ひょっこり、あげはの胸からエルが息苦しく顔を出してクタクタの様子で居た。咄嗟の行動とはいえ、知らずの内にエルをあげはの間に挟み込んでしまっていたらしい。

 

 すぐさまあげはから退き、起き上がってあげはも起き上がらせる。

 

「取り敢えずあげは姉ちゃんは、エルちゃんの事をお願い」

 

「待ってかなたん!助っ人って誰なの?」

 

「一度会っている筈だよ。ほら、ヘヴンっていう人」

 

「あー。あの、ましろんに中々当たりのキツくて如何にも自己中な人の?私、苦手なんだよねー」

 

 壁に頭を寄り掛かって、明らかに心にダメージが来て凹んでしまったかなた。それに大して言った本人は、何故かなたが落ち込んでいるのか不思議だった。

 

 エルは、あげはの服を引っ張ってかなたの方へ指を差す。

 

「えるる!」

 

「とにかく!呼んで来るから待ってて!」

 

「ちょ、かなたんストップ!

 

 あげはの言う事を無視して、カバトンとランボーグが待ち受ける通りに飛び出した。

 エルを探すのに必死になって暴れて土煙が充満しており、かなたが出て来た事に気付いていない。

 

 好都合と考える。上手くいけば不意打ちを決めれる上、カバトンにも正体を知られたくないと思っている為好機と判断する。

 

「2人が来るまで時間稼ぎって言ったけど、そもそも2人を守る為に戦っているんだ。ここは俺1人でやってやる!」

 

 首にぶら下げていたスカイトーンを手に取り、吹き抜ける風を身に纏い、ヘヴンとして変身する。

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