ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第17話 プニバード族のツバサ

「誰か居た?」

 

 ある夕食時に、かなたがソラに聞き返した。食事中なので、あまり喋れず簡素なものだがソラは気にせず話しを続ける。

 

「部屋に誰も居なかったので、多分気のせいだと思うのですが…あ、かなたさん口開けて下さい」

 

 右腕が未だ治っていないかなたは、利き腕が使えない為、暫くは誰かの手を借りて日常を送っている。今も、ソラに食べさせて貰って食事をしている。恥ずかしい気持ちも少々あるが、贅沢は言ってられない。

 

 一度左だけで挑戦をしていたのだが、案の定物を上手く扱えなく、ソラの言葉に甘える事となった。

 

「つかまり立ち、今まで以上に目が離せなくなるね」

 

 その隣で、エルに離乳食を食べさせているましろがそう呟いた。最近のエルの成長は目覚ましいもの。食事もミルクを卒業し、ハイハイの時期も終わろうとしている。この数ヶ月時間だけが過ぎて行く訳じゃなく、色んな事が一度区切りをつけて始めている。

 

「でも、何で人の気配なんて?」

 

「スカイランドには、言葉を喋る鳥が居るのでつい」

 

「わーお、ファンタジー」

 

 両手を開いて、スカイランドが如何に現実離れした異世界だと改めて知る。

 

 しかもソラの話によると、スカイランドでは人と鳥が仲良く一緒に暮らしているそうだ。人間と鳥、互いに支え、支えられての助け合いの生活を送り、平和を築いている。

 

 それでもソラからしたら、かなたやましろ達が住むこの世界の方が異世界で、驚かせられる事が多いらしい。この世界のルールと微妙に違ったり、何より電化製品には何度も驚かされると。

 

「ごちそうさま。エルちゃんも、ごちそうさまだよ」

 

「える、えるぅ!」

 

「じゃあかなた君、お風呂入っちゃおっか」

 

 かなたも食事を終えて、ましろの後について行き、2人でお風呂に入る準備をする。

 片腕を使えないのかなたの為に「代わりに私が、かなた君の右腕になる!」とましろも言い出したので、お風呂に関してもお世話される事となっている。

 何から何まで助けられてばかりだ。

 

 

 ////////

 

 

「かなた君、明日の準備はこれだけで大丈夫?」

 

「うん、ありがとう。色々ありがとう」

 

「もう、ありがとうばっかりで口癖みたいになってるよ。気にしないで、私がやりたくてやっるだけだし、ソラちゃんだって同じだよ」

 

 お風呂から出たら明日の学校の準備。ましろの手を借りて、ようやく準備も終わった。宿題も悪戦苦闘しながらも全て終わらせ、後は今週を乗り切れば右腕のギブスから解放される。

 

 そうすれば今の生活から、2人の負担を減らせる。

 

「寝る前にトイレにも行かないとね!」

 

「それは全力で遠慮させて頂きます!!」

 

 いくら利き手が使えないとは言え、そこまで面倒は掛けられない。いや、掛けたらいけない様な気がする。

 

 たわいもない会話を繰り広げる2人に、外から大きな騒ぎが聴こえてきた。慌てて窓を開けて下を覗くと、ソラが小さな小鳥を捕らえていた。

 

「何やってるのソラ?小鳥を虐めたらダメだろ!?」

 

「え?」

 

 ソラが下を向くと、両手で強く抑えられて身動き出来ないオレンジ色の体をした小鳥だった。ソラは、何が何の事か理解不能といった様子だった。かなた達からすると、動物虐待にしか見えない。

 

「ソラ、部屋に侵入したからってやり過ぎたよ」

 

「で、でも!」

 

「その子を放してあげて、ソラさん。その子は、私の知り合いなの」

 

「知り合い?」

 

 知り合いと言われたら放せざるを得ない。ゆっくりと手を引き、小鳥が立ち上がると口を開いた。

 

「ボクはツバサ…」

 

「えっあ、喋った!?」

 

「言葉を話し、人間に変身出来る鳥さん。貴方はもしや、スカイランドのプニバード族?」

 

 ツバサと名乗った小鳥は、小さく頷いてはその質問に答える。その前に場所を移動する。外で今は夜だ。夜の風は冷たい。折角温まった体が冷えて風邪を引いてしまう恐れがある。

 

 部屋に入り、リビングで深呼吸してからツバサひ語った。何故ヨヨと知り合いのか、ここに居る経緯も全て。

 

 始まりは突然だった。

 1年と少し前に、ツバサはこの世界に落ちて迷い込んだ。その時、偶々ヨヨがツバサを保護したのだ。何とも奇跡的としか言いようがない。右も左も分からない世界に迷い込んだが、不幸中の幸いな事に、スカイランド人であるヨヨに拾われたのだ。

 全ての事情を理解しており、話も通じる相手。もし、普通の人なら相手にされない。最悪の場合、珍しい動物として売り買いされる可能性だってある。

 

 大きな嵐が発生すると、世界の繋ぎ目にヒビが入り、こちらの世界とスカイランドの世界に繋がるトンネルが出来るらしい。しかも、スカイランドから通ってこの世界に落ちるものは、全てこのソラシド市に流れつく。その法則は、ヨヨでも未だに解明されていない。

 ただ、ソラシド市がそういう場所としかまだ解らない。

 

 成り行きになっとはいえ、それ以降からはツバサはこの家で、ヨヨと共に暮らしていた。誰にも正体を知らずに、言わずに、隠して。

 

「そういう事ならまぁ、仕方ないよね?」

 

「ターーイム!!」

 

 かなたがこの話を纏めて終わらせようとしたのだが、不満ばかり溜めていたソラが爆発した。発せられた声によって、ツバサはビックリして小鳥から人間の姿に変身した。

 

「変わった!やっぱりファンタジー」

 

「かなたさん、簡単に『これでお終い!』って勝手に片付けないで下さい!私とエルちゃんがこっちに来た後なら、いつだってスカイランドの事を話せた筈です!そうですよね?そうに違いありません!!」

 

「俺に振られても知らないよ!!」

 

 ソラのテンションに釣られて、かなたもヒートアップしていき、ましろは頭を抱えながらも2人を優しく鎮めさせる。まるで犬とその飼い主である。

 だが、ソラの言う事にも一理はある。ましろはそこだけは否定はしない。

 

「でもソラちゃんの言う通り、お婆ちゃんにトンネルを作ってもらえば、とっくにスカイランドに帰れた筈だよね?」

 

「説明、してくれる?」

 

 ツバサは硬く口を閉じ、思いっきり頭を横に振ってその質問を大きく拒否する。その行為が、今のソラにどれだけ油を注いだのかは目に見えて理解する。

 

「信用出来ません!何故説明してくれないんですかーー!!」

 

 その後、ソラの大声に驚いてエルが泣き、今日はもうそれっきりで夜を過ごす。

 

 次の日、エルの身を案じてソラは学校を休むのだった。

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