「心配だね、かなた君」
「心配してても、どうにもなんないさ。これに関しては、ソラ自身でどうにかするしかない」
朝の登校中。学校を休む事にしたソラの事について、2人は悩み話していた。薄情に言うかなただが、気持ちが分からなくもない。
もし、ツバサがカバトンの仲間だったら、事態は深刻なものとなっていた。
たった一度の失敗。そう言って流して、次に活かせれたら良いのだが、真面目な性格をしているソラにとっては、その「たった一度」を重く受け止めてしまう。ヒーローを目指しているのだから尚更だ。
その一度の失敗で、取り返しのつかない事になったりと負の連鎖を生む可能性はある。
しかもカバトンが狙っているのは、まだ赤ん坊のエルなのだ。まだまだ外の世界の事なんて知らない赤ん坊に、これ以上のトラウマを植え付ける訳にもいかない。それ以前に、危険に晒している時点でもう。
「もう少し気楽にって言って素直に受け止めれたら、こんなに俺達も苦労はしないんだけど。それでも、ソラならまぁ……大丈夫だと確信している」
「かなた君って、私が思う以上にソラちゃん事結構信じているんだね。私が言うのもあれだけど」
「そりゃね、だってソラは……ヒーローじゃないか」
ソラがヒーローというだけで、ここまで信頼を寄せていたとは、ましろもこれには驚いた。
これはましろの勘なのだが、ソラがヒーローという理由の他にも、もっと別の理由があるんじゃないかと考える。
ましろ自身もソラの事を疑ったりしていない。寧ろ、かなた君と同じくらいにソラの事を信頼している。だけど、かなたの思う信頼とは少し違う様な気がした。
まるで、昔からその姿を間近で見ていた様な、そんな感じがする。
「かなた君って、ソラちゃんの事どう思って──」
「そろそろ歩く事に専念しないと、遅刻するんじゃないかな?」
「えっ?」
かなたに言われてふと気付いた。話しに夢中なって、いつの間にか足が止まっていたのだ。この会話をしてどれくらいの経ったのかは定かではないが、かなたがふと口にするくらいなのだ。長い話になっていたに違いない。
「そうだね、急がなくちゃ!」
聞こうとしていた質問も、一旦は喉の奥に仕舞い込んで歩き出した。それでも、してもしなくてもどのみちどうでも良い質問なのだ。変な探りを入れるのは良そうと。
「かなた君、鞄持つよ?」
「もうそれ。大丈夫だって、変に心配性だねましろって。嬉しいけど、あまり俺ばっかりに気を遣っても損しかないよ?」
「それは私が決める事なの。昨日も言ったけど、私がやりたくてやってるんだよ。かなた君、あげはちゃん以外にはあまり甘えたりする姿見せないから、こういう時は全然甘えても良いんだよ?」
ましろは少々強引にかなたから鞄を取り、前を歩き出した。本当にましろは優しさに満ち溢れている。溢れ過ぎて、甘え過ぎてしまうとダメになってしまいそうだから頼らない様にしているが、これではそういかない。見た目とは裏腹に、強引な一面だ。
だからといって、かなた自身悪い気はしない。
「かなた君、はーやーくー!」
ましろは、かなたの手を引いて走り出した。
かなたは思う。ましろとちゃんと寄りを戻してから、今まで以上に距離感が縮まった。お世話しているのだから、物理的に近くなっているのでは?とも考えた。しかし、違っていた。
何処となくだけど視線も感じるうえに、表情もソラと話している時とは違う柔らかさがある。
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放課後、ソラとツバサの事が気になって急ぎ足で家に帰る2人。が、まだ距離的に半分という所で2人揃って息を切らしていた。
それもその筈、かなたは慣れない片腕だけで走っていつもより体に負担が掛かり、ましろはかなたの分の鞄を持っているのだ。
「か…片腕使えないだけで、こんなにシンドイなんて…」
「体力をもっと付けなくちゃだね!」
ましろはかなたの背中を叩き、深く深呼吸してからまたましろは走り出した。ソラと出逢うまでは、かなたの方が全然体力あったというのに、一体何処で差がついたのか。これも、ソラに感化された影響だろう。
しかし、彼女だけじゃない。
「ましろ!後でバテてもおんぶは出来ないよ!」
彼もまた、その内の1人なのだ。
そして、それから数十分の時間が経って家に帰ってみると、意外な光景が広がっていた。
「ツバサ君は、エルちゃんを助けるナイトですね!」
「ナイトは大袈裟だよ」
昨日までの言い争いからとは思えない程の、仲の良さを2人に見せつけており、エルのお世話をしている。かなたとましろは、2人して顔を見合わせて肩をすくめる。
学校に行っている間に、どういう心境の変化でここまで仲良くなったのか知りたいものだ。
この急激な仲の良さに、ましろは一瞬モヤっとした感情が胸の中で渦巻いた。
「恐ろしい程のコミュ力だね、ソラって」
「ちょっと妬けちゃうなぁー」
和やかな雰囲気が漂っているこの場。だけど、それをぶち壊す音が外から聴こえてきた。
全員が急いで外へ出て街の様子を見ると、UFOの形をしたランボーグが遥か上空から暴れていた。
カバトンの声も聞こえるが姿は見えない。恐らく、ランボーグの中に入って操縦しているのだろう。
「デタラメだ!航空力学的にありえない!」
「今、そんな事言ってる場合かな?」
「だね。2人共、ランボーグは任せたよ。エルちゃんは俺達と一緒にお留守番だよ」
「える!?」
ソラとましろは、ミラージュペンを取り出して、この場で変身を始める。
『スカイミラージュ!トーンコネクト!』
スカイトーンにあるつまみの部分をスライドさせて、スカイミラージュに装着させる。
「ひろがるチェンジ!SKY!」
「ひろがるチェンジ!PRISM!」
アイテムを装着後、その下にあるボタンを押して、内に秘める力を一気に解き放ち、2人の姿を変えさせる。
サイドテールだったソラの髪は、自分の身長と大差変わりない程にまでツインテールとして伸び、髪色も水色、毛先はピンク色に色変わりする。
ましろも長かった髪が更に伸び、それに伴って髪色もピンクへと変色する。
両足には白きロングブーツをそれぞれ着用。
「きらめきHOP!」
「さわやかSTEP!」
「はればれJUMP!」
更に掛け声と共に、2人はそれぞれの衣装に身を包み込んで新たな姿へと変える。
ソラは肩マントを大きく靡かせ、男の子にも負けないくらいのカッコよさと可愛さを兼ね備える。
ましろは、白とピンクがベースのワンピースドレスで可愛さがいつも以上に爆発した姿となる。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」
『Ready Go!ひろがるスカイ!プリキュア!』
初めて2人同時に変身する姿を見て、思わずかなたは笑みを溢した。嬉しくもあり、懐かしさも感じる。
と、そんな感心している場合ではない。変身して街の方へと飛び出した2人を見て、エルは後を追い掛けようとツバサの腕の中で暴れ出す。
「ツバサ、急いでエルちゃんを中に」
「こっちです」
ヨヨの案内で安全な家の中に入ろうとした時、突然ソラの部屋から虹色の舟が文字通り飛び出しては、エルを乗せてスカイとプリズムの後を追って街の方へと行ってしまった。
「いけない!」
手を伸ばしてももう遅い。危険だが、やはり追い掛けるべきと思ったその時、ヨヨのスマホから一本の電話が掛かる。画面を見れば、あげはからの連絡だった。
『ヨヨさん!こっちでランボーグが暴れてる!』
「丁度良かったわ。街に居るのね?実は、エルちゃんが1人で飛び出した行ったの」
『え!?エルちゃんが1人で!?私に任せて下さい!』
「俺も行きます!」
右腕を吊るしていた三角巾を投げ捨て、左手でスカイトーン ヘヴンを手にする。変身しようとした時、ヨヨのスマホからあげはが声が大きく聞こえた。
『変身って、かなたんダメだよ!あとちょっと腕が完治するのに、今無茶したら大変だよ!!』
「それなら、右腕を使わなければ良いだけだよ!」
『それ絶対無理ゲーだって!』
「エルちゃんを保護するだけだから!そしたらすぐ退がるから」
スカイトーンのつまみをスライドさせ、力を込めて変身しようとする。後の事は、その時に任せるしかない。
「ヘヴン!トーンコネクト!」
ツバサが瞬きをする間に、目の前でかなたはヘヴンに変身を遂げて戦闘服に身を包み込む。マントを翻して、呆気に取られているツバサに振り向いて一言、
「スカイとプリズムには内緒にお願い。ではヨヨ婆ちゃん、エルちゃんを連れ戻しに行ってきますね」
「気を付けて」
大きくジャンプしてヘヴンも、エルを追い掛けて街の方へと跳んで行く。その時、右腕の感触を軽く確かめる。変身すれば多少の動きなら平気という事が分かった。後は、それ以上動かさない様に気を付ける。
そしてヘヴンの後ろ姿を見送るツバサは、何か意を決して鳥の姿となった。気合いの雄叫び声と共に、エルの為に空へと舞い上がる。