かなた、ソラ、ましろの3人は、見事ランボーグを倒して、カバトンを追い返す事が出来た。
ソラが、プリキュアであるキュアスカイに変身にも出来たのだ。不運に見回されたが、全て悪かったっていう訳ではない。かなたとましろはソラに出逢えて、そのソラは赤ん坊を助ける事も出来た。全て万事解決したと嬉しい事なのだが、それと同じく少し困ってしまう事も起きてしまう。
ランボーグが暴れたせいで不安がる街の人達を、ソラが「安心して下さい!大丈夫ですよ!」などと大きな声で言う。その事も相まって目立ってしまった。いや、目立ち過ぎたとも言うべき。いつの間にか3人の周りには、数十人と人集りが出来ており、騒ぎの中心となっていた。
更には誰かの通報によるものか、遠くからはパトカーのサイレンまでもが聴こえて来る。
この場に留まっていては、警察の人達に話しを聞かされるのは避けられない。それに未だに人集りが無くならない。寧ろ、増え続けている始末だ。
かなたとましろは、強引にソラの背中を押してその場から逃げ出す様に去って行くのであった。
そんな街中での波瀾万丈なる直前で何とか回避し、現在はましろの家である虹ヶ丘家の玄関前で、ましろは扉に寄り掛かりながら項垂れていた。
「ましろさんって、この世界のプリンセスですか!?」
「他の家より、少し大きいだけだからそんな大層なものじゃないけど」
連れて来られたソラは、虹ヶ丘家の家の大きさに驚いてましろをお姫様と勘違いする程に驚いていた。かなたは「そんな事ないよ」と軽く説明して、これ以上変な誤解をされない様に補足していく。
そしてましろはというと、ソラを此処まで連れて来たその後の事を考えて唸っている。
「悩むのも分かるけど、先ず入ろうか」
かなたに背中を押されながら玄関ドアに手を掛けた時だった。同じタイミングで中から扉が開き、ましろは取り損ねる。扉を開けたのは、ましろのお婆さんであるヨヨだった。
「ましろさん、かなたさんおかえりなさい」
「ただいまです」
笑顔でいつも通りに会話するかなとヨヨだが、そんな事よりと思うましろは、焦る気持ちでヨヨに今日の出来事を話す。簡単に、それでいて詳しく話すましろなのだが、内容の殆どが擬音ばかり。なので、通じるか通じないかで言うと通じない。
見兼ねたかなたが、ちゃんと説明しようとすると時、ヨヨが手で静止させてソラの方へと視線を移す。
「大変だったわね。さぁ、お上がりなさい」
「えぇー!?あんな説明で良かったの!?私は無理!」
などと申しているが、そんな破茶滅茶で擬音ばかりの内容を話したのは自分…なんて言うのは止めようと思ったかなただった。
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リビングに4人が集まってソラにこの世界の事、かなたやましろ達には別の世界であるスカイランドと呼ばれる場所の説明をした。それと、スカイランドの事以外にも、ここまでの経緯なども全部話してくれた。
その説明で、昼間に起きた事から大雑把の状況は理解した。赤ん坊やカバトンの事についても少しばかりは。ただ、かなたとましろだけではなく、ソラも自分が住む世界とはまた別の世界がある事に驚きもあった。
それ以上の事は無いだろうと思ったが、やはり一番不思議に思っているのはプリキュアについてだ。成り行きとはいえソラは変身して戦ったのだ。あれ程の力を突然手に入れたら、誰でもその存在に疑問を覚えるのも無理は無い。
「何んて言えばいいのやら、謎が深まるものもあるね」
「特にプリキュアのこと。少し調べた方が良いかも」
「それも良いですが、私よりこの子をお家に帰してあげる方法を見つけるのが先です」
謎に包まれているプリキュアについて調べるかどうか話をしていたら、それよりも赤ん坊をどうやったら帰せるかを優先するとソラは言った。力を使った本人でさえ理解出来ていない得体の知れないものより、他人を優先させるソラの言動に少しばかり感心する。
忘れてはいなかったが、確かに赤ん坊の問題を先に解決する方が良いと思う。ソラの言う事は最もだ。
「約束したんです。ヒーローは泣いている子供も絶対に見捨てません!」
「え、えるー!」
良い事は確かに言っているのだが、その意思の強さに伴って声が大きなって、赤ん坊が驚いた泣いてしまった。大慌てでかなた達は泣き止んで貰おうと、アレやこれやと手を尽くすも悪化する一方で中々泣き止んではくれない。
「もしかしたら、お腹が空いているのかも?」
「それだ!」
泣き止まない原因が空腹だと判明し、満腹させようとするのだが肝心のミルクが無い。じゃあ、買って来るにしても多種多様と種類がある。赤ん坊の相手をした事の無いかなた達は、あたふたとして何をすれば良いか困惑していた。
「どどどどうしようかなた君!?」
「落ち着いてましろ!こんな時は深呼吸して冷静になって。ほら、ヒッヒッフー!」
「それラマーズ法だよ!赤ちゃん産むんじゃないんだから、かなた君こそ落ち着いて?」
落ち着くどころか、更に悪化してパニックはカオスへと成り変わる。その様子にヨヨは冷静に助け舟を出した。
「キッチンの棚、一番下に粉ミルクとマグがあるわ。ミルクは人肌でね」
赤ん坊はソラに任せ、かなたとましろはキッチンに向かってミルク作りに励む。かなたは、コップに熱湯を準備する。更にもう一つ冷まし湯を用意。ましろはマグに粉ミルクを入れ、かなたの準備を待っている。
冷まし湯が出来たところで、ましろはマグに熱湯と冷まし湯を均等に入れる。このやり方なら、時短で人肌まで緩くなる。円を描く様にしてマグを振り、かなたとましろは2人で一緒にマグに頬を当ててちゃんと人肌までの温度になっているか確認する。
「あの2人共、わざわざ2人して温度を測らなくても良いのでは?」
一瞬ポカンとしてから、2人して「確かに…」と言ってマグから頬を離して赤ん坊にミルクをあげる。普通の男女ならここで赤面の一つや二つするのだが、この2人に関しては何事もなかった、いつもの事みたいにしている様子。
出来たてのミルクをソラに渡して、赤ん坊が飲み易い様に丁寧に、そして手慣れた様子でソラはミルクを与える。
赤ん坊は水を得た魚の如く、満面の笑顔で飲み切った表情をする。
最後にソラは、赤ん坊の背中を優しく撫でてゲップをさせる。
「結構手慣れているね。スカイランドで誰か面倒を見ていたの?」
「はい、家に年の離れた弟が居るので慣れててるんです」
「ところでお婆ちゃん、どうして家に粉ミルクとマグなんてあるの?」
ましろの言う通り、赤ん坊なんて虹ヶ丘家には何処にも居ない。用意周到と言うには苦笑いしか出ない。予め知っていたと思えば簡単に解決になるが、家に連れ込んで初めて赤ん坊の存在を知ったのだ。それこそ超能力が使えないと有り得ない。
「オムツだってあるわよ」
少し訂正した方が良いかも知れない。用意周到で片付けるにはあまりにもおかしい。
「出会いに偶然はない。人と人が巡り会う事、それはいつだって必然、運命──物語の始まり」
ヨヨの言っている事は3人にはまだ分からなかった。まだまだ若いという事もある。けれど、いつかそれが分かる日が来るのかも知れない。ヨヨは密かにそう思っている。
「貴女の世界に戻る方法が見つかるまで、2階の空いている部屋を好きにお使いなさい」
「唐突ですね!?」
突然ヨヨからそう言い渡され、ソラは暫くこの虹ヶ丘家に厄介する事になった。かなたとましろは、2人して顔を見合わせてソラを2階へ連れて行き、空き部屋へと案内する。
部屋を案内した所で、ふと赤ん坊へ視線を向けると小さな寝息を立てて健やかにお休みしていた。ベビーベッドはこの家には無い。部屋はまだあるが、流石に1人で寝させる訳にはいかない。どうしたものかと考えながら案内した部屋を見渡していると、かなたとましろは部屋の隅にある物を見つける。それはゆりかごだ。
なんて言うか、2人はこれ以上考える事はやめて途端に笑顔になる。そのままソラへ顔を向けると、その様子にちょっと引いてしまったのか、口元をひくつかせる。
ゆりかごに赤ん坊を乗せて、ようやく落ち着く。窓の外を見れば夕陽が射していた。赤ん坊も疲れ果てて眠ってしまう訳だ。攫われて、この世界に放り出されて、カバトンに狙われて。
「あの、ましろさん。この部屋、本当に使わせてもらって良いんでしょうか?」
「良いんじゃあないかな?かなた君だって住んでいる訳だし」
「かなたさんも?」
不思議に思うのしょうがない。空園かなた、虹ヶ丘ましろと苗字が違う。何の訳があってかなたが虹ヶ丘にお世話になっているのか疑問。腹違いの兄妹なのか、それとも従兄妹という関係なのか。
「実は俺の両親が──」
「かなた君」
ソラに説明をしようとしていたのだが、ましろがかなたの口を手で押さえてこれ以上喋らせない様にした。かなたは苦い表情をしており、ましろも険しい表情でかなたを見ていた。何か込み入った事情があるのだとソラも理解した。
だから、これ以上は何も言わずに口を紡ぐのであった。
「色々ごめんなさい。ご迷惑にならない様、出来るだけ早く出て行きます。だから…」
「そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。ソラちゃんは真面目だなぁ」
先程から何から何まで分け与えてくれている分、居た堪れない気持ちになるのも納得だ。スカイランドでならともかく、ソラにとって此方の世界は初めてなものばかり。恩を返そうにも何をすれば良いのか分からないし、ましてや子供だからという理由で甘やかされてばかりではいけない。
だから今自分に出来る、それ相応のもので返さなければならない。
ソラはその場で片膝を着き、頭を深々と下げる形を取る。
「皆さんのご恩は決して忘れません。ですから私、ソラ・ハレワタールは、ご恩を返すべく先ずは貴方方を守る騎士となり、全身全霊忠義を尽くしてお守りします」
突然の行動と言動に2人は戸惑いを隠せずにいる。それもそうだ。同じ年齢の女の子がこんな事をされてしまったら、気遣いでしている側が逆に申し訳なくなる。ソラがそれを純粋な気持ちでやっているからこそ、余計に苦しい。
「私達、騎士とか要らないよ。ねぇ、かなた君?」
「寧ろ逆に付き合い難いって言うか、ねぇ?」
「え、じゃあどうすれば…?」
流石に騎士とか言う守り守られる関係性にならなかった事に安堵はするものの、ではその代わりとなる関係は何と答えるかと必要になる。咄嗟の事で考える余裕は無かったが、ましろはふとかなたの方を見て、ある関係性の単語を思い浮かべた。
「お友達から、お願いします!」
「──はい!!」
ましろからの申し出に、ソラは瞳を輝かせながら元気良く返事をして"友達"としてこれからも付き合って行く。
「そうだ!着替えは取り敢えず、私のジャージで良いかな?ちゃんとしたのは明日買いに行くとして、もし足りないものがあったら私隣の部屋に居るから。かなた君の部屋も近いから、何でも頼って──」
「ましろましろ」
かなたがましろの肩を叩いて、ベッドの方に指をさす。そこには、疲れ果ててベッドに横になって寝ているソラの姿があった。途中からましろの話は聞いていないのは分かっていたけど、話していた本人が気付いてないとなるとは思わなかった。
「秒速過ぎるよね?でも仕方ないよね、お休みソラちゃん」
「それじゃあ俺も、ちょっと部屋に戻るよ」
「ご飯までには下りて来る?」
「そんなに部屋には篭らないよ」
笑顔でソラの部屋を出て、軽快な足取りで自分の部屋に入る。部屋に入ってかなたはベッドで横になる……ではなく。じゃあカーテンで閉められている窓を開ける……のでもなく。では、かなたは何をしに自分の部屋に戻ったのか。
かなたは大切に保管してある鍵を取り出して、勉強机の引き出しにある鍵穴に挿し込む。ガチャリと施錠された鍵は開錠。引き出しを開けると、ペンダントが1つ無造作に仕舞い込まれていた。
銀色のチェーンに、ペンダントである飾りのチャームは、ソラがプリキュアに変身する時に使うスカイトーンに似たものだった。違いを挙げるとなると、それは色だった。このペンダントは淡く、綺麗な緑色をしている。
「スカイランドから来た、ソラ・ハレワタールと赤ん坊。別に良いか、何も言わなくても」
かなたはペンダントを丁寧に首に掛けて、ぶら下げる。だけど、ペンダントを隠す為に服の下に入れた。只のペンダントなら、隠す必要性は皆無だ。なのに服の下に入れて、誰にも見られない様にした。
彼が一体何を考えているのか。まだ誰も知らない。