「ましろさん!かなたさん!」
激しい白い閃光と轟音が辺り一体を埋め尽くした。プリキュアに変身したスカイなら、直撃したとしても大した怪我はない。だが、あの2人に関しては別だ。戦う力も無ければ、身を守る術を何も持っていない。生身の人間が食らってしまったのなら、その後の姿も容易に想像出来る。四股はバラバラに千切れ、体は肉片となり、その肉は焼き焦げるだろう。
折角出来た友達をこんな風に失ってしまうなんて、思いも寄らなかった。どうしようもない感情が込み上げようとした時、
「ソラちゃーん!」
ペットボトルロケットが着弾した場所から少し離れた所で、ましろはスカイに向かって大きく手を振っていた。様子を見る限りでは特に目立った外傷は無く、少し体が爆風によって汚れていた程度で済んでいる。
「あ、あり得ないのねん!どうやって…ッ!」
カバトンの背後、何者かの気配を察知して振り返ると誰かが立っていた。
その者は、全身緑色の戦闘服で包まれ、手足の先から心臓部目掛けて金色のラインがある。口元が隠れるくらい、少し大きめのスカーフもされている。右肩にはマントが片方だけ羽織られていて、キュアスカイとは左右が対照となっている。
「お前誰のねん!まさか、一緒に居たあの男か?」
その者、男性と思われる人物は小さく頭を横に振る。そして、ましろの少し後ろに指をさす。ましろは気になって振り返ると、下の階に降りる為の扉の近くで誰かが寄り掛かっていた。姿は見えないが、少しはみ出ているズボンや靴から見るにかなただと断定する。
「かなた君も無事だよソラちゃん!」
「第三者の介入。誰だが知らないが、どちらにしろ許さないのねん!」
カバトンは男性に襲い掛かって行くも、ひらりと避けられた挙句、足を出されて躓き、転んでしまう。なんとも言えぬ醜態を晒した。
かなたもましろも無事。それにスカイは安堵して、今度こそランボーグに止めをさしに行く。
「ヒーローガールスカイパンチ!」
怒りの想いも込めた浄化の拳。ランボーグに見事直撃し、自動販売機に注ぎ込まれた禍々しいエネルギーが浄化され、元の形に戻って戦いに幕を閉じた。
カバトンもランボーグが倒されたと見るや否や、この場から退散して行った。もう、大きな騒ぎが起きる事はない。
スカイはましろの元へ戻ると、それを追う様に謎の男性もスカイ達の目の間に降り立つ。
口元にあるスカーフが邪魔して、ちゃんと素顔を見れない。けれど、2人を見るその瞳だけはしっかりと見えている。背丈を見るからに、スカイやましろ達と変わらない。
「ましろさんとかなたさんを助けて頂き、ありがとうございます。失礼ながら、貴方もヒーローなのですか?もしヒーローでしたら、お名前を教えてくれませんか?」
男性は口元に指を1本添える。それは答えないという合図の現れ。スカイはしょんぼりと肩を落として凹む。男性は、クスリと笑った目元で落とした肩をポンポンと叩く。その後、ましろの目の前に立ち、スカイと同じ様に肩を叩き、律儀に下の階に続く扉の方へと歩き出した。
結局何だったのか分からずじまい。スカイは全身の力を抜き、変身を解く。
「あ、かなた君!」
少し遅れでかなたの存在に気付き、急いでかなたの側へと掛け急ぐと、もう既に起き上がって元気に歩いていた。
「やあ2人共、無事だった?」
「それはかなた君もだよ!心配したんだから!」
「ましろさんもですよ!大丈夫ですか?」
三すくみで心配している様子は微笑ましい。
「そうだましろ、さっき言い掛けたの」
「うん、思い出したよ!」
かなたとましろはソラの手を取り、そのまま引き摺る様にして何処かへと案内した。
////////
ソラを連れて2人が向かった場所は、コスメショップのPretty Holicと呼ばれる場所だった。入店してみると、女の子からしたら宝の山とも言える可愛く、お洒落なメイク道具が多種多様、選り取り見取り揃えられている。
が、かなたとましろが目当ての物はそれではない。
昨日ソラと出逢う前に買い物をしている途中、このPretty Holicでとある物を見つけた。2人はそれが目的で此処へ来た。
「良かったー。まだ売り切れてなかった!」
かなたは、棚にある目当ての手帳を手に取ってソラに手渡す。いきなり渡された手帳に、ソラは目をパチクリとさせて首を傾げていた。
「あの、これは?」
「これ、ヒーロー手帳の代わりにならないかな?」
「お金は俺とましろで出すから、これは俺達2人からのプレゼント」
和かに笑う2人にソラは慌てふためく。
「だ、ダメです!貰えません!」
ソラは手帳を返そうとするが、2人が受け取る事はない。まだ右も左も分からない、与えられてばかりで全然な私。どうしてここまでしてくれるのか、不思議でしかない。友達だから?それでもちょっと、と思う。
「どうして?」
「どうしてって…ねぇ、ましろ?」
「本物のヒーローを見ちゃったから、かな?」
自分が幼き時に思った事を、そのままましろが言ってソラは胸打つものを感じた。それなら受け取る以外にない。
ソラは2人に感謝しながら、新しいヒーロー手帳を手にしてこれから新しい物語を紡ぐのであった。