ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第6話 スカイランド人

「じゃあ2人共、お仕事頑張ってね!」

 

 リビングでタブレット端末で、ビデオ通話していたましろ。相手はましろの両親で、今は海外で仕事をしている為こうやって連絡を取って水入らずで談笑をしているのだ。

 今は家族の時間を終えて、タブレットの電源を切って一息吐き、軽く両頬を膨らませる。それに見計らって、かなたがましろの隣に座り、何故頬を膨らませているのか尋ねてみる。

 

「パパさんとママさんと喋れたのにどうしたの?ほれほれ」

 

「もう、かなた君も私の事子供扱いする。ふんだ!」

 

「俺が一体何をしたって言うんだ?」と僅かながら心に傷を負い、小さく悲しむ。

 席を立ったましろは、エルのお世話をしているソラの元へ歩いて行く。もう、する事も無いだろうと思っていていたが、何やら何一つ終わっていない様子だった。

 

 ミルクは飲まない、おしめが原因でクズっている様にも見えない。「じゃあ何が?」とソラが思っている。けれどましろは、何となくだけどその原因が分かった。

 

「パパとママに会いたいの?」

 

「えるぅ…」

 

 エルは小さく頷いて反応した。当然と言えば当然だ。赤ん坊でも、父親母親の姿が見当たらなければ会いたくもなる。それにエルはいっぱい甘えたい、甘やかしたい年齢なのだ。ミルクやおしめを替えるのではなく、親の愛情が1番欲しいに決まっている。

 

「せめて、お父さんとお母さんの顔だけでもみせれたらなぁ…」

 

 話を聞いていたかなたも輪に入り、エルの抱える問題に一緒に悩ませる。だが、肝心のスカイランドに戻る方法は未だに見つかっていない。戻れないにしろ、一目でも見られたら、これからの環境も違って来る。

 

 3人が頭を抱えて悩ませていると、ヨヨがある事を言ってきた。

 

「出来るわよ。両親の顔を見せてあげる方法があるの。コレを使えば、スカイランドと通信が出来るわ」

 

 ヨヨがエルの為に持って来たのは一枚の鏡。何の変哲もない鏡。通信が出来ると言われて3人は驚くものの、果たしてこんな鏡で異世界であるスカイランドと通信が出来てしまうのか。

 そもそもの話、粉ミルクやマグの時もそうだが「何でもある」と言っているが"何でもあり過ぎる"というのも変なのだ。

 

「これはミラーパッド。好きな場所を映せるの。スカイランドに居る、この子の両親ともお話出来るのよ」

 

 一体そんな便利アイテムを、何処で入手して何処から持って来たのか謎過ぎる。

 ヨヨは、3人に説明しながらミラーパッドを操作してどんな物か見せ付ける。鏡に付いているボタンを押す事でソラシド市を映し出し、鏡を軽く撫でる様に仕草をすると、まるで監視カメラの様に街中をあらゆる角度から映していた。

 

 ヨヨが言う様に、これなら確かに離れている場所に通信だって出来ても不思議ではない。

 ミラーパッドの機能に関心を持つソラを隣に、開いた口が塞がらない状態のかなたとましろはヨヨに問い詰める。

 

「ヨヨ婆さんコレ、一体何処で取って来たの?」

 

「それよりも、お婆ちゃんは一体何者なの?」

 

「それはね──私はスカイランド人なの」

 

「なるほど」と2人は納得した様に頷くも、冷静になって考えてみると冷や汗が急に溢れ出る。スカイランド人となると、ソラやエルと同じスカイランド出身の人。今まで一緒に暮らしていたが、そんな事は一度も口にしていなかった為初耳である。

 どういう意図で、このソラシド市にやって来たのか。

 

「スカイランドで博学者だった私は、50年前この世界の事を調べにやって来たの」

 

「えぇ、本当にヨヨ婆さんがスカイランド人ですか?」

 

「嘘だと思うでしょうけど、今なら信じてもらえるかしら?」

 

 嘘とは思えない。何故なら、ソラとエルの存在がその証明を物語っているから。スカイランドという異世界は本当にあり、ヨヨもソラやエルと同じスカイランド出身も本当何だと。

 

「ヨヨさんもしかして、私とエルちゃんがスカイランドに戻る方法も知っているんですか?」

 

「えぇ、ちょっと時間が必要になるけど私に任せておいて」

 

 当たり前の様にそう答えてくれたヨヨだが、最初からそう言ってくれたら、ソラの肩の荷も少しは軽くなっていたのではと思ったかなた。訳合って黙っていたのかも知れないが、知っていたならばもう少し早い段階で言ってくれた助かった。

 

 なんて、頭の中でモヤモヤするかなただが、スカイランドに帰れる手段と方法があると言うのなら、今はそれを素直に喜ぶのが良いというもの。

 

「ですが先ずは、寂しそうなエルちゃんの為、スカイランドと通信するのが最優先です!」

 

 帰れるという喜びも良いが、今は目の前にある問題を片付けるのが先だとソラは言う。何事も結果だけではなく、そこまでに行き着く為の過程も必要だ。エルの機嫌を一刻も早く直して貰って、笑顔で両親に再会させる。これが一番の理想だ。

 

 ヨヨは本棚から1冊の本を取り出して、あるページを見開いて3人に見せた。

 

「通信をスカイランドまで届けるには、沢山のエネルギーが必要なの。エネルギー源はこの宝石よ」

 

 見せられたページには、スカイランドの文字で書かれており、ヨヨの言うエネルギー源となる宝石も絵として載っていた。青い宝石で、この地球で言うサファイアみたに綺麗な宝石。

 

「スカイジュエル、この世界にもあるんですね」

 

「スカイジュエルって?」

 

「スカイランドにある、様々なエネルギーになる鉱物です」

 

「確かに、()()()()()()()()()だな。だけど見た事も無いから、結構探すのに苦労するんじゃないのか?」

 

 スカイランドでは当たり前の様にあるみたいだが、此処は地球なのだ。地球にあるとしても、かなたとましろはスカイジュエルなんて物は地球では見た事がない。あったとしても、県を跨ぐか、もしくは世界に進出でもしないと見つからない代物かも知れない。

 最悪、地球にはあるが、それが何処にあるか分かりませんという事もある。

 

「そこまで苦労はしないわ。なんせ、家の裏山にあると思うから」

 

「い、意外と近場でしたね」

 

「そ、それそれでラッキーなんじゃないかな?」

 

 ましろの言う通りソラシド市を出て、様々な場所を冒険するという事にならなくて良かったとつくづく思う。

 

「ともあれ、裏山に行くなら準備が必要だね。ましろ」

 

「うん!ソラちゃん、ちょっと待ってて」

 

 かなたとましろが準備する間、ソラは座して待っておこうと思っていたが、エルが大きな声を出して泣いていた。

 どうして泣いているのか、ソラにはすぐに分かった。

 

「エルちゃんも行きましょうか」

 

 機嫌の悪いまま家に置いておく訳にもいかない。それに、一緒に外に出る機会があればドンドン外に出て、この外の世界を知ってもらうチャンスにもなる。エルの成長にも繋がり、もしかしたら外に出る事で機嫌も少しは良くなるかもと。

 

 大事だから、可愛いからといって閉じ込めたりするのは逆効果。

 

「それなら、エルちゃんも準備をしましょうか」

 

「あぁ、それなら──」

 

 ヨヨが席を外すと、今度はスリングを取り出して来てそれをソラに着させる。後は、エルを入れ込ませたら完成。これなら、外に出ても何不自由なく動ける。

 本当にヨヨは何でも持っている。

 

「準備出来たよ…ってあれ?」

 

「もしかしてエルちゃんも行くの?」

 

 準備し終えた2人が帰って来ると、エルも一緒に行く事になった事を触れる。別にエルが一緒に付いて来ても何も問題は無い。2人はそんなエルを、優しく受け入れて一緒に裏山に出掛ける事を嬉しく思う。

 

 

 ////////

 

 

 完全準備は出来、玄関の扉に手を掛けた所でヨヨに呼び止められてしまった。

 

「ちょっと良いかな、かなたさん。

 

「あ、はい。2人共、外で待っててくれる?」

 

 狭い玄関で長居はさせるものではないと思い、呼び止められたかなただけがその場に残り、2人はエルを連れて外で待つ事にした。

 

 玄関の扉が閉まり、ソラとましろが外に出た事を確認したところでヨヨは口を開いた。それも、今までにない真剣な表情で。

 

「かなたさん、どうして呼び止めたのか分かります?」

 

「忘れ物ですか?」

 

「何も知らない振りは、あまり良くないと思うの。だから単刀直入に言うわ、かなたさんが隠している事を」

 

 隠し事とは何かと思うかなたに、ヨヨはとても面白い事を口にする。

 

「かなたさん、私やソラさんと同じ────スカイランド人よね?」

 

「…どうして、そう思うのですか?」

 

「前々から目を光らせてはいたの。だけどね、スカイジュエルの話しをしている最中で、かなたさんがスカイランド人という事を決定づける事を言ったから、つい」

 

 別におかしな事は言っていないつもりだ。何気ない会話をしていた。その中で、かなたがスカイランド人と証明する事を言ったとヨヨは言う。では何と言ったのか。

 

「『これがあれば大丈夫』なんて言っていたけれど、何故あたかも知っている風な喋り方なの?普通『これがあれば大丈夫()()』と言うのではないかしら?」

 

「それって、言葉の揚げ足取りじゃないですか。それだけでは、俺がスカイランド人って言うには無理がありますが?」

 

「ミラーパッドで見ていましたよ。その首に下げているペンダントが、ソラさんと持っている物と同じだと言う事も」

 

 かなたが首から下げているペンダントといえば、誰にも見られない様に服の下に隠していた物。それを、ソラと同じ物と当てた。

 

 流石にそこまで言われて観念したのか、かなたはペンダントを服の下から出しては、少し口角を上げて笑っていた。

 

「ミラーパッド、やっぱり侮れないアイテムだ。ミラーパッドで見ていたと言う事は、俺が()()()()()()()()()事も分かっているんですよね?」

 

「えぇ、全部見せてもらいましたよ。自分が、スカイランド人って認めたというので良いかしら?」

 

「それで構いません。ですが、覗き見するのは如何なものかと。折角隠していたのに。あ、ヨヨ婆さんがスカイランド人というのは流石にビックリしましたよ、ハハ」

 

 かなたは確かに言った。そして認めた。自分が、ソラやエル、ヨヨと同じくスカイランド出身のスカイランド人という事を。かなたもまた、この地球とは違う異世界の場所からこの地に降り立った者。

 

「だけど俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それはどういう意味なのだろうか。スカイランド人なら、スカイランド人ではないのか?彼は言っている事、彼が考えている事が読めない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だけど今は、それはソラにも同じ事が言える。

もう少し、彼の内側を知る必要がある。

 

「…何故、隠していたのかしら?」

 

「それ、貴女が言える立場ではないでしょう?今日の今日まで、ましろに何も言わず一緒に過ごして来た貴女が」

 

「特別言う事ではなかったのよ」

 

「俺も同じです」

 

 そうだ。自分が異世界である、スカイランドからやって来たスカイランド人という事を言ったとしても、ましろからすれば冗談を言っている様にしか聞こえない。ましてやソラとエルに会う前となると、それこそ子供の空想話しで済まされるだけだ。

 言ってしまっても何も変わらない。だから言わなかった。だけど、言わないといけない事でもなかった。

 

 故に秘密にしていた。

 

「けれど私は言いました。なら、かなたさんも言ってはどうでしょうか?隠す意味も無いのでしたら、それは言っても良いのでは?」

 

()()駄目です」

 

 特別隠す意味が無いのなら、ヨヨの言う通り言っても何も起きない。なのに、自分の正体を明かす事を隠している。明らかに矛盾している。

 ヨヨはそれが気になり過ぎている。だからつい、大きく踏み込んでしまう。

 

「それは何故?」

 

「それ以上の詮索はお勧めしません。ましろの事を本当に想っているのなら尚更です」

 

 ましろの名を出されては、ヨヨは顎を引いて黙るしかなかった。彼の背景が全く見えない。何を考えているのか、ましろと何の関係があるのか。

 

「ですが、これだけはハッキリと言えます。俺はましろとソラの味方だと」

 

 ペンダントを服の下に戻して、少し待たせ過ぎているソラとましろの所に行くべく、玄関の扉に手を掛ける。外に出ようとする時、かなたは振り返って一言呟く。

 

「此処でのお話しは、お互いに秘密という事でお願いします」

 

 ゆっくりと出て行き、かなたはソラ達と裏山に探索に行くのであった。




多分また3話構成だと思います。思ってた以上に書き過ぎました。
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