ひろがるスカイ!プリキュア 英雄綺譚   作:シロX

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第9話 ヒーローの出番だよ!

 懸命に校舎内を走り続け、取り敢えず屋上まで逃げる事だけを考える。

 後ろを振り返れば、目視できる距離にランボーグが迫って来ている。距離的に、かなた達が先に屋上に着くのが早いが、その後の事を考えると不安が残る。

 

「俺が時間を稼ぐ!あげは姉ちゃんはましろ達をお願い!」

 

「何言ってるの?かなたんも逃げなきゃ!」

 

「後で追い付けば何も問題無い筈だよ!」

 

「かなた君待って!!」

 

 ましろやあげはの静止する声を無視して、かなたは1人でランボーグに立ち向かって行く。ましろもその後を追い掛けようとするが、あげはが腕を掴んでその行動を止めた。

 

「ダメだよましろん!行こう!」

 

 半ば強引に引き摺りながら、ましろを屋上へと走らせる。あげはもましろと同じ気持ちだが、それを優先してしまえば危険が高まり、全員が大変な目に遭ってしまう。

 

 仕方ないが、大人の対応で先に進む事をあげはは選んだ。

 

「今なら誰もいない!変身するなら今が…ッ!」

 

 首から下げるスカイトーンを手にして、かなたは変身する体勢に入ろうとしたのだが、視界の端には、まだ避難が終わっていない先生や生徒が残っているのを見てしまった。

 

 逃げる事で精一杯の皆だが、万が一の場合がある。人目を気にしているかなたにとって、その僅かでさえも躊躇して、最後には変身する事を拒んだ。

 

 変身出来る事を前提にましろ達を逃したのだが、これなら共に行動した方がまだマシだった。過ぎた事をいつまでも考えている暇など無い。

 

 とにかく、自分が言った通り時間を稼ぐ他無い。どちらにしろ、他の人が避難が終われば変身を自由に出来る。

 

「こっちだ!」

 

 かなたは、そこら辺にある道具を投げ付けたり、大きな声を出して注意を惹きつける。

 ランボーグはかなたの姿を見ては、走って来る。

 狙い通りと、かなたも屋上に続く階段とは別の方向へ走る準備をするのだが、屋上へと続く階段を前にすると足を止めた。

 

 そして、ゆっくりとその階段を上り始めた。

 

「それじゃあ、意味無いよ!」

 

 勘付かれたランボーグを急いで引き止める為に、走り出し、階段下から飛び蹴りを食らわす。

 

 前に転んで、こちらにまた視線を移してくれた。が、前のめりになりながらもランボーグは進む。

 

 周りに人の目が無くなった。早いところ片付けて、ましろ達と合流。その後はソラの救出。今すべき事は変身だ。

 

「ヘヴン!コネクト!」

 

 風に包まれ、かなたはヘヴンに変身し、マントを靡かせながらランボーグの脚を掴む。

 

 このまま引き摺り回せば良い。そうしようとした時、ランボーグの僅かな抵抗が始まった。

 

 ランボーグがもう片足で、ヘヴンを蹴り飛ばそうとする。しかしヘヴンは、それを全て避けるのだが思わず掴んでいた手を離してしまった。

 自由を手にしたランボーグは、キノコの胞子を撒き散らして目眩しさせる。

 

 咳き込みながらも、ヘヴンは胞子を振り払って詰め寄ろうとしたのだが、そこにはもうランボーグの姿は無かった。動きが早い。

 

 時間稼ぎにはなりはしたが、まだまだ油断は出来ない。ランボーグを追い掛けようとして階段を上ろうとした、その時だった。

 

 校舎の中からでも分かる程の、眩い閃光が屋上から発せられていた。急いで窓を開いて上を見上げると、ましろの目の前にソラと同じミラージュペンがあった。

 

 それを見たヘヴンは、脳の奥深くにある記憶が引き出されて、思い出される。そして、背筋がゾッとする程の恐怖を感じた。

 

 ミラージュペンが現れたという事は、ましろもプリキュアになれるという証明であり、証だ。

 

 ──それだけは許さない!

 

 ヘヴンはランボーグの事など無視して、窓から身を乗り出して壁を伝い、一気に屋上へと辿り着いた。

 

 様子を見に来たカバトンと、ソラを捕らえているランボーグも近くにいるが、ヘヴンはそんなの気にしていられない。

 

「それを手に取ってはダメだ!」

 

 ミラージュペンを手に取ろうとする直前で、ヘヴンに言われその手を止めた。

 突然現れたヘヴンにも驚きだが、それでもましろはミラージュペンを取ろうと、

 

「震えている」

 

 ビクりとして、今度こそましろはその手を止めた。図星だ。ヘヴンが言った通り、確かにミラージュペンを取ろうとするましろの手は震えている。

 

 この状況、カバトンはニヤリと笑い、ヘヴンに便乗して言葉が投げ掛けられる。

 

「そうだ!そこの奴と言う通り、脇役がプリキュアになれるもんか!」

 

「下からランボーグも迫って来ている。ましろが変身せずとも、俺がソラを助ける、ランボーグを倒してみせる」

 

「そう、だよね。私なんかが…」

 

 剣幕な表情でましろを説得するヘヴン。だが、その瞳は優しさで満ちていた。危険な所に、ましろを向かわせないという優しさの眼差し。

 

「だからましろ、後は全部俺に任せて君は──」

 

「ちょっと良いかな?」

 

 ヘヴンとましろの会話に、蚊帳の外だったあげはが割って入った。ヘヴンも「ちょっと」と言うならと思い、少し身を引いて、ましろとあげはが会話をする時間をあげる事にする。

 

「それを手に取ったらどうなるのか、プリキュアって言うのが何なのか私には分からない。でも、そんなのどうだっていい。あの日、私はましろんに教わったよ」

 

 あげはが語るのは、ソラシド市を離れる引っ越しをする幼き日のこと。ましろ達と離れるのが嫌で家を飛び出し、あげはが駄々を捏ねてしまった。

 

 ましろとかなたは、苦労の末にあげはを土手で発見したが、その場で泣くあげはは動こうとはしなかった。

 

 離れるのが嫌で、年下のましろ達の前で情けない姿を晒してまで反抗するその姿。そんな少女にましろは、一緒に帰ろうと説得をする。

 ただ今帰れば、その先に待つのは別れ。次、いつ会えるか分からない別れが待っている。

 

 自分は泣いている。説得しているましろは泣いてなどいない。そんな差が、自分の事をちゃんと思っていない事に腹を立てたあげは。しかしいざ、説得をするましろの方へ向けば自分と同じ様に泣いていた。

 

 スカートの裾を掴み、溢れ出る涙の雫を垂らしながら、それでも声には出さない様に、あげはを安心させる為に、自分が泣いてしまったら余計にあげはを悲しませてしまうから。だからましろは笑顔でいる。

 

 他人を思いやる優しさを、この時初めてあげはは知った。

 

「優しいって言うのは、強いことなんだって。『私なんか』?そんな事言うな!そんな事誰にも言わせるな!ましろんには、優しさって言う誰にも負けない強い力があるんだよ!」

 

 優しいなんて事は、誰にでも出来るし言える。だけど全員が全員ではない。

 相手の心に触れ、寄り添え、思ってくれる。一見簡単そうに見えて、実の所それを体現出来る人は多くない。だけどましろは、それを体現出来る芯が優しく、そして強い子なのだ。

 

 あげはの言葉で勇気を貰い、ミラージュペンを手に取る。

 

「ぷりきゅあー!」

 

 ソラの時と同じ光がましろへと放たれた。その光をましろが受け止め、スカイトーン プリズムを手にする。

 

「本当にプリキュアに変身するのか?」

 

「するよ。貴方の言う駄目の意味が分からないけど、友達を助けたいから」

 

 ヘヴンはそっとその場から離れた。

 

「ヒーローの出番だよ!」

 

 ミラージュペンが、ステッキであるスカイミラージュへと変化し、変身に必要なもう一つのアイテムであるスカイトーン プリズムを構える。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!」

 

 スカイトーン プリズムにあるつまみの部分をスライドさせて、スカイミラージュ装着させる。

 

「ひろがるチェンジ!プリズム!」

 

 アイテムを装着後、その下にあるボタンを押して、内に秘める力を一気に解き放ち、ましろの姿を変えさせる。

 

 長かった髪が更に伸び、それに伴って髪色もピンクへと変色する。

 両足には白きロングブーツをそれぞれ着用。

 

「きらめきHOP!」

 

 掛け声と共に、頭部に白と水色のリボンの装飾を着飾り、キュアスカイとは対照的なイアリングも施される。

 

「さわやかSTEP!」

 

 衣装は白とピンクをベースとしたワンピースドレスに、黄色のレースが付いた白とピンクの模様で紺色を背景に黄色の光が描かれた混合したスカートを身に纏う。

 

「はればれJUMP!」

 

 両手は白いロンググローブ、最後に背中にウエストリボンが着飾る。

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

 新たに誕生した2人目のプリキュア──キュアプリズム。

 カバトンからすれば、完全にイレギュラー問題。

 

 校舎に侵入して来たランボーグも、同時に屋上の階段を突き破ってとうとう追い付いて来た。

 追い付いて来たのなら倒すのみ。ヘヴンが構え様とした時、それより早くもプリズムが前に出た。

 

 意気揚々で突っ込んで行き、大きく一歩踏み混んで拳を放とうとした。しかし、踏み出して勢い付いてしまった事に、力を制御出来ずランボーグの隣を通り過ぎて遠くにあるビルまで跳んで行ってしまった。

 

 何か叫んでいるが、遠くに跳んで行ってしまってヘヴンには聞き取れなかった。

 

「プリズム!?」

 

 何ともデジャヴな光景だ。キュアスカイの初戦闘の時も似た様な出来事があった。

 それを尻目に、ランボーグはエルを奪い取ろうとあげはを狙う。

 

 ヘヴンは素早く動き、ランボーグを天高く蹴り上げた。

 

「プリズム!来い!」

 

 ヘヴンが叫ぶと、それに応える様にプリズムは目の前にあるビルの壁に足を着いて跳ぶ。蹴った勢いでそのまま、学校まで戻って来たのと同時に、蹴り上げれたランボーグにも攻撃して吹っ飛ばす。

 

「させないよ!」

 

「プリズムついて来い!」

 

 ヘヴンはカバトンに接近し、フェイントを織り交ぜて拳一撃で吹っ飛ばして、ソラのミラージュペンを取り戻した。

 

「ソラちゃん!」

 

 ソラを捕らえているランボーグ相手にプリズムは臆する事なく、両手から光のエネルギー弾を放って攻撃を開始する。

 何十発というエネルギー弾が命中し、耐え切れなくなったランボーグはソラを拘束する触手の力を緩めてしまう。

 

 好機と見たソラは、体を動かしすり抜けて、ミラージュペンを取り返したヘヴンの元へ大きくジャンプした。

 ヘヴンはソラを空中で受け止めて、地面へと下ろす。

 

「ありがとうございます!」

 

「次は盗られないように」

 

「はい!では──ヒーローの出番です!」

 

 ヘヴンからミラージュペンを受け取り、ソラは変身をする。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

 キュアスカイになった事で形勢逆転。2体になってしまったランボーグ相手だが、プリズムの参戦。背中合わせで内1体をプリズムが引き受け、怒涛のラッシュで攻め込んで行く。

 

 勢い付いたプリキュア達は止まらない。

 

「ヒーローガールスカイパンチ!」

 

 蒼き浄化の拳がランボーグの腹に炸裂し、浄化を果たした。

 スカイに続き、追撃を仕掛けるプリズムも間髪入れず浄化技の態勢に入る。

 

「ヒーローガールプリズムショット!」

 

 両手いっぱいに蓄えられた、巨大なピンク色のエネルギー弾。それをランボーグ目掛けて放ち、浄化をするのであった。

 

 あっという間に、2体のランボーグを浄化させたのは流石と言うべき。

 カバトンはランボーグが全滅した事に、予想外の出来事で退散せざる終えなかった。

 

 スカイとプリズムは変身を解くのと同時に、あげはもまた、2人の元へと駆け寄るのだった。

 

 ヘヴンは、そんな3人の光景を離れた場所から傍観していた。ましろがキュアプリズムに、プリキュアに変身した事を喜ばしいと思える場面なのだが、ヘヴンはそう簡単には受け入れなれなかった。

 

「まだだ。回避は出来なかったが、それでも俺は諦めない」

 

 ヘヴンも変身を解き、3人の元へ帰るのだった。

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