幼馴染のバンビちゃんから逃げたらえらい事になったんじゃが?   作:しっとりバンビちゃん

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 ––––ねぇB・B。僕にもしもの事があったら、僕を忘れて欲しいんだ。

 ––––ねぇA・A。アンタにもしもの事があったら、あたしも一緒に逝ってあげる。だからそんな事言わないで。



#1 兼業死神

 

 

 –––––夢を見ている。幼い頃の苦い記憶。

 

 血溜まりに沈み、浅い呼吸で死に損なった自分と、その側で泣き喚きながら俺の身体を揺さぶるB・B。

 

 故郷に居た頃に、事故で厳重に管理されていた虚への撒き餌が発動してしまい、その際に寄せられてきた大虚(メノス・グランデ)相手に彼女を庇って()()()()()後の場面だ。この時の大虚の種類はなんだったかもう思い出せない。

 

 『……B・B。お願いが……あるんだ……』

 

 身体の半身が虚の霊力に蝕まれ、魂魄の崩壊が間近に迫っている事を自覚し、縋るように光を失いつつある目で彼女を見つめている。

 

 『……僕を……ころして……』

 

 

 

 –––––絞り出したようなその言葉を聞いたと同時に意識が浮上する。

 

 ぐらぐらと揺れる思考と、見慣れない部屋に一瞬理解が遅れるも、その思考に追従するかのようにゆっくりと直近の記憶が蘇る。

 

 少し前に虚圏で出会った死神––藍染惣右介に俺とバンビちゃんは屈し、その手先となった。この時の戦いは死力を尽くしたものの、格の違いを分からされた為、従わざるを得なかった。

 

 その上で『崩玉』なるもので俺達は()()()()()()()()として魂魄を弄られ、その歪な存在を『浦原』と言う男の人体実験の被害者とし、保護と言う名目で尸魂界(ソウルソサエティ)へ連れ帰られ––––現在は十二番隊と呼ばれる死神達の部隊の一つで精密検査をされている。

 

 奇異な容姿をした『涅マユリ』と呼ばれる男に魂魄の隅々まで調べ尽くされたのだろう、身体や魂魄に酷い倦怠感と違和感を感じる。途中から検査称して人体実験スレスレの事をやり始めたので、バンビちゃんの分を可能な限り負担したのが原因だと思う。

 

 「おや、もう■■めたのかネ? 流石は■■■■の実験動物だ。もっと色々調■たかったんだが、キミ達の『保■者』の目が厳しくてネ。今日はもう■■■いいよ』

 

 ナニをされたのかは分からない、しかしそれを考える余裕が無いのか、耳に入ってくる音に時折ノイズが走り、聞き取り辛い。立ち上がる事さえ億劫になっている。

 

 仕方ないので乱装天傀で無理矢理自分の身体を傀儡にしたものの、崩玉による強制死神化による影響か、自身の特異性の所為か、歩くのがやっとだった。

 

「……大丈夫A・A? 本当に平気? あたしの事分かる?」

 

 ある程度の負担を請け負った甲斐があったのか、余裕のあるバンビちゃんを見て安堵すると共に、緊張の糸が切れて乱装天傀の制御を乱してその場に崩れ落ちる。

 

 慌てて俺を抱えたバンビちゃんは泣きそうな顔で俺を心配しつつ––––俺にしか聞こえない声量で『アイツ殺す』と殺意を滾らせ始めた。

 

 藍染惣右介の尖兵として彼に降った以上、初手から問題を起こすのは宜しくない。ただでさえ俺達は滅却師としての能力も持っている、勢力的に最早死神に対抗できる存在では無いにしろ、周りの目を気にしなければならない立場である事に変わりはない。

 

 だから俺は緩慢な動きで腕を動かし、バンビちゃんの頭を撫でて落ち着かせる。

 

「大丈夫だよB・B、君が無事なら……それで大丈夫」

 

 

 思わず子供の頃の呼び方で彼女を呼んでしまったが、それで落ち着いたのか、普段の勝ち気な様子でぶつぶつと涅マユリへの文句を垂れ流すバンビちゃんに胸を撫で下ろす。

 

 ただ、これからの立ち回りを考えると途端にその安堵は吹き飛び、検査に託けた人体実験による物とは別物の頭痛がし始める。

 

 先ず俺達二人の立ち位置を整理すると、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の脱走兵であり、尸魂界を裏切る算段をしている藍染惣右介の手駒の一つ。

 

 この藍染と言う男の脅威度は間違いなくかの帝国の特記戦力として数えられる。この男の斬魄刀の能力が()()()()()()()()()()()()()()()と言う直接的な被害を受けない能力だとしても、それ以上に彼の実力自体が高すぎる。

 

 巨悪の手先にはなりたくない。けれど俺達は滅却師の国からの脱走兵。何時陛下の『粛正』が起きるかも分からず、しかし目先の命を繋ぐ為には底知れない男の手先になるしか無く。

 

 墜落した先が虚圏だったのが––––いや、たらればになる事を言っても仕方ない。頭を切り替えてコレからの事を考えないと…………。

 

 そう、自身の立ち回りを頭の中で計算していると––––人当たりの良い柔和な笑顔を浮かべた藍染が迎えに来た。

 

 「とりあえず検査受けて来たわよ。んでコレからどうすれば良いのよ?」

 

 「先ずは君達の保護観察役として僕が後継人となった。暫くは流魂街に用意した家に二人で住んで貰うが、その間に死神としての基礎知識と能力を揃えるんだ」

 

 「……真央霊術院の特進階級に入れと?」

 

 「その通り」

 

 

 真央霊術院。最強の死神––––山本元柳斎重國によって設立された死神の養成所。知識としては知っていたけれど、まさかそこの上位に入る事を強いられる事になるとは思わなかった。

 

 目を瞑って深く思考を回す。霊術院へ入るのは構わない、元々俺は死神と滅却師の共生を目指していた人間だし、考えようによっては同情を買える『設定』をくれたのだから、それを利用して死神達の正義を理解する事が出来るようになったと見れば寧ろ願ったりだろう。

 

 だが、ここで上位の成績を出して『優秀』の評価を貰った場合、程度によっては保護観察役と言う肩書きを持つ藍染の手綱から離れる事にもなり得るのでは無いだろうか?

 

 その可能性を彼ほどの頭脳を持つ者が考えていないとは…………いや、巨人の視点から物を見る事は蟻には出来ない。今此処で下手な結論を出す必要は無い、必要な事は自分の体力回復とバンビちゃんとの同棲で周りへ被害を出さない様にする事に意識を割く必要がある。

 

 

 …………ほんと、とんでもない事になったなぁ。





 尚この後、ヨン様による『死神教育』が二人には施されます。時系列はヨン様制の崩玉が出来た少し後くらい。
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