ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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勢いと妄想で書いています、でも書くのは凄く楽しいです。




10.怪我をした後のほうが全体的にパフォーマンスがあがることだってあるかもしれない。(後編

 医務室にたどり着いて、保険医の手伝いで運動靴を切り裂いて脱がせた所、彼女の爪は赤黒く変色し、根本まで裂けているのが解った。

 

 不幸中の幸いと言っていいのか、骨折は見られなかった。

 

 トレーナー不在の自主練中の事故だった

 

消毒と爪の補強とテーピングの処置を終え、連絡を受け駆けつけた彼女のトレーナーと入れ代わりに医務室を出た。

ドアを出ると、先程運んでくれた金髪のウマ娘が部屋の前にいた。

 

「ジョーダンは大丈夫ですか!?」

 

「幸い、骨折とかは見られないようでしたが、爪の方が何とも…ただ復帰は可能だと思いますがあの割れ方だと、素人目でも、かなり時間がかかるかと」

 

「そうですか・・・アイツ皐月賞目指して頑張ってたのに。」

 

 流の頭の中では、怪我への心配と言うよりは、ケガから最短で復帰させるかの方へ切り替わっていた。 

 

 俺は別にトレーナーではないし、最終的には彼女とトレーナーが決めることだから関係ないと言えば関係ない。

 

だが、理不尽に絶たれた夢は呪いになることを俺は知っている、後悔はさせたくない。

 

 爪だけであるなら、シューズにおけるインソールやアウトソールさらに此処は専門外だが蹄鉄もどうにかする必要がある。

 

 シューズやソールだけでなく足の指と足の甲自体の柔軟性を高めて、衝撃を分散させ、股関節の可動域をできる限りストレッチで上げていく、その上で体幹を鍛え上げ上半身のブレを減らして少しでも爪への負担を減らし、血流の促進、足裏の強化を狙えば爪の回復ももう少し促せるかもしれない。

 

 走る練習に関しては、PNFストレッチを用いてさらに可動域をあげて柔軟性を高めれば・・・その上でパフォーマンスも上げる必要がある。

 

 同時に走れない時のフィジカルトレーニングプランをどうするかだが…軽重量の持久系ウェイトトレーニングと、近々導入予定の初動負荷トレーニングを用いていけば・・・・。

 

「彼女と彼女のトレーナー次第だが俺が協力して回復の精度を高めれば間に合わせることはギリギリだが不可能じゃねえか」

 

 聞こえるか聞こえないかわからない小さな声で流はボソリとつぶやいた

 

さあ、出てきたらタイミングを見て、話を持ちかけてみるか

 

 先程医務室へ運んだジョーダンと呼ばれていたウマ娘とそのトレーナーが医務室から出てきた。

 

「貴方がジョーダンに気づいてくれたんですね、気付いて医務室まで付き添ってくれたんですね、有難うございます。」

 

黒縁メガネのスーツの知的なトレーナーさんはこっちに頭を下げてきた

 

「いえ、運んでくれたのはそちらの金髪のウマ娘さんです、お礼なら彼女に言ってあげて下さい。」

 

トレーナーさんは側に居た金髪のウマ娘にも同じように頭を下げた。

 

「シチーさんも本当にありがとう、おかげで大事に至らずにすみました。」

 

 シチーというとマシンの使用予約を入れて来るが遅れてくる事も多いが、どんなに遅れても必ずトレーニングをやっていくあの娘か、それもあってか彼女が使う予定のあるマシンはだいたい一台を整備中ということにしておき、来る頃に開けていた。

 

 真面目に努力する相手には報いたくなるものだ、おっと空気読めてねえな。

 

「アタシはいいですから、それよりもジョーダンを」

 

そのジョーダンというウマ娘のほうが気になる、その眼はダメだ本当にダメだ、だけどその眼は嫌いじゃない。

 

「トレーナー、あたし皐月賞に出るから。」

 

「でも、ジョーダン!その足じゃあ!」

 

「シチーは黙ってて!走れないんなら…あたし引退するから!」

 

今にも泣き出しそうな顔をしながら、ジョーダンと呼ばれているウマ娘は哀願する

 

「一生懸命頑張ってきたのに、一生に一度の機会なのにまた爪のせいで諦めるなんてっ…!」

 

トレーナーは悩んでると言うか考え込んでんなあ、何処まで行っても博打でしかないことだから尚更だ。

 

諦めていないのはトレーナーも一緒だろう、ちょっとひと押ししてやるために場の空気をぶっ壊そう。

 

唾を吐き捨てるような音と共にジョーダンとトレーナーの間で乾いたプラスチックが落ちるような音がした。

 

二人の足元には血で真っ赤に染まった、生爪が転がっていた。

 

流が自らの左手から人差し指から薬指にかけて爪を歯で引き剥がしてから噛みちぎってジョーダンとトレーナーの足元に吐き捨てたのだ。

 

子供をかばって車に轢かれたときよりはマシだと思ったが無理だコレすげえ痛い。

 

「痛ってええ!!!」

 

「!!!」

 

「アンタなに考えてんですか!?」

 

「バカじゃないの!?」

 

流は深呼吸してから表情を呼吸を整えた

 

「いやあ、こりゃあ痛い、普通なら何もしたくなくなるし諦めたくもなる。こんな痛みに耐えてきたジョーダンさん?でいいのかな?本当に尊敬しますよ。」

 

突然の流の奇行に驚いたジョーダンは怯えた眼で流をみている、近くにいるシチーも同じような状態だ。

手から血を流し、顔面は真っ青になり脂汗を垂れ流しながら流は交渉を開始する。

 

「トレーナーさん、今あんたは頭の中でジョーダンさんの皐月賞へのプランを考えてんだろ、俺にも一枚噛ませろ。」

 

突然自分の生爪剥ぎ取って協力させろとかこんな事を言い出す奴は前代未聞だろう。

 

ああ、でも考えが今吹っ飛んでるかもしれないか、それ以前に彼らに諦めるなと後押しするために爪を剥ぎ取った俺も吹っ飛んでる、そのような状況でもトレーナーは冷静であるように努めていた。

 

「失礼しました、痛みで取り乱してしまいました、自己紹介もまだでした申し訳ない、私は学園のジム管理人兼外部フィジカルトレーナーの蒼真と申します。」

 

「ご丁寧にどうも有難うございます。トーセンジョーダンの担当トレーナーの谷口です。」

 

谷口トレーナーはこちらの左手のことは一切触れずに普通に挨拶を返してきた。

 

「谷口トレーナーさんは、今トーセンジョーダンさんの皐月賞出走に間に合わせるため為のプランを頭の中で組み立てて居ますよね?」

 

「ええ、ジョーダンのトレーナーですから、ただかなり厳しい事になりそうですが迷っています。」

 

仕事柄、あまり練習やプランに口出しすることはしたくないが、今回は怪我や選手生命にかかわる事になりそうだからOKだろう。

 

「フィジカルトレーナーとしてのお願いなんですが、私に協力させて頂けませんか?私が皐月賞出走の為のプランをフィジカル面でサポートすることでプランの精度を高められます。」

 

「それはありがたい申し出ですが、なにか条件があるのでは?」

 

向こうが乗り気だしこっちも正直になるか

 

「大したことではないのですが、今回行うフィジカルトレーニングのメニューや行ったケア、回復の状況とかのデータを取らせていただきたいのです、理由としてはこの先トーセンジョーダンさんと同じ怪我に悩まされる、ウマ娘さんが出てきた時に直ぐに対応できるようにマニュアル化して置きたいのです。」

 

谷口トレーナーは少しだけ悩むように

 

「データですかそれは彼女の許可・・・」

 

「いいよ、データならいくらでもとらせてあげる!それだけで皐月賞に出られるかもしれなくて、データであたしみたいに爪で悩む娘が減らせるかもしれないなら良い事しかなくね?トレーナー」

 

シチーも割って入った。

 

「アタシからもお願いします!ジョーダンはこの為にずっと頑張ってきたんです!」

 

谷口はトレーナー意を決したように

 

「ジョーダン、これからは物凄く辛い練習になるし、すべてをレースに注ぎ込んでもらうことになるけど覚悟はあるかい?」

 

「あるよ!あるに決まってるじゃん!」

 

谷口トレーナーとトーセンジョーダンがこちらに頭を下げてきた、トーセンジョーダンの方はたどたどしいが、足のせいだろう

 

「蒼真さん、宜しくお願いします。」

 

「おねがいします」

 

こっちが頼んだのに頭下げられるのも申し訳ないと思ったので、それ以上に深く頭を下げた。

 

「こちらこそ宜しくお願いします、夢を護るのが私の仕事ですので。」

 

先ずはトレーニングメニューを作るのは2日前後である程度は作れるがケア関係だよなあどっかコネがアレばいいんだが・・・シチーってもしかして佐久間トレーナーさんが担当している、モデルやってるというゴールドシチーか。

 

彼女が遅れてくることが多いから待ち時間によくコーヒー出してやってたんだった。

 

「シチーさん、もしかして貴方は佐久間トレーナーさんが担当している、モデルのゴールドシチーさんですか?」

 

突然話を振られたゴールドシチーは少し驚いた。

 

「あ、ハイ佐久間はアタシのトレーナーですけど、知ってるんですか?」

 

「貴女がジムのマシン使用予定時刻に遅れてくることが多いので、待っている間によくコーヒーを出していたらその内、話すようになって俺のシチーはモデルもレースも両立してて凄いんだぞって良く話してくれましたから」

 

それを聞いたゴールドシチーは苦笑しながらもどこか嬉しそうだった。

 

「遅刻のことはすみません。」

 

「いえ、遅刻のことは色々あるので仕方ないですよ、貴女は遅れても必ずトレーニングを欠かさない、そちらのほうが大切ですから、モデルさんの貴女にお願いしたいことがありまして。」

 

「お願いしたいことですか?」

 

「不躾なお願いで申し訳ないのですがジョーダンさんの食事関係のサポートをお願いしたいのと、後、睡眠時の血流の確保として肩と腰と足を冷やさないようにするアイテムを知っていたら教えてあげて欲しいんです。」

 

「良いですよ、アタシに手伝えることがあるなら。」

 

「ありがとうございます、助かります。」

 

 ゴールドシチーに一礼して一通りの事は済んだが、その直後左手が一気に痛みだした、見てみると爪を剥ぎ取った指先から手の甲まで紫になっていた。

 

おおやべえ医務室に行かなくては。

 

 谷口トレーナー、トーセンジョーダン、ゴールドシチーとLANEの交換をすると直ぐに医務室に駆け込んだら先生に滅茶苦茶怒られた。

 

 その後にも理事長とたづなさんのところにも報告が行き理事長室に呼び出された後、二人から滅茶苦茶怒られた。

 




 曇らせとか鬱フラグとかをどうやってクラッシュするかを考えていたら、頭の中で主人公が勝手に動き出してこうなりました。

曇るのは主人公だけで十分です
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