ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
今日一日の業務を報告終えて報告書作りに、PC での作業をしようと思ったが、指先の痛みでタイピングがやりづらかった。
爪なんて剥ぎとるもんじゃ無いなぁとおもったけど、あのまま行けばリスクを考えて谷口トレーナーはトーセンジョーダンを出走させなかっただろうし、あの空気をぶっ壊したかったから間違いと思ってはない、お陰で交渉はうまく行ったし結果オーライだ。
自ら協力を申し出たのだから出走可能とかじゃない、勝たせる為に今以上のパフォーマンスを作り上げてベストコンディションに持っていってやる。
ついでに予定通り、カフェテリアのスイーツバイキングに合わせてマシンを使わせてもらう予定を潰す気はない。
たかが利き手の爪がやられただけだ。なんの支障もない、多分。
後で気分転換生豆のハンドピックもとい選別作業でもやるか、自家焙煎用に石英ヒーターの家庭用焙煎機もウマゾンでポチるか。
家庭用スマートRの新型がフルセット40万円位なら、余裕で買えるな。
叔父の店の隣の自家焙煎珈琲店の最高級ジェットロースターが300万だった、あれは500万でも安いくらいだし、この前は温度から焙煎の時間とかをすべてプログラミングさせてもらって、カロシを少しずつ焙煎したが中々に良いものが出来た。
最近は高速焙煎も捨てたもんじゃない、むしろ主張の強いスペシャルティコーヒーはジェットロースターのほうが良いんじゃないかとさえ思う。
炭や薪も色々フレーバーを付けたり楽しめるので捨てがたいけど、試行錯誤の結果がすぐに出て単純に豆の個性を引き出せるのはデカい。
指先の痛みから逃避しようとコーヒーのことを考えてしまったが、左手を握りしめて意識をリセットした。
何やってんだよ、お前が夢を守ろうとしている奴はずっとこの痛みに耐え続けて来たんだ。
自分で爪を剥いでおいて痛みから逃げんじゃねえ。
一般的なアスリートならば、ケガは休養期間、強くなるために戻ってくるための期間などボジティブな言葉を投げかけることが出来るし時間さえかければ取り返す事は出来る。
だが、彼女達はウマ娘だ、彼女達の全盛期、夢の為に駆けることの出来る時間はヒトよりも遥かに短い、一般ポジティブな言葉など励ましにならない。
ましてやトーセンジョーダンは皐月賞に出られないなら引退するとまで言った。
そして、流は彼女とそのトレーナーが地獄へ踏み出す為の後押しをした。
夢に蓋をして夢から目を逸らす事を選んだ己としては、夢を諦める辛さは誰より理解できるし、何度も爪のケガを負っても諦めず努力し、ようやく掴んだクラシックという一生に一度のチャンスを護ってやりたい、そう思ってしまった。
課題としては、いかに爪に負担を掛けずに彼女のパフォーマンスを上げるかになる。
ここは谷口トレーナーに任せることになるが、シューズの形状及び、インソール、アウトソールの見直し、後は蹄鉄に関してはそれもだな。
トレーニングメニューとして考えるなら、最初は爪や足先の負担を極力抑えるものとして自重の体幹トレーニングを行い、終了後にはストレッチで股関節を中心に全体的な柔軟性を伸ばしていき足全体で衝撃を受け止めるようにする。
数日したら上半身は低重量のラットプルダウンや自重式の腹筋トレーニングマシンをつかい体幹に 負荷をかけていき強化することでブレを減らす、特にバランサーである頭を支える首の強化は重要だ。
運動前と運動後の爪のケアは本人にしっかりやってもらい、足全体の柔軟性を高めるケアは専門教育を受けている流が行うことにした。
うら若き乙女の足をベタベタ触るのは好ましい事ではないがトーセンジョーダンの爪の事とトレーニングデータを取ることを考えたら、流が直接やる方が効率がいい。
ある程度の爪の回復が見込まれてきたら、エアロバイクを用いた高強度インターバル、ハイクリーンなどを用いて全身を連動させつつ、神経系の発達を促す。
導入が始まる初動負荷トレーニングをどこに入れるかだがそこはマシンの性能を見て判断する。
練習とトレーニング以外、特に睡眠時には、極力、足、肩、腰回りの保温で回復と柔軟性の維持に務めてもらう、それ系のアイテムは彼女の友人のゴールドシチーに見繕ってもらう。
基本的にやることはこれでいい。
谷口トレーナーにLANEで資料を送ったら、すぐに既読が付いて、後で拝見しますとだけ返事が来た。
そういや学生寮の消灯時刻は過ぎてんだな。
軽く自主練でもするか。
ジムのサンドバッグを叩いてもいいのだが利き腕の拳が握れないし、サンドバッグはどういう殴り方や蹴り方をしても基本的に【当たる】のでエンジョイ勢や手数重視のファイタータイプ若しくは、しっかりと考えて練習できる奴以外には向かない結構深い道具でもある。
むしろ選手は対人練習をしないときは、サンドバッグよりもミット打ちとシャドーをこなしたほうが良い位だ。
パンチだけでも良いからミットを持てるのが居れば良いんだが、今度外出したときに伯父の所に行くか。
誰も居ないし、スペースも広く使えるのでいつも通りエア縄跳びでアップしてから、サウスポーのアップライトに構えてのシャドーを初めた。
右のジャブを出しながら右へ右へと回っていく、拳一個分でも横にずれればパンチをもらうリスクは下がる
続く拳は握らずに、左ストレートを放ち、そのまま流れるように顎めがけて肘を振り抜き、戻す勢いで足を変えて右の膝蹴りを放ち元の構えに戻す。
続いて斜めに入りながらのワンツー、右ミドルで相手の尻と腿の間を何度も蹴るように連打しながら右に回り、左の前蹴りを放ちそこから腕を想定した左ミドルキックを振り抜いた。
得意だった肘と蹴りだけはまだまだいける、といっても事故ってから一年経ってないし、入院直後からのリハビリと知識を活かした常軌を逸した狂気の修練で、すぐに試合とまではいかないが、ある程度のレベルには戻っていた。
そのまま、カチ上げる肘や突き刺す肘、斬る肘、振り抜く肘、打ち下ろす肘をシャドーで試すが、やはり対象がいないのはだめだ。
爪が治れば伯父のジムで久々に対人でもするかとおもったが、流の爪は第一関節まで皮が小削ぎ取られたような状態になっていたので、当面は難しいか。
明日も早朝練習組のためにジムは開けておかないとならないし、寝るにも痛いのと、事故のときの事が夢に出やすいから熟睡しにくいんだよなあ、昔から飛び飛びで寝て起きてを繰り返しは練習していたし。
寧ろ抱き枕がないと仮眠レベルでしか寝られないので今度叔父のジムから持ってこようか。
手をビニールで包んで、流はシャワーを浴びて着替えてから、リクライニングチェアで仮眠についた。
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3時間程度で流は痛みで仮眠から飛び起きるように目覚めた、寝てる間に拳握ってたか。
起きたのは仕方ないので、さっきウマゾンで見つけた、サンドイッチメーカーに加え、ガスコンロや焚き火とか七輪の下で手回しできる焙
煎機と石英式ヒーターの焙煎機を冷却器と換気装置ごとポチった、新しいタフ系タブレットと共に、サニレモのマシンとも焙煎機ともブルートゥースで接続できるのであるなら便利だと思って買った、プライムなので翌日着だ。
おかねのことはしらないよ、やべえねおきのてんしょんやべえ
ジムの給湯室が簡易焙煎所に早変わりだ、駿川さんがキレる?そんなの知るか俺はスペシャルティコーヒーの焙煎がしたいんだ、自分で焙煎したの豆で入れたコーヒーとサバサンドを摘むんだ。
理事長には適当に言っとけばごまかせるだろ、プロテインバー感覚でコーヒー出してやると言えばごまかせる、きっとごまかせる。
実際にコーヒーは運動前に飲むと結構良い。
気分転換はすんだ。後は指導者としてトーセンジョーダンにトレーニング方法を説明していくかだが、それは谷口トレーナーがわかりやすく説明してくれるから問題ないだろう。
後はレース直前のドクター対策だが、コレは運に任せるしか無い。
朝のジム開けまで後2時間半、開けるまでの時間に、仮眠をとるか走りに行くか悩んだが流はランニングに向かうのだった。
次回トレーニング開始です。