ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
理事長とたづなさんから一通りのジムの引き継ぎについての説明を口頭で受けた後は、仕事をするにあたってウマ娘の身体能力や現状のトレーニング方法の確認の為にジムに行くより先に、たづなさんに付き添ってもらい学園の図書室へ案内してもらいウマ娘に関するレース関係の資料を読み漁っていた。
自身が使っているトレーニング資料や持っている知識と、ウマ娘用のトレーニング資料を見比べると、トレーニングの方法論が遅れているというかウマ娘の身体能力の高さとその頑丈さから基礎的なのもので頭打ちに近い状況になっていた。
ウマ娘たちにおける最新のスポーツ理論はヒトの理論より2世代ほど遅れている感じだった
改めて確認するとこれは遅れているのではなく、伯父の言っていたように学園のトレーナー達の秘伝になっているのか、その能力の高さ故に実験的な理論はそこまで必要じゃないと思われているのか、耳と尻尾以外人間と体の構造に大きな違いは無さそうだから転用は可能だろうが、直接やってみない限りはわからない。
レースに関してはトレーナー資格はないし専門外だ。あくまでフィジカルトレーナーとして聞かれたらトレーニング法を提供したり考案する事が仕事なため、脚質に関してはヒトの身体の個人差と同じように考えていけばいいだろうか。そのあたりはジムでウマ娘たちやトレーナーとコミュニケーションを取って確認していく必要がありそうだ。ただ女子中高生の相手はしたこともないし、酸っぱい葡萄として関わることを避けていたウマ娘達だ。
仕事で関わる事を選んだ理由は余暇で最高クラスのエスプレッソマシンを扱えるからという不純な動機からだが、やはりスポーツに関係者してはウマ娘達に怪我に夢を奪われないでほしいという気持ちは確かに存在する。
速度に関する文献よりも怪我についての文献が少ないのは、まあそういう事かと納得した。
流自身、交通事故で夢を潰しているのだ。その辛さはわかっているので、それを考えると引き受けて良かったとは思う、半ばコネ入社だが。
駿川さんはウマ娘は普通の女の子と変わらないからそう構える必要はないしジムでの接客と同じようにやってくれればいいと言ってくれたが、やはり難しい気がする。何よりジムで接客するときは選手を目指すごつい男ばかりでフィットネス目的の若い女性と接することがあまりなかった身としては、結構やりづらそうだ。
実家から学園にジムに自前の電気ケトルと井戸ポンプのような形をした手動の携帯型エスプレッソマシンでも持って行けばいい、甘いカフェラテでも作って出してみればそれなりに打ち解けるかもしれない、それ以外で必要なら紅茶も出せるし何なら軽いお茶請けの菓子も用意できる。
同じ釜の飯を食うのは商談のコツの一つだ。
とにかくそういった関わるための手段も考えていかなきゃならない。
資料を精査しているうちに午前の授業が終わってそろそろ昼休みになるしそろそろ離れたほうが良さそうだ。
ここに就職することになったとは言え、まだ初日の部外者で顔を合わせた瞬間に驚かれて不審者扱いされるかもしれないし、そんなくだらないことで生徒の心象を悪くしたいとは思わない。こちらからも条件として加えたいことがいくつか見つかったので理事長室へ戻る事にした。
流は司書に頼んで理事長室にいるであろう駿川さんに連絡してもらい理事長室へ戻っていった。
理事長室へ戻り、流は理事長に自分の方針を伝えた。
まずは、怪我や選手生命につながらない限りは個々のトレーニング方法には不干渉である事次いであくまで中立であり頼まれれば自分が指導したトレーニング法やケアのやり方は、トレーナーの有無に関わらずに公開して誰でも自由に使っていい事にしたいと。
其の方針を伝えたらすんなり通った。
「それですね理事長、マシンの事もありましたが、別ジャンルですがスポーツに関わる者かつ、スポーツトレーナーの立場としてもウマ娘達に怪我で夢を諦めてほしくない、そういうのは私だけでいいと思っています。」
「うむ!不純な動機だけでなく本気で受けてくれる気になったようになったようで何より。」
理事長からスタッフ用の身分証を受け取り明日の予定を確認し、たづなさんの引率で学園の正門まで来ると警備員とたづなさんに一礼してから正門をでて帰路についた。
ジムに帰り着いた流は伯父に合格の報告をしたら、伯父から自身の焼肉屋の食べ放題の割引券を大量に渡された。
券には【オグリが食べても大丈夫、焼肉のそうま】と書かれていた。何度か予約で芦毛の大食いのウマ娘が仲間やトレーナーと一緒に店に食べにきていたな、食べ放題で、肉も野菜もあらゆる料理を食べ尽くして満足そうに帰っていったのを覚えている、同時に精肉エリアと調理場から物凄い悲鳴が聞こえていた事も覚えている、他の店だったら出禁になっていただろう。
報告を終えてすぐに自分の居室に戻ると、職員寮で暮らすための生活用品をまとめ始めた。ジャージとシャツと運動関係の着替えがとにかく多くなってしまう。週6で練習していた頃は、夏場なんかは昼練だけで4枚はシャツを替えていたし夜もまた2枚は替えるのでとにかくTシャツが多いのだ、登山用の40Lのバッグがパンパンに詰まるほどに。
他に持っていくものは衣類で速乾性のラッシュガードを10着ほどと普段着用のジャージとシャツとジーンズか、後カフェテリアで使うベストとスラックスとネクタイ、帆布で作られた焙煎兼バリスタエプロンと黒のVネックエプロンも突っ込んだ。
後は、ROG製のゲーミングタブレット一式と携帯バッテリーとゲーミングスマホとSW○TCHとか学園自体がwi-fi完備だけど有線も用意し、ゲーム用に買ったPCとモニターは別のときに持って行くことにした。
その上で生活に絶対に欠かせないのがコーヒーに関するものなんだけど最低限、ORIGAMIドリッパーにエアロプレス、Brewista製の電気ケトルとコーヒースケールとサーバー、ミルのコマンドMK4にfier 58xエスプレッソマシンは持っていかねばならない。
後コーヒー豆はストレートでキャラメラード、マンデリン、ガテマラ、ケニア、セレベスカロシを1キロずつ持っていってブレンドはエスプレッソ用に3キロもあればあれば充分だろう。
生活必需品より娯楽関係がやたら多い気もするが、問題ない。
トレセン学園までは歩いて行ける距離だから必要なものがあったら、また取りに行けば良いし衣食住のうち食と住は出るのだ。コーヒー中毒の流としてはコーヒーが何よりも大事だし、その上で放課後のカフェテリアで振る舞うならこれぐらいあった方がいい。決してエスプレッソマシンとグラインダーを弄り回したいのではない。
リュックの中に丁寧に収納するとそれを寝室に持って行き枕元に置くとそのまま床に入った。