ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
レースの描写をどうするか悩んでいるので前後編の予定で、色々思いついたら少し加筆していく予定です。
中山レース場
皐月賞の控室でトーセンジョーダンは、谷口トレーナーによる足のメンテナンスを終えた後、不安と決意の入り混じった顔で爪の補強用のマニキュアを塗り直していた。
速乾性で30分もあれば十分に乾き、出走直前には、1レースなら確実に耐えうるほどの強度になる。
「ねえ・・・トレーナーあたしの爪ちゃんと保つかな?」
「そこは大丈夫だよ、ジョーダンの友達も協力してくれたし、蒼真さんも大丈夫と保証してくれたじゃないか。」
トーセンジョーダンを励ましながら、谷口トレーナーは管理人である蒼真の事を思い出していた。
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何度かジョーダンのトレーニングについて直接話す機会があったので、疑問に思っていた、なぜあんな方法で協力を申し出たのか気になったので昼のトレーニング前の時間に聞いてみたことがあった。
『本当でしたら、どんな相手でも音で気を引きやすい硬貨を使いたかったのですが、最近スマホ決済が多くて小銭の持ち合わせが無くて、それ以上に気を引く方法がこれしかありませんでした。』
仕方なかったという態度の蒼真に、谷口がもっと他に方法がなかったのかと考えていると蒼真は表情一つ変えることなく
『スマホを投げて壊すのは嫌でしたし、癇癪を起こしかけてるウマ娘を止めるのなら、よりイカれた行動でビビらせるのが一番確実でしたからね、現に頭冷えてたでしょう、二人共。』
あの時、確かにジョーダンは怒りと悔しさを目にためていたし、近くに居たゴールドシチーも動揺していたので、最悪の自体もあり得たわけだし、蒼真の判断は間違ってはいないが、それだけの理由で自分の爪を犠牲にしたその行動は明らかに狂っている。
『あの時も言いましたが、貴方が彼女の出走辞退を思案すると同時に皐月賞への出走に間に合わせるプランを考えながら迷っているのがわかったので後押ししようと思って、谷口トレーナー一人なら彼女を地獄に送るようなものですが私がサポートすれば行けるかなと思って。』
お前一人の技量じゃ不十分だと相変わらずの仏頂面で言われたような気がしたが、蒼真の口調には傲慢さとか驕りは見られなかった。
『貴方はトレーナーとして良い技量を持っていますが、こういう時はどうしても視野が狭くなりがちですし、生徒やトレーナーの依頼がない限り中立で不干渉ですが、安全や将来に関わることですから、彼女のことで寝不足でしょう?眠気覚ましとしては弱いですが、こちらをどうぞ。』
蒼真は行動はぶっ飛んでいたが、此方の事を考えて善意で動いてくれたのだと理解した、練乳のタップリはいったコーヒーがつかれた頭と体に染み渡っていくのがわかった。
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「フィジカル関係に関しては知識も指導に関してはベテランのトレーナークラスでレースの事は全く知らないと言っていたが勝負に関する考え方やメンタルコントロールとかには詳しかったりと良くわからないヒトではあるけど、腕は確かなのはジョーダンもよくわかってるだろ。」
現に蒼真は谷口のプランに合わせて肉体のケアから栄養や食事の管理まで、詳しい資料を即送ってくれたり、爪の回復を促すケラチンを多く含む食事の資料やサプリメントまで紹介してもらったりとかなり世話になった。
「だね、勝って感謝祭でジムカンに女装させないと。」
「ああ、朝にそんな賭けをしていたね。」
直後ジョーダンはイラッとしたような顔で
「後さジムカンさ、あたしらにトレーニングの事教えてる時さ、めっちゃ寂しそうな空気出してんだよね、なんというかすっげー後悔というかやり残したことがあってさ・・・それを諦めて未練タラタラそんな感じでさ、どっかつまんなそうなんだよね。あたしは、トレーナーとジムカンのお陰で皐月賞を諦めずに済んだのに、ジムカンは諦めたままってのは何かムカつかね?」
ジョーダンは勉学は得意ではないが、感覚は鋭いからこそ蒼真の何かに気づいたのだろう
「なら、ジョーダンがこのレースに勝って諦めるなって伝えてやらないとな」
「うん!でもジムカンはレースにあんま興味なさそうだから、見てくれっかな?」
蒼真がレースの内容や結果に興味がないからこそ、学園に雇われたという事ははたづなさんから軽く聞いていたが、本当のようだ。それでもジョーダンの走りが彼の中の何かに再び火を灯す事のきっかけになって欲しいと考えた。
「じゃあ、蒼真さんに電話して観てくれるように言ってみようか」
谷口は自身のスマホのハンズフリーモードで蒼真に電話を掛けると1コールで繋がった。
【申し訳ない、今取り込み中になりますので手短にお願い致します。】
「取り込み中って今は業務中でしたか?」
【いえ、今はカフェに全力で土下座謝罪をしている真っ最中です。】
「え?…土下座?蒼真さんが?」
仕事上でしか蒼真と面識がなく、常に仏頂面で職人気質なタイプだと思っていた谷口は言葉を失ったが、ジョーダンはまた何かやったのかコイツという顔でスマホを見つめていた。
「トレーナー、スマホ貸して。」
ジョーダンは蒼真からスマホを受け取り、なぜこうなったのかを一部始終聞くと。
「ジムカンバカじゃないの!?いくらなんでも言って良いことと悪いことがあるっしょ!?」
レース前の緊張も吹っ飛ぶ勢いでスマホ越しに蒼真を説教するジョーダンを呆気にとられながら見ていると。
「あーもー!あたしがフォローしてやるから、カフェにかわれ!」
ジョーダンは通話先が蒼真からカフェに代わったのを確認すると、控室の端の方に行き優しく宥めていた。
「ジムカンのアレは動揺しての照れ隠しだって、あーわかるわかる、それでも言葉は選べってのな!帰ってきたらあたしとシチーでジムカンにはよーく言っとくから。レースは大丈夫かって?お陰でいい感じにキンチョーも吹き飛んだし、勝てるっしょ!ジムのモニターで見れるから応援よろしく!」
その後また蒼真に代わったらしくジョーダンは。
「ジムカン、これで一つ貸しな。あとさジムカン、レースに興味なさそうだけどさ、あんたも関わってんだから、あたしの皐月賞ちゃんと見ろよ。ん?時間?後30分くらいかな、最後の仕上げ?うんトレーナーに代わるね。」
谷口はジョーダンからスマホを受け取ると、蒼真から改めてアップの仕方についての説明を受けた、意図的に疲労を残しているからこそ、下準備は必要だ。
蒼真からは【ジムのモニターで観戦します、私はカフェへの土下座の続きとコーヒーの用意がありますので】と言われて通話が切れた。
谷口はその事は頭から切り離して、改めてジョーダンと作戦の確認をする。
「ジョーダン、作戦は覚えてる?」
「うん、相手のことは忘れて前で普通に走って、最後はあたしのタイミングで全力で走るだよね?いーの?こんな作戦で」
「そうだよ、それだけでいい、それじゃあ最後のアップに入ろうか。」
谷口はジョーダンのアップをサポートすると地下バ道へと送り出し、レース場にあるトレーナー専用席へと向かっていった。
私にレースの描写ができるのだろうか?それだけなり。
何で流が土下座しているのかというと、時系列的に前話の少し後になります。