ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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何故かだいぶ長くなりました。




31.急なオファーに備えて体を作っておくのは当然の事、後魔法のカードの利用は計画的に。

「いくらカフェが話しやすいからって、言って良い事と悪いことの線引きはちゃんとしておかないとダメですって。」

 

「そうだぞホントシチーの言うとおりだぞ、ほんと考えろよジムカン」

 

『そーだそーだ!』

 

 レースから二時間後、皐月賞を終え勝利しウイニングライブ終えて直帰してジムの方へトーセンジョーダン一行とその友人のウマ娘達に流はカウンター前に正座させられていた、正座する

 

「私は私なりにフォローしようとはしたのですが」

 

「言い訳するでねえ!きちんと反省しろ!」

 

南部訛りで流を叱りつけたのはマンハッタンカフェのルームメイトのユキノビジンだ。

 

 トレーナーの高槻と一緒に今日の皐月賞を見て刺激を受けて、フィジカルトレーニングに来たら正座させらている流をみてからトーセンジョーダンとゴールドシチーとから事情を聞いて流へのお説教というか理解らせに入ってくる形になった。

 

 ルームメイトであるマンハッタンカフェにかなり懐いているからこそ結構なレベルで怒っていた。

 

 高槻は流が正座した状態で複数のウマ娘から罵倒といったほうが正しいレベルでお説教を受けているのを見て、どうして蒼真の奴がこんな素直に正座して話を素直に聞いているのかわからなかった。

 

 高槻の知る蒼真は兎に角鋭く、ところ構わず殺気をぶちまけて誰も近寄れる雰囲気ではなかったが、今の蒼真にはそれが感じられない。

 丸くなったのか、それとも職員として空気は抑えているのか、コーヒー屋の店員をやってたということだからそういった所を表に出さない術を心得ているのかもしれないが。

 

「ユキっぺ、蒼真さんもちゃんと反省の意思を示してるようだし、このくらいで。」 

 

 高槻は流にかるく助け舟を出そうと声をかけるが

 

「トレーナーさんは黙ってでけろ!」

 

と一蹴されてしまった。

 

「はい」

 

大人しく下がる高槻に流が真顔で

 

「高槻、尻に敷かれてんな。」

 

「ジムカン自分の立場わかってんの?」

 

「もちろん、言葉は重く受け止めています。」

 

「反省しているような態度に全く見えない所が逆にすげーわ。」

 

「反省しているからこそ、こうやって正座しながら話を聞いている訳です。」

 

 呆れ気味のトーセンジョーダンに殆ど表情を変えずに答える流。

 

「ですが、まあ…確かに気を許した分線引きがゆるくなったのは事実ですね。」

 

流は改めてマンハッタンカフェに向き直ると。

 

「俺は基本的に話下手だから簡潔に言うが、カフェの優しさに甘えて配慮が足りず済まなかった。」

 

と流は頭を下げた。

 

「元々・・・そこまで怒っていませんし・・・こうして謝罪していただいたので次から気をつけて下さい。」

 

すんなりと流の謝罪が受け入れられたことに対して周りはおどろいていたが、そこで高槻が

 

「蒼真さんの口の悪さはあれだけど、カフェさんが許すっていうのなら、周りのがこれ以上どうこうってはやめといたとほうが良い思うっすけどね。」

 

まわりもまあ良いかで落ち着いたところへそこへ蒼真が高槻に対し

 

「中卒チンピラ野郎の高槻が、他人を気遣う事が出来るなんて・・・お前を知り合いの店に預けた成果だな。」

 

一瞬空気が重くなりかけたが

 

「そりゃどーも、蒼真さんのおかげですね」

 

 高槻は大人の対応で軽くスルーしたが、事情を知っているとはいえ、あいも変わらず自身のトレーナーに毒を吐く流に、ユキノビジンがちょっと不機嫌になっているのをマンハッタンカフェと高槻が宥めていた。

 

「もう・・・流さんは高槻さんに辛辣すぎます。ユキノさんが怒っているじゃないですか。」

 

「言いたいことわかるさ、なんというかどうも高槻に対してはな。」

 

 

多少バツが悪そうにしている流に高槻がフォローするように。

 

 

「これでもだいぶ丸くなって優しくしてくれている方だよ、久々に会ったら本気で嫌がってたからな蒼真さんは。それよりも主役は皐月賞を勝ったジョーダンさんだろ、ジョーダンさんおめでとうっす、あと谷口トレーナーも初G1おめでとうございます。」

 

高槻が話題を変えてトーセンジョーダンの

 

「お、ありがと〜。ユキノちゃんもレース頑張ってね。」

 

トーセンジョーダンは高槻の挨拶に軽く返すと、流に声を掛けた。

 

「ところでジムカン、あたしのレースはちゃんと見てた?」

 

「ええ、電話があったので皐月賞からは、ジムのモニターで見ましたよ。」

 

「どうだった?面白かったっしょ?」

 

「そりゃあ、真剣勝負ですからね、つまらないわけが無いですよ。」

 

「その割にはテンション低くね?」

 

「レース自体をしっかりと見たのは今回が初めてですからわからないことが多くて。」

 

 

「マジで!?レース見たことないの!?逆に激レアじゃね?」

 

 

「元々レースに興味がないのと意図的に避けていたというのもありますが、関わってきた競技のジャンルが違いますから」

 

「あー…そういうもんなん?」

 

トーセンジョーダンは流が興味無いや意図的に避けていたと言う発言は意図的にスルーした。

 

 トーセンジョーダンは自身をバ鹿と認識しているがそれは学校教育における、勉強が苦手なだけで、地頭は悪くない。

 

 むしろ、直感や柔軟な思考や判断力、観察力を総合した思考の瞬発力は他者より優れている位だ。

 

その直感がこれに触れてはいけないと判断させた。

 

「キックに打ち込んでいるとそんな暇なかったので、ここに来たのも変な偶然ですから、最低限の仕事しかするつもり無かったんですけどね。」

 

 その意図に気づいてかフォローするように流も答えた。

 

「ふーん…じゃあ、あのとき、あたしとトレーナーに声かけてくれたん?」

 

トーセンジョーダンが質問した直後、流は物凄く嫌そうな顔をした。

 

「え・・・これ地雷踏んだ?」

 

めったに表情が変わることがない流が露骨に嫌そうな顔をしてきたので皆驚いていた。

 

「いや、べつに地雷って訳じゃねえよ、これに関してはいつもみたいに取り繕っては逆に恥ずかしいから素で良いか?」

 

 困った顔をしながら、素で話す許可を得ようとしてくる流に笑いそうになる。

 

「カフェと話してる時みたいな感じっしょ?別に良いよ、あたし達もフランクな方が良いし。」

 

「ならお言葉に甘えさせて貰うよ、強いて言うなら、たまたま怪我を目撃して付き添った相手が泣きそうな顔して出られないならレースを辞めると抗議してたから、瞬時に怪我から復帰させる方法を考えたから声をかけただけだよ。」

 

「それは・・・行動の内容であって・・・理由とは言えないのでは?」

 

マンハッタンカフェの指摘は実に鋭かった。

 

「せっかく気づいてなさそうだからそのまま誤魔化そうとしたのによ、恨むぞカフェ。」

 

 苦笑しながらマンハッタンカフェをみると、ユキノビジンに睨まれたので目を逸らした。

 

「つーか、誤魔化すなし!」

 

トーセンジョーダンも抗議してきたのでちゃんと答えることにした。

 

「俺はガキの頃から喫茶店で働くことを前提に接客に関する教育を受けているから、外面は取り繕えてはいるんだが…人付き合いが得意な方じゃない。基本的に自分から他人に話しかける事も仕事以外じゃ滅多にしないぐらいには苦手でね。」

 

「でも、アタシ達とは普通に話してるじゃないですか。」

 

流は正座から脚を崩しつつ。

 

「そりゃあ、仕事の一部と割り切ってるからな、元々の俺はキックしか取り柄のない無い只の陰キャだよ。」

 

流は自嘲気味にゴールドシチーに返答した。

 

「格闘技やってる奴の大半は他人と関われないはぐれ者か他人と関わらないひねくれ者のどっちかだからな、まあ俺はその両方でな基本ろくなもんじゃない、そんな人間でもな、ごく偶にだが悩んでるやつにや困ってるやつに、無茶でもお節介をかけたくなるときがある、それこそジョーダンさんの時はスマホ決済中心になって小銭持ってなくてなあ・・・つい利き手の爪噛みちぎってペッと。」

 

「あー・・・アレまじ思い出したくねーんだけど、マジトラウマもんだし」

 

「何をやってるんですか・・・?貴方は」

 

引いているのか怒っているのかわからない顔でマンハッタンカフェが見つめてくる。

 

「キレたガキを落ち着かせるには頭から氷水ぶっかけてやるのが一番だからな、それに怪我でチャンスを失う辛さってのは誰よりも理解できているつもりだよ、カフェも見たろ俺の背中。」

 

一瞬、時が止まり、変な空気になり掛けたが、マンハッタンカフェの表情が重かったので皆自重した。

 

「なんてこと無い話だよ、ベンチプレス教えるときに、周りから上全部脱げとかリクエストされてな、そん時に見ただけだよ。」

 

「あーそれって、背中にすげー怪我したってこと?」

 

「そういうこと、試合の前日計量を終えた後、突然車が歩道に突っ込んできてね、俺だけなら逃げられたんだけど、暴走車の進路上に子供がいて助けた直後にそのまま轢かれて吹っ飛んで、そのままショーウインドウのガラスに突っ込んで背中に大量のガラスが刺さって子供の無事を確認したら出血とのせいか失神して目が覚めたのは2日後だったらしくてね、先方に連絡したら、ゆっくり休めと言われて無期限契約解除くらった上に周りの団体からも干されたからなあ、タイトル戦を駄目にしたから仕方ねえんだけど。」

 

 まわりがなんとも言えない顔をしているのを見て流は気にせず続けた、高槻だけは何か思い当たる事があるようだった。

 

「仮に見捨てて試合に出ても、助ければよかったと後悔して負けているだろうし、俺の試合よりも子供の命が助かるほうがいいだろ、流石に干された時は俺の身体能力がウマ娘並みだったらなあと思ったよ無傷で助けて試合にも出られたのになあと思うぐらいにはな、だから怪我で夢を諦めなきゃならない辛さはわかるよ。」

 

 特に気にすることもなく軽く言ってのけた流とは逆に周りの空気は重かった。

 

「まあ、俺の行動は別に珍しいもんじゃない。程度の差はあれど皆にだって、困ってるやつや悩んでるやつに声をかけたこと位はあるだろ?

それと一緒でその程度の気まぐれだよ。後は競技は別だが同じアスリートとして考えるなら学園の生徒は全員後輩だから面倒見るのは当然のことだしさ、何もしなかったら後で悔やむのはめんどくさいってだけさ、後な俺は頑張ってる奴の味方だ、久々に普通に長々と喋ってたら疲れた。」

 

流はひと呼吸置き、スマホを操作しながら。

 

「話は変わるけど、飯の時間になりそうだけど、ここで食ってくなら出前を一緒に注文しますがどうします?祝勝会代わりに何かおごりますよ。」

 

「なに?イタ飯でも奢ってくれるの?」

 

「いえ、インド料理です、商店街でやってるネパール人の店なんですが、安くて量がある上に美味いので。」

 

「インド料理なのにネパールの人がやってるん?何で?後ジムカンいつもの言葉使いにもどってね?」

 

「仕事モード以外だとほとんど喋る事はないですからね、カフェ相手だと最低限の会話でいいので成り立ちますけど素だと本当に疲れるんです。」

 

「えー慣らしていこうよ、ジムカン口調硬いんだから。」

 

「考えておきます、話を戻しますがインドの料理人さんはお金持ちで基本的に国から出る必要がないですからね、料理がほぼ一緒でインドの陸伝いの国のネパールの方たちは年収が日本人の月収と同じくらいですから、仕送りのために出稼ぎに来るんですよ。」

 

「あれお金ないのに、どうやって日本に来てるん?」

 

「多分ですが・・・国に支援制度があるか、日本にも・・・支援するネパールの方を支援するコミュニティがあるとかでしょうか?」

 

「俺も詳しくは知らないがまあカフェの言う通りだろうな、ではメニューはカレーの盛り合わせと、デリバリー用の一斗缶入りビリヤニとナンを沢山とネパール菓子をお任せでいきましょうか。」

 

流はスマートフォンの通話モードを立ち上げて目的の店に掛けた

 

『はイ!ミトツァ カリ(美味しいカレー屋さん)、でス。 あれ?ソうま、ひさびサですね、ナニかチュウもんあるンですカ?おみセくるですカ』

 

発音こそ訛りはあるがはっきりしてわかりやすい喋りのネパール人が電話にでてきた。

 

「久々ですねヴィシュヌさん今から出前って、大丈夫ですか結構な量なんですけど。」

 

『出まえ、今日ハおきゃくさんすくないけど、コックさンいっぱいいるから、タくさンたくサん作れますけどけどどのくらいいりますか?』

 

「ウマ娘約10名分の一斗缶サイズビリヤニとカレーの盛り合わせと、お菓子をお任せで。」

 

『うわーすごイりょう、とテモたくさんたくさん、とても時間かかるから事前によやくしてほしかた、です、でばしょどこにりょうりはこぶですか?』

 

「その点については申し訳ない、たしかに予約しておくべきでしたね、皐月賞の祝勝会みたいな感じですから。」

 

『おいわいとてもたいせつ、やっぱりざいりょう沢山いりまスね、わかったありったけのざいりょうもって、キッチンカーでつくりながら、ガクえんはいって、なかでもつくルから、にんじんのおかしもたくさんつくります。がくえんに入るきょかトってください。』

 

「わかりました、すぐ施設管理、警備と学園の方に連絡しておきます。」

 

『よしがんばります、おかねたくさん頂くけど、へイきですか?』

 

「大丈夫です、魔法のカードを使えばなんとかなりますから。」

 

『カードのごリようは、けいカクてきにですよ、たくさんぶっこんでいくのでしばらくおマちくだサい。』

 

そういうと流からヴィシュヌと呼ばれたネパール人は電話を切った。

 

「すみません、ジムの前で用意する形になったみたいです、キッチンカーにありったけの材料を載せて持ってくるそうなので。」

 

「もう、飛び入りオーケーのカレパでいいんじゃね?」

 

「そうしましょうかね、先に理事長に連絡しておかないといけませんね。」

 

「カイチョー達には言わなくていいの?」

 

「向こうはあくまで生徒会ですからね、職員の行動に許可不許可をどうこういう権限まではありませんからね、文句を言われたら責任を理事長におっかぶせましょう。」

 

流は内線用の電話機で理事長に電話をかけると

 

『蒼真くんか、この時間にどうした?』

 

「ちょっとジムの前にキッチンカーに来てもらってトーセンジョーダンさんの祝勝会をビリヤニとカレーパーティするので許可を貰えたらと。」

 

『許可!存分に楽しむと良い、警備と生徒会には私から連絡しておこう。』

 

「あら、すんなりと許可をくれるとは流石に注意されると思っていたのですが。」

 

『君は真面目に働いてくれているからな、それと皐月賞の件で君を怒らせているからな、私からの謝罪だと思ってくれ、それと君の伯父様から話したいことがあるから電話してくれということだ。それじゃあ私は仕事の続きがあるから切るぞ。』

 

そのまま電話が切れた。

 

後で理事長に差し入れを持っていくかと考えつつ、流は伯父にスマホをかけると、すぐにでた。

 

『流、久々だな元気してたか?』

 

「まあ・・・それなりには先程理事長に電話したときに伯父さんから俺に話したいことがあると伺ったのですが」

 

『ああ、お前、ニコラ・ベルナールってフランス人知ってるか?あと体重何キロだ』

 

「ええ、確かラジャとルンピニーのランキング入っててサバットとムエタイのヨーロッパ王者ですよね?それぐらいしか、今の体重はナチュラルで65キロ、動いて63ぐらいですね。』

 

『そうか、6月のZENO90でライト級の肘ありワンマッチのオファーがあるんだが、ファイトマネーはチケット別の50万で相手はそのニコラだが受けるか?』

 

流はちょっと強い相手だなと思いつつも、上司である理事長から許可さえ取れればなんとかなると考えた。

 

「対策の準備期間がちょっと短めですが、後は学園の許可次第ですが受ける方向で。」

 

『おう、それにしても即決だな、コンディションは良いのか?』

 

「急なオファーに備えていつも体を作っておくのはプロとして当然のことですから、しかし俺以外へのランカーとかへオファーすればいいのに、変則的ですね。」

 

『大半から断られた上に今の代表が上位陣の価値を落としたくねえんだってよ、お前は負けてもレベルに影響ない相手として、たまたま名前を思い出した、お前とワンマッチにしたんだよ。』

 

「団体の思惑なんか別にいいですよ、また試合を組んで貰えるなら。」

 

『そうかい、先方には3日以内に連絡すると伝えておくぞ、それはそうとお前トーセンジョーダンに良く礼を言っておくんだな、プロモーターが皐月賞みててな、あの娘のインタビューでお前の名前がでてそれで思い出したんだとよ。』

 

 

流がなにか返す前に電話が切れてしまったが、通話を終えると流は、ちいさくガッツポーズをきめた。

 

「・・・どうしたんですか?・・・なにか良いお話でもあったんですか?。」

 

近くにいたマンハッタンカフェが問う。

 

「ああ、試合のオファーが来てな、出来るかどうかは学園が許可してくれるかどうかなんだけど、もう出来ないと思ってたから、嬉しくてな。」

 

「試合ですか・・・事故の怪我は酷かったのに・・・平気なんですか?」

 

「今ん所は平気だよ、何度か検査も受けたが後遺症はないってさ。」

 

心配するマンハッタンカフェに対して怪我は問題ないと返した。

 

「ただな、相手が欧米人なのに対人練習ができないのがなあ、ジムの選手だと欧米人を想定するには同階級でも体が細い分圧力が軽いから対策が取りづらいな体格差パワー負けは確実だろうし、おまけにムエタイ経験もあるしテクニックも半端ないから、パッと見て今ん所勝てる要素が殆どないな。」

 

 その要因は欧米人は骨格がデカいのに加えて水抜きで10kg以上落としてくる選手が多いからパワーが違う、減量幅の少ない流は相手のリカバリーを考えると2階級3階級上の相手と戦うことになる。

 

「それは・・・受けちゃだめな話じゃ?」

 

「別に手も足も出ないってわけじゃないよ、手はこれから考えれば良いさ。」

 

駄目だろうという顔で流を見ているマンハッタンカフェの後ろから高槻が声をかけてきた。

 

「蒼真さん、スパーの相手がほしいんなら、警備部のボスに言えば格闘訓練に混ぜてもらえると思いますよ、名家のボディガードや外国の王族のSP隊とも合同でやることもありますし。」

 

「そりゃ、ありがたい申し出だけどいいのか?俺は場違いだろ。」

 

「大丈夫っすよ、ここの警備部の社員は【現役】が多いっすから歓迎してくれると思いますよ、もちろん俺も。」

 

流は歓迎の意味を察して、少し嬉しくなっているのがわかった。

 

「そりゃあいいな、高槻は俺のことをぶっ倒したくて仕方なかったもんな、いいチャンスだな。」

 

「ええ、楽しみですよアンタをボコボコに出来るのが。」

 

 高槻と流の会話を聞いて、なにがあったのかと、ざわついた所に、後ろから高槻の袖がグッと掴まれ体制が崩れた。

 

 高槻は後ろを振り向くとユキノビジンが優しい笑顔で立っていた。

 

「トレーナーさん契約するときに喧嘩や暴力はわがねってわだす言いましたね?」

 

「ユキっぺ?これは喧嘩とかじゃなくて・・・スポーツの練習で。」

 

「スポーツにがごづげで管理人さんへ仕返しする気満々なのに何言ってんだが?良いがらこっちに来なせえ!」

 

高槻はそのままユキノビジンに、袖を引っ張られたままジムの奥の方へ引きずられていった。

 

高槻を引きずっていくユキノビジンをみながらゴールドシチーは

 

「ユキノ、高槻がやらかしそうになるとすぐハイになりますからね。契約前から色々あったので、仲は良いんですけど。」

 

 言い方の割には、微笑ましいものを見ている表情だなと流は思った。

 

「私が知っている高槻はすぐ手が出るタイプでしたし、何をやらかしたのかは、だいたい予想はつきますね、私の勤務初日に高槻と一緒に来ていましたから、その時に私が昔のこともあって高槻に悪態ついてしまった時に怒っていましたからね。」

 

「それは自分の担当をいきなり罵られたら、誰でも怒りますよ。」

 

「事情を話した上で謝罪したらすぐ許してもらえました、お詫びでコーヒーも出したら二人で仲良く飲んでましたね。」

 

「謝罪して受け入れてもらったなら、アタシからは何も言うことはないですけど、口が悪いのはあまり良くないですよ、それと試合が決まったみたいですけど、色々あったみたいだしコンディションとか練習とか大丈夫なんですか?」

 

「口の悪さは気をつけておきます。試合についてはモデルもされている貴方と一緒で常にオファーが来ても良いように準備はしていますからね、それこそ2週間前ぐらいのオファーなら問題なく受けられるぐらいのレベルで体型も体力も維持していますから。」

 

「さっきパワーもテクニックも上の相手とか言ってましたけど勝てるんですか?前に酷い事故にあったといってたじゃないですか。」

 

 ゴールドシチーが流を心配しているのは、ジムでのトレーニングについて流に恩義があるからだ。

 

 モデルとレースの二足の草鞋を履くゴールドシチーは過密スケジュールにおける撮影の影響で施設の使用予約をしても間に合わなかったりすることが多々あり充分な練習時間を確保できなかった、それでも使える器具でトレーニングを続けていた。

 

 そこで彼女のトレーナーがダメ元で流に相談した所、兼業アスリートの苦労は知ってるし遅れてもしっかり来て練習をしているのだから、予約した器具は【整備中】にしてくれたりとしっかり練習できる環境を整えてやると優遇してもらい、親友のトーセンジョーダンの皐月賞を走れるようにどころか、勝利出来るようにサポートしたり、その上でトレーナーと同じ様に自分の事をモデルではなくアスリートとして見てくれる数少ない大人の一人でもあった。

 

 ただし人間性があまりにもクソなので異性としてみることは無理に等しいがそれでも恩もあるし、一定の信頼を置ける話しやすい大人というのがゴールドシチーの中での流だった。

 

「大丈夫ですよ、どんなに力と技が優っていようとも斬ってしまえば試合は止まりますから。」

 

 自分の顔を指差す流をみてなんとも言えない表情をゴールドシチーとトーセンジョーダン。

 

「流さん、凄く・・・御機嫌ですね。」

 

「そんなことねえよ、試合も単なる仕事にすぎねえよ、あるからやるだけさ」

 

「嘘・・・ですね・・私と同じ様に・・・流さんも自分で思っているよりも・・・態度や顔に出ていますよ、それにキックボクシングが大好きと言ってたじゃないですか・・・流さんは自分の感情を仕事という言葉で抑えているように見えます。」

 

あくまで仕事と言う流に対しマンハッタンカフェは誂うように答えると流は苦笑しながら

 

「そりゃ嬉しいけどな、試合ができてなおかつ強いやつと戦えるのは、ただプロであるかぎりはこれは仕事だからな難しいところだ、んでそんなに俺は顔に出るか?」

 

「ええ・・・はっきりと」

 

楽しそうに答えるマンハッタンカフェをみてトーセンジョーダンは流を観察しながら

 

 

「え、マジ?ジムカン、いろいろ顔に出てるの?あたし全然わかんないけど、シチーわかった?」

 

「あ〜言われてみれば、管理人さんはモデルや俳優が演技や撮影のために自然な表情を作る感じの奴で、無表情を作って顔に出ないようにしてるのを習慣づけてる感じかな?」

 

「ご明察、試合の時にリアクションが顔に出ないように幼い頃から常日頃、練習してたらいつの間にか仏頂面で居るのが楽になってずっとこんな感じです、習得できるまで苦労しましたよ。」

 

 試合において微妙な表情の変化で、ダメージやスタミナを悟られたりジャッジの印象が悪くことがないようにする訓練として流は常にポーカーフェイスで居ることに努めていた、流は子供の頃は特に痛がりで泣き虫だったので、それを身につけるために相当に苦労した。

 

 ちなみにタイ人ファイターは良いのを貰うと力を抜くためにニヤリと笑うのも多い。

 

「直せるのなら直して愛想よくしたほうがいーよ、ジムカンの顔、傷跡多いから初対面の子だとめっちゃ怖くて話づらそうだし。」

 

「そうですよ、せっかく知識もあって面倒見も良いんですから、もったいないですよ。」

 

 愛想を良くしたほうがいいと言うトーセンジョーダンとゴールドシチーに対して流は。

 

「正直、仕事が増えるのは面倒なのでこのままで良いかと。」

 

試合の話が出た事もあり、練習時間を削られたくないというのも大きい。

 

 

「「「最低」」」

 

三人が声を揃えた事に対して

 

「別に質問してくるならちゃんと教えるんですから良いじゃないですか、それに私は学園の教官やトレーナーとの関係上こっちから声をかける事はあまりすべきではないんですよ、トーセンジョーダンさんの件は偶然が重なったとは言え、本来は越権行為もいいとこですから。」

 

内容に穴はあるから探せと遠回しに答えた

 

「要するに自分で声かけるか誰かが連れてきてその場で紹介するならOKって事でいいんですよね?」

 

「ええ。」

 

「んじゃあ、選抜レース前のあたしのダチ沢山連れてきてトレーニング見てもらってもいいの?」

 

「ええ、まとめて面倒見たほうが私としては全体を確認して後で一人一人教える方が楽で有り難いですね、こちらも予定の確保がしやすくなりますので。」

 

「うっし、じゃあ今度連れてくるからジムカンお願い。」

 

「わかりました、その時は先に端末で予約をお願いします、そろそろキッチンカーも来そうなんで椅子とテーブルを運び出さないといけませんので、高槻を呼んできますね」

 

 流はそのままジムの端で正座させられてユキノビジンから叱られてションボリしている高槻を連れてジムのそばの適当な場所にテーブルを運び出した。

 

 到着したカレー屋のキッチンカーが中型のバスサイズだった事とカードが限度額を超えてしまい、理事長に立替えてもらったことで流は後でたづなさんからめっさ怒られた。

 




次回はカレー食いながらのお話でファン感謝祭やキック関係とか少し短く番外編みたいにする予定です

登場人物のしょうかいとかもやっておきたいです。
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