ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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いつまで31.5話を続けるんだよ…とは思っているのですがまとまった時間が取れないのできりの良いところで上げています次回で終わるといいなあ。


31.5(3)ヒトは結局勝てない。

「ああ、キッチンカーの中は暑いな。」

 

複数の鍋で筋肉質の男達が高火力でカレーやインド式炊き込みご飯であるビリヤニや窯焼きを作っているのだからそれは暑い。

 

 男たちは入ってきた二人を睨むような目で見たが流を見ると表情が柔らかくなった。

 

「あ!ソウマ何しに来たの?コーヒーつくる?」

 

サブリーダーらしき男が声をかけてきた

 

「何しにって、ミスターからコーヒーとか色々作ってくれと頼まれたので。」

 

「ボスの頼みならイイヨ、ソウマのコーヒー美味しいから沢山作ると良いよ、後ろのお嬢サンダレ?」

 

「学園生の見習いバリスタですよ、まあコーヒーは淹れられますがエスプレッソは経験が少なめなようでここで軽く伝えてみようかと」

 

「そう、お嬢サン、ちょっと小さいから、ドリンクエリアの近くに踏み台あるから、それつかうと楽になるよ、お嬢さん。」

 

男は作業しながらマンハッタンカフェに伝えた。

 

「ありがとうございます」

 

「ソウマ教え方丁寧だけど結構厳しいからがんばってね。」

 

サブリーダーはそのまま作業にもどった

 

「厳しく・・・するんですか?」

 

少し不安そうな顔で見てきたので

 

「まさか、カフェはエスプレッソに関してはまだ基礎段階だし、教える内容は学生同士のお茶会や文化祭の出店向けレベルだから厳しくやる事はないよ。」

 

 ドリンクエリアに入ると、そのまま複数のスパイスを選びだした

 

「シナモン、クローブ、ジンジャー、スターアニス、ナツメグ、カルダモン・・・色んな種類の香辛料を使うんですね。」

 

「ああ、本当はこいつをチャイの応用で砂糖をたっぷり入れた牛乳と砕いたコーヒー豆に隠し味として練乳を加えて、煮出すんだが、今回はラテのミルクとして使う。」

 

「ラテと言うことは・・・エスプレッソをベースに?」

 

「ああ、マシンもグラインダーも俺が選んで買わせたのだけあって一連式だが良いものだよ。」

 

 会話をしながらすり潰した大量のスパイスと砂糖と牛乳を鍋に入れてゆっくりと煮立てはじめると、エスプレッソマシンのタンクに水を注ぎボイラーのスイッチを入れた

 

「カフェはエスプレッソをセットするための基本的なやり方は、分かってるよな?」

 

「はい・・・まずは粉を入れるドーシング、粉を均すレベリング、粉を押し固めるタンピングです。」

 

「流石、手順は心得てるな、俺が見本を見せようか」

 

 流はグラインダーに車の棚にあった豆を入れ肌感覚で粒度を設定し、フィルターをセットすると手際よくコーヒー粉をいれ、すぐに粉を平らに均すと素早くタンピングしフィルターをマシンにセットすると蜂蜜のようにトロリとした濃厚なエスプレッソが、流れ出てきた。

 

「凄い・・・動きに無駄がないし、レベリングのときも粉が溢れてない・・・・タンピングも一回で完璧に仕上げてる。」

 

コーヒー粉をホルダーに詰めて圧力をかけるとき、何回かに分けて味を調整するものだが流はソレを一回で仕上げていた

 

「そうか?俺の動きは練習と実践をしっかりやっているからだから、カフェも経験積めばその内出来るようになるよ、俺がカフェぐらいの歳の頃と違って、今は便利な道具が揃っているから早く技術を習得できるとおもうぞ。」

 

「私と同じくらいの時というと・・・今おいくつなんですか?」

 

「昔、俺が焼肉屋の軒先で七輪借りて珈琲豆焙煎してた時あったろ?その時の俺が高2だったかな、できたぞ飲め。」

 

流は抽出されたエスプレッソの入ったカップをマンハッタンカフェに手渡すと、マンハッタンカフェは一気に口に含む

 

「苦いのに口当たりは柔らかくてチョコとナッツのような風味に・・・スパイシーな後味がありますね・・・アジア系の豆を重視しているのしょうか、あの時が・・・5年ほど前でしたから今は・・・22歳位でしょうか?」

 

「両方とも正解、コーヒーに関しては俺がこの店のために調整したブレンドで、ネパールの豆をベースにしてタイの豆とブラジルとケニア、クレマの質を良くする為にロブをブレンドしたよ。で・・・俺は老けて見えるか?」

 

少し気にする素振りを見せた流に軽く吹き出しそうになる。

 

「普段の振舞いはちゃんと年相応ですよ・・・ただ・・・時折・・・言葉遣いや・・・行動が幼いと言うか・・・子供っぽく見える時があって、ちょっとだけ可愛いなと思った事なら。」

 

 流は可愛いと言われたことに驚きつつも、グラインダーのメモリとエスプレッソマシンの設定をリセットしながら答えた

 

「小中はキックの練習と店の手伝いばっかりで学校は勉強だけして帰る場所だったのと、高校からはバイト以外は練習でジムの空いた時間はキッズクラスを中心に教えてたし、そのせいで同年代との関わりが殆どなくて、関わりがあったのが大人か子供ばっかりだからそのせいだろうな。」

 

「じゃあ・・・今・・・私みたいな年代の子達と関わるようになってどう思いますか?」

 

 マシンからホルダーを外し、ダストボックスの縁をホルダーで叩いて抽出した後の粉を落とした。

 

「接客業として考えるなら、普通にこなせば良いってだけだからなんとかなるが、俺個人としては、まあ、難しいな・・・特に関わったことの無い年代の上に、女子中高生でソレもウマ娘ときてる、地雷原の上で四六時中タップダンスを踊り続けてる気分だよ勿論踏まないように気をつけているけどな。」

 

「気をつけていると言う割には、沢山踏んでいますよね。」

 

笑うマンハッタンカフェに流はひねた口調で答える。

 

「だから難しいんだよ、それよりもさっき俺が淹れたエスプレッソの感想をしっかり聞きたいけどな、これからカフェには調整から覚えてもらうんだからな。」

 

「もちろんエスプレッソはパンチのあるワイルドな苦味で美味しかったです・・・機械を全部リセットするのは・・・ちょっと意地悪じゃないですか?」

 

「元々の基礎はわかってんだろ?バスケットサイズは20gで後は粒度と抽出量と速度の計算やるだけだから簡単じゃねえか、ゆっくりやれば良いしあくまで最初は調整だから焦ることはない、思うようにやれば良いさ、失敗ぐらいで怒りゃあしないよ。」

 

 流はさり気なくマンハッタンカフェが作業しやすいように踏み台をセットしてから、場所を入れ替わった

 

「でも・・・変に理不尽な時ありますよね?」

 

「珈琲は別だよ、まずは粒度を決めていこうか。」

 

 理不尽な自覚はあるのかと思いながら、マンハッタンカフェは粒度の調整メモリをエスプレッソ用に設定した。

 

「まずは基準を決めたな、前回の挽いたぶんが残ってるから一杯分は廃棄のつもりで出してしまうといい。」

 

「それだと・・・豆が勿体なく無いですか?」

 

「流石、良いところに目をつけたな、カフェの同室のユキノビジンさんに渡してクッキーを作ってもらう時に練りこんで貰えばいいじゃん。」

 

「ユキノさんがクッキー焼けることを知っていたんですね。」

 

「ああ、コーヒーの礼にって高槻と一緒にトレーニングに来たときに合わせて持ってきてくれたんだ、コーヒーに合うタイプのクッキーだったな。」

 

「ええ・・・私がコーヒーを淹れるとき、ユキノさんはクッキーを焼いてくれるんです。」

 

一杯分の豆を排出し袋に入れておく。

 

「それでコーヒーの味を生かすクッキーを作るのが上手いのか、とても仲がいいっていうか好かれてんな。」

 

「ええ・・・揺りかごのように優しくて・・・一緒に居て幸せな気分になれますし・・・大好きで大切な方です。」

 

 答えながらマンハッタンカフェは再びグラインダーにホルダーをセットし豆を挽く準備に入る直前、流が不機嫌になっているように感じた。

 

「・・・どうしました?」

 

気になったので聞いてみると

 

「別に・・・俺だってカフェの事が好きなのにって思っただけさ。」

 

 マンハッタンカフェが動揺したのか思わず流の方を振り向いた直後、グラインダーの感圧スイッチがフルスロットルで押され大量のコーヒーの粉が滝のように流れ出た。

 

それを見て流は大笑いしながら。

 

「引っかかったな、その程度で動揺するようじゃ、一流のバリスタには……いや悪ぃ……何かイラッとしてつい変な事言っちまった。」

 

 流石にやり過ぎたと思った流はマンハッタンカフェの表情を見ると、怒っている感じではなく、例えるなら悪戯をした子供に【どうしてそんな事をしたの?】と問い掛けてくるような、そんな感じだった。

 

その問は流の予想通りで。

 

「どうして・・・イラッとしたんですか?」

 

 思わず顔を逸らそうとするが、前と同じように流の顔を掴んで固定してじっと見つめてくる。

 

 瞬時に脱出のための技術を頭の中で捜索するがどれも通用しない。今度のこれは違うと、流は人間とウマ娘の力の差を肌で実感し、今迄は加減されていた事を理解らされた。 

 

 言葉を選ばないと死ぬんじゃないかと思いながらも、まっすぐにこちらを見てくるしその瞳を裏切る気にもなれなかったので正直に答えた。

 

「正直よくわからない、ただカフェがユキノビジンさんを大好きといった時に妙にイラッとして、ちょっとからかってやろうと思った。」

 

直後何がおかしいのかマンハッタンカフェは流の顔から手を離して花咲くように笑いだした。

 

「こっちは真面目に答えたのに何がおかしいんだよ?」

 

よくわかっていない流は不満げに返すその顔は険がとれいつもより幼く見える。

 

「ごめんなさい・・・やっぱり可愛いなと思ってしまって、いつもより顔が優しくなっているというか・・・昔お会いしたときの様に時に戻っていますね。」

 

と機嫌良さげに答えられた。

 

 逆に怒りが限界突破して上機嫌に見えるようになったと思ったので流はやり過ぎたと反省しながらも

 

「俺の中でどういう物かはわからないけど、さっきの好きだって言葉は…嘘じゃない。」

 

 本心を伝える事で最後の抵抗を試みたら、目の前の少女の耳と尻尾が大きく動きだした。

 

「フフ・・・わかっていますから、今度は悪戯せずにちゃんと教えて下さいね。」

 

 上機嫌で言われたその言葉を流は【うるせえ、次やらかしたら、消すぞ】という死刑宣告と判断した。

 

 流は『分かった』とだけ返すと一緒に片付けを始めた。

 

【お友達】から『良かったな』と肩を叩かれた気がした。

 




もう少し時間が取れればなあと思いつつ、いつも読んでいただきありがとうございます。

 最近は少しでも読みやすくなるよう、前の話にも少しずつ色々修正したり加筆したりしていってます。

拙く孟宗だらけの駄文ですが、これからもお付き合いいただけると幸いです。
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