ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
「私がユキノさんに?」
「大切な相手に淹れる一杯こそが味の基準になると思ってるからな、まずはフォームミルクから作っていこうか。」
「ミルクからですか?先にエスプレッソから・・・作るものと思っていたのですが。」
「エスプレッソは高圧高温で出すのと量の問題で冷めるの早いが酸化というか…味の劣化が速いからな、10秒以内に飲むか何かと混ぜるかしないと味が落ちるんだよ。」
「それで・・・エスプレッソ(超特急)なんですね、たしかにそれならミルクを先に用意する方が効率がいいですね。」
マンハッタンカフェはミルクピッチャーに先程のスパイス入りミルクを三分の一ほど入れて、エスプレッソマシンの横のスチームノズルにミルクピッチャーをセットしようとすると流に止められた。
「まずは数秒空吹かしをしてからだ。スチームノズルを当てるのは、注ぎ口の方が安定するが、スチームを使う経験はあまりないのか?」
少し緊張しながらスチームの空吹かしをしている様子のマンハッタンカフェをみて、流は軽く問いかけた。
「はい・・・ウマチューブでやり方を見たことがあるくらいで・・・学園のマシンにはスチームがついていなかったのと寮ではマキネッタを使っていたのでラテ用のミルクを用意する時は・・・牛乳を温めてから・・・泡立て器やミルクフォーマーでかき混ぜるやり方で作っていたので、スチームは未経験です。」
「なら基本から口頭で行くぞ、ノズルの先はミルクに入れてあるな?」
「・・・はい。」
「そこでスチームのスイッチを入れて瞬間的に空気を入れて対流を作って細かい泡を作ってミルクを撹拌させて、熱くなったら止めりゃあいい、上手く泡ができると容量が増えていくから上手く下げていかないと失敗するぞ。」
「随分とアバウトな説明ですが・・・何となくイメージは・・・浮かびました。」
「本場のイタリアはかなり適当だぞ、俺も感覚でしかやってないからな」
少しリラックスしたのか、マンハッタンカフェは、スチームスイッチを入れると一気ミルクの中で一気に蒸気が吹き上がると一気にミルクが泡立ち熱くなり、液面がピッチャーの八分目まで達した所でストップした。
「普段フォームでやってる分、どの位の気泡が適切か良くわかってるな、後はピッチャー叩いてデカい泡を割ればミルクは完成、あとはエスプレッソを抽出していつも通りラテを作ればいいただ、最初のミルクと合わせるのを特に素早くやらないとおじゃんになる。」
マンハッタンカフェが抽出を開始すると同時に業務用のスマホから高槻にLANEで近くに来るようにと連絡した。
キッチンバスのドリンクバーの近くのドアをスイッチで開けておき階段を出しておく。
マンハッタンカフェは抽出を終えたエスプレッソをマグカップに移しミルクを注ぎ始めると、ピッチャーの動きだけで絵を描き始める。
「大したもんだなもんだな、ほぼフリーポアで雪うさぎを書き上げたか。」
「ええ・・・お友達とそのお友達と喫茶店ごっこしているときに・・・沢山練習しましたので。」
「お友達の友達かなんかややこしいが、お友達と同類なら結局ラテは廃棄したんじゃないか?」
「いえ・・・皆さん・・・ちゃんと飲んでくれましたよ。」
「飲めるんなら、まあ良いか。」
今度は流がエスプレッソの抽出の準備に入る、ホルダーを強くダストボックスに叩きつけて粉を捨て、ほんの少しだけグラインダーのメモリを0.5ほど細かくすると、ホルダーをセットすると一気に豆を挽いていき、指で軽く粉を整えると、タンパーを叩きつけるようにタンピングを終えマシンにセットしカップを置き抽出をはじめた。
「ドーシングから抽出開始まで・・・30秒もかかってない・・・これが本物のバリスタの速さですか、随分とワイルドなやり方ですね。」
「イタリアとかフランスとかは一人で沢山淹れるから結構大雑把にやるんだ、丁寧にやるのはウマバとかのシアトル系が持ち込んだやり方で、日本の純喫茶はそのやりかたがベースになってるんだ、二人が来るころだから準備しておけ。」
ユキノビジンと高槻がバーカウンターにつくと同時に抽出を終えると、素早く氷と練乳とガムシロップの入ったグラスにエスプレッソを移し替えてからミルクを注いでマドラーで軽くかき混ぜた。
「いつの間に・・・グラスを用意していたんですか?」
やたら作業の速い流にマンハッタンカフェは驚いていた。
「スチームミルクの作り方説明をしている時にだよ、数秒で終わるからなこんなのは。」
「それにしても練乳ガムシロップとを入れたり随分と甘みの強い・・・ドリンクを作りますね。」
「ああ、俺にエスプレッソの基礎を教えてくれたのがタイ人のバリスタだからだよ。俺が作るコーヒーのベースはタイ式になる。先に二人にコーヒーを出そうか。」
流が高槻に冷たいエスプレッソの入ったグラスを出してやる横でマンハッタンカフェがユキノビジンにコーヒーを出していた。
「結構甘くてスパイシーな感じっすけどスイスイ飲めるっすね、蒼真さんのことだからエスプレッソそのまま出してくると思ったんですが。」
「エスプレッソは苦いからな吹き出されてもたまらねえし、そんで美味くないと言われるのも嫌だからなちゃんとしたもんは出すよ、アメリカーノみたいなのが良かったか?」
「いえ、これでいいっすよ。ブラックコーヒーは苦手なんで、それと・・・警備部のボスに連絡にしたら、OKでまあ今度、ファイン殿下のSP隊と合同で格闘訓練やるからその時に来いって。」
「SP隊ってウマ娘ばっかりだろ?フィジカルに差があるし、それ以前に俺は指導はともかく自分の練習の為に女に手を挙げる趣味はねえぞ。」
「あんたカフェさん投げようとしたよな?それはそうとしてSP隊は直接護衛するウマ娘チームだけじゃなくて遊撃や先行偵察をする連中は軍人や警察上がりの男連中も結構いますからね。」
「そうなのか、前にファインモーションさんがジムに来た時SPは隊長さん含めて4人だったな、後は本人とトレーナーさんが一緒に来てたよ。彼女のトレーニング中に合間見て一人ずつコーヒー出したら 、休憩か非番のときに隊長さんがよく飲みに来るようになったよ。」
「そうなんすか、やっぱりブラックで飲むんですか?」
「休憩はブラックだけど非番のときはほぼアイリッシュコーヒーだよ、本来はアイリッシュウイスキーを使うんだけど、ノンアルのアイリッシュシロップで代用した奴にコーヒーを加えて上にホイップクリームを乗せるんだよ、故郷の味と喜んでたな。」
「本来は酒だったら、ノンアルだと物足りないような気もしますけどね。」
高槻は甘いコーヒーをゆっくり味わって飲みながら答えた。
「隊長さんもそう言ってたが、流石に学園施設内でアルコールなんざ出せねえし、それに非番とはいえ朝から酒飲むのはあんまよくねえよな。」
そこで流はなにか閃いたように。
「そうか、トレーナー寮に来るように言えば良いのか、そこならアルコールも出せるか。」
「なんでそんなナチュラルに悪意なくそんな発想が出てくんすか?」
「?学園敷地内だし、レディキラー程じゃないが強い酒だからな、仮に酔いつぶれても、寝る所もあるから問題ねえだろ?俺はジムで寝れば良いだけだろ?介助の必要はあるから居たほうが良いのか。」
こまった顔をしている高槻を見て流は少し考えてから。
「カフェとユキノビジンさんはどう思います?」
その話を振られてマンハッタンカフェは、流が邪な考えを持ち合わせていない事はわかっているので、諭すように答えた
「流さんが・・・全く悪意をもち合わせていないことは充分理解していますが・・・隊長さんは王族関係で働いている方ですので・・・変な噂が立つような事は避けた方が良いと思いますし、緊急時の対応を考えたら・・・お酒も好ましくないかと。」
「そうか、故郷の味で好物と言ってたからな、それならコーヒーに合いそうなアイルランドの菓子を作ったほうが良いか。」
「そうですね、そういった形でしたら、お仕事中でも食べられると思います・・・それに他の隊員さんのお土産にもなるでしょうし。」
「あたしもカフェさんの言う通りだど思います、お菓子はみんなで食ったほうがうんめぁーから。」
「ではリンゴを使ったケーキでも用意してみましょう、二人共相談に乗って頂きありがとうございました。」
流は軽く会釈をすると高槻の方に向き直ると高槻がスマホを見て妙に引きつった顔をしていた。
「どうした、なんでそんな顔してんだよ?」
「蒼真さん・・・今、LANEで連絡があって警備部のボスがここに来るそうです、久々アンタに会ってみたいって。」
「ああ、警備部って外部の警備会社に委託してたよな・・・確かCSSだっけ」
「ええ、施設内の管理業務はCSSが委託を受けていて・・・ウマ娘たちの警護チームは警備業法の範囲外で動けるようにトレセン学園が直接雇う形でボスが指揮しています。」
サラッと言われたが学園にはウマ娘に危害を加えようとする連中を暴力で排除する者がいるってことだと、流は認識した。
「CSSは警備会社の他にもフィットネスジムと格闘技ジムを兼業でやってたよな、その上で聞くが警備部のボスってジムのオーナーもやってたりするのか?」
「ええ、ボスがオーナーでやってますよ学園のすぐ近くで、ここで働くプロも結構いますし、商店街の方たち向けにフィットネス教えてますね、ボスも時々教えに言ってます。」
「久々って言ってたし知り合いかもしれねえな…警備部のボスは想像してる通りの人物だったらだけど。」
「多分、ご想像の通りっすよ・・・」
流が高槻からの返答を聞いた直後だった。
「あらぁ~もう!!ちょっと見てよルナちゃん!これってキッチンカーじゃなくてキッチンバスじゃない!いくらやよいちゃんの許可を受けたからって、ちょっとデカ過ぎじゃない!?地味に通行の邪魔にならない所に停めているから責められないし、ルールの穴をしつこく突いていくところがまた小憎らしいのよねアイツはムキー!」
外から野太くクソデカオネエ言葉が響き渡ったのを聞いて流はため息をついた
「やっぱり知り合いか・・・あそこの会長じゃねえか。」
「流さん・・・鎌太刀先生・・・とお知り合いなんですか?」
なんとも言えない顔をしている流にマンハッタンカフェが話しかけてきた。
「カフェさん、鎌太刀先生でねぐで『ジャスミン』さんです。」
「ユキノさんの言う通りで・・・ジャスミンさんでしたね・・・お知り合いなんですか?」
「ああ、プロになって最初の頃、鎌太刀さんが会長やってるジムの選手と試合したよ、中々に強くて肘で斬ってギリギリ逆転勝ちだったけどな・・・それから何度か出稽古でお世話になったこともあるよ。」
【눈_눈…】と表現するしか無い表情で遠い目をしたまま流は答えた。
「その顔を見ると余り良い思い出では無さそうですが・・・何かあったんですか?」
「別になにもないよ・・・昔はお世話になっていた。いい人だけど疲れるんだ、昔からあのキャラクターだからな。」
「なるほどなあ・・・そういうことですか。」
「そういうことだ、カフェは鎌太刀さんとどういう知り合いなんだ?」
「おもに安全講習を担当する教官さんで・・・聞き上手で生徒の悩み相談に乗ったりもするので・・・学園の人気者ですね・・・私とユキノさんの所属するトレーナーグループのマネージャーで・・・私のトレーナーさんのお兄さんでもあります。」
「なるほどなあ・・・意外と身近なんだな、しっかし久々で顔合わせづらいなあ、このキッチンカーの件で何言われるかわからん流石にやらかした気がしてきた。」
「大丈夫です・・・私が一緒に付いて行けばそんなに言わないと思います。」
【눈_눈…】とした表情で考え込む流を励ますようにカフェが声をかけた。
「ああ・・・マジで頼むわ正直言って何を話して良いのかまるでわからん・・・ありがとなカフェ。」
マンハッタンカフェは楽しそうに一言「どういたしまして」とだけ答えた。
「で、高槻は鎌太刀さんと、どういう関係なんだ?お前は警備部とは違うし警護チームでもないだろ、訓練は受けているみたいだが。」
高槻は少し答えづらそうにしながらこたえる。
「ユキっぺとの契約する少し前にトラブル起こしちまって、理事長が処分を軽くする条件として、鎌太刀さんのところで警護者としての訓練を受けて力の使い方を覚えろってことで、鎌太刀さんの所にいるんすよ。」
力の使い方という所で高槻が何をやらかしたのかは想像がついたのと同時にその事実を利用して学園は最初から高槻をとして組み込むこむつもりだったのではと流は感じていた。
そこへヴィシュヌが上がってきた
「ソうマ!鎌ダチさん呼んデますよ、コーヒーとミルクの調整終わったナらデてきて下さイ、後はワタしがドリンクつくりマすから。」
「わかりました、皆さんいったん出ましょうか・・・後カフェ、悪いんだがあの人の前に着くまで手握ってて引っ張ってくれないか?」
相変わらず【눈_눈…】という顔のままの流に笑いそうになりながら。
「大丈夫ですよ、一緒に行きましょうか。」
バーカウンターの天板を上げてマンハッタンカフェは流の手を取ってキッチンカーの外へ出た。
(続く)
次回は格闘技とかその辺に触れる回になる予定です。
いつも感想とお気に入り登録ありがとうございます。
拙い文章ではありますがよろしくお願いします。