ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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なんとか投稿できました、少しだけ話が進みました


32.基礎練習はだいじ、後設備はだいじに(1)

「良いパンチだねえ、ダッキングからのカウンターで右ストレートからの左ボディからの左フックの三連打、キックだけじゃなくてボクシングも相当やり込んでるよこの外人さん。」

 

カレーパーティーの翌日ジムの給湯室前のカウンターでタブレットを用いて流の対戦相手の動画を見ていたワンダーアキュートは流が対戦する選手、ニコラの動きに感心していた。

 

「ボクシングのテクニックに加えてあれだけ蹴られて後ろに下がらずガードも下がらない外人さん特有の体の強さに加えて、正面からじゃなく斜めにステップインしてサウスポーの左の攻撃の芯を外すディフェンスのテクニックもあって、打撃でお兄さんが有利な点はあんまり無いねえ、お兄さん何ラウンドやるんだい?」

 

「この試合は肘なし3ラウンドですが、私の試合は肘ありなので5ラウンドですね。」

 

流からラウンド数を確認するとワンダーアキュートは一呼吸おいて

 

「うーん、あたしはキックは素人だけど、5ラウンドだったら時間みっちり使って腕や足を蹴って行けばスピードは落ちるかもしれないねえ」

 

少しずつイメージを固めるようにしながら言葉を選んでいく。

 

「あたしが素人なりに作戦を考えるなら徹底的にパンチのディフェンスを磨いて貰わないないようにしながら蹴っていって、圧力をかけられたらパンチをかいくぐって組んで腕を絡ませて膝蹴りでコツコツやってポイントを取っていくか切れてストップがかかるまで肘を連打しての早期決着ぐらいしか無いねえ」

 

「やはり、ワンダーアキュートさんもそう考えますか。」

 

「お兄さん、パンチがムエタイ寄りで力はあるけど単発になりがちだからそこを突かれると倒されるかもしれないねえ、だからパンチのディフェンスはステップインとステップバックとスウェーとダッキングとブロッキングを徹底してパンチを貰わないようにするのが一番じゃよ、パンチはお兄さんコンビネーション苦手そうだから本当に基本のワンツーとダッキングからストレートフックストレートのカウンターそれぐらいシンプルでいいんだよ。」

 

カウンターの前でシャドーを行いながら、ブロッキングとダッキングからのカウンターを行う流を観察する。

 

「そこでお兄さんに提案があるんだけど、あたしもレースまで暫く日にちがあるから、あたしの時間が空いている時でよかったらパンチのミットを持とうかい?その代わりに私のふぃじかるトレーニングを見てもらいたいんだけどいいかい?」

 

「ミットを持ってくれるのは有り難いですが、フィジカルトレーニングも勿論構いませんが、先にワンダーアキュートさんのトレーナーに話を通しておいて下さいね。」

 

「トレーナーさんにお話はもう通してあるから、大丈夫だよ、お兄さんの復帰祝いで今日はとことん追い込むからジャージを脱いでおかないとぶっ倒れるよ。」

 

流は床にジャージを脱ぎ捨ててラッシュガードと短パンのみの姿になる、絞り込まれた流の体を見て。

 

「やっぱりナチュラルでその体だと減量がきつそうだねえ、リミットまで後のどのくらいだい?」

 

「後5キロぐらいですね、普段の練習で通常体重から2キロは落ちるので2週間前から減量すればちょうどいいぐらいす。」

 

こうしてワンダーアキュートによる流のデスミットが始まった。

「ジャブは利き手と違って前にあるから力が入り切らんからね、足のステップのスピードで威力をだすんだよ。」

 

1回、2回、3回、4回、5回・・・10回と階段を重ねるようにジャブを打っていき、そこからワンツーに入る。

 

「そうそう、いつでもパンチだけだけど蹴りが出せるように歩幅と重心を意識しておくんだよ。」

 

流のワンツーの引きに合わせて、右を返すと流は、ダッキングさせ、左、右、左と小さくまとめていきパパパンと小気味よく乾いた音がジム中に響く。

 

サウスポーとオーソドックスで位置取りの指導はワンダーアキュートは足を踏んで抑えたりして指導していく。

 

「足の位置が悪いとそれだけで良いのもらうからね、相手のパンチや蹴りを出しにくくて当たらんようにして、自分の攻撃が当たるようにせんと。」

 

ワンツー中心のハイスピードのミット打ちが45分間延々と続いていく。

ワンダーアキュートの左フックをバックステップで躱してワンツーに入ろうとした所へジャブにカウンターで内側からジャブを合わされた。

 

「真正面から入らない!殴り合いじゃないんだよ、斜めから入らんと!」

 

ワンダーアキュートによる流のパンチミットが続く横でウマ娘とトレーナーが二人を見学していた

 

「うわあ、見てよトレちゃん。管理人さん、アキュさんのミットにずっと付いていってるよ。」

 

「うん、付いていってるだけじゃなくて、あれだけ動いているのに、重心も足の幅も頭の位置も変わっていないし、どんなにパンチを出しても正確に元の構えに戻ってるから、相当に走り込んでるな、それこそウマ娘並に。」

 

「あ~わかる、スタミナと足のバネ、膝の柔らかさ、アレは走ってないと出来ないからね。」

 

流の左の打ち終わりに合わせて、ワンダーアキュートが左のボディジャブから右のスイングブローを振り下ろしてきた。

流がダッキングで避けるとワンダーアキュートは素早く右を引く勢いで左のフックを返していく、そのフックをスウェーバックで皮一枚で避け、その反動で左ストレートをミットに打ち込んだ。

 

「ウッソ!アレ避けてカウンターできんの!?予測つかないでしょ、アキュさん動きでフェイント入れまくってたし、アレ加減してるとはいえ当てるつもりで振ってたっしょ。」

 

「反応っていうより、予測してたんだと思うな、下から上って感じで次に来るのはこれだろうなって。」

 

「ふむようするに経験に基づく予測ってやつか、見た感じトレちゃんと同じくらいの歳なのにベテランさんってことだね。」

 

二人が会話している間に、ワンツーをしっかり叩き込み30分ノンストップのミットを終えた

 

「お兄さん、やっぱりパンチのディフェンスとカウンターの左ストレートは上手だけど、お兄さん蹴りのほうが得意だからちょっと重心が高くて腰を大きく回しちゃうのは御愛嬌だねぇ、でも何時でも蹴りが出せるように歩幅と後重心を意識できていたのは流石だね。」

 

「えっ!管理人さん蹴りが得意ってボクサーかなと思ってたら違うの?パンチがすごいから、ボクサーかと思ったよ。」

 

先程からトレーナーとミット打ちを観察していたおかっぱで赤い眼鏡をかけたボーイッシュのウマ娘が興味深そうに流に話しかけてきた。

 

「トランさん、お兄さんはボクサーじゃなくてキックボクサーよ、脚を見れば一目瞭然じゃろ。」

 

「いや、脚見ても専門外だからウチには違いわかんないって!アキュさん。」

 

ワンダーアキュートにトランさんと呼ばれたウマ娘トランセンドはガチ目の格闘技ネタに思わずつっこんだ

 

「ボクサーは蹴り技がないから脚が細いけど、キックボクサーは蹴り技があるから脚が太いんよ、後ボクサーは靴を履くけどキックボクサーは裸足でやるんよ。」

 

「ナルホドねえ、ウチらで例えるならスプリンターとステイヤーの違いみたいなもんか。」

 

「全く別の競技ですから例えとしては全く違うのですが、言わんとしていることは伝わるのがなんとも。」

 

流はトランセンドに困ったように返して

 

「球技で例えるなら野球とサッカーくらいの違いがありますからね、ルールも体の使い方も目的も全然違いますので。」

 

さらに流が自分でもわかりにくい例えと説明をしきたので少し考え込むトランセンドに彼女のトレーナーが捕捉した

 

「要は、ボクシングとキックボクシングのパンチは別物って事だよトラン。」

 

「そうそうボクシングとキックボクシングのパンチは手の使い方は近いけど、足の幅や姿勢、構え、重心が違うんよ、お兄さんはパンチじゃなくて蹴りが主体だからね、重心が高くて後ろにあるんよ。」

 

「へぇ〜そう言われてみると色々違うんだね。」

 

「マニアックな話は長くなりそうなので置いといて、トレーニングメニューの相談ですか?」

 

「それも良いかなと思ったんですけど、ジムで管理人さんが専門店顔負けのコーヒーを出してくれるって情報が入ったから、トレーニング後の一杯ってことで、トレちゃんと頂こうかなと思って。」

 

「そう言う事でしたら、何かお出ししたいのですが、今給湯室から締め出されてしまいまして。」

 

「え、何かやらかしたんですか?」

 

流は困ったように

 

「いえ、早朝一通りラントレしてシャドーと筋トレ終えて、早朝トレ組の為にジムを開けて缶コーヒー飲んでたら、偶々そこにカフェが来て、私が缶コーヒー飲んでいるの見てからどうも機嫌が悪くて、今は授業を終えて、給湯室にファン感謝祭の出店用の豆の焙煎に来てるんですけど、何か口聞いてくれないし即締め出されたんですよね、焙煎は元々約束してたことだから良いのですが締め出されるのはちょっと。」

 

そんな流が取り出して飲もうとしているのは、激安スーパーで売られているような一本30円程度の微糖のコーヒーだった。

 

「お兄さん、カフェちゃんと約束した時、お礼に行くと言っていなかったかい?」

 

「あー・・・そんな事を言っていましたね何時来るとかまでは言われていませんでしたが。」

 

「多分それで、管理人さんが缶コーヒー飲んでるのを見てか、運が悪かったとしか」

 

「なんというか、タイミングが悪かったねえ、カフェちゃんもわかってるだろうから後で話してきたらいいよ。」

 

「カフェと話してきますので、お二人とワンダーアキュートさんは少し待っていただけますか。」

 

流が給湯室に向かおうとしたその時、バカでかい金属の激突音が鳴り響いた。

 

流は事故の可能性があると判断しすぐに音の発生源に向かうと

 

「ぎゃああああああああ、やっちまいましたわ!」

 

片側100キロを超えるのプレートが付いた。グニャグニャになったバーベルシャフトと激突の衝撃でセーフティが壊れたスクワットラックの前でロングヘアを三つ編みのハーフアップで纏めた小柄なウマ娘が頭を抱えていた。

 

(続く)

 




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