ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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タイ料理といえばカオマンガイ(蒸し鶏のせご飯)が大好物です


33.基礎練習はだいじ、後設備はだいじに(2)ついでに唐突な無茶振りは良くない。

そのウマ娘は流を見るなり大声で平謝りをはじめた。

 

「本当にすみません!わざとじゃないんですのよ!思いっきりスクワットしたらバーベルがひん曲がってラックを跳ね上げしまいましたの!」

 

 流の顔は端正であるが傷だらけであり、日本刀のように非常に鋭く、見る者によっては普段から不機嫌に見えるため、目の前のウマ娘から見ると流が怒っているように見えたのか、酷く落ち込んでいた。

 

 そこへ彼女の隣にいた腰まで伸びた黒髪と前髪に特徴的な流星を持つウマ娘が声をかけてきた。

 

「ジムの管理人さんお見受けします、彼女をカワカミを許して頂けませんでしょうか、彼女は決して故意にマシンを壊したわけではありません、私からも謝罪します。」

 

 冷静を装っているのかその表情は流を見て明らかに強張っていた。

 

 二人とも流の鋭い顔を怒っているように見えているのか、心中穏やかではなく、ガチガチに緊張しているのがわかる、流は穏やかに二人に声をかけた。

 

「二人とも落ち着いてください、まず二人とも怪我はありませんか?」

 

 流の言葉が想定外だったのか、二人とも気が抜けた顔になっていた。

 

「故意にやったのでなければ、怒る事ではありませんし、それよりも怪我をしてしまう方がいけません。」

 

流は曲がったバーベルのシャフトを見て

 

「折れずに曲がって良かった。折れてプレートが飛んでしまう方が大惨事に繋がりますから、改めてお聞きしますが、お二人共怪我はありませんか?」

 

「私は大丈夫ですわ。」

 

「私も問題ありません。」

 

怪我がないという事で改めて叱責を受けるのではないかと、二人の表情が強ばる。

 

「先程も言った通り、私は怒っていませんよ、お二人の身体のほうがですから、ただ理事長と施設管理部とメーカーに報告書を提出する必要がありますのでお話は聞かせていただく必要がありますが、私は管理人の蒼真といいます。」

 

「カワカミプリンセスです。」

 

「ドゥラメンテです。」

 

ドゥラメンテというウマ娘は蒼真という名を聞いてなにか思うところがあったのか流の顔をみていたが直ぐに視線を離した。

 

流も顔アイツに似てんなあと思いつつも本題に入る。

 

「ここでお話を聞くのも、あれですから、給湯室の方へ行きましょうか飲み物もお出ししますので。」

 

流たちはマシンの周りに安全ロープとで進入禁止の表示を設置を終えると給湯室の方へ向かった。

 

「あーそういえばカフェから締め出されたままでしたね何のも用意できなくて申し訳ない。」

 

給湯室の扉にはまだ鍵が掛かっていた。

 

「開かないのでしたら私がぶち破って差し上げましょうか?」

 

「鍵は管理人室にありますのでは壊さなくても大丈夫です。」

 

「そもそも何で給湯室から締めだされましたの?」

 

流は朝の缶コーヒーの件を説明した。

 

「管理人さんにコーヒーを淹れようとジムにやってきた、カフェさんの前で缶コーヒーを飲むなんて・・・間が悪いとはいえカフェさんの気持ちも少しわかりますわ。」

 

「私達の事よりも先にカフェさんと話してきた方が良いと思います。」

 

 先にいた三人もカフェと話してきたほうが良いという意見だった。

 

 流は管理人室から鍵を取り出すと給湯室のドアを開け中に入ると、冷房をガンガンに掛けつつも、コンピュータ式の直火焙煎機をガンガンに稼働させながらガスコンロで大坊式サンプルロースターを併用しながら焙煎に専念しているマンハッタンカフェが居た。

 

「カフェ?」

 

反応が無い、集中しているのだろうかともう一度声をかける。

 

「カフェ?」

 

 完全に無視しているな思いつつ、マンハッタンカフェの首筋に汗の玉が浮いているのを見て休みなしで作業しているのがわかったので。

 

 一旦下がり、冷蔵庫からグレープフルーツを取り出して半分に切り種を取ってから、ハンドジューサーで思いっ切り搾ってから氷入りのグラスに注いでやるとマドラーでかき混ぜて近々に冷やしてやると生絞りジュースのできあがり。

 

 流はタオル片手にマンハッタンカフェに後ろからゆっくり近づき頬にキンキンに冷えたグラスをあてた。

 

「・・・んっ!」

 

 マンハッタンカフェの体がビクッと伸び上がった瞬間、流の顔面に彼女の後頭部が直撃した。

 

 硬く重い後頭部での一撃をもろに喰らった流は一瞬顔をしかめ、ぐらついたがたが、グラスを落とすことはなかった。

 

「流さん!大丈夫ですかっ!」

 

珍しく声を荒げてこちらに声をかけてきたマンハッタンカフェに流は冷静に答えた

 

「いや平気だよ、流石に痛かったけど、それよりも先に水分補給しとけよ、焙煎機の熱で汗がすごいじゃねえか・・・脱水になったらどうすんだよ、」

 

 流はグレープフルーツジュースの入ったグラスを手渡すとタオルでマンハッタンカフェの頭を拭き始めた、当のマンハッタンカフェも流が悪いとはいえ頭突きしてしまったという後ろめたさから、抵抗はしなかったがそれにしても手慣れている感じだった。

 

「随分・・・と手慣れているんですね。」

 

「ああ、妹で慣れてる。」

 

「前にお姉さんと妹さんが居るって言われていましたね。」

 

「後、弟が一人いるから4人兄妹だな、今年小学生になったばかりだったんだけどさ、俺は中学出てからジム暮らしなうえ試合が多いから殆ど帰ってないから俺の事を兄と認識してないと思うんだよなあ・・・年が離れてるし。」

 

髪や首についた汗を拭き取りながらちょっと凹んだようなトーンで話す流。

 

「前に入園式があるから来いと言われて帰って出席したときには俺の顔を見た弟も含めて園児の大半からガチ泣きされて保護者からも苦情が入るわで軽く地獄を見たよ。」

 

「それは・・・なんと言ったらいいのか。」

 

「傷が目立つ上に目つきが悪いから仕方ないさ、終わったぞ」

 

流はタオルを彼女の頭にバンダナのように固定した。

 

「それでだ、なんで朝から機嫌悪かったんだ?俺に頭突きするまで全然口きいてくれなかっただろ。」

 

「それは・・・朝、缶コーヒーを・・・飲んでいたから・・・私が淹れてあげようと思ったのに。」

 

「ちゃんとこの日と約束してたなら俺の責任だけどな、何も言われてなきゃそんなもんだぞ。まさか安い缶コーヒーが邪道だとでも?」

 

マンハッタンカフェは少し不満そうだが落ち着いた態度で

 

「いえ・・・そういうわけでは・・・ないのですが缶コーヒーに負けた気になってしまって。」

 

「気持ちはわからんでもないが、前もって予定を言ってくれたなら、缶コーヒー飲まずに楽しみに待ってたんだけどな。」

 

残念そうに答える流を見て改めて答えた。

 

「確かにそうですね・・・私も少し大人気なかったです。」

 

「よし、こっちは解決したな解決したな。夏休みは予定空いているか?」

 

「いえ・・・特に予定はありませんが。」

 

「んじゃ、パスポートあるか?」

 

「へ・・・一体・・・どこへ行く気なんですか?」

 

「質問を質問で返すのは良くないな。」

 

「いきなりパスポート有無を聞かれたら・・・聞きたくもなりますよ。」

 

「タイ、交通費とホテル代、食費は俺が出すけど一緒に行くか?」

 

いきなりの流の発言に困惑しながらマンハッタンカフェは

 

「誘っていただいて嬉しいのですが・・・いきなり過ぎて頭が回らないので・・・考えさせてください。」

 

「そうか、返答は時間あるし何時でも良いぞ。後なコーヒーとジュース飲みたいのが居るから、手伝ってくれ。」

 

「あ・・・はい」

 

流はマンハッタンカフェを連れて給湯室をでると。

 

「お二人さん、痴話喧嘩は終わりましたか?」

 

楽しそうというか、からかうように質問してきたトランセンドに対して流は

 

「痴話喧嘩以前にそもそも喧嘩はしていませんからね、ついでに夏休みタイに行くか?と誘ったんですがどうにも歯切れが悪くてですね・・・せっかくのコーヒー王国なんですけどね。」

 

「お、おう・・・まあ良いんじゃないですか?ついでで聞くような話じゃないと思いますけど。」

 

どうリアクションして良いのかわからないトランセンドに流はメニューを手渡した。

 

 メニューには良くある深煎りブレンドや浅煎りブレンドだけでなく、ストレートコーヒーや希少なスペシャルティコーヒーと多種多様なコーヒーが乗っていて、ペーパードリップ、ネルドリップ、エアロプレス、フレンチプレス、エスプレッソと抽出方法も選べ、各豆に更にオススメのお菓子が書かれていた。

 

「すごっ、これ、全部無料なんですか?トレちゃんどれ飲もうか?」

 

「殆ど私の実家から仕入れていますし、ほぼ私の趣味でやっている事ですから、ゆっくり選んでください。」

 

流はグレープフルーツとオレンジをハンドジューサーで絞りながら答えた。

 

流は2杯分のミックスジュースを用意するとカワカミプリンセスとドゥラメンテに差し出した。

 

「どうぞ、果汁100%の柑橘類ですからリカバーに最適ですよ。」

 

流は普段より幾分穏やかな口調で話しかけた。

 

緊張も解けたのかふたりとも美味しそうに飲んでいる。

 

「流さん・・・そちらのお二人には随分優しいんですね。」

 

マンハッタンカフェの口調がどことなくきつかった。

 

「いやさ、ワザと器具を壊したわけじゃないし、謝罪もあったからなあんまり強く言うのもな、報告書を書くから話も聞かなきゃいけない。」

 

「事情というのは?」

 

「ああ、カフェさっきまで給湯室で拗ねてたからな・・・って脛を蹴るな脛を。」

 

流は経緯を軽く説明した。

 

「なるほど・・過失による破損事故ですか、故意ではありませんし、反省されているのなら・・・責められませんね。」

 

「それにだ、二人共思ったより情緒が幼いからな・・・下手に怒ってもガチ泣きされるのが目に見えてる。」

 

「・・・そうですね。」

 

「子供泣かせて喜ぶ趣味は俺にはないよ。それじゃカフェはトランセンドさんとトレーナーさんにコーヒーを用意してくれ、ワンダーアキュートさんは何にされますか?」

 

 

「あたしは、カワカミちゃんとドゥラちゃんが飲んでいたジュースを頂こうかねえ。」

 

 

「かしこまりました」

 

 

流はジュースを作り終えてワンダーアキュートに差し出すと、改めて、カワカミプリンセスとドゥラメンテの方へ立つと

 

「ではお二人共、どうして壊れたかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

(続く)

 




いつのまにかUAもお気に入りも増えていて本当に有難うございます。

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