ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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ノリと勢いとその場のテンションで書きました。

宜しくお願いします。


39.朝早い時間のほうが色々と話って多くなるんだよ。(後編)

「相談と言うと、サクラローレルさんの脚の事ですよね?大きいチームなら資料も技術はあるのでは?」

 

 流は事務的に対応するが、少しそっけなさが見えるのは、先程の事を邪魔されたからというわけではない、決して。

 

「それだけじゃなくて新しい知識や技術をトレーナーとして学んでおきたくて、蒼間さんなら力になってくれると目黒先輩が教えてくれたんです、特に早朝が狙い目だって。」

 

 流はあの野郎余計なこと言いやがってと思うと同時に確かにこのトレーナーさん優秀だと思った。

 

 トレーナーとして名家の出身で訓練校でトップクラスの成績かつフランスへの留学経験がある上に実力派チームに所属と経歴としては文句なしの中央のトレーナーが、自分と同じくらいの年齢の部外者にアドバイスを求めるという行為は、相当に優秀でないと難しい。

 

「サクラローレルさんは一緒に来られていないようですが。」

 

明石トレーナーは恥ずかそうにしながら

 

「ローレルの前では優秀で博識なトレーナーで居たいから、早い時間に一人できてしまいました。」

 

「お気持ちはわかります。」

 

 ただ一緒に二人三脚で歩んでいくのも優秀なトレーナーだと思うし恥ずかしいことではないと思うが流は口に出さないし、その上で彼女がサクラローレルのために総てを背負うつもりで居るのが彼女の目のクマを見てわかった。

 

「先に飲物はコーヒーでいいですか?」

 

「あ、はい。」

 

「カフェ、先に明石トレーナーにコーヒーを出してあげて。」

 

 マンハッタンカフェは軽く頷くと、スケールの上に中細挽きにセットしたミルを置き重量をリセットし、きっちり14グラム測って、豆を挽きはじめた。

 

その光景を見た明石トレーナーは。

 

「豆から挽くなんてかなり本格的ですね。」

 

「ちゃんと挽いて淹れたほうが美味しいですから。」

 

挽き終えた粉を、ミルからペーパードリッパーに移して平らに整える。

 

 93℃にセットした電気ケトルから湯を少し注ぎ粉を湿らせ、手早くお湯を注いでいくと、サーバーにどことなくクリアな色のコーヒーが抽出されていく、実に手際の良い作業だ。

 

「カフェちゃん、もしかして私邪魔しちゃった?」

 

 

 明石トレーナーの質問を受けて、ドリッパーに湯を注いでいたケトルが僅かにぶれた。

 

 

「いえ・・・ローレルさんの事のほうが大事ですから・・・でもなぜそう思ったのですか?」

 

 

「二人の距離とコーヒーの匂いかな?蒼間さん、カフェちゃんの尻尾の届く距離に居るし、あと二人とも同じコーヒーの匂いがしたので、仲良く一緒に焙煎でもしてたのかなと。」

 

 マンハッタンカフェは冷静を装っているが、ケトルから出る湯の勢いが増し、注ぎ終えるのが数秒遅れたことから結構動揺しているのがわかった。

 

 

 実際には現在進行形で脚に尻尾が触れているし、コーヒーの匂いはさっきカフェをモフモフしたせいで、こちらが焙煎したときの匂いが付いたのだろうと流は推測したが口には出さない。

 

 むしろ気づいていてこちらに配慮してこじつけているようにさえ思えた。

 

 

 

 

「まあこの話は置いといて、Comment se sentent les jambes de Sakura Laurel ?(サクラローレルさんの足の具合は?)

 

 流がいきなりフランス語を話しだしたので明石トレーナーは驚いていた。

 

 

「蒼間さんフランス語話せるんですか?」

 

 

「ええ、本当に最低限伝わればいいって感じですが。この時間に来たってことはサクラローレルさんの脚の事を他の方に知られたくないということですよね?」

 

 

「ええ、レースも近いですし、知られて対策を立てられたくないというのが本音です。」

 

 

「カフェも友人のことは喋らないでしょうが、どこで聞き耳立てられているかわかりませんし、だからこそのフランス語です。」

 

 

「流さん・・・こういうときはデリカシーがあるんですね。椿さん珈琲をどうぞ。」

 

 

マンハッタンカフェは流に毒をぶつけながら、明石トレーナーに淹れたての珈琲をわたした。

 

 

 流はどこで聞きつけたのかわからないがトーセンジョーダンの件でゴールドシップに襲撃されたことがあるからこそあえてフランス語を用いることを提案したのだ。

 

 

「なるほど、学園生でもフランス語が分かる人は少ないですからね。Les jambes de Laurel vont bien jusqu'à présent.(ローレルの脚は今のところ問題ありません。)

 

 

流が相槌をうつと明石トレーナーは珈琲を一口のみ少し思案しながら続けた。

 

 

「|Mais mes jambes n'arrivent pas à suivre cette puissance.《ただその脚力に脚がついていけていません》」

 

 

「なるほど、本人がいないと指導は出来ませんが、こっちからは資料をお渡ししておきますね。」

 

 

流は明石トレーナーにUSBメモリを手渡した。

 

 

「ここ最近私が作ったテーピングとストレッチの資料です。」

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

「お礼はいりませんよ、本来だったら実技で説明しながら貼っていって対策を練るのが一番効率がいいのですから、そうか今明石トレーナーに直接貼りながら教えれば良いのか、今度テーピングの指導展示のときも教官を一人借りて」

 

 その直後横から腹部をかなり強くつねられた、皮下脂肪がほとんどないので無理やりなぶん余計に痛い。

 

 

 表情には出さないように務めるが痛いものは痛いので抗議の目でマンハッタンカフェを見ると少し怒っているのがわかった。

 

 

「流さんはもうすこし・・・デリカシーを持ってください相手は・・・女性ですよ。」

 

 

「でも筋肉の付き方や体格考えたら女性やウマ娘で展示したほうが効率がいいだろ?」

 

 

何がおかしいのかわかっていない流に耳打ちではなしかける。

 

 

「・・・私が嫌だからです。」

 

 マンハッタンカフェの怒っているのか悲しんでいるのか判別のつかない複雑な顔を見て流は少し考えてから。

 

「ふむ、たしかにそれは考慮するべき理由だよな、済まなかったカフェ。」

 

 

「わかってくれたのなら・・・良いですよ。」

 

マンハッタンカフェの表情が和らいだのを見て流は一安心した。

 

「あの・・・私やっぱり、お邪魔ですよね?」

 

気まずそうにしている明石トレーナーに対して流は。

 

「気にしなくて大丈夫ですよ、あとテーピングについてですが、脚だけじゃなくて背中もやってあげてくださいね、脚のテーピングは皆さんよくやるのですが、脚と同じくらい背中や体幹にも負荷がかかりますので、油断していると腰痛背中の肉離れに悩まされる可能性が大きくなりますから。」

 

明石トレーナーはハッとした顔をしたがすぐに真剣な顔に戻った

 

「確かに背中については盲点でした、ありがとうございます。」

 

「そこは私の仕事の範疇ですから、後これをローレルさんとチームの皆様とでどうぞ。」

 

流は先程作った沢山のカオニャオマムアン(もち米マンゴー)を袋詰にして手渡した。

 

「重ね重ねありがとうございます。私はチームの方に帰ります。」

 

明石トレーナーは流に頭を下げた。

 

 

「あ、ところで・・・Mais je rendais cela plausible.(それっぽく推理してましたが)Que savez vous?(どこまで知ってますか?)

 

明石トレーナーはすぐに質問を察したのか。

 

 

Laurel m'a parlé du café.(ローレルがカフェちゃんから直接)

 

「そうですか、困りましたね」

 

思わず日本語にもどってしまう

 

Mais je te soutiens et je ne l'ai dit à personne.(私は応援してるし内緒にしてます。)

 

人の口に戸は立てられぬものだし、マンハッタンカフェが自らサクラローレルに話したのなら、仕方ないと流は思った。

 

 

「それでは失礼いたします。」

 

流とマンハッタンカフェに頭を下げて明石トレーナーは帰っていった。

 

 

「カフェ、何人に話したんだ?」

 

 

「寮で話したのはユキノさんだけで・・・LANEでお伝えしたローレルさんと・・・ジョーダンさんとシチーさんのいるグループチャットで誤爆したぐらいです。」

 

二杯目のコーヒーを淹れるために、ドリッパーにペーパーをセットしながら

 

「最初の二人はともかく、グループチャットの誤爆ってのは嘘だろ?」

 

 

「さあ、どうでしょう?特に内緒にするように言っていませんから、寧ろ流さんをコントロールするには広まってくれたほうが、良い気もしますし。」

 

「なんかブレないと言うか図太いうと言うか、強いんだな。」

 

 

「伊達に何をしでかすかわからない人や・・・0か1かでしか判断できない人を相手にしていませんから、出来ましたので・・・どうぞ」

 

マンハッタンカフェはコーヒーを注ぎ終えると、サーバーから温めたカップに移し終えると流に手渡した。

 

 

「お、ありがと。」

 

最高の豆かつ粉の粒度、湯量、抽出時間、温度で抽出されているはずなのに、出されたコーヒーの最初の一口目はどこか甘酸っぱかった。

 




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