ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
「血糖値スパイク・・・何だそれ?」
初めて聞く言葉にヴィブロスのトレーナーこと、龍浪はしかめっ面で流に質問をした。
「たくさん食べすぎることで、急激に血糖値が上がって、強烈な眠気を引き起こしたり、下手したらと失神したりすることがある、これだけが原因じゃないが。」
流は素の口調に戻っているが、説明だけはしっかりとやっていた。
「しかしよ、ウマ娘なら消化吸収早いから可能性低いんじゃねえのか?」
「逆だ。だから起こりやすい、ましてやカロリーの為に炭水化物の過剰摂取だ血糖値は一気に上がる。そうなると心臓や血管にもダメージがあるし、普通に内臓の負荷もでかいから、止めておけって話だ。」
「で、お前はわざわざそれを言いに来たのか?」
「そうだけど?」
「あー…そのなんだ?スマン」
龍波は不良やアウトローが行うような膝に手を置いた一礼をした。
「先に仕掛けたのは俺だから謝んなくていい、なんで俺に突っかかってきた?」
「お前、空気が刃物みたいにヒリついててヤベーんだよ、それでちょっと勘違いした。」
「勘違い?」
「悪い、こっちの事情だ察してくれ。」
流は少し考えながら。
「事情はおいといて、まあ・・・ガラの悪い奴からは絡まれたことはあるな、なんどか。」
「オメーも相当に柄悪いからな、それと前に地下格の会場で見たことがあったから、ちょっと試したくなったんだよ、そしたらいきなり肘で襲われるとは思わなかった。」
「面白そうだからつい、というかやってる可能性があるやつの襟首掴んだら、こうなるのは当然だろ。」
勝負事に関わる奴というのは、気性が荒いやつが多い、トレーナーと言っても例外ではない。
ただ、龍浪程気性が激しく攻撃的な人物は珍しいが。
「そうだな、失敗だった。」
「やりたいなら、別の場所で仕切り直すか?」
「コラ!なっちゃん、せっかく落ち着いたのに、また煽らないの!」
近くに居た鎌太刀が止めに入った
「いや、大丈夫っす、鎌さん。やらねえから、俺とあいつじゃ相性が悪すぎる。」
龍波は天性のバネと持ち前の喧嘩のセンスで流に仕掛けたが、流はあっさりとそれを捌いて右脚を思いっきり蹴り込んだのだ、経験と技術が違う、今の状況だと何度やっても同じだと判断した。
龍浪は自らの右足に触れて。
「左の蹴り一発で右足がオシャカになったから、続けようにも無理っすわ。」
「あら、腫れちゃった?」
「そんなとこっす。」
「殴った瞬間の筋肉が緩んだところ狙ったら、モロに入ったから肉離れ起こしたんだろ、冷やしとけ。」
龍浪は頷くと周囲を見回しヴィブロスがどこに居るかを探し始めた。
「ヴィブロスちゃんなら、カフェとコーヒーマシンの方へ行ったわよ。」
「あざっす、ちょっといってきます。」
龍波は鎌太刀に頭を下げ左脚を引きずりながら、ヴィブロスの元へ向かっていった。
「まだ話は終わってないぞ、これからの食事の話もある。」
流も龍波についていった。
「でね、トレっちは気は荒いけど、私のためにドバイに行くための方法を考えてくれたり、ドバイのことを一生懸命調べてくれたりして本当は、すごく優しいの。」
「ドバイといえば・・・中東の宝石と呼ばれるぐらい夜景の美しい都市でしたね。」
「そうそう!凄くキラキラで洗練されてカッコいいの!」
ラテを飲みながら楽しそうにトレーナーとドバイのことを話すヴィブロスの話をマンハッタンカフェは優しく聞いていた。
「でも、最近のトレっちは、パパとママやお姉ちゃんのこともあって、ちょっとピリピリしてたから。」
「あら・・・何かあったんですか?」
「昔からなんだけど、パパとママが反ウマ娘の人から嫌がらせみたいな事を受けてて、今迄は警察や警備会社の人たちが対処してくれていたんだけど、どんどん過激化して、学園にも俺達の仲間がいるって、トレっちもパパからその話をきいてたから、管理人さんの事を勘違いしちゃったみたい。」
「流さん・・・近寄りがたい風貌ですからね・・・勘違いも致し方ありません。それに先に手を出したのは・・・流さんですし・・・ヴィブロスさんが気にする必要はありませんよ。」
気まずそうにしている、ヴィブロスをマンハッタンカフェが優しくフォローしていた。
「流さんと・・・よく話さなくてはいけませんね。手を出さずに抑える方法は・・・あったはずですから。・・・でしょう?流さん。」
マンハッタンカフェはいつの間にか隣にいた流に声をかけた。
「そりゃあ、普通に抑えられたけど。」
「やっぱり…何故おさえなかったんですか?」
「仕掛けたほうが、面白そうだったからだよ。」
「怪我とか・・・考えなかったんですか?」
「あのレベルなら、俺が怪我することは100%ないよ。」
「試合前のアスリートが喧嘩したら・・・出場停止になるかもしれないんですよ。」
「昔からやらかしてるし、バレ無きゃどうにでもなる。」
マンハッタンカフェの流を見る顔が눈_눈から눈言눈に変化していき、怒っているのが見て取れた。
「流さん・・・ヴィブロスさんに謝ってください。」
「それもそうだな。」
「余計な事は・・・言わないでくださいね。」
流はしばし思考してから
「ウィブロスさん、申し訳ありませんでした。」
「いえっ!先に突っかかったのはトレっち・・・じゃなくて私のトレーナーさんですから。」
流の鋭さに威圧されたのか、ヴィブロスの言葉遣いが少し硬くなっていた。
「この方は礼節とか余り気にしない人ですし・・・慇懃無礼を地で行くような方ですので・・・そんなに畏まらなくても平気ですよ。」
「え・・・でも学園の関係者さんだし。」
「カフェの言うとおりです。仕事のお客様ですからね。勤務中は好きなように接していただいて大丈夫です。」
「じゃあ、お仕事の時間以外は?」
「俺の練習の邪魔すんな、気安く話しかけんじゃねえとは思いますが・・・」
・・・・눈言눈
「冗談は置いといて私の仕事はある意味休憩も休日なしの24時間年中無休で、学園からまず出られませんからね、問題ありませんよ。」
マンハッタンカフェの表情を見て流は言い方を改めた。
「では、龍波トレーナーもいますし、食事の話でもしましょうかね、増量でしたね、ヒト、ウマ娘問わずアスリートの増量って、一ヶ月に体重の2%から3%が目安なのはご存知ですよね。」
「ああ、ウマ娘は消化吸収とエネルギー消費が激しいから、カロリーの調整がかなり難しいんだよ。」
「レースに出場するウマ娘の1日に摂取しなければならないカロリーが1.8万から2.5万キロカロリーくらいと資料で見ましたが、ヴィブロスさんはふだんどのくらい食べていますか?」
「えーと、数字はわからないので、メニューとかでも大丈夫ですか?」
ヴィブロスはスマホから自身のウマスタを開き普段の食事の画像を流たちに見せた。
「成人男性より少し多い位で、資料で見たものより、少なめですね、。そういえばカフェはどのくらい食べるんだ?」
「私は・・・体調によってまちまちですが・・・概ねヴィブロスさんと同じ位の量ですね。」
流はヴィブロスとマンハッタンカフェを見比べて。
「なあカフェ、思ったんだがウマ娘って同じくらいの身長で同じくらい細くかつ同じくらいの量の食事でも発育にかなりの差が出るんだな、あと栄養の行き方の違いも。」
……눈言눈「それは・・・何と何を見比べて思ったんですか?」
流は悪びれもせず、「二人の体型」と答えた直後、流の背中から爆ぜるような音がして、流が一瞬顔をしかめた。
龍波とヴィブロスは何が起こったのか、わからない顔をしながら
「凄く痛そうですけど・・・大丈夫ですか?」
「痛くしてます・・・このヒトは、猛獣と一緒で叩いて躾けないといけませんから。」
先程よりは痛みはないが、更に数回叩く音がした。
「えぇ…」
「痛えな、体型から栄養の吸収効率のことを言っただけじゃねえか。」
「それが・・・余計な事なんです。」
「そうか、話を進めるとヴィブロスさんの増量を考えるのなら、一気に増やすよりも効率よく補食を取ったほうが良いかもしれませんね、あと筋トレ。」
「筋トレってムキムキになるのはちょっと…。」
「なりませんよ、ウマ娘もヒトの女性と同じくらい体脂肪がありますからね。神経系と出力はともかく、筋肉の肥大率はヒトの一般女性と変わりませんから。」
「そうなんですか?」
「私の知っている限り、カワカミプリンセスさん、ドゥラメンテさん、そして一番筋トレをやり込んでいるであろう、メジロライアンさんでも筋肉量は女性アスリートの範囲内ですしヒトの女性のウェイトリフターの方がガッチリしてますから。」
「なるほど、じゃあ体を作るにはトレっちが言うようにたくさん食べた方が良いんですか?」
流は少し考えて
「一回の食事は普通通りで、トレーニング間に補食をつけて一日に5食にすれば、十分でしょう。」
「一日5食って太るんじゃないですか?」
「量とカロリーの調節をすれば、問題ありません。例でいうと、タイの食習慣がそんな感じですが、スリムな方が多い。それに、空腹のときのほうがエネルギーを吸収する効率が強くなり太りやすくなります、一気に食べたら急激に血糖値が変化してして体に負担がかかる、おそらくヴィブロスさんは栄養の吸収力が、かなり高いから、血糖値スパイクを起こす可能性が高い。」
「なんかそう考える根拠があるのかよ。」
「同じくらいの食事量でカフェが平べったい体型なのに対してヴィブロスさんは吸収が良いのか発育が良いからですね。」
質問してきた龍浪に流は真顔で答えた。
「アンタ、もう少し言い方考えろよ問題になるぞ。」
「客観的な事実を述べているだけなんですけどね、話を戻しますと、空腹の時間を減らすことで、エネルギーを枯渇させず血糖値をできるだけ安定させることで、運動で体脂肪率を安定させて、筋肉を少しずつ増やしていくんです。」
「どれくらいが理想なんだ?」
「女性アスリートなら、18〜25%位ですね、それ以上削ると健康に良くない、カフェもそのくらいはありますしね、私の体脂肪率は一桁前後なので、カフェの二の腕を摘んだ時に肉って摘めるんだと、驚きを覚えましたね。」
・・・눈言눈
なんなんだよこいつと言う目で流を見る龍波とヴィブロス。直後、流の脇腹にマンハッタンカフェの指が突き刺さり皮膚を強引につまみ上げていた。
「流さんの腹筋って凄く引き締まってるから・・・こうやって力を入れないと本当に・・・摘めないんですよね」
「痛いぞ、カフェ、いくら隠れプニプニ体型だからって、俺の肉も同じように摘めると思ってんじゃねえよ。」
更に勢いよく抓られていくのがわかった。
「なんで、こんな平然と地雷をふみにいけんだよ・・・」
「うーん、あれはどっちかというと、好きな子をからかって反応を楽しんでいる感じかな?」
「概ねそのとおりです。」
即答だった。
(続)
お気に入りと感想ありがとうございます、最近多忙で感想に返答出来ませんがすべて目を通させて頂いてます。