ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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月が変わる前に投稿です。


47.実戦という言葉は軽々しく使ってはいけない。

流の父親が陛下の友人という事に本気で驚くSP隊長のリアクションはスルーしつつ、ドリッパーにゆっくりとお湯を注ぎゆっくりと粉を蒸らしていく。

 

「どういうことでしょうか?」

 

「昔ダブリンで行われた。コーヒーの世界大会で父が日本代表の一人で出場したときに特別審査員として議長が来賓で来ていてその時に知り合ったようです。」

 

「議長はコーヒーが好きですからね、たまに淹れてくれたのですが淹れ方はもちろん豆の選定から焙煎までプロと遜色ないレベルでした。」

 

「議長にいろんなノウハウを伝授したのは父ですから、大会は優勝できなかったけど、気に入られたので話すようになり、それからの付き合いだと聞いています。」

 

「なるほど、それでも陛下にはお願いするには気が引けますので、もう少し安くて良いものはないでしょうか?」

 

棚からコマンダンテとは違う金属製のミルを取り出す

 

「それでしたら、中国メーカーのタイムモアはいかがでしょうか、ステンレス刃で値段もお手頃で一万円前後のモデルで家庭用モデルとしてはかなりいい物です、私も数種類持っています。」

 

長めの蒸らしを終えると、ゆっくりと円を描きながら注いでいくと甘い香りが漂って来る。

 

「これは良さそうですね。」

 

「これも一つだけ弱点があるんですが、飲み終えてから語ったほうが良いですね、ガヨマウンテンをどうぞ。」

 

注ぎ終えたコーヒーを差し出すとSP隊長はすこしだけ口に含む。

 

「これは…マンデリンに近い苦みがありますが酸味と甘味がしっかりしていますね。」

 

「同じインドネシアの豆ですけど場所がが違えば多少は変わってきます、同じインドネシアならセレベス・カロシが好みですね、マンデリンよりも苦いですがチョコレートライクな呑み口で深煎りの豆の中では一番好きですね。」

 

「カロシですか老舗の喫茶店で聞くことはありますが、少なくとも日本では置いてあるところは知りませんね。」

 

「希少で手に入りにくいってのもあるんですけど、知名度があまりないですからね、深煎りより浅煎りのスペシャルティー方が評価されるので、じゃあタイムモアの弱点言ってみましょうか。」

 

流はタイムモアのミルの粉受けを外すとキュッという黒板をひっかくような金属音が響いた。SP隊長の耳がピクッと反応した。

 

「よいミルなのですが、粉受けのネジの金属がこすれる音があるのでそれで敬遠する方が結構いるんですよね。」

 

「なるほど、確かにこの音は少し気になりますが、テープをつければ軽減できそうですね。」

 

「テープで音の軽減ですかそれは思いつきませんでした、それなら十分にお勧めできますし、新モデルでしたら音も多少は改善されてはいますから、C3シリーズはいかがでしょうか、家の通販ならお安くしておきます。」

 

流は電卓を叩いてから。

 

「ではフラグシップモデル、送料無料で一万円で如何でしょうか?」

 

「お願いします。」

 

即決だった。

 

「では、このQRコードからお願いします。」

 

 

流はタブレットを見せる。

 

隊長はQRコードをスマホに当て、注文を完了させた。

 

「一応そのままの値段で引き落としと出ますが、後日返金されますので。」

 

「ありがとうございます。でも良かったんですかこんなに安くしていただいて。」

 

「大丈夫ですよ、一つだけ売れ残っていましたからね、在庫は捌けたほうがいいですから、数日後ここに届きますのでその時に連絡致ししますので。」

 

「ええ、お願いします。話は変わるのですが、マスター鎌太刀から、今度行われるSP隊とCSSの合同格闘訓練に貴方も参加されると聞いたのですが事実でしょうか?」

 

「いえ、昔からのコネで、近い内にスパーリングとしてCSSのセキュリティの格闘訓練に混ぜてもらえることにはなったのですが、合同訓練の事は聞いてないですね。」

 

「なるほど、Bチームの隊員で貴方の事をよく知っている者がいて、貴方と立ち合ってみたいという者が居たので。」

 

「Bチーム?」

 

「私達SP隊の支援部隊です。こちらは警察機関から訓練を受けて選抜されたウマ娘ではなく、アイルランド国防軍(特殊部隊)と諜報部からヒトだけを選抜した部隊が派遣されています。」

 

 流はリアル系のFPSとか軍人が主役のアクション映画をよく見る程度の訓示知識しかないが、これは不味くね?とおもった

 

「これ、話してはいけない事ではないですか?」

 

「大丈夫ですよ、抑止として公にしている範囲内ですから、流石に装備関係や詳しい構成は機密事項になりますが。」

 

流はこういうのって、軍事作戦が出来るぐらい装備が揃っているんだろうなと思った。

 

「なるほど、軍人と言えば自衛隊員の格闘指導官からプロ転向した選手とも試合しましたが、やたら体幹と右ストレートが強かったですね。」

 

 自衛隊の格闘術である徒手格闘は日本拳法をベースに柔道や相撲や合気道で構成されていて、日本拳法の直突きをベースにした右ストレートは特に貫通力がありとにかく強烈だった事を流は覚えている。

 

 MMA選手で寝技主体の選手だったが、流と戦いたいと言う理由でキックのリングで挑んできた選手でグラップラー独特のリズムと日本拳法の重い突きに悩まされた上に、組みも強く首相撲で崩しきれなかったので、前蹴りで距離をリセットして、左ミドルキックと左のインローキックを何度も叩き込むことで右腕と左足を壊し、ダメージで右腕が下がったところにハイキックを叩き込みダウンさせてポイントを取ることで判定勝ちした。

 

 正直体の強さだけで言えば、過去に戦ったタイ人や世界ランカークラスよりも強かった思い出がある。

 

「彼らの仕事の大半は極限状況で重い装備を抱えて歩くこと若しくは走ることですからね、だから体と精神が強いんです。」

 

「なるほど、だからあんなにやり辛かったんですね。」

 

「そう言うこった、ルールの上でしか戦えないスポーツ格闘技と戦場格闘技は違う、なあアネゴ。」

 

突然音もなく現れた、ポロシャツ姿の白人の男がSP隊長に話しかける。

 

「誰だてめえ?いきなりウマッターで格闘家にクソリプかましてる、インチキ武術家みたいな事抜かしやがって、お得意の戦場のやり方でやってやろうか?」

 

流の右手にはフォーク、左手にはキッチンナイフが握られていた。

 

「おいおい、こういうときは、素手の格闘技で勝負するのが流儀じゃないのかい?」

 

「実戦だろ?素手でやってもらえると思ってんのか?」

 

 

白人はマズったなと言う顔をしながら構えを取ろうとする

 

「よせ、ロデム!」

 

 瞬間、SP隊長がロデムと呼んだ男の腹を横蹴りで吹き飛ばした。

 

「蒼間さん、隊員が失礼しました、どうかこれで抑えて頂けないでしょうか?」

 

 頭を下げてきた隊長に対して流は責める気はなかったので、流は何も言わなかった。

 

 ウマ娘に蹴られたはずのロデムと呼ばれた男は何事も無かったかの如く立ち上がる、恐らく後ろへ飛んで衝撃を殺したのだろう。

 

「痛えな姐御、ちょっとトラッシュトーク仕掛けた位で蹴ることねえだろ。」

 

軽口を叩くロデムに対し

 

「煽り過ぎだバ鹿者が!」

 

「いや、気に触ったなら悪ぃ悪ぃで終わらせようと思ってたら、いきなり得物出して来るとは予想つかねえよ!」

 

慌て気味に弁明するロデムに対して隊長は

 

「彼はアスリートであり戦う場所は違えど戦士だ、誇りを傷つけるような真似をされれば怒るの当然だろう。」

 

「そうなんだけどよ、本職の格闘家に技が通じるか試そうと軽くトラッシュ仕掛けたらこれだぞ。」

 

焦っているのか似たような事を繰り返すように隊長に弁明するロデムに対して

 

「実戦を語って挑発してくるような奴を無視できるほど、俺は年喰ってねえよ。」

 

「年食ってねえって・・・アンタ今幾つなんだ?」

 

「22」

 

「マジかその顔で俺とそんなに変わらないくらいかよ、日本人の年ってわかんねえな、アネゴはアラサーだから…」

 

ふたたびSP隊長の蹴りがロデムに炸裂した

 

「貴様は、デリカシーを覚えろ!」

 

 ロデムとSP隊長のやり取りを見ながら、気が削がれたのか。

 

「隊長さん、その男は?」

 

「コイツはBチームの隊員のロデムです。」

 

「ウス、別にアネゴは上司じゃねえけどな。」

 

「階級は私のほうが上だ。」

 

「へーい。」

 

流は軽薄そうな態度でSP隊長に返事をするロデムを一瞥してからSP隊長に問う。

 

「この軽そうな男も特殊部隊ってやつですか?」

 

「ええ、最年少でARW選抜過程をクリアしてBチームに自ら立候補したエリートです。殿下の推薦もあるのですが、仕事はできるのは間違い有りません。」

 

「そうだよ、俺たち裏方が真面目にやってるからアネゴ達SPはお飾りで済んでんだよ。」

 

「相変わらず口が減らんな、だが感謝はしてるよ。」

 

「どーも」

 

軽口を叩いていたロデムは流の方を見る

 

「あんたも合同格闘訓練に参加すんだろ?」

 

「ああ、スパーの相手は欲しいからな。」

 

「ならそん時は相手してくれよ、制限された状況で軍での格闘技術がどこまで格闘家に通じるか知っておきたい」

 

「ああ、考えとく。」

 

「ありがとな、さっきは悪かったよ、でさ実際インチキ武術云々って言ってたけど、そんなに多いのか?」

 

流はため息を付いて

 

「実際、表に出てる競技化していない、古武道とか中国拳法やってる連中の9割は大したことねえし、実際格闘技の試合で使われる技術のほうが武術の技より完成度が高いし、実際武術の殺人技や禁じ手なんて本職の連中には通用しないというか、普通に試合で使われる技術だったりするから対策されてる。」

 

「マジかよ、そりゃあ常にトライアンドエラーを繰り返してる現代格闘技の方が強くなるのは当然か。」

 

「そんな現状に納得がいかずに修練と研究を重ねて進化してる連中もいるよ、それが残りの一割だ。」

 

「例えば?どんな流派だよ」

 

「俺が知ってるのは、金剛八重垣流。アマチュアのグローブ大会で何度か対戦した奴がいるんだけどそいつにだけは一度も勝てなかった、そいつが学んでいた流派が金剛八重垣流だった。」

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

「ハックション!」

 

「あら、風邪でもひきましたの?トレーナー」

 

「ん?きっと誰かが噂してんだろ。」

 

「下らないことを言ってないで、私の隣に立ち続けるつもりなら、しっかりと健康に気を使いなさい。」

 

「わかったよ、手厳しいなジェンティルは。」

 

(続)




いつも読んでいただきありがとうございます。

もともと書きたいことはあるのに語彙力がないので常にグダグダですがよろしくお願いします。
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