ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
「金剛八重垣流って、あのヤエノムテキってウマ娘がやってる、守りに特化した流派だろ?あれってどちらかと言うと、一族伝の流派じゃないのか?」
ロデムと言う男は妙に武術や格闘技を知っているから、この手の物が好きなのだろうと流は思った。
そこでSP隊長が
「別に一族伝というわけじゃない、一般人にも門徒は開かれている、金剛八重垣流の技はSP隊の格闘術と逮捕術にも取り入れられているし、先代師範は西側諸国の軍や法執行機関で格闘の特別指導官として活動されていた事もあるほどだ、それに今回の訓練は先代が直々に指導に来られる。」
流は先代と聞いてピンときたのか。
「あの爺さんそんなすごい人だったんですね、そりゃあ、あいつも強くなるわけですね。」
「面識があるのですか?」
「そりゃオープンのグローブ空手大会とか、アマチュアのキックやアマ総合格闘技の試合とかに、結構顔出してますよ。門下生が出ていたら、それに私は小学生の時に彼らが主催のグローブ大会に出ていますし、顔を合わせたらお互い挨拶をしたり雑談を交わすくらいには顔見知りです。」
「元々アグレッシブな方だったんですね。」
「他流と交わる事を是として公認してますからね、よほど好きなんでしょう、格闘技が、それに…」
流は一呼吸置いて
「今の金剛八重垣流の師範も若い頃にはキックにも参戦して、私の先生と試合して引き分けているので。」
SP隊長は食い付くように。
「それは初耳というか、金剛八重垣流異種格闘技戦シリーズのDVDにも記録されていませんよね、いつ試合があったんですか?」
(アネゴ、本当に金剛八重垣流好きだな。)
「20年前に当時十代だったシンサック・バンチャメーク先生と日本の格闘技番組のメインで試合したそうで、金剛八重垣流継承者対最強ムエタイ神童、異種格闘技戦としてウマチューブに挙げられてたかと。」
「調べておきます。」
「そのあたりから、より他流派や格闘家と交流して今のように大会をオープンにする様になったと聞いています。」
ちなみに、その数年後、流の師にあたるシンサックが日本の地方都市の弱小キックジ厶に選手兼トレーナーとして籍を置いた時はムエタイの帝王、突如地方ジムへ移籍!?と格闘技界では、ちょっとした騒ぎになった。
一夜にして数十万バーツを稼ぐ男に何があったのかと話題なった。来日した理由は流の父親にバリスタとして弟子入りしたからで、そのついでに流にムエタイの技を教える上で、試合も必要だから、所属ジムがあったほうが、便利という理由で近くのジムで流を教えるついでにトレーナーをやらせてくれと頼み込んだのだ。一度は給料が払えないと断わられたが。
そこでシンサックは無給でいいし経営に金がかかるならここに所属して試合で稼ぐとタイのジムからのレンタル移籍という形で半ば強引に籍を置いたのだ。
後にそのジムは、その縁でシンサックのジムからタイ人トレーナーがよく派遣されている。
「ふむ、金剛八重垣がオープントーナメントのグローブ大会を開催するようになったのは、第一次格闘技ブームの影響と今の師範が引き分けたという事が発端なのですね。」
「そんなところです。」
「貴方が唯一勝つことが出来なかった相手は、今何をされているのでしょうか?」
「さあ、中学はジュニア大会で高校はプロの登竜門の大会を20個以上制して、金剛八重垣流の生んだ天才児として高校卒業といっしょに突然姿を消したんですよね。いろんな事情で辞める者は多いけど、もったいない。」
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その流から、もったいないと言われた人物、葛城刀真はトレーナー室で一人、金剛八重垣流だけでなく、あらゆる武術に伝わる基本の鍛錬法の一つである立禅を続けていた、自身の担当するウマ娘ジェンティルドンナが授業に向かってから今迄微動することなく、立禅を続け床には大量の汗による水たまりが出来ている。
その才を認められ先代から守りに特化した金剛八重垣流の技と攻撃的な近代格闘の技を叩き込まれ、全盛期の先代を超える力と技を得るまでになったが、葛城は己がどこまで高みに上っても自分に自信を持てずに居た。
そんな彼が高校生の時、先代の孫娘で妹弟子のヤエノムテキのクラブの交流レースを先代に連れられて見に行った時のことだった。
特に興味はなかったが妹弟子であるヤエノを応援するのは嫌ではなかったし、武術における体の使い方を別のスポーツで学んでみろということで、付いてこさせられたのだ。
そのレースでヤエノを技でなく力でねじ伏せたウマ娘がいた、現在の担当であるジェンティルドンナだった、葛城はヤエノの激励に行った後に、その走りから彼女に興味を持ち声をかけたところ。
「敗者の流派の技術になんかには興味ありませんし、それ以前に己の強さに自信を持て無い方の話など聞く必要もありませんわ。」
と袖にされたが、フォローするように一言があった。
「もし、話を聞いて欲しいのなら、己が強者である事を証明してからならばトレセン学園でお待ちしておりますわ。」
その時、葛城の中に眠っていた思いに火が付いた。
葛城は複数の大会で優勝しベルトを取りまくり高校卒業と同時に、金剛八重垣流を出奔し、トレーナー養成学校へ入門した葛城は、無事中央のトレーナーとしてトレセン学園に来ることが出来た。
そして、模擬レースを終えたジェンティルドンナをスカウトしようとしているベテラントレーナー陣を震脚と猿叫で威嚇することで追い払ってから。
「改めて、力の使い方について話に来た。」
と彼女をスカウトして今に至る。
葛城が震脚でターフに穿った穴はどのウマ娘が走った後よりも深かった。
そんな馴れ初めを思い出していると、トレーナー室のドアが空いた。
「トレーナー、またノンストップで4時間以上も立禅をなさってたの、床が湿ってますし部屋中汗臭くなってるわ、汗を拭いてから着替えて換気なさい。」
葛城がシャツを脱ぐと巌のような肉体が顕になった、それを見てジェンティルドンナはため息を吐きながら。
「レディの前でむやみに肌を晒すなと、何度言えば理解していだだけるのかしら?」
「別に脱いで恥ずかしい体はしてないから、問題ない。」
「ハァ・・・相変わらずの答えですのね、私のトレーニングのメニューは完成していますの?」
着替え終えた葛城は床を拭きながら。
「机の上においてるよ。」
それを聞いたジェンティルドンナは机の上にあるプラン表を受けとり、内容を確認する。
「重心移動や型を用いた強腱術は力の制御術は効果は覿面ですが、やはりジムでのウェイトやマシントレーニングが恋しくなりますわ。」
ジェンティルの持つ力をフルに引き出すにはマシントレの必要はあるのだが。
「それはまだ難しいな、ジェンティルはジム出禁になってるから。」
ジェンティルドンナはバツが悪そうに。
「ええ、勿論、怒らせるような事を言ってしまった私が悪いですわ。」
「そりゃあ、最新型のマシンを壊しておいてもっと丈夫なものにしてくださる?って言ったら、管理人も怒るよ。」
「私の力を間近で見て驚かないどころか、怒りをぶつけて来るなんて・・・」
「改めて、謝りに行かないとな、どうする一緒に行ってやるが?」
「気持ちの整理をつけて改めて、私個人で謝罪にいきますわ」
力で我を通して来たジェンティルドンナにとって、ある意味で力が通じず叱られるというのは殆ど経験のない事であり、それ故やりづらい相手なのだ。
「そうか、じゃあ俺が先に監督者として行ってくるよ。」
葛城はTシャツとジーンズに着替えて、同期でジムの管理人と交流のあるトーセンジョーダンのトレーナーの谷口と一期先輩のゴールドシチーのトレーナーである佐久間にLANEでメッセージを送る
【うちの担当がやらかしたことの謝罪にジムに同行してください、すいません何でもしますから、ラーメン奢りますから、助けてくださいオナシャス。】
とそのまま出ていこうとする葛城の首根っこを掴みジェンティルは。
「私のために謝罪に行ってもらえるのは有り難いですが、ドレスコードってものをご存知?」
葛城は服装についてジェンティルから少し説教されスーツに着替えた後、同期と先輩と合流すべく部屋を出ていった。
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