ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。   作:なっぞのひと

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お読みいただき有難うございます、稚拙な駄文ですが末永くよろしくお願いいたします。


5.筋トレで正しい効果を出すには重量ではなく適切なフォームが大事。

高槻がトレーナー室へ戻り、午後の授業が終わる放課後、ジムとしてはここからが本番なのだが、やはり屋外でのコース練習が中心になるのかトレーニングにジムに来るウマ娘は疎らだった。

 

練習とトレーニングは分けておいた方が良いことって事をよくわかっていて感心する。

 

軽めのシャドーボクシングによるアップからHIIT(高強度インターバルトレーニング。)で時間を潰しながら、来客を待つそんな感じだった。

 

 意外だったのは、自身の顔を見ても挨拶をしても気にする者はほとんど居なかった、ジムの開け締めをしている職員なんて何処にでもいるモブみたいなものだから気に留める事など無いか。

 

そのまま受付で筋トレ用の資料をまとめていた所、背中を鍛えるためのマシンのラットプルダウン方からガチャンガチャンすごい速さでバーを上下させているウマ娘がいた。

 

先程こちらに元気よく挨拶してくれた娘だった。

 

名前はサクラバクシンオー、名は体を表すという言葉が真実だということを今知ることが出来た。

 

元気なのは良いが、マシンのワイヤーが切れかねないし、フォームも滅茶苦茶なので背中や肩を傷めてはいけないので声をかけることにした。

 

「ストップ、一旦止まりましょう。」

 

「ハイ!何かご用でしょうか管理人さん。」

 

「一生懸命トレーニングをされるのは良いのですが、改めてフォームを見直しましょうか今のままですと背中に効かせるどころか筋肉や肘の関節を傷つけてしまいますので。」

 

「ちょわっ!?フォーム修正ですか?私のフォームのどこが間違っていたのでしょうか?」

 

反応が素直でよろしい、皆こうであると願いたいんだが。

 

「まず、背中が使えずに腕で引いている、反動を使ってガンガン引いてしまっていること、上体を後ろに倒しすぎている、目立ったのはこの3つですね。」

 

「なるほど、目立ったのが3つということは其の3つを直せば、だいぶ改善されるのですね?わかりました!」

 

本当に声大きいなこの娘、話を最後まで聞かず再開しようとするので慌てて止めた。

 

「落ち着いてください、先ずは私が安全で効果的なフォームを実際に説明しながらお見せしますので、それからやっていきましょう。」

 

「安全で効果的なフォームですか、それは学級委員長としてジムの皆さんにも周知しないといけませんね、皆さん!ここに居るジムの管理人さんがこのマシンの安全で効果的なフォームを教えてくれるそうです!一緒に勉強しましょう!」

 

周りに大きな声でよびかけると、自主練中のウマ娘どころか担当付きのウマ娘とそのトレーナーも何名かやってきた。

 

 複数の前で指導やデモンストレーションをやったことはあるので問題はないが、予想外ではあったが確かに効率は良いし、顔通しと信頼をトレーナー達から得るにはこうした方がいい。

 

ここはバクシンオーに感謝しなければ、というか昨日今日のぽっと出のジム管理人の話にトレーナーがメモ持ってやってくるはと思わなかったので恥じない仕事をしないといけない。

 

「お集まりいただき有難うございます、本日よりジムの管理人兼フィジカルトレーナーとして入りました蒼真と申します、宜しくお願い致します。」

 

流が挨拶すると、丁寧に挨拶が返ってきた、やっぱり教育が良い。

 

「今回は、ラットプルダウンのフォームについて説明させて頂きます。」

 

流はホワイトボードを持ってきて、そこへ書きながら説明を始めた。

 

「ラットプルダウンとは皆様も御存知の通り座った姿勢のままバーを引き寄せるだけで、背中の筋肉を狙ってトレーニングを行うことができる効率の良い背中のトレーニング種目ですが正しいフォームと重量で行わないと効果も薄く、最悪怪我につながることになります。」

 

皆しっかり話を聞いて、一部のトレーナーやウマ娘たちの中にはメモを取り出し書き写すものも居る。

 

「フォームによくある間違いとしては、体を後ろに倒しすぎ、腕で引いている、手幅の広さ、バーを下げすぎている事がよく見られる間違いです。」

 

「では正しいフォームですが、肩甲骨を下ろしたまま動作させること、其のために肘を意識する、更に其れを行いやすくするために、小指側を意識して握る事です、実際に動作をやって見せるときには握り方で説明するのですが、意識する順番として逆の順番で説明させていただきました。」

 

見に来たウマ娘やトレーナー達からも色々質問が増えてきたので

 

「ここからは私の行う動作を実際に見て頂いたほうが良いと思います。」

 

流はTシャツを脱ぎ黒のラッシュガード姿になるとインナー越しに限界ギリギリ迄、絞り込まれた肉体が露わになる、元々の端正な顔立ちも相まって其の姿は研ぎ澄まされた日本刀を連想させた。

 

先程までシャドーで身体を温めていたからか、汗が蒸発して湯気が立っている。

 

『うわ・・・』『すっご。』『細いけどバキバキ。』『どういう鍛え方したらああなんだよ。』『ステイヤーみたい。』『手足長っ』『フィジカルトレーナーとしては細いなと思ったがこれは。』

 

聞こえる声がどうにも、陰キャの筋肉キモいっていう娘も多いから、見苦しいものを見せてしまった気分になった。女性の多い場所だと当然だろうが、競技柄脱ぎ慣れているから気づかなかった。

 

「すみません、筋肉の動きがわかりやすいようにラッシュガードのみにしたのですが、見苦しい物を見せてしまい申し訳ありませんでしたすぐにシャツに戻しますので。」

 

シャツに戻そうとした瞬間にシャツに対する抗議のような声が聞こえた。

 

『そのままでお願いします』『お願いだから着ないでください』『後で筋肉触らせてください。』

 

いくつか変なのも聞こえたが、ラッシュガードの方が良いと言う事でそのまま続ける事にし、ラットプルダウンの重量を調整し始めた。

 

「私の体ではウマ娘の皆様の身体能力に見合う重量は扱えないのもあるのですがフォームを見せるため、ある程度軽めの50kgで行います」

 

そのままラットプルダウンマシンに座ると、フォーム説明に入った。

肩幅よりやや広く、小指から順番にバーを掴んでいき、肘から背中を締めるように、バーを下げていく。

 

「反動を使わずここで肘の角度が直角になったらバーを上げて戻します、勢いよく戻すとマシンの故障や怪我に繋がりますので、必ずゆっくりお願いします。」

 

バーの動きに合わせて肩甲骨が動き連動して背中の筋肉が上下する。

 

「呼吸はバーをさげる時に吐き、戻す時に吸います、基本はそれの繰り返しです。」

 

やたら背中に視線を感じるがそれは、置いといて皆真剣に学ぼうとしてくれるのは良いことだ。

 

「トレーニング方法としては5秒に一回位の間隔で10回上げ下げできる重量が一般的にベストと言われています。」

 

「ハイッ!質問があります」

 

元気よく手を上げたのはサクラバクシンオーだった。

 

「はいサクラバクシンオーさん。」

 

「背中とは少々違うのですが瞬発力を高めるにはどれくらいの重さでやった方がいいでしょうか?」

実にいいアスリートとして、考える能力と意識の高さは尊敬に値する。

 

「良い質問です、貴方が扱える一番重い重量を基準に考えて、3割から6割くらいの重量を目安にして行ってください。」

 

「ハイ!わかりました!」

 

ひと呼吸置いて

 

「あと先程聞こえた後で筋肉に触らせて下さいというご意見に関してもお答え致しますと、参考になるのであればどうぞということでお願い致します。」

 

何人かのガッツポーズが見えたが気にしない事にした。

 

「他に質問がなければ私は通常の業務に戻らせて頂きます。」

流は机に戻ってPCを触りながら業務日誌を書きはじめたら、またサクラバクシンオーがやってきた。

 

「管理人さん、先程はありがとうございました!また質問したいことがあるのですが宜しいでしょうか?」

 

「もちろん、私に答えられる事で宜しければいくらでも。」

 

「私でも長距離を走れるようになるでしょうか?」

 

「質問を質問で返してしまって申し訳ないですが、それは短距離スプリンターが速度を維持したままステイヤーになる事が出来るかということで宜しいでしょうか?」

 

「はい!その通りです。」

 

非常に難しいことだと思うが、フィジカルトレーナーかつ、夢を護るものとして自身の学んできたトレーニング理論と自分の経験を合わせて答えることにした。

 

「ヒトの基準で言えばトレーニングによっては理論上は可能だと思います、調べた限りだとウマ娘の皆様は個体差というか個人差が激しいというか特化に近いレベルですので、フィジカル面で言えば持久力と瞬発力トレーニングを繰り返しつつ、徹底的な高強度インターバルトレーニングを用いた心肺強化トレーニングを長期間行えば可能かもしれないというレベルの話です、確実に地獄の鍛錬になるでしょうが。」

 

「なるほど、長すぎてよくわかりませんが、不可能ではないんですね!それではトレーナーさんに練習メニューを作ってもらいます!トレーニングメニューについては管理人さんも協力してください!」

 

「分かりました、そのときは微力ではありますがお力添えさせて頂きます。」 

 

「ありがとうございます!これでトレーナーさんが嘘つきじゃないと証明できます!」

 

満足そうな顔でサクラバクシンオーはジムを出ていった。彼女のトレーナーの所に向かったんだと思うが、嘘つきってどう言うことなんだろうなと思った。

 

後にステイヤーとしての狂気とも言える鍛錬を積んだサクラバクシンオーが有マ記念に挑戦することになるがそこはまた別の話。

 

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