ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
流達がジムの前で鍋を始める少し前の対戦は公式ルールの三本勝負はめんどいので、普通にワンマッチの対戦で一回勝負にすることにした。
2ラウンド先取の一本勝負だ。
1ラウンド目は流の使用キャラであるエドのステップによる間合いのコントロールと手数の多さで、葛城の使用キャラであるマリーザの一撃を完全に抑え込むように押し切って1ラウンド先取。
「あ、トーマ1ラウンド、負けちゃった。」
「大丈夫だテイオー、大体わかった」
2ラウンド目は葛城が、アーマー技という貰っても返せる技を駆使し強引に壁に押し付けて、そのまま何度も起き攻めのコンボを叩き込み、容赦なくハメ潰した。
このゲーム画面端での攻防が重要で、なかなか抜けられないことも多い、マリーザは画面端に押し付ける能力が非常に高く、延々と壁に押し込める。
続く3ラウンドもそのまま壁ハメに移行しようとしたところ、反撃に出ようとしたところに、流がレバーレスの特性を生かした左手のみの入力と同時に右手で葛城の鼻目掛けてスナップを効かせた裏拳を放った。
葛城は顎を引き流の裏拳をそのまま頭突きの要領で額で跳ね返し、驚くというか唖然とするギャラリーをよそに、正確なコンボ入力を続けそのまま勝利した。
「俺の勝ちですね、ではジェンティルの出禁解除お願いします。」
「お見事、約束は約束ですからね、出禁は解除しときますよ、あれ寸止めのつもりだったんですけどね。」
「こんぐらい防げないと、地元のゲーセンで格ゲーなんざやってられないんで、因みに金剛八重垣流で強くなろうと思ったのは、ゲーセンで負けたら絡んでくるが多かったから護身術が必要だったんで。」
流は納得したように
「なるほど、治安の悪い土地のゲーセンはリアルファイト対策必須ですからね、守りを重視した金剛八重垣流は適切ですね。」
武道や格闘技を喧嘩に使っちゃダメと突っ込みたかったが2人ともヤベー奴だと言うことは分かっていたのでトウカイテイオーは口に出さなかった。
流と葛城が2人で納得してる空気になっている所に谷口が割って入った
「葛城、俺と佐久間さんを連れてきた理由覚えてるよな?ちゃんとそこは筋を通しておけよ。」
「おっそうだな、悪ぃ谷口。」
葛城は其の場で蒼真に対して土下座した。
「蒼真さん、うちの担当がすいません!ジェンティルの出禁解除してください!オナシャス!許してくださいなんでもしますから。」
「ここまで気持ちのこもっていない謝罪もなかなかですね、それは良いとして・・・今何でもするって言いましたよね?」
「何でもしますとは言いましたが、何でもするとは言っていません。」
「そんな理不尽な要求はしませんよ、葛城さん金剛八重垣流の鍛錬は続けていますか?」
「ああ、出奔したから対人は出来てないけど、鍛錬は続けていますよ。」
「出奔って、爺さん…いや総裁と何かあったんですか?」
「ジェンティルのトレーナー目指すからトレーナー学校に入るんで暫く休ませてくれって言ったら反対されて面倒くさくなったんで、なら辞めるって言ったらジジイが内弟子けしかけて止めようとしたから、全員ぶっ倒して出奔してきたんすよ。」
珍しく流がドン引きしていた。
「それ、破門食らうどころか、絶縁食らってもおかしくない話ですね。」
「今んところなんのリアクションもないから、大丈夫、ヤエノの奴もいるから爺も変な事出来ないでしょ。」
葛城に仕掛ければ、学園生のヤエノムテキに迷惑が掛かるのを分かっているからこそ、葛城も堂々としていられるし葛城本人も相当に強いので総裁も放っておくしかない。
それならそれで流にはちょうどよかったので一つ提案を持ちかけた。
「葛城さん、まず私さあ試合あるんだけど手伝わない?」
葛城は学園が許可するのかと考えたが
「ああ^〜良いっすよ、それがそちらの提示する示談の条件なら、答えは当然やりますねえ!」
少し離れたところで
「ねえ、カフェなんでジムかんとトーマは例の語録で会話してるの?」
「知りませんよ・・・というか何故テイオーさんは語録の事を知ってるんですか?」
「FPSや格ゲーで配信しながら対戦やってるとさ、多いんだよね、あんな感じで煽ってくるのが、カフェもなんか知ってそうだけどなんで?」
「弟が小学校で流行ってるのか・・・LANEでまずうちさあ・・・新豆入ったんだけど飲んでかない?ってメッセージが届いてきて、軽く調べてすぐに私も【お友だち】もやめるように言ってるのですが、中々やめてくれなくて。」
「ああ、友達もいるだろうし難しいよね。でもその内飽きると思うよ。」
「・・・どうでしょうか?目の前で大人になっても・・・使っているのが居ますから。」
離れて暮らす弟の心配をしながら、二人を見つめるマンハッタンカフェに佐久間が声をかけた。
「二人共、子供の頃から周囲と関わらずに一つの事をずっとやりつづけてきたタイプだから、大きくなってからの反動が凄いんだろうね、それでも使う相手を弁えているから大丈夫だよ。」
「なるほどそう言われると、流さんだけは可愛く思えて来ましたね。」
「それでいいと思うよ、葛城の方は明らかな悪ふざけだけど。」
そこへいつの間にかカウンターに立っていた流が電気ケトルの温度調整をしつつマンハッタンカフェに声をかけてきた。
「カフェ、ちょっと外でチムチュム作るから、手伝ってくれ。」
「・・・チムチュム?」
マンハッタンカフェにはチムチュムというものが何かわからない。
「ああ、チムチュム、ハーブを使ったタイの鍋料理だよ。」
「何故・・・鍋料理なんですか?」
「何も喰ってないらしいし、ここだと匂いが籠もるからな。」
流はなにかスタンドを組み立てている、ドリッパースタンドの下にまた何かをセットするためホルダーがついていた。
流はドリッパーをスタンドにセットすると、電動ミルで先程佐久間から注文を受けた豆を電動ミルで引いてドリッパーにセットすると、下のホルダーにクーラーボックスから取り出したキンキンに冷えた金属球をセットし、いつも通り、湯を注いでいった。
ドリッパーから落ちたコーヒーが金属球で急冷されながらサーバーに落ちていく。
「・・・これは何を?」
「抽出直後のコーヒーを急冷することで成分の揮発を抑えて中に閉じ込めるんだよ。」
「なるほど、でもそれだとコーヒーが冷えませんか?」
「金属球自体の熱伝導率がかなり高くて球がすぐ熱くなるから影響はないよ。」
流は注ぎ終えたコーヒーを佐久間、谷口、葛城に手渡すと、マンハッタンカフェが飲みたそうにしていたので、すぐに豆を挽き直し、金属球を交換してからマンハッタンカフェ用にコーヒーを淹れ直し手渡した。
佐久間達は美味しそうに飲んでいるが、マンハッタンカフェの反応はかなり違う。
「確かに・・・全然冷えてませんね・・・これは口当たりが全然違いますね・・・後・・・前に飲んだときより、ハーブのフレーバーが数段強く感じますし・・・酸味もキレイに感じます。」
「だろ?奮発した甲斐があったな。」
「幾らしたんですか、この機材類は・・・」
「2セットと玉のバラ売りを幾つか買ったから、五万ちょいくらいだな。」
特殊な器具としては高くはない。
「買い過ぎです。・・・もう少しお金を大事にしてください。」
「ここは食費がかからねえし、コーヒーの道具なら経費だ経費、カフェも使えば問題ねえだろ、チムチュムの用意するから手伝ってくれ。」
流は給湯室の奥へ入っていった。
【お友だち】がカフェに声をかけた。
『あいつ金遣い荒いどころじゃねえな、コーヒー器具だけじゃなくて小型パソコンやコントローラーとかも高級品だな、カフェが財布取り上げないと際限なく使うぞアレ。』
「うん・・・わかってるけど、財布を取り上げるのは流石に、私でも・・・ダメじゃないかな?」
『クソ犬の躾は最初が肝心だぞ、カフェ。』
マンハッタンカフェは大きく深呼吸すると、妙な形の鍋とコンロを持って出てきた流に声をかけた。
「・・・流さん、財布を渡してください。」
「ん?いいぞ」
『カフェ、理由と主語抜けてんぞ!?お前も渡すのかよ!?』
お友達は何故か頭が痛くなったような気がして頭を抱えた。
(続く)
昔はゲーセンとかで格ゲーの対戦やってると肘で押してきたりとか、終わったあとに殴って逃げるやつとかが居たそうです。
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