ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
流からメニューを組んでもらったHIITトレーニングを数セットこなしたオグリキャップは、カオニャオ・マムアン(もち米マンゴー)、マンゴスチン、チェリモアと複数のフルーツを空芯菜とはちみーのスムージーで流し込んでいた。
「うん、どれも美味しいその中でも、マンゴスチンはライチみたいな味だけど、柔らかくてもっと甘いな、甘いもち米とマンゴーもたまらなく美味しいが、このチェリモアという果物、バニラアイスみたいな香りと甘みがあってすごく癖になる。」
「オグリさんあのトレーニングきつかったじゃろ。」
「ああ、ウエイトトレーニングや有酸素とは違ったきつさがあったな、短時間で全身追い込めるのはなかなかに良かった。後ケトルベルというのもどんどん使っていきたい、全身の使い方がよりわかった気がする、キタハラにもメニューを作ってもらおう。」
「私は競技柄、筋トレに関しては、ウェイトはあまりやらずにケトルベルとHIITを中心にやっていますね、短時間で全身を追い込めるので。」
「管理人さんは、ウェイトトレーニングはしないのか?」
「いい質問です、私の場合は階級制の競技ですから、部位別のウェイトよりも、全身を連動させるほうがちょうどいいんです、怪我したときや休養して筋肉量や筋力が落ちてしまったときは、その回復のためにウェイトトレーニングをやるという形をとっています。」
「ふむ、競技によって考え方が違うんだな、スムージーおかわり。」
流は空芯菜をミキサーにぶち込み其の他のフルーツと混ぜ合わせ、その後にはちみつをたっぷりと混ぜる。
「貴女にしては、ずいぶん控えめに食べられますね。」
「ああ、色んな味を楽しみたいのとカフェテリアの朝食もあるからな、だが、豚足煮込みご飯は食べてみたいんだが。」
「カオカームーですか、それは構わないですが、さっきまでフルーツばかり食べていたのに。」
それを聞いてオグリキャップは少し気まずそうにしながら
「そこなんだ、デザートとご飯の順番が逆だと行儀が悪い。何と言うか、ご飯の前にお菓子を食べてしまった気分だ。」
オグリキャップというウマ娘は考えなく食べるような大食いに見えるが行儀はいい、この場合は、どうフォローすべきか少し悩んでしまう。
「これはあくまで、エネルギー補給のための捕食ですから気にされなくても大丈夫ですよ。」
「なるほど…それなら大丈夫か。」
「それでは、用意しますね。」
流は保温容器から、ご飯を大きめ皿に持ってオグリキャップの前に差し出した。
「かけるものは用意しますので。」
オグリキャップは皿に盛られたご飯を凝視しながら。
「このお米は長くて艶がなくて、パラパラしてパサパサしているな、ちょっと変わった香りがする。」
「それはですね、ジャスミンライスと言って最高級のタイ米です、このお米はインディカ米という種類で日本のお米と違って水分が少ないので炊飯器で炊くのではなく熱湯で茹であげて炊くのでこんな感じになるんです、白米単体で食べるのではなくて、ご飯に何かをかけたり、炊き込みご飯みたいにして食べるのが主流です、ご飯に乗せるのは豚足とこれです。」
流はご飯の半分にトロトロに煮込んだ豚足、もう半分にはプーパッポンカリーと呼ばれる蟹のカレー卵とじをぶっかけた。
「適当ですがカオゲーン、ぶっかけ飯の完成です。」
オグリキャップの目が輝いている
「蟹と豚足煮込みのぶっかけご飯かこんな物があるなんて、ご飯にタレがものすごい速度で染み渡っていくのが見える、これが…タイ米!」
オグリキャップは一口、豚足と一緒にご飯を口に含んだ。
「すごい!サラッとしたお米の食感が豚足によくマッチしている、次はこの卵のカレーみたいなやつも食べてみよう。」
口の中に一口含むと、蟹の旨味の染み込んだココナッツミルクベースの甘辛いカレーの味が口いっぱいに広がっていく。
「これもお米とカレーのバランスが素晴らしい、こんな贅沢な食べ方があるなんて思わなかった」
流は人参で作ったソムタムを皿に乗せて差し出す。
「これはこの前食べたパパイヤのサラダそっくりだが、人参で作ったのか。」
「ええ、青パパイヤは中々手に入りにくいので人参で代用させてもらいました。」
オグリキャップは嬉しそうご飯を頬張っている。
「お兄さん、色々作るんだね。」
「G1ウマ娘や一部のボクシングの世界王者とかオリンピック選手みたいに専属の栄養士がいる訳じゃないですし、一般のアスリートは自炊を覚えないとやっていけませんからね、金かかるので」
「ボクシングでも地方ジムの選手は世界獲っても、金にならない事もあるからねぇ…」
「昔ありましたね、ファイトマネー0円の世界王者。」
「田舎のジムからの世界戦ですからね、会場の確保や経費はかかるわ、呼ぶための金もかかるわで大変だったそうで、知名度も少なくスポンサーも居ないから大赤字だったようで、その点ウマ娘はいいですよね、アイドル的な人気もあって専用のレース場もあって、見た目麗しくてアイドル的な人気もあって、興行は大黒字で大口スポンサーがつきまくりますからお金には困らない。」
「私は別にお金のために走ってるわけじゃないぞ、走るのが好きだからだ」
流の一言が気に障ったのかオグリキャップは、金のためじゃないと抗議したが食べながらなので、どこかシュールなものがあった。
「個人としてはそうでしょうが、貴女達が走ることで、莫大な額のお金が動いて経済の発展に繋がるんです、それは素晴らしいことですからね、それに比べて私のやってるようなマイナースポーツは何も生みませんからね、うらやましい限りです。」
どこかズレた返答を聞かされた気がしたオグリキャップは単刀直入に聞くことにした。
「君は、私たちウマ娘やレースをどう思っているんだ?」
「小学校時代は兎も角、中高の時は、自分から話すことを避けるくらいには関わりたくない存在でしたね、周りの連中がうるさかったし、レースに興味がない私には面倒くさい連中だなと、その絡みでトラブルも多かったので、それでも中学の時だけでしたが関わりのあったウマ娘さんたちは普通の女学生でしたよ。」
「ちゃんと関わりはあったんだな。」
「そりゃあ学生ですからね、印象に残っているのは3年間同じクラスで、グランドライブっていう大きなライブの創立に関わったウマ娘で、母親もG1ウマ娘で学業もスポーツも優秀、生徒会長も務めて、クラブレースで何度も優勝と学校の話題を独り占めにしていましたね、卒業後は中央に行ったみたいですが、思い出すと色々腹が立つんですよ。」
流は一呼吸おいて。
「シンボリルドルフ会長には話したのですが、当時素行不良で学校に馴染もうとしない私を色んなことに巻き込んでくれた上に、実家のコーヒー散々ただ飲みしてくれましたから。」
「そ・・・そうか他には誰か居ないのか?」
「後2つ下の後輩でソノンなんとかって名前だったか、私がラントレで校庭走ってたときに怪我してるのを見かけて、足首と膝を怪我したらしくて、テーピングしてやったら、よく教室に来るようになって、やれトレーニング法とか体の使い方を教えろとか、テーピングやケアの仕方とか教えろとか、試合の日は何時だとかめんどくさかったですね、何度練習の時間が削られたことか。」
「面倒くさいという割にはしっかり教えているんだな。」
「当時の私は四六時中、キックボクシングの事しか考えていない社会不適合者でしたが、後輩に頼られたら無下にするわけには行きませんから、ここの生徒に筋トレ教えるときもそんな感じですね、競技は違えど俺の方がキャリアも経験も上ですから。」
一瞬、口調が素に戻った流をみてオグリキャップは
「たしかに、小さな頃からずっと試合の場に立ち続けているなら、競技は違っても先輩だな」
ここでレースとキックボクシングは違うという意見もあるがオグリキャップは、同じ競技者として流を見たからこその言葉だった
「レースにというかその運営について正直にいうなら、心も身体もまだまだ成長の途中にある子供たちを選手兼アイドルのようにして、集客やクッズの売り上げで儲けるやり方は、商売としてはありですが、スポーツの興行としては最低最悪の部類だと思っています。ギャンブル化だけはさせない所をみると学園やURAにも人の心がが残ってるとはおもいますが。」
「お兄さん、理事長やURAに聞かれたら首が飛びかねないことハッキリいうね。」
「元々、私はレースファンでもウマ娘ファンでもありませんからね、こういう見方もあると思っていただければ。」
「言いたいことはわかるよ、これを学園職員のお兄さんが言っちゃうのはねえ・・・そういうことならムエタイだって子どもを賭けに使ってるといいたいけど。」
さすがのワンダーアキュートも言葉に困っていると。
「難しい事情はよくわからないが、走ることができるならそれでいいんじゃないか?管理人さんだって戦えるなら周りにどんなな思惑があろうと関係ないだろう?」
流は実はわかってるんじゃないかと思ったが
「ええ、試合できれば何でもいいですからね、裏で何が動いてようが勝てば関係ありませんから。学園はなんだかんだでウマ娘を最優先に考えていますから、そうでないと学園にあんなヤクザまがいの警備会社を入れたりしないでしょう。」
「守衛さんたちは反社会的な人たちだったのか?」
「人員が荒事専門の方々が多いだけでちゃんと法律で認められた警備会社ですよ。」
「ならいいのか、管理人さんは何故キックボクシングのプロになる道を選んだんだ?」
「プロなら強ければ金と名誉が手に入って、ボン・キュッ・ボンの女性にモテまくる生活が送れると聞いたからです、現実は甘くなく・・・平べったい。」
オグリキャップはなるほどなあと納得した顔で頷いていたが、トレーニングを終え近くで談笑していた、カワカミプリンセス、ドゥラメンテ、マンハッタンカフェは流に軽蔑の目をむけ、ワンダーアキュートはわかりやすいブラックジョークだなと見ていた。
「お兄さん、ここは学校でしかも女子校だからねそういう冗談はいけないよ、本当の理由は?」
「バレましたか、小さい頃からやってきて、寝ても覚めても殴り合いのことしか考えられないし、強くなればもっと強いやつと殴り合えるし、磨いた技術でどこまで行けるのか、それだけを求めた結果プロを選ぶしかなかったというか、それ以外の生き方は考えられ無かっただけです。」
「好きなんだな、キックボクシングが、私たちが走ることが好きなのと同じ位、闘いに対する思いはそれ以上かもしれないな。」
同類を見つけたという感じでご飯を頬張るオグリキャップ。
「流石にウマ娘さんほどではないと思いますが、オグリキャップさん食べ終わったみたいですね、食後のコーヒーは如何ですか?」
「いいのか?でも私は、苦いのを飲めるか自信がない。」
不安そうに答えるオグリキャップ
「大丈夫、甘いラテを用意しますので、カフェが。」
安心したのかマンハッタンカフェを見るオグリキャップ。
「突然で済まないが頼めるか?カフェ」
「ええ・・・他の皆さんの分も一緒に・・・すぐお作りしますね、後流さんは・・・私と一緒に給湯室へ。」
そのまま、流を引きずって給湯室へ入り扉が閉まると、数回破裂音が聞こえた後、部屋からでてきたのはマンハッタンカフェだけだった。
その後マンハッタンカフェの作った特製練乳入りカフェラテを飲みながら、四人は彼女を怒らせてはいけないと思った。
読んていただきありがとうございます。