ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
マンハッタンカフェによる理解らせから解放された流は、カフェテリアにあるエスプレッソマシンを再び触っていた。
「メイン機の調子はよし、サブの方もカフェが使う分は問題ないな。」
すぐに、部屋の湿度計を見ながらしコーヒーミルの粒度を見て。
「湿度も粒度も問題なし」
10分程で総ての確認を終えると、向かいではスイーツバイキングの準備で生徒も業者もてんやわんやしていた。
まだ昼にもなっていない時間なので、時間には間に合うだろう。
流はスタッフに会釈だけして離れようとした時、学生でないウマ娘から声をかけられた、教官用のジャージを着た同年代ぐらいのウマ娘だ。
皐月賞からジムの外へ出るたびに誰かしらに声をかけられる事が増えた。
流は学生のウマ娘には多少気を使うが、過去の経験から同年代や少し年上のウマ娘に対しては無意識に当たりが悪くなることがある。
流はいつもより鋭い顔つきで
「はい?なんすか」
とこたえたら、そのウマ娘は素が出たのか、流に対して
「あ?こちらが丁寧に声かけとーとのに、いきなりガンと飛ばしてきてなんとね?喧嘩売っとーと?」
声こそ静かだが、ドスが効いていた。
流は受け流して
「これは失礼、仕事以外で年の近い女性とお話する機会があまり無いものですから、ましてや貴女の様なチャーミングな女性相手だと余計に緊張してつい。」
わざとらしく答える流、その表情に変化はない。
「へぇ、そやったらお姉さん、優しくリードせんといけんとね。」
「いえ、それには及びません。で、要件は?」
「せっかく、こんなグラマーないい女がリードしよって言っとるとに、付き合い悪かねぇ。ま、よかよ。こちらも仕事モードに戻りましょう、トーセンジョーダンさんの事でお話があって。」
「トーセンジョーダンさん、彼女がなにか?」
「谷口トレーナーが彼女の担当になる少し前に、彼女がレース中に失速したことがあって…場所変えたほうが良いですよね?」
流は周りを見てから
「大丈夫でしょう、周りも作業で一杯一杯だからこちらに意識を向ける余裕はないでしょうし、聞こえたとしてもバラすような方々ではないでしょうし。」
「それなら、失速したあとに爪の問題があった事とそのせいで上手く走れなくなってるのに気づかずに、やる気がないならやめろって言ってしまって、それを彼女に謝りたかったんですけど、チャンスがなくて。」
「それで私に間に入れと、良いですよ谷口トレーナーに連絡しましょう。」
流はスマホを操作し、LANEでメッセージを送った。
【済みません、谷口さん、トーセンジョーダンさんと一緒にジムの方へ来ていだけませんか?】
直ぐに既読が付いた
【15分程あとになりますが、良いですか?】
【はい大丈夫です。】
流はスマホをしまい
「それじゃあ、ジムに行きましょうか。」
「あ、はい。私ハカタコマチって言います。貴方は?」
「蒼真です。」
流は相変わらずの仏頂面で答えて、教官ことハカタコマチは流と一緒にジムに着いた。
ハカタコマチは流の無愛想な態度にムカついていた、そこで動揺させてやろうと思い、流の右腕をわざと胸の方に引き寄せてからもたれかかり、そのまま引っ張り込むようにしてジムに入った。
その姿を見たトウカイテイオーがマンハッタンカフェへ向けて叫んだ
「カフェ!ジムかんがジムに女連れ込んでるよ!」
直後、風を切る音と共に流の顔に超高速で飛んできた食器洗い用のスポンジが直撃し、ハカタコマチはやっちまったという顔でマンハッタンカフェとスポンジを交互に見つめていた。
(続)
色々ありすぎて投稿が遅れました、こうして読んでいただけて幸いです