ジムかん。(トレセン学園内ジムの管理人の話。 作:なっぞのひと
「なんで俺がたづなさんに詰められなきゃいけねえんだよ。」
「詰められた内容、少し聞こえたけど仕方ないと思うよ。」
「あー言われてみればそうか?スティルさんはどう思う?」
「私も話の一部を聞いていましたが、管理人さんは行動と発言を少し改められた方が良いと感じました。」
「ふむ、少し考える必要はあるな。」
「君がそう答える時は、考えはするけど改める気は無い時だよね。」
「わかってるじゃないか、現状に満足しちまうのは停滞に繋がるからな人間として。」
「言っている事はわかるけど、流の言う現状はただの暴言でしか無いからね。」
「そういうもんか、二人とも食べ終わったか、デザートはこれな。」
流は一口サイズのもち米とマンゴーを和えたお菓子を二人に差し出した。
「カオニャオマムアン、本当はもう少し出してもいいんだが、二人とも食べるの遅いからこれで勘弁してくれ、そろそろやることがある。」
「ありがと、食べ終わったら、お暇させてもらうよ。」
流は後片付けを、終え外出中の札を立て、シンサックに声をかけた
「シン先生俺はそろそろ出るけど、理事長の所行かなくて良いの?」
「そうだね、ワタシも理事長のところへいかなきゃね許可は取ってあるけど。」
ずいぶんと時間にルーズだなとおもったが、タイ人はこれがデフォというよりは時間はあくまで目安という感覚なのと基本マイペンライの精神なので遅刻しても仕方ないねで許容が当たり前の社会なのだ。
ただシンサックはタイ最大のコーヒーチェーンの重役でビジネスマンでもあるので時間に関してはしっかりしているはずなのだがそこはタイ人だった。
流はいつの間にかハカタコマチが戻ったのを確認し、大庭とスティルインラブが食事を終えるのを確認した。
「終わったな、んじゃ閉めるか。」
流は食器を下げると軽く水洗いし小型の業務用食洗機に入れると、給湯室という名のミニカフェテリアの電気を消し、外出中の看板を立てかけておいた。
「そういえば、カフェは感謝祭で喫茶店をやるんだったな、機材の調整とか手伝うことはあるか?」
「いえ・・・殆どの事は流さんに教わっていますから、むしろ・・・今日のカフェテリアの準備をされたほうが」
「あれはメインもサブもマシンは調整済みで、本番でお客の量と導線の調整をどう考えるかぐらいだからな、それに昼食が終わらないと準備できないからな、少し事務仕事しようにもなあゲーミングノートをトウカイテイオーさんとアーモンドアイさんとラヴズオンリーユーさんに格ゲーの練習用に使われてるからなあ。」
「止めないんですか?」
「仕事のデータと格ゲーしか入ってないからなネットに関してはゲストユーザー用だから問題ない。」
「そうですか・・・では私の部屋で少し休憩しませんか?」
「休憩って、美浦寮は基本学生以外入っちゃだめだろ。」
「寮ではなくて・・・旧理科準備室です。規則はちゃんと守るんですね。」
「破ったことが確実にバレるような規則は遵守すべきだろ。」
「・・・バレないようなことなら守らないんですね。」
「そりゃ当然。」
「褒めてません」
流は少し戸惑っていた、自分から行動する分には自制が効くが、いざ受け身となったとき予想ができない分自制が効くかわからないしどうしようと考えたが、無下にするのも良くないと判断した。
「わかった、だが変な気を起こすなよ。」
「それは…普通・・・私の台詞では?」
「こっちのほうが呼ばれてるからな。」
「私の事どう思っているんですか?」
「真面目を装っているが、結構むっつりだよな。」
直後太ももを数秒抓られた、ウマ娘の力で
「痛え…」
「なんで部屋で一緒にコーヒーを飲みたいってだけなのに…こんなにもややこしく。」
「だったら最初からそう言えよ、まどろっこしい。」
【お友だち】が流に呆れたような態度で
『お前なあ、もう少し乙女心とか勇気とかさあ、色々配慮してやれよ。』
「一応配慮はしているつもりだよ、それに誘いを無下にする気はないよ、そういうことだから連れてってくれ、カフェ。」
流がカフェに付いていこうとした時、スティルインラブに呼び止められた。
すぐに自身に気づいたことにスティルインラブは少し驚いていた。
「どうした?スティルさん?」
「あの…少しだけ…お時間を頂いても…よろしいでしょうか?【あの子】が管理人さんとお話したいと。」
「いいよ、まだ時間はある。」
直後、スティルインラブの何かが変わった、コールタールのように纏わりつく血と全身に絡みつく茨、制御不能な殺気と野生の獣のような闘争心がとめどなく溢れ出ているのがわかる、気の弱いものなら喰い付くされる程に、その姿は狂気と妖艶さが両立していた。
マンハッタンカフェと【お友達】はスティルインラブの変化を一種の怪異と捉え警戒していた。
近くに居る大庭の眼が一瞬だけ紅くなったのがわかった。
普通の人間なら呑まれるだろうが、試合経験が多く人の殺気や気迫に慣れている流からしてみれば、強烈ではあるが子どものそれだったのでどうということもなく、受け入れていた。
淫夢厨の葛城も呑まれることなくガタイで分析して大丈夫と判断するはずと流は考えた。
「うん、こんな感じなのか…コーヒーは口にあったかな?」
「ええ…とっても、直接味わえなかったのが残念なくらい。」
「そうか、なら一緒に理科準備室に来るか?カフェに淹れてもらえば良い。」
スティルインラブはひどいしかめっ面になり
「そんな野暮なことするわけ無いじゃない。」
情動を抑えきれないだけで良識はあるんだなと流は納得した
「それじゃあまた今度だな。」
「ええ、また今度、それにしてもアナタ、ワタシを見て驚かないのね。」
「最初から居るのが理解っていれば、そんな驚くことでもないだろ。で、本題は何だ用があって出てきたんだろ?」
スティルインラブは流の瞳を下から覗き込むと何かに納得したように頷いた。
「そうね、アナタなら大丈夫そう、この先・・・私達がどんな道を歩む事になっても、最後まで【私達】の味方で居てくれる?」
「そりゃもちろん。三人の味方でいるつもりだ。」
スティルインラブは驚いた顔を見せた。
「三人ってワタシも?」
「当然だろ、君は自分が消えて本来のスティルさんが幸せになればいいと思ってるみたいだが、それは二人とも望んでないよ、大庭も多分一粒で二度美味しいぐらいにしか思ってない。」
「トレーナーさンヲ そんナふうに言うのは ヤ…メて。」
今まで周囲に巻き散らされていた気が殺意へと変わり流に集中したことで、スティルインラブが少し怒っているのがわかった。
「軽いジョークなんだがな、君のことはなんて呼ぼうか…赤いから…赤さん?それとも、本能のまま生きる…野生の獣…野獣と化したスティルさん…、つまり野獣でいいか。」
「止めて、ソれは本当 ニ、オ願い…ダカラ。」
「なんだ、ぴったりだと思ったんだが本気で嫌がってるみたいだから止めとくか。」
「アな タ 私ヲ…どう思ってイるの?」
「体を共有してる双子みたいなもんだろ?どっちが姉はわからんが。」
スティルインラブはなんとも言えない表情を見せたあと、彼女から殺意が引いた。
「姉妹…アナタはそう取るのね、ありがとう話せてよかった。」
「今度は直接飲みに来るといい、いい豆を用意しておくよ。」
「期待してるわ、ワタシはそろそろ体を返すけど、トレーナーさんと私をお願いね。」
スティルインラブから放たれていた強烈な気配が消え一気に薄くなった。
元に戻ったスティルインラブからおずおずと流に問いかけた。
「あの子は貴方に…失礼なことを言ってなかったでしょうか?」
「いや別に、あの子は君のことを気遣っていたよ。」
「そうですか…あの子が」
スティルインラブは嬉しそうだった。
「それじゃ、俺はもう出る。大庭、体に気をつけて飯ちゃんと食えよ?」
「うん、流も気をつけてね。」
「んじゃまたな。」
流はカフェを連れてジムを出て校舎に向かった。
その道中マンハッタンカフェが不安そうに話しかけてきた。
「流さん・・・スティルさんの中にいるあの子のことですが・・・」
「ふむ、どした?」
「彼女はどちらかと言うと・・・あちら側に近いような。」
「ああ、気配と言うか、気がとっ散らかってるからな、触れるものを喰らうというかあれは、ふつうの奴は怖がるだけで済むが、感受性の強いやつは思いっきり影響されちまうかもな、あれは怪異と言うよりたちの悪い厨二病みたいに思っとけばいい。」
「彼女だけならそうなんですが・・・別の何かがあの子のそれを後押ししているような・・・。」
「大庭への想いだろ、【二人】とも大庭のことが大好きみたいだから、そのせいだとおもうぞ。」
「なるほど・・・流さんがそういうのなら、そうかも知れませんね。」
流が何かをはぐらかしていることには気づいていたが、マンハッタンカフェは気づかないふりをすることにした。
どんな話題を振ろうか考えていると、金髪碧眼でインナーカラー水色の二色髪とよく目立つ容姿のはずだが、スティルインラブと違った独特の気配のあるウマ娘が、流に声をかけてきた。
「”IRGL”『シンギュラリティ』とも違う、世界に本来現れないはずの存在をネオユニヴァースは見つけた。」
流はイレギュラーという言葉が自身をさし、この世界というのがおそらく学園であろうと流は言い回しから判断したあと一人称からおそらく彼女の名前がネオユニヴァースとも流は判断した。
葛城なら脳と一緒にガタイも使って分析するガタライズ能力で彼女の意図もすぐに理解できるのであろうが、 流には難しかった。
「事故にあっていなければトレセン学園に就職していませんからね、そういう意味で私は本来現れていないでしょうし、十分イレギュラーな存在だとは思っていますよ、私自身は。」
ネオユニヴァースは首を横に振った。
「ネガティブ、ネオユニヴァースが今まで観測してきたどの世界のこの瞬間、この場に、貴方は存在していない。そのうえで貴方にはウマ娘と”LINK”も”CNCT”も存在しないのに、ここに居る。だから”IRGL”。」
流は彼女の発言をゆっくりと考えながら、頭の中で噛み砕いていき、自分の中で行き着いた答えを彼女に伝えることにした。
「なるほど、ネオユニヴァースさんの観測した世界の総てでの私はここに来る前の事故で動けなくなっているか、死んでいるんでしょうね、恐らく後者でしょうけど。」
ネオユニヴァースは少し俯きながら
「ごめん、伝えてはいけない“INFO”だったかもしれない。」
「大丈夫ですよ、ネオユニヴァースさんの見た総ての世界で私は子どもを助ける選択をしたようですから、むしろ安心しました。」
フォローはしてみたが、しょげているし本題に入ってもらおうと考えた。
「それは良いとしてなにか私にようがあったのでは?」
「アファーマティブ、“IRGL”にはもう一つ理由がある、それはスティルインラブの事。」
「スティルさんのことですか、先程、彼のトレーナーと一緒に会いましたね、もしかして見ていましたか?」
「アファーマティブ、ネオユニヴァースはスティルインラブを観測していた、彼女はどの世界でも“孤立”した世界での“断絶"で“BDED”だった。でも“IRGL”がスティルと接触、その上でもう一人の紅を受け入れたお陰で、二人の未来への“SGNL”が“LOST”不確定になってなにも観測できない、だから変えられるかもしれない。」
流は先程もう一人のスティルインラブから言われた、どんな道を歩んでも私達の味方で居てくれるかという問いを思い出した。
「そうですか、でもそのバッドエンドは二人にとって、ハッピーエンドだったのかもしれませんよ?」
「アファーマティブ、ネオユニヴァースはその『愛』を理解しているけど、やっぱり二人だけの“HPED”じゃなくて皆がしあわせになるような“HPED”がいい。」
「それで、私にどうしてほしいんですか?」
スティルインラブは天を仰いでからしばし考えて
「本当は“観測者”が世界に干渉するのは“禁忌”で“傲慢”なエゴ、それでもネオユニヴァースは“IRGL”の貴方にお願いするよ、スティルインラブとトレーナーがこの世界で『しあわせ』を手に入れる事が出来るように見守っていてほしい。」
「もちろん、そのつもりです。大庭は幼馴染みで、スティルインラブさんは大庭の大切な存在で、私にとっても二人共、友人みたいなもんですからね。」
「『ありがとう』ネオユニヴァース、とても、スフィーラ。後、スティルインラブもトレーナーも、カフェにとても近いところにいる、だからとても古い何か『こわいもの』が彼らをずっと見てる。」
「怖いものって何かわかるか?カフェ。」
マンハッタンカフェはちょっとだけ考えて。
「古くて怖い・・・もしかしたら古い社や・・・祠で祀られていた・・・忘れられた神様かもしれません、たぶん三女神様よりも・・・ずっと古い。」
「あー、壊したら呪われるとかいうやつな、あいつらそんな罰当たりなことはしないだろ。」
「ええ・・・それに彼らは基本的に優しくて無害ですが・・・その根底が捻れてしまっていたら・・・。」
「ああ、バッドエンドにつながると、そんときは大庭をぶん殴るか。」
「友人なのに・・・殴るんですか?」
「道を踏み外して堕ちていくなら殴ってでも止めるよ、それに大庭は結構タフだぞ、あいつ古流柔術道場の息子だよ、優しそうに見えるけど、心臓治ってから転校までかやり込んでたはずだから多少殴っても大丈夫だろ。」
「流さんはプロだから・・・一般の人に拳向けるのは駄目でしょう。」
「プロになってからも喧嘩してたけど、バレないしここで龍波とやったときでもお咎めなかったから、平気だろ。」
マンハッタンカフェは呆れながらため息を吐いた。
「ネガティブ“暴力”はだめ。使うなら最後の手段にしてほしい。」
「あくまで最終手段ですから心配いりませんよ、実行するのは、こわいものが大庭に取り憑いたときぐらいです。」
「それは仕方ない、ネオユニヴァースもそれに関してはアファーマティブするしかない。」
「やはり暴力は総てを解決するのです。」
「ネオユニヴァースはその話題から離れる。貴方にも“LINK”があったカフェと貴方は人とウマ娘の“LINK”では無いけど、『コーヒー』で“CNCT”がある。」
「確かそれなら存在するかもしれ、カフェは才能も技術も素晴らしく、容姿も性格も理想の娘です。ただ“DKPI”や“MTMT”で無いのが残念ですが。」
直後流の背中が爆ぜて流が痛みに耐えているのを見てネオユニヴァースは内心引いていたが顔には出さなかった。
「ネオユニヴァースは、もう一つ“IRGL”に伝える事がある。貴方に向けられた“HSTL”、『敵意』、強い“RVNG”『報復』の“SGNL”を観測。“RVNG”というよりは“RMAT”の意志、近いうちに『遭遇』及び『激突』の可能性大。」
「報復?敵意?再戦?結構な数の恨みを買っているから思い当たる相手が多すぎて。」
ネオユニヴァースは天を仰いでやり取りするような動作を見せた。
「アルダンのトレーナーの兄でとても“DNGR”で“CRZY”」
流れはめんどくさそうな顔になった。
「あの脳内麻薬ガンギマリやろうか、もしかしてトレーナーとかの関係者に?」
「アファーマティブ、貴方と同じ頃、学園に来たトレーナーとして。」
「はぁ…少年法が適用されている内に、殺しておくべきだったか。」
「トレーナーは『シンギュラリティ』の一種だから、確実にに“LINK”に“CNCT”する『宿命』だから『特異点』の『物理的排除』は不可能。」
ネオユニヴァースは少し微笑んでから。
「それに“IRGL”の貴方はスティルインラブを受け入れて、ネオユニヴァースの話も真剣に聞いてくれている。そんな人が対照を“KILL”する事は出来ないとネオユニヴァースは考える。」
「買いかぶりすぎです。こうみえてプライベートでは、かなり恨みを買っていますから。」
「むやみに『暴力』を手段としてもちいるのは、推奨しないとネオユニヴァースは進言する。』
「進言感謝致します、少しは考えておきます。」
「ネオユニヴァースの要件はこれでおしまい。貴方はもう少しカフェに優しくするべき。」
「ふむ、結構気遣ってはいるんですけどね。」
ネオユニヴァースは甲斐甲斐しく一礼すると何処かへと去っていった。
「東郷一真か、仕掛けてこなきゃいいんだが・・・まあ準備室へ。」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
トレセン学園内レース場、感謝祭前での準備で殆ど誰も居ないターフ、ゴール板の横で一際大きな声を上げているものが居た。
「いいぞ!いいぞ!ペースを落とすなそのまま先行しろ!総て出し切るイメージを持って走り抜け!」
そのウマ娘がゴール板の前を水星のように走る抜けるとストップウォッチのボタンを押し、走り終えたウマ娘の前へ駆け寄っていった。
「2400を2分24秒、ダービーも視野にはいるレベルの速さだ。つまりだすべて出し切った!偉いぞエピ!」
その男、東郷一真は、大きく見開いた四白眼のガンギマリ眼で担当のウマ娘を嬉しそうに褒めていた。
エピと呼ばれたウマ娘も嬉しそうだった。
「さて、すべて出し切ったが俺達に限界は無い!次は坂路10本行けるかエピ!?」
「大丈夫だ!アタシたちに限界は無い!運命の声もそう言ってる!」
彼の担当もまた見開かれた眼から放たれるギラギラした視線を自身のトレーナーに向けた。
「そうだ壊れるときは壊れる!壊れんときは壊れん!死ぬときは死ぬし、死なぬときは死なん!人もウマ娘も一緒だ!ならば前進あるのみ!」
東郷は天を仰いだ
「弟は俺の愛を受け止められず俺を憎んだが、エピ・・・いやエピファネイアお前は俺の愛を受け止めて、前に進む事で愛に答えてくれた。ありがとう、エピ。」
「水臭いぞトレーナー!アタシの運命のヒトのやることに、間違いはない。」
「そうだな、行くぞ!エピ!」
「おうっ!」
二人は笑顔のまま楽しそうに坂路に向かっていった。
何時も見ていただき、ありがとうございます。
バトルものになりそうなこと色々書いてますが、一応主題としては格闘技やバトルものだったりします。
ヒトの男性陣が狂っているだけで、ウマ娘たちが理不尽な怪我とかひどい目にあったりするすることはありません。