ISに乗れるらしいので欲望のまま使い倒したいと思います   作:ラウラペロペロ部部長

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第11話「よくある事」

 男が女に虐げられる、そんなことはこの世界ではありふれた事だ。そのため、(他意が8割くらい含まれているが)万が一のことが無いように、八雲の護衛としてラウラが居るわけだけども。

 

 それでも、防げない事はあるし裏目に出ることもある。この場合裏目に出たのは護衛の件ではなく8割の他意の方であったのだが。

 

 早朝5時、1人早く目覚めたラウラは、何時ものように朝の走り込みに行こうかと自分を抱き枕にしている八雲を起こさないように起き上がる。そこでふと、嫌な予感がして八雲の顔を見る。

 

 それはもう安らかな顔でスヤスヤと寝ている八雲がそこには居たが。しかし、ラウラの嫌な予感は、不安は決して収まらない。むしろそんな安らかな八雲を見れば見るほどその予感は警鐘の音量を上げていく。

 

 うるさいほど鳴り響く耳鳴りと、脳内で上がっていく予感の鳴らす警鐘。

 

 ラウラの嫌な予感……それも八雲に関することは当たる。ある時嫌な予感がしたときには八雲が殴られたし、ある時は痴漢の冤罪にかけられかけたり。そんなラウラが過去最大級に思える嫌な予感とあらば、彼女自身が最も警戒し、恐怖する。

 

「大丈夫だ、そうだ、大丈夫だ……私が八雲を守ればいい」

 

 今日1日、可能な限り八雲と離れないようにしよう。

 

 そう思い、いつの間にやら昨日2人で買いに行ったウサギのぬいぐるみを、抜け出したラウラの代わりに抱いている八雲の頬に、ラウラは優しくキスをした。

 

「大丈夫だ、だから安心してくれ、八雲」

 

 その後、シャワーを浴びてからいつもより時間がある分ちょっとだけ張り切って朝食を作る。自分と八雲の分を用意し終わったら八雲を起こす。いつもと同じ時間に起こしているのですぐに起きる……訳でもなくラウラが名前を呼んで揺すっても起きることはない。

 

「買い物で疲れてしまったのだろうか……時間には余裕があるしもう少しくらい寝かせてやろう」

 

 作った料理にラップをかけて最低限の保温をしつつ、眠っている八雲の顔を眺めるラウラ。酷く温かい、幸せな空間である。

 

 

 

================

 

 

 

 空を飛んでいた。雲の上の無限に広がる宇宙に近い色になって行く空を、飛んでいた。

 

「ダークブルー……」

 

 八重之八雲となってからは1度も肉眼で見た事のない色。懐かしいその色に思わずため息を吐く。

 

 そこで気が付いた、俺はファンタジーのように生身で飛んでいる訳でも、ISで飛んでいる訳でもなく、前世で最も長く共に飛んだ半身であるF-4Fに乗って飛んでいるのだと。

 

 若い頃に数年飛んだ空飛ぶ棺桶やウィドウメーカー、アンカーボルトなどと呼ばれたF-104でも無く、パイロットから整備員になるまでのほんの少しの間共に飛んだユーロファイターでも無く。

 

 まさしく俺の半身と呼べたF-4Fに乗って、俺は飛んでいた。

 

 F-4Fは複座の戦闘機である。当然俺にも共に飛ぶ後席担当の相棒が居た。お調子者で、口が軽くて、それでいて運の無い奴だった。

 

 1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争内で行われたデリバリット・フォース作戦。そこが俺と相棒が最期に飛んだ空だった。

 

 8月30日の深夜2時にアメリカ軍が爆撃を始めた際、俺らは空中哨戒に当たっていた。遠くの方で爆発が起きるのを見て戦争に身を置いていることを実感し、相棒と生還を誓った。

 

 9月14日、途中一度交渉はあったものの、ここでようやくしっかりと停戦した。その晩は2人で生還を喜び酒をしこたま飲んだ覚えがある。

 

 そして10月に入ってすぐ、敵は停戦を一方的に破り攻撃を再開した。あの日は今のような晴れだった。その日、たまたま手首の調子が悪かった俺は相棒と席を交代して、後席の担当になっていた。なんども、俺が前席に居ればよかったと後悔したが。

 

 哨戒の交代時間までもうすぐと言う時にロックオンアラートが鳴り響いた。すぐさまレーダーを確認しても敵機は見つからない。仕方が無く肉眼であたりを見回すと、雲の中から敵機が出てきたのが見えた。

 

「6時方向に敵機だ!」

 

 俺が叫んだ時には敵機の機銃がエンジンを燃やし、後席のキャノピーを吹き飛ばしていた。あと少しでも弾丸が下を通っていれば俺の頭はミンチになっていただろう。

 

 エンジンが燃え、機体の動きが不安定になった。このまま行けば錐揉み回転を始め脱出は不可能になることは察せられた。

 

「脱出するぞ相棒!」

「お前が先に脱出しろ! 俺は機体を安定させておく!!」

 

 そう叫んだ相棒を信じて、俺は緊急脱出した。

 

 それが、相棒の最期の言葉だった。

 

 油圧系統が死んでいたらしい。キャノピーが飛ぶことは無かった。そしてキャノピーが飛ばないという事は、相棒が脱出することも不可能だったという事だ。

 

 地上に降りた俺は墜落したF-4Fに駆け寄った。風向きの影響か、それとも相棒が呼んだのかは分からないが、200mも無い所にF-4Fは墜落していた。

 

 駆け寄った俺が相棒が脱出したことを確認しようとした瞬間に機体が爆発して、気を失ったことを覚えている。奇しくもその時、今世と同じ位置に火傷を負った。

 

 作戦が終わった後、俺は相棒の奥さんにアイツが死んだことと、アイツが俺を守ってくれたことを伝えて、謝罪した。「謝らないでください。――さんを守れたあの人を誇らしいと思います」そう言って涙を堪えている奥さんを見て胸が締め付けられて、何度も繰り返し謝罪したことを覚えている。

 

 相棒の奥さんは妊娠していた。帰った頃には生まれてるかもしれないと毎日相棒がソワソワしていたのを覚えている。アイツの懸念は当たっていた。アイツが死んだ日の夜に、アイツの子供は生まれた。

 

 相棒と同じで綺麗な銀髪の女の子だった。

 

 せめてもの贖罪として、俺は娘ちゃんを見守っていた。月に一度、娘ちゃんにと言って1500から2000ユーロ渡していたし、父親が割とは口が裂けても言いたくないが、歳の離れた友人として週に1度か2度会っていた。

 

 そして、彼女が18歳になる誕生日に、俺は彼女を守ってトラックにはねられて死んだ。

 

「なぁ、相棒、そこに居るのか?」

 

 コンコンとキャノピーを叩く。こうすれば相棒もキャノピーを叩き返してきたものだ。

 

 しかし、音は聞こえてこない。

 

「俺、お前の奥さんと娘ちゃんをしっかり守れたかな」

 

 何も返事は無い。

 

「……何度も独り身の俺が前席に居ればと思った。俺なら敵機の機銃をよけられたかもしれないし、当たったとしても死ぬのは俺だった」

 

 後席担当だったがゆえに俺よりも操縦が下手だったアイツ。いつもならこんなことを言えば怒っていたものだが、声の一つも聞こえない。

 

「なぁ、俺は、お前の相棒で居られたかな?」

 

 コンコンと、ノックする音が聞こえた。

 

 ああ、ダークブルーが見える。

 

 

 

================

 

 

 

「む、起きたか……笑っていたが何か良い夢でも見たのか?」

「いや……最悪の悪夢だったよ」

「最悪の悪夢だと!? だ、大丈夫か?」

「ああ、最悪の悪夢だが最高の夢だったからな」

「そうか……そうか? なら良いのだが……」

 

 ノックの音で目が覚めて、バッと起き上がるとラウラがこちらを眺めていた。見世物だぞもっと見やがれ。

 

 起き上がってシャワーを浴びに行く。その際、お湯が顔にかからないように気を付けてシャワーを浴びる。ちょっとトラウマの関係で顔にお湯が付くのNGなのよね。だからシャンプーする時とかは冷水でやってる。当たり前だが冬は軽く死にかけるよ。

 

 朝という事もあり、シャンプーはせずに体だけ流したら、体をしっかり拭いて制服に着替えて朝食の席に着く。それはそうとラウラさん、ずっと俺のこと見てませんでした? 浴室と更衣室の扉は開けなかったけど目の前に居たよね?

 

 そんな介護が必要なおじいちゃんじゃない……75歳って割と介護必要な年齢だわ。ちょっと傷ついたぜ……ま、まぁ今の俺はピッチピチの17歳だし大丈夫だろう。

 

 大丈夫だよな?(震え声)

 

「大丈夫だったか?顔に湯がかかったりしなかったか?」

「かかってたら多分部屋が吹き飛んでるぜ?」

「かかってないのなら良かった」

 

 部屋が吹き飛ぶことに関しては否定しないのね。嫌な信頼されてる気がする……いや、両親の殺害計画立ててるのバレてるから当然だけどさ?

 

「今日は和食か、美味そうだな……いただきます」

「では私も、いただきます」

 

 俺に合わせていただきますって言ってくれるところとか好きよ。12年かそこらしか日本に住んでなかったけど58年過ごしたドイツの慣習を塗りつぶされたからなぁ……転生した影響かもしれん。

 

 暖かい味噌汁と白米、そしてほっけの塩焼きはそれはもう美味しい。ほっけの骨を取ってあるところにすごく愛を感じる。うちの番は最高だぜ。

 

 それはもう美味い美味いとラウラを褒めまくりながら、今日の時間割はなんだとかそういう雑談交じりで朝食をもうすぐ間食しようかと言うところまで食べ終わる。美味いからすぐに無くなっちまうぜ……やっぱうちの番最高だな!

 

「いやぁ、ありがてぇありがてぇ……美味しすぎてイビルジョーになっちゃいそう」

「……何かの漫画のキャラクターだったか?」

「それは多分グリムジョーだと思うの。BLEACH読んでないから分からないけど」

 

 卍解とかはなんとなく知ってるけどね。

 

 そんな風に、起きる時間は少し遅かったがいつも通り食事を終わらせて食器の片付けをしようとした時、コンコンと扉を叩く音がした。

 

 客人が来たのかと思い、マスクとサングラスを着けてから対応する。

 

「なんじゃろなんじゃろ……はーい、どちらさまで――お、織斑先生……!?」

「朝からすまんが、職員室に来い」

「ウワァーーーーッ! 中学生時代を思い出すぅッ!」

 

 廊下でロケット花火を撃つ現場に居合わせたばかりに巻き込まれたトラウマが蘇る。普段の行いが良くなかったら退学させてたと言われたけどやってないんですよ先生……!

 

「む、どうかしたのか……あ、おはようございます織斑先生」

「ああ、おはようラウラ。少し八重之を借りて行っていいか?」

「ダメです」

「朝から惚気るな、なんだか悲しくなってくる」

 

 分かる(前世)独り身勢。夫婦や恋人に関する行事の日は同じくモテない同僚と変な遊びをして気を紛らわせていた俺にも分かるッ! でも自分今はラウラが居るんで……アッニラマナイデッ!?

 

「大丈夫だよラウラ。だから先生を困らせないであげてくれ」

「だ、だが……」

「安心しろラウラ、私が居るんだぞ? あのバカ兎でも無い限り八重之に危害は加えさせん」

「分かり、ました……」

 

 しょんぼりしてるラウラ可愛いなぁ、なんて思ってると織斑先生に頭を小突かれる。読心術でも習得してるんです?

 

「では行くぞ」

「うぃっす」

 

 大人しく織斑先生に連行される。特に意味は無いが両手縛っとこうかな? いや、なんかあらぬ誤解生みそうだから止めておこう。

 

 職員室へと向かう道すがら、なにやらよく解らない視線を向けられていた。心底軽蔑するような、それでいて恐怖を感じているのだろうと感じられる視線。なるほど、なんとなく察した。

 

「お前のことだから気付いているだろうが……いや、こんなところで言うべきではないな」

「別に言っても良いですよ。よくある事ですし」

 

 よくあるというかよくあったというか……少なくともドイツの日本で言う中学的なのを卒業してからは顔を隠してたから無かったけど、それまでは毎日のようにあったし……そういやラウラとの初対面の時俺顔面見えてたんだよな。なんで俺のこと好きになってくれたんだろう……。

 

「いや、私の気分が悪くなる。それにラウラに申し訳が無いからな」

「そうっすか」

「ああ……たまに思うが、お前は自分のことに無頓着だな」

「もう歳ですから」

「あまり一夏みたいなことを言うな」

 

 俺と同じということは、一夏も俺と同じ転生者だったのか……!? いや、原作からしてジジイ臭い考えしてた気がするからそんなことは無いだろう。きっと多分恐らく。

 

 これで一夏の中身がジジイ(ガチ)で箒達を女として見れないとかだったら本当にもうなんか可哀そうだからさ。

 

 相も変わらず軽蔑と恐怖の視線を受けながら職員室へと入る。先生方は……なんと言うか気の毒そうな顔で見てくる。同情するなら(ラウラとの)時間をくれ、多分これから全く取れなくなるから。

 

「さて、そこに座ってくれ」

「うわぁ、個室とかじゃなくて職員室の机! 一番辛い奴!」

「分からなくはないが、一応私は女でお前は男だからな。そういうルールになっている……お前と一夏が入学した今年からだが」

「あんたを襲って無事なようなら俺は多分ここには居ない」

「だろうな、だがルールだから従ってもらうぞ。さて、コーヒーを入れてくるからここで待っていろ」

 

 うひょ~、公開処刑だぜ畜生。あ、山田先生チッスチッス、今度アーマードコアの新作が出るらしいっすね! それはそうと(なんとなくわかるけど)なんで俺はここに呼ばれたんです? あ、知らない? じゃあ大人しく織斑先生に聞きます。

 

 SHRの時間なので教室へ向かう山田先生を見送りつつ織斑先生を待つ。

 

「待たせたな、お前にも一応コーヒーを入れて来た、飲むと良い」

「あざっす」

 

 織斑先生は推定自分の物であろうマグカップにコーヒーを入れて、ついでにと紙コップに俺の分のコーヒーも入れて来てくれたらしい。と言う訳で遠慮なく飲む、うん、旨いな。

 

「砂糖かミルクを入れるか聞こうと思ったんだが……」

「コーヒーはブラックに限ります」

 

 まだどこか夢心地だった脳を叩き起こすのにちょうどよいパンチの利いた苦さだ。

 

「それで、俺はどうして呼び出されたんです? 差し詰め俺の素顔の事でしょうけども」

「それが主題だがそれ以外もある」

「すげぇ、予想外だ」

 

 顔以外の事で呼出し案件とか心当たりが無――(思い出される先日の性犯罪未遂)――あれかぁ!

 

「一応言っておくがラウラは……関係あるように思えるが、関係無いぞ」

「すげぇ、2度目の予想外だ」

 

 となればもう分かんねぇな。両手を上げて織斑先生に降参の意を見せる。

 

「いや、別にクイズをしていた訳ではないんだが? お前が勝手に当てようとしていただけだろうに……」

「男だからね、そういう生き物です」

「そうか。さて、お前が呼び出された理由だが……これだな」

 

 そういって手渡されたのは新聞だった。新聞と言っても小学生が作るような新聞であり、恐らくこの学校にあるのであろう新聞部が刷ったようだ。右上に新聞部って書いてあるし。

 

 記事の内容は俺が銃を用いた殺人犯だとか、下着ドロをした変態だとか、自分の護衛を襲った性犯罪者だとか……最後だけ事実なのどうしようもねぇやつだな俺。いや、まぁ最初に関しては部分で気にあってはいるし本当にやって無いのは下着ドロだけなんだけど。

 

 俺ってば本当にくず人間だな。

 

「これ、よく出来てますね。とりあえず警察に自首してきまぁす!」

「待て待て待て! ISを展開しようとするんじゃない、戻せ。それは警察沙汰では済まなくなるぞ」

「うっす」

 

 ISを素手で捕まえて動けなくするアンタも大概だと思うの。存在だけで国際問題では? 吉田沙保里じゃないんだから……この世界に、あの超人は居ないんだよな。代わりに織斑先生が居たんだけどね。

 

「残念ながらもう1つある」

「追い打ちをかけるタイプの教師って嫌われますよ」

「好きでやってるわけではないぞ……これを見ろ」

 

 そういって渡されたのは新聞と同じでA4……B4? 紙のサイズって分かり辛いよね。まぁ、新聞と同じでよく使われる大きさの紙に印刷されていたのは無修正の俺の寝顔。織斑先生これを見た後に俺にいつも通り接してくれるの優しい、泣いちゃいそう(蘇る小学生と中学生の頃の記憶)。

 

「あちゃー……どこからバレたんだろうな、俺の素顔」

 

 さぁてマズイことになった。SAN値チェックが必要なレベルの俺の顔がバレた上に2個の冤罪と1個のガチ罪までバレたらしい。IS学園の新聞部ってすげぇんだな(遠い目)。

 

「察している通り、これがIS学園のありとあらゆる掲示板に掲示されていた。すでに大半の生徒がお前の素顔と2つの冤罪を知っているだろう」

「最後もラウラに許してもらったから冤罪だと思うんです」

「抜かせ。それで、改めて呼び出した理由だが……まぁ、端的に言えばお前を隔離しているのが今の状況だ」

「思春期女子が居る場所に推定性犯罪者で殺人犯を置けるわけが無いですものね」

 

 俺の言葉に申し訳なさそうに肯定する織斑先生。さてと……ラウラを泣かせる覚悟、決めますか。

ラウラは

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