馬だけど。
彼女と出会ったのは、ひどい雨の日であった。
雷雨というのもおこがましいほどに、傘が壊れそうなほどに。
それほどまでのひどい悪天候の日であった。
【…】
その中で、彼女はただ一頭そこにいた。
吹き付ける雷雨をものともせず、それが普段通りとでもいうように。
立ち続けていた。
「なぁ」
【…?】
「そこにいると、危ないと思うよ」
なぜ、そう声をかけたのか今となっては定かではない。
ただ、何か惹かれるものがあったのだ。
それこそ『運命』めいたものを。
「おいで」
【…】
彼女は俺の呼び声に案外すんなりと従った。
がしかし、
「わっ!?」
後ろに何秒か
また前に向き、すわ突進かという勢いで来ての
しかも軽々と着地されてはたまらない。
「…それ、危ないから。本当に危ないからやめて」
とりあえず本気の声でその時苦言を呈していたのがよかったんだろうなぁ…。
それから。
僕は彼女を厩舎の方へと連れ帰った。
「よう、遅かったじゃねぇ…っおい、いたぞ!」
「えっ、あ、え!?」
「お前じゃねぇ、
と思えば大捕物が始まり。
どうにもできないまま話を聞けば、どうにも彼女は厩舎から脱走していたのだという。
「ええと…あの、」
「なんだ」
「さっきの、彼女の名前は?」
「…お前、分かるのか」
「え?」
「いや、いい。アイツの名前はな…」
───レイニーデヴィル。
それが出会い。
*
雨の日が好きだ。
同族の言葉が分からない自分にとって、話しかけられない唯一の日だから。
雨は、強ければ強いほどいい。
【…】
降りしきる。
降りそそぐ。
つんざくような雷の音。
そんな天気が、自分は昔から好きだった。
けれど、
「なぁ」
声が聞こえた。
雨音と雷にまかれている中で、妙にハッキリ。
「そこにいると、危ないと思うよ」
自分に声をかけてきた存在は、これといった特徴のない歳若い青年で。
しかし、何だか彼を放っておけなかった自分は、
「おいで」
無意識に、彼の声に従った。
たぶん、喧騒とも雑踏ともとれない雨音の中で不意に拾った音に興味を抱いたのだと思う。
とか言って良い話で終わらせようにも、元の場所に帰ったらしこたま叱られたのだけど。
がしかし、
「俺は
コイツと出会うための布石だったと考えたら、まぁ…いいかなと。
それにコイツ、生まれ持っての…、
「うわ、また雨だ。…傘、持ってたっけ」
雨男みたいだし、な。
何やかんや気に入った…らしい。