雨の日の悪魔は重バ場がお好き   作:芦毛スキー

5 / 7

あと1話と番外編で完結っすね〜。



3歳の幕間

2歳っていうのをまあまあそれなりの成績で終えた自分は3歳になってもまあまあ走っていた。

でも天気が悪いor地面の状態が悪い、じゃないと勝ちきれないんですけどねガハハ!…と笑うしかなく。

いや、勝ちきれない理由は分かっているんだ。

 

【…相変わらずデッケェ体だこって】

 

乾ききっていない水溜まり。

そこに映る自分。

空を背景に、にゅっと現れている黒い馬。

 

【某どこぞの拳王の愛馬じゃねぇんだぞ】

 

だが、それこそが"レイニーデヴィル"と名付けられた自分。

Devil(悪魔)の名前があまりにも似合ってしまう、黒黒とした体のでっかい牝馬。

…そりゃあこんなのがいたら避けられるわ。

それに話しかけても何も返してこないワケだし。

 

【はぁ〜あ、はやく安泰な生活がしてぇ…】

 

 

全日本2歳優駿を勝利した時点でレイニーデヴィルの引退話は薄らぼんやりと立ちのぼっていた。

何故なら彼女の体が大きすぎるから。

それを示す事実として、新馬戦の時点で馬体重が550kgであったことを述べれば分かってもらえるだろうか。

体のまだできあがっていない時点でその状態。

ならそのまま成長してしまえば?

彼女の母の兄が脚の怪我によって現役を引退したことを念頭におけば?

そんな不安が、拭えるはずもなく。

 

「…とか言ってもキミには関係ないよなぁ」

 

しとしとと雨の振る中で、今日も今日とて脱走している彼女に話しかける。

ボタボタと雨にうたれているキミを見る。

光をあまり映さない漆黒の体、漆黒の瞳。

こちらを見透かすこともなく。

ただそこにあるのみ。

その決断が良いか悪いかなんて判断はできない。

だってそれは人都合次第なんだから。

…でもやっぱり思う。

___キミは美しい、と。

俺はレイニーデヴィルが好きだった。

彼女は美しく、気高く、ブレず、そこにある。

はじめましての時から俺の心をつかんで離さなかった。

だけど、だけどさ。

そのナリの裏に隠れたキミは、いったいどんな気持ちなのだろうね。

 

【……】

 

キミは何も言わずに遠くを見てる。

何を見ているのか分からないけど、何かを見ている。

 

【……】

 

その先に何があるのか、それが分かる前に。

 

「おーい、レイニー!それに雨野(あまの)くんも!

そろそろ帰ってきなー。風邪引くからー!!」

「あっ、ハイっ!」

 

厩務員さんに呼ばれて、見つめあっていた時間が中断する。

聞き分けのいいキミはゆったりと厩舎の方へと戻っていく。

 

「あれ、?」

 

そうして、気づくと。

曇天は消え失せ、空は美しい虹を描いていた。が、

 

「冷たっ!」

 

あまどいには、まだ雨粒が残っていて…。





レイニーデヴィル 2007年戦績

6/13 関東オークス(JpnⅡ・ダート2100・晴・良):9着
7/4 スパーキングレディーカップ(JpnⅢ・ダート1600・雨・重):1着
9/7 エルムステークス(JpnⅢ・ダート1700・曇・稍重):4着
10/27 武蔵野ステークス(GⅢ・ダート1600・雨・不良):1着
11/24 ジャパンカップダート(G1・ダート2100・晴・良):6着
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