雨の日の悪魔は重バ場がお好き   作:芦毛スキー

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ほんへはこれで終わり。



名乗りをあげて

「思った以上に早かったよね」

【…そうだな】

 

こんなに早いもんかと思う。

今日、結果がどうであれ自分は引退となる。

そろそろ脚がヤバくなってきたんだと。

寿命、ってやつだ。

上にいる雨野(あまの)と出会って…2年、3年か?

もう少しばかり、一緒にあるものだと思っていたんだがなぁ。

 

『あ、久しぶり!』

【!?】

 

そう、しみじみと感慨に浸っていれば急にかけられた声。

思わずビクゥッ!と反応すればそこにいたのは随分と久しぶりに見かけたあのクソデカ栗毛。

 

『ちょっと遠い場所にいたんだけどね〜、キミに会いたくて帰ってきたんだ〜』

『今度こそ僕を見てもらうよ〜』

 

相変わらず何を言っているか分からん。

宣戦布告か?宣戦布告なのか?

めちゃくちゃ穏やかそうな顔なのに何か物騒なことを言われている気がする。

あと近い。めっちゃ近い。

なんなら鼻先触れ合ってますけども?

いや本当に何してるのこの馬。

普通に怖いから離れてくれないか????

 

「わーお」

【おい】

 

上の雨野(あまの)も感心したように言ってないで止めて欲しいのだが?

とは言っても。

前と比べればすんなりと離れていった栗毛馬を見送って。

 

「ゲートに入るよ〜」

【おう】

 

帝王賞(JpnⅠ) ダート2000m 2008/6/25 曇 稍重

 

 

相も変わらず、微妙な走り心地だな。

泥というわけでもない、湿った土を蹴っていく。

カラッカラの土の上を駆けるよりは多少マシ…といった程度か。

そんな思考をしながら自分はコースを内に取った。

今回の馬場は稍重。

()()()()外の方が有利だが、自分にとっては内がいい。

重馬場が得意な、自分にとっては。

どいつもこいつも外に行っている。

()()()()()外に行っている。

まるでそれが正解だと言わんばかりに。

そしてそれを当然としているかのように。

……。

確かに今の馬場ならば外のほうが有利だろうさ。

だがそれはあくまでお前たちの話だ。

 

『ここでサンライトディープが先頭に変わるか。いや不良馬場の最内から───!』

 

踏み締め、蹴り出す。

泥を、泥水を。

跳ね上がるすべてが体にかかる。

…あぁ、今日ほど自分の体が黒くて良かったと思った日はないぜ。

 

『やはり、やはりこの馬場ならこの馬だ!

雨の申し子が女帝へと名乗りをあげた───レイニーデヴィルッッ!!』

 

帝王賞(JpnⅠ) ダート2000m 2008/6/25
着順馬名タイム着差
レイニーデヴィル2:04.4 
サンライトディープ2:04.5クビ
フリオーソ2:04.71.1/2





レイニーデヴィル 2008年戦績

1/27 平安ステークス(GⅢ・ダート1800・曇・稍重) 5着
2/23 フェブラリーステークス(G1・ダート1600(左)・晴・良) 10着
4/2 マリーンカップ(JpnⅡ・ダート1600・曇・稍重) 2着
5/25 東海ステークス(GⅡ4・ダート2300・曇・重) 1着
6/25 帝王賞(JpnⅠ・ダート2000・曇・稍重) 1着
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