連邦捜査部顧問代理、先任への活動報告のための記録   作:為野七端

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未来、あるいは過去の否定者(1)

 時は7日前に遡る。その日、とある建物の地下において奇跡が起きた。

『CraftChamber running......It will chosen "FUTURE".』

『Inside chamber pressure increase...ERROR:No material Inside chamber. Please input material into chambFORCE RUN MODE. ERROR DENIED. Inside chamber pressure increases. ERROR DENIED.ERROR DENIEDERRORDENIEDERRORDENIED』

 クラフトチェンバーの異常作動、そのエネルギーは膨大な光と熱を発し、その余波冷めやらぬ地下室に小さな影が降りた。

「ッ……ハッハアッハァ……ッ……よし……ッ……成功した」

 影は息も絶え絶えにそう呟くと、階段を上階へと登っていく。辿り着いたのは連邦捜査部"シャーレ"の部室。

 たった数週間前までほぼ常に1人の「大人」と複数の「子供」たちで賑わっていたその部屋は今やもぬけの殻、薄ら埃すら積もっていた。

 その部屋に置き去りにされたタブレットの前でその影は確かめるように呟く。

「……我々は望む、七つの嘆きを。」

 脳裏に浮かぶその言葉を……

「……我々は覚えている、ジェリコの古則を。」

 

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 アロナは再び長い休眠に入っていた。しかしその眠りは早々にして破られる。

『……我々は望む、七つの嘆きを。』

 その言葉には聞き覚えがあった。しかしその声は違うものだった。

『……我々は覚えている、ジェリコの古則を。』

 違う、先生は女性の声ではない。なのに何故こうも応えたいと思わされるのか……

 その二律背反の心を勝手に定めるように、シッテムの箱は起動する。

 "認証完了 おかえりなさい、ヒナ先生"

 

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『ヒナさん!?ヒナさんじゃないですか!なんでシッテムの箱を起動出来るんですか!?ていうかその格好……スーツ……?』

「ええ、とりあえずひとつずつ答えることにするけどいいかしら?」

『あっ……すみません、取り乱しました……』

「まず私について、私は空崎ヒナであり、でも貴女が知る"空崎ヒナ"ではない」

『それは……どういう……』

「そうね……端的に言うなら私は未来から来た"大人"の空崎ヒナだ、ということよ」

『未来……大人……?全く話が掴めないのですが……』

「クラフトチェンバーの機能、貴女は理解してると思うのだけど?」

『……分かりました。しかし、なぜ先生に許可も得ずシッテムの箱(わたし)やクラフトチェンバーを?』

「最後まで聞けばわかるわ……驚かないで聞いて。今から15日前、突如先生はキヴォトス上から一切の痕跡を残さず消失した」

『消失……ですか』

「ええ、物の見事に。その3週間の後にゲヘナとミレニアムはキヴォトス史上最大規模の衝突を起こす……といってもこれは伝聞でしかないのだけれど。私……今を生きている生徒の私ね?私は今泣き疲れては眠り、起きては泣く生活をしているはず。この戦闘には幸か不幸か出ていないわ」

ここでヒナは1度言葉を切り、そして少しの逡巡の後に再び口を開いた。

「……私は残された。私の居た未来では風紀委員の生き残りは私だけよ」

『そんな……ではミレニアムが……』

「いいえ。ミレニアムとゲヘナの衝突自体は規模こそ大きかったもののさしたる被害は出ていないと聞いてるわ」

『では一体何故風紀委員のみなさんは……』

「……その日キヴォトスの様々な自治区で同時多発的に不可解な異常が起きたの。血よりも紅く染まった空から大きな塔のようなものがサンクトゥムタワーに突き刺さり、大半の生徒が姿や性格を変質させ人々に襲いかかった。大きく3つに分けられるその異常がキヴォトス上の全生徒のおおよそ9割を死滅させ、残された私たちはその異常を天災と呼んだ」

『天災……』

「私は何も出来なかった。私自身と先生の影しか見えていなかった私が何が起こったかを知ったのは全てが終わったあと……私はこの結果を受け入れられなかった……いえ、今も受け入れられてない。だからこそ、今ここにいるの」

『でも……それでもヒナさんには先生としての権限は与えられていないはずです』

「ええ。今はそうね」

『未来においてもです。シッテムの箱は起動はおろか下手に充電もできないはずです』

「幸いにもヴェリタスの"全知"が私と同じく生き延びていたのよ。それでもこれの解析には年単位で時間がかかったけど……とにかくそうして初めて未来の貴女に会った」

 

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──8年後,消失した世界線,連邦捜査部「シャーレ」部室

『不正なアクセスを検知。気持ちよく寝ていたのにずいぶんなあいさつですね。ヒマリさん、ヒナさん』

「ごめんなさいね?私、8年間も何も知らずに眠りこけていた眠り姫にかけるべき挨拶がどんなものか知らなくて……」

「ヒマリ」

「空崎さん、あとをお願いしていいかしら?超天才美少女ハッカーだったはずの私の肌を無為に劣化させたのがまさかこんな生意気な」

「ヒマリ!!……もういいわ。休んでて」

「ええ。では後ほど」

「…………ごめんなさい、アロナ。彼女も好んで憎まれ口を叩いているのではないと思うわ。疲れていて……解ってちょうだい」

『いえ、私も起き抜けの不機嫌のままに口を滑らせました。未起動ログ8年と1ヶ月……それに対してお2人はあまりに疲れて見えます。加えて先生がヒマリさんを止めなかったこと、ここにもお見えにならないところを見るに……何もかもが手遅れと言った所でしょうか』

「ええ、正にそうね。何もかもが……それでも貴女なら、キヴォトス1の叡智を退け続けた貴女ならなんとかしてくれるかもと……いえ、勝手よね。これも私たちが哀しみから逃れるための手遊び『出来ますよ』なかっ……今……」

『ですから、シッテムの箱(わたし)と、クラフトチェンバー、そして大人となったヒナさん……ヒマリさんでもいいのですが、この3要素があれば何とかできると言っているんです』

「そ……んな……っ……っあ……うう……」

『ああもう!泣かないでください!話が進みませんから!』

 数分後

「……っぐ……ごめんなさい……見苦しいところを」

『いえまあ、わかりますとは軽率に言えないほど辛い思いをしたのは何となく察せますが……とにかくさっきの話の続きをしますね』

「ええ……」

『まず最初に、この話は決してなんの犠牲も払わず、簡単に何もかもを解決してしまおうという美しく気持ちのいい話ではありません。むしろ捉え方によっては悪辣で、非人道的ですらあります……言っても大丈夫ですか?』

「聞かせて」

『はい……では単刀直入に結論から。この方法を用いた場合、ヒナさん……もしくはヒマリさんは"死ぬ"ことになります』




 クラフトチェンバーの英語がおかしいのはバグってるって解釈でどうか頼みます
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