連邦捜査部顧問代理、先任への活動報告のための記録   作:為野七端

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 書いてるうちにちょっと(?)遅くなっちまったてへぺろ


 思考実験的な内容を含みますので苦手な方はあとがきにその部分を除いた超絶大雑把なあらすじを書いておきます
 読んで次へどうぞ
 勿論回収するかどうか分からない伏線めいた物をばらまくフェイズなので本編を読んでもらった方が今後何倍も楽しめると思います


未来、あるいは過去の否定者(2)

 空崎ヒナは慄いた。

 無論表面上は平静を保ち、話の続きを待っているかに見えたがその実、キヴォトスの生徒にはない概念である"死"という単語は、確実にヒナの精神をジクジクと苛んだ。

 それを知ってか知らずか、アロナは続ける。

『とは言ってもまあ、これは本当に考え方次第の話なんですが……お2人のいずれかには、タイムスリップをして頂くのですが、この()に帰って来れなくなるのは確かです』

「要は"タイムパラドックス"の話かしら?」

『よくご存知ですね!現在というのは過去の各人が採ってきた選択によって織り成されている、つまり過去に1目違う織り目を入れる……分かりやすく言えば違う選択をするだけで全く違う模様の現在が出来る、という訳です!』

「私も小説くらいは読む。その程度は分かっているわ……貴女が"死"という言葉を選んだのはもっと違う理由……でしょう?」

『えへへ……バレバレでしたね。話がこんがらがるので順に説明します。まず、お2人のどちらかには"先生代理"として登録していただきます。お2人とも年齢としては大人ですので問題は起きないはずです。そうすればごく一部を除いて"先生"の権限を行使できるようになります』

「そのごく一部というのは……?」

『"大人のカード"を媒介する必要のある権限です。あれだけは再発行が利かないので……』

「わかった。続けて?」

『はい!その後、クラフトチェンバーを用いて過去に戻ります。この行動が私が"死"という表現を用いた理由です』

「何故クラフトチェンバーを用いて過去に戻るのが"死"に繋がるのかしら?」

『理由は2つです。まず、クラフトチェンバー内は超高圧になります。それによって内部の物を分解、解析し、普段は別のものに再構築するわけです。ですが物質を過去ないし未来に送る場合、再構築不能なところ……クォークレベルまで分解して解析しないと上手くいかないようになっています……つまり』

「この世界からは文字通り霧散する……というわけね?」

『はい。それにとてつもない痛みを伴います。もっとも、すぐに意識は失うと思いますが……そして2つ目の理由です。これは……少し難しい話なのですが、過去での再構築の時の……乱暴な言い方をすると"原料"の話です。もちろん再構築が終われば、同じ肉体、同じ記憶、同じ意識に同じ遺伝子。全く同じ同一人物と言って問題ない状態に再構築されるようになっています……が、その"原料"は過去の世界のあらゆる原子から差し支え無い程度に採取して作られます。つまり今のお2人を形作るものとは厳密に言うと違うものから再構築されるのです……それは果たして本当にその人なのか?その人でなかった場合、一体元の人、そして再構築後の人はどういう扱いになるのか……』

「……」

『前例がないため、この問いに答えはありません。なのでじっくり考えて貰いたいんです。少なくとも……いえ、戻る時間は指定できるのでいくらでも。お2人で話し合って、どうするか決めて貰えますか?私もその間はシッテムの箱の電源が落ちないように設定しておきますので』

 

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 それから幾日もの時が経った……

 そして、ある日

「アロナ、今いいかしら?」

『はい。答えは出ましたか?』

「その前に」

「はい、アロナさん……その……この前は本当に申し訳ありませんでした。あの日……いえ、先生がいなくなってからずっと気が立っていたの。そのせいであんな私らしからぬことを言ってしまいました。切にお詫びします」

『いえ、そんな、頭を上げてくださいヒマリさん。私も事情も把握しないまま憎まれ口を叩いてしまいましたので』

「ではお相子ということで、これからもよろしくお願いしますね?」

『はい!……これからも……ということは』

「ええ。私が過去に行くわ」

『ヒナさん……いえ、決めたのならもはや何も言いません。代理登録を始めましょう』

 登録は呆気ないほどに早く終わった。それもそのはず、アロナとの指を重ね合わせるだけの認証(ゆびきり)しかやることが無いからだ。

 そして、元シャーレ地下、クラフトチェンバー前。

「じゃあ……行くわね」

「ええ。どうかお願いね」

『ヒナさん……すみません私決めたのに、でも一言だけ。本当に良いんですね?』

 問われたヒナは一呼吸、そして、過日の"委員長"の目になって言った。

「アロナ、貴女は先生と一緒にいた時、私がやると決めてやらなかったことを見たことあるかしら?」

 

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 そして、数分後

 シャーレ地下にはすすり泣きと、静かな声が響いていた。

「行って……しまいましたね」

『……』

「ねえ、アロナさん?私たち、良い友達になれると思うの。知識レベルも、ハッキングの腕も。隔たりがあるとはいえ今のキヴォトスでは近しい部類だと思うし、何より共通の友人がいた」

『はい……ッはい……!!』

「1つ……提案なんだけど。また思い切り笑えるように、今日は思い切り泣かない?()()()?」

 そう言った美しい女性(ひと)の頬にきらりと光るものが流れ、

『ヒマリさ……ッいえ……()()()ッ……うっうわあああああああん!!!』

 ふたりの声は、それを聞いたチンピラに怒気を起こすことも無くなったキヴォトスの夜空に吸い込まれていった。

 

 

 

 後にも先にも、そしてどの世界線にも

 この歪で強固な友情はここ以外に刻まれていない。

 

 アロナはこの夜、3度目のゆびきりをした。




 要は「過去に戻れるけど着いた瞬間タイムパラドックスでこの時間軸には戻って来れなくなるよー」「クラフトチェンバーを使って過去に行くけど"チェンバー"って言うだけあってめちゃくちゃ高圧高温で死ぬより辛いよー」って話です。
 ヒナは体が弱いヒマリより自分の方が適していると判断して過去行きを決めました。
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