URAの管轄下にあるデータバンクに不審なアクセスが見られたから、関係者は直ぐに身元割り出しに乗り出した。
警察に通報しなかったのは、どうやら身内……トレセン学生であった事、そしてアクセスされた領域が人様に見せられない、一部しか知らない黒い秘匿領域であった為だ。
ここで警察が調査に入ろうものなら、それこそ攻勢一点、悪者はURA、正確にはその組織にいる悪の寄生虫。
「ええい! いくつもの隔壁を容易く突破されるとは、何たる屈辱!」
いつぞやの、悪の偉そうなオッサンが叫ぶ。
対して冷静な秘書が淡々と答える。
「ただの学生に侵入されるとは! 誰だ、エアシャカールか、それとも……!」
「ツユハライです」
「あの金にならない小娘か!」
「何処でいち組織に侵入出来るほどの技術を身につけたのか、履歴を洗い直してますが判明していません」
「そんな事はどうでも良いわい! それより犯人が分かりきっているなら、さっさと捕まえられんのか!」
「残念ながらツユハライは理事会の保護下同然にトレセン学園にいます。 我々が下手に動けば、より危険かと」
「くうぅ……まさか理事会とツユハライは、それらを織り込み済みか。 レースに出たがらないのも、奴らの目的が情報開示だとすれば……」
「対策を検討中です」
なんと、とんでもない場所で勘違いが進行し、いち学生でしかないツライさんはスパイか何かと疑われる!
知らない間に巻き込まれ、オマケで理事会まで巻き込まれている始末!
なお、ツライさん的には秘匿領域とやらには鼻歌混じりにホイホイ侵入、精々軽犯罪のノリで情報を漁っただけである。
「脆弱なシステムで助かったワイ」
国家の目をも誤魔化す某ブラック企業の対労基セキュリティシステムに比べたら……フヘヘ。
と、いった感じ。
ヒト時代、産業スパイといった怪しい気配、者は身の回りに感じていたし、情報の盗み合いは一般社畜にも あるあるである。
ツライさんは、そんな連中に揉まれて多少齧っていた程度だが、それでも大きな組織に侵入出来たのは、それだけ厳しい世界にいた証左であり、運の良さ(悪さ)もあった。
あれもこれもヒトソウル、社畜が成す業か。
だとすれば、嫌な運命である。
ウマソウルは、ソレに縛られていようとも。
それかヒトとウマの紛い物だからか。
そんなツライさんは、今後如何に。
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「申開きはあるか?」
ワイ、会長に説教喰らう。
理由は知れている。 アヤベに会うな言われてんのに会いに行ったから。
ウマ耳が後ろに倒れて激オコ。 表情も暗くトーンも低い、完全にキている。
ウマ娘って容姿端麗な子が多いけど、同時に怒るとメッチャ怖い。
レース中で見せる真剣な表情もだけど、やっぱヒトと違いパワーの差から来る心情もあるやもな。
ワイ、今世ではウマ娘やけど内心ヒトであるし。
いやまぁ、相手が皇帝様ってのもある。 同じ学生、経験を入れると年下の小娘なのだけども、その凄みは凄く凄いです(棒)。
「ありません」
「その素直さを少しは前向きに使って欲しい」
「結果は出しました。 アヤベさんと和解、持ち直しつつあります。 これは誰もが望むものでしょう。 同室のカレンチャンは喜んでくれました」
「私の望むものからは、少し逸れているがね。 だが確かに結果は見られた。 けれど今後は生徒会活動で出してくれ。 良いな?」
「アッハイ」
返事をすれば解放されるワイ。
しまったなぁ、社畜時代の経験が鈍ったなぁ。
反省反省。
仮にも生徒会に属せたワイ、本来なら生徒会の利になる行為のみ行い、他者なんてどうでも良い筈なのに。
会長はその辺咎めてきたのかな。
そう解釈しておこう。 さすがウマ娘の頂点に立つご身分。 必要なモノ以外は切り捨て御免としなければ。
「さて、次は何処行こうというのかね?」
───目から光を付けたり消したりしながら、ツユハライは芝でも砂でもない道なき道を歩いていった。
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「困惑ッ! ツユハライを即刻退学!?」
小さき理事長は突然の上層部からの連絡に扇子を開きつつ戸惑う他ない。
ただのいち生徒に過ぎないツライさんが何故URAに出頭する真似をしなきゃならんのかと。
それは秘書のたずなさんもであり、訳も分からず困惑していた。
「はい。 理由は選抜レースに出ない事。 他生徒への問題行動や学園に来る前にしていたとされる軽犯罪の関係との事です」
「疑問ッ! 確かに問題行動はある! 性格にも問題あり! 故に学園で様子見……しかし! 退学させる程の問題は現在見当たらない!」
理事長は反論するが、普通の学校なら十分退学ないし停学処分にされそうなもの。
けれどトレセンは、走りさえすれば多少学業が駄目でも大目に見ているウマ娘の為の学園だ。
もしツユハライが退学なら、他人……自分のトレーナーをモルモットにするタキオン、賭博モドキをしているナカヤマ、他多数の不良生徒は在籍出来ない事になる。
自分の意志での退学、除籍、庇い立て出来ないレベルのモノなら仕方ないが、何千と未来あるウマ娘を抱えているトレセンだ。
そう簡単に「はいそうですか」と門から蹴りやるのは理事長としては考えられない。
その点、全ウマ娘を幸せにする、導くという生徒会のシンボリルドルフも同意見だ。
「私も問い合わせたのですが、一点張りでして」
「むむむ……だが、あまりに突然! 理事会の会議1つ通さず、いち生徒に口出しするなど通常ありえない! 何か理由がある!」
「どうなさるおつもりですか?」
「URAの詰問会だ!」
「ええっ!?」
「決意ッ! 何とか聞き出す! それまでツユハライに何かあっては駄目! 生徒会には通達しておくように!」
そうして理事長は旅立った。
海外遠征より良いが、安全かは別問題。
「大丈夫でしょうか……」
たずなさん、不安。
しかし学園を完全に開ける訳にいかず。
代理を立て、生徒会にも一報。
ツユハライは改めて監視される運びとなる。
だが当人ときたら呑気なもので、エアグルーヴの手伝いとして、花壇の手入れをしている始末……ッ!
「いやぁ、葉についた水滴が綺麗ですね。 心が洗われるようですよ」
「貴様は身も洗った方が良い」
「へ?」
「土汚れとは別に、毛並みが酷いぞ。 怪我して大変なのかも知れないが、ちゃんとシャワーを浴びてケアする様に」
「恵みの雨で体を洗い、水溜りの泥パックでスキンケアをしているんですが」
「たわけ!? それが乙女のする事か!」
「……昔は良くやったんだがなぁ」
どうなることやら。
Q.あなたは獣等を狩る狩人です。 ある日、いつもの様に相棒と共に狩に出かけたら、突然相棒が苦しみ倒れました。
息をしていません。 緊急通報するとオペレーターが「落ち着いて。 死んでいるのか確かめて」と言いました。 あなたはどうやって確認しましたか?
A.ツユハライの解答
相棒が迷惑、仕事に支障、不利益の存在なので効率化の為、撃って確かめた。 手順省略、短縮化を図る。
「間違いなく死んでるよ。 次はどうすれば良い?」