「質問ッ! 何故ツユハライに退学を!?」
小さくも勇ましい理事長は、詰問会において食って掛かった。
基本的に上の決定には従うものだが、明らかに不透明な件に対して理事長は不服従を示す。
いち生徒とはいえ、愛する学園生徒に変わりなく、それを唐突に退学させろなどと筋の通らない話でしかない故に。
「説明するまでもありませんわい。 お伝えした通りです、理事長」
「反論ッ! 選抜レース不参加、他生徒への問題行動ッ。 確かに良い事ではない、しかしッ! 入学して日の浅い内に退学などと!」
「本人は退学届を出しておるのでしょう?」
「そ、それは……事実であるが!」
しかし勢いを削がれてしまう。
退学の件は理不尽だが、本人が届出を早々にしているのもまた事実。
その理由がエロ本回収して、さっさと逃げたいという最悪な理由であったが、それは本人以外誰も知らない。
「それを受理せず籍を置いているのは紛れもなく貴女ですぞ。 これは職権濫用では? その件も含めての具申だったのだがね」
「ぐっ。 ツユハライは成績優秀、それでいて危険思想であった……手放すのは惜しくもあり危険であるが為!」
「なら、尚更に切り離すべきでしょうに……尻尾を早く切り離さないと本体まで喰われますぞ。 それとも何か理由がおありかね?」
(屈辱ッ! この男、よくも愛する生徒を!)
トカゲの尻尾切りの様に言われ、怒りでプルプル震える理事長。
けれど伊達や酔狂で理事長の席にいる訳ではない。 深呼吸して考える。
(必ず何か絡んでいる! この男の言い回し的に私と彼女に探りを入れている様にも……そもそもツユハライが何故、この様な目に遭う? 問題はそこ!)
相手のペースに終始流される訳にはいかない。
理事長、反撃。 可愛いだけが彼女ではない!
「説明ッ! 愛すべき未来ある生徒を正当な理由なく退学に出来ない!」
「ですから、十分な理由があるでしょうに」
「直入ッ! いち生徒に対して、何故わざわざ絡む! 納得いく説明を求む!」
「ふぅむ……堂々巡りですな。 これ以上は話の無駄ですわい」
「くっ!」
しかし逃げられる!
理事長の幼い見た目もあるが、やはり駄目……説明を正直に求めてもはぐらかされ終了!
しかし悪しき男側も、決して余裕はない!
ここでツライさんがURAの隠す秘匿領域にハッキングしたなんて言えば、一時はツライさんをツライ目に遭わせられる。
それは容易な想像ッ!
が、しかしある……その先の問題ッ!
その件を追求すれば闇が明るみに出るし、自首されでもして警察沙汰になれば、悪党共は道連れにされてブタ箱行きからの臭い飯!
地位と金を守る為、ここはリスクを犯せない。
なので相手のツッコミの少ない未熟さを利用して、上手くのらりくらりと逃げたのだ。
逆に言えば、この件は悪党側にすれば余裕はない事を意味する。 ちょいと突けば崩壊する、互いに薄氷の上にいる状態なのだ。
厄介な状況だ。 生き残る為には誤魔化し騙し、突き放しつつも本筋から逸らす甘い餌を撒くしかない。
URAそのものへのダメージも勿論あるし、それに伴う世間のイメージ低下を避けるというのもあるが、個人の欲望で動く悪党からすれば自分第1、組織への心配なんて大してなかった。
「とはいえ貴女の生徒を想う気持ちは尊重致しますぞ。 ワシも鬼ではない、暫く待たん事もないですが……当生徒、ツユハライがレースに出てトレセン学園生徒としての本分を発揮してくれるなら、ですが」
(疑問ッ! どういう理屈の上で走れば許される事態になる? 走って解決する問題に感じない!)
「どうですかな?」
「停戦ッ! 先ず当生徒に聞かねばならない、ここまで出走していない故、時間を貰いたい!」
「くくくっ、わかりました。 良い返事をお待ちしておりますぞ」
こうして、1度お開きになった。
これ以上建設的ではない言葉のドッチボールをしても、何も解決しない。
理事長は怒りと謎にモヤモヤしながらも、学園へと帰る事となる。
「懇願ッ! ツユハライ、頼むぞ!」
哀れツライさん。
新たな戦場にブチ込まれる意味では、今回も社畜道を行かされそうだ……ッ!
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「という訳だ! 走って欲しい!」
生徒会室の次は理事長室にラブコール。
なんなんや……ワイがナニしたっちゅーねん!
いや、分かっとる。
ウマ娘として入学したのに、レースに出ないのは駄目……理事長的にもアウッ!
「……分かりました。 ですが足を怪我して完全じゃありません」
「無理にとは言えないッ! けれど君の為でもある! 分かって欲しい!」
未勝利で馬刺しENDってのは無いにせよ、退学はあり得るからね。
あと、上の言う無理にとは言えない的な、選択肢をチラつかせて優しさを見せても、あまり嬉しくない。
というのもそれ、実質選択肢無いようなもの。
下っ端は黙ってYESと頷くしかない。
「分かりました、出来る限り頑張ります」
「感謝ッ! そして謝罪ッ! 力無い私を許せ!」
何が何だか。
更なる上に言われたんだろうな、きっと。
彼女もまた、ツライさんなのだ。
某芸人ネタ風
ツライ「ケーキ屋の新作。 詫びも兼ねてアヤベ達にあげよ」
トプロ「すごいっ!? あのっ、これ……おいしいです!!
え〜っ、おいしい……! すごく……すごいです、わ〜っ、あのっ……おいしいです……!!」
アヤベ「語彙、凄いわよ」
ツライ「連呼するだけじゃあかんってコト。 例えばこうするんや。
……おお、おいしい! 店で出せるレベルですよ!」
アヤベ「出してるのよ!?」