【ヒトソウルが叫びたがってるんだ!】(完結)   作:ハヤモ

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前書き
終わりに向けねば。
ある意味、ツライさんの晴れ舞台?


24.暴馬

 

ドゴォンッ!!

 

と、轟音が響く立派なURA建物。

受付嬢が軽く悲鳴を上げ、直様警報が鳴り響く。

警備員が一斉に下手人を捕らえに向かう中、ツライさんが叫びを上げた!

 

 

「来てやったぞ! 出て来いッ!!」

 

 

響き渡る悲鳴に似た、魂の奥底からの声。

それに笑うは、どこぞのタヌキだ。

 

 

「ツユハライか。 バカな真似を」

 

 

防犯カメラに刹那的に映るウマ娘。

精神が摩耗して死んだ目、けれど種特有のパワーと走力はそのままで、ヒトの警備員の間を瞬時にすり抜け、1人程度なら簡単に吹き飛ばして突き進む。

 

その様をモニター越しに見た真の下手人は震え上がる事もなく、冷静に行動する。

 

 

「血迷ったか。 まぁ良い。 これくらい分かりやすい悪役の方が楽であろう」

 

 

規制と削除が横行する時代であるが、それらを執り仕切るは偉い人達だ。

知る権利ならぬ知らない権利、情報統制、スポンサーに有利な事をする人々……。

この場合、下手人に味方するヒトは多くなりそうだ。 メディアとしても、この件は面白いから大きく取り上げてくれるだろう。

そうなれば世間はツユハライを敵視する。 URA、トレセンとしても彼女を切り捨てるしかなくなってくる。 後は煮るなり焼くなり好きにしても誰も同情しない。 つまりツライさんがどう足掻いても、お偉いさん……下手人の有利に働くのだ。

 

やがてドカン、ドカンと大きな音が近くなってくると下手人の部屋に突っ込んでくるツライさん。

 

外の豪雨で、びしょ濡れ。

豪華な部屋をいるだけで汚していく。

 

そんな中、迷わず此処に走り抜けて来たという事は、予め建造物の構造と下手人の部屋を調査したのだろう。

その能力は素晴らしい。 やっている事を除けば。

 

 

「初めまして、だな屑野郎ッ。 お礼参りだ」

「随分な挨拶だねツユハライ君。 君のした事は最早取り返しのつかない……」

「うるせぇッ!!」

 

 

バキィッ!

 

 

「ゴファッ!?」

 

 

俊足で駆け寄ると、ヒトが反応し難い勢いのまま拳で殴った。 バリキで。

漫画の様に吹き飛び、壁まで転がされるタヌキとやら。 対してツライさん、そのまま続けて寄ると襟首掴んで頭突きをかます。

 

 

「ガッ!?」

「昔のワイのクソ上司やクソ調教師共みてーなツラしやがって! ワイがどれだけ我慢してきたか、どんな目に遭ってきたか! 鞭じゃ済まない痛みと苦しみをテメェの身体に教えてやんよオオンッ!!?」

 

 

ツライさん、完全に八つ当たり……ッ!

前世、前々世の事は今世で関係なし……ッ!

ただ記憶にある嫌いな奴らに似ているというだけで攻撃……理不尽ッ!

その漆黒の目は完全に相手を捉え、敵の恐怖の感情を増幅させていく。

 

 

「テメェがその特権的地位を得る為に何人の社畜を犠牲にしやがった! 答えろ! 答えられねぇよな、だってお前みたいな奴は犠牲が当然だから一々覚えてる筈がねぇ!」

「ま、まふぇ……たすけ……」

「命を何とも思ってなさそうな奴が命乞いしてんじゃねぇぞ! 俺の時は助けてくれなかった癖しやがって畜生ッ!」

「な、なん……はなし……ブフッ!?」

「だよな、やっぱ覚えてる筈がねぇ! 覚えていても赦さねぇけどなァ!?」

 

 

ツライさん、抑圧された感情を放出してタコ殴り! 痛ぶる為に急所を外して手加減もしているが、それでもウマ娘。

ウマ乗りになってボカスカと殴りまくる。 側から見たら美少女がオッサンの上に乗っかり乱れている訳だが、実際は血生臭い光景である。

 

 

「ジョッキーの奴もコレ以上に好き勝手しやがってゴルワァッ!」

「や、やはり貴様も転生……ジャッ!?」

「だからどうした!? 最早関係ねぇ!」

 

 

ジョッキーという、この世界に存在しない言葉に反応するも、容赦なく拳をハンマーの様に浴びせるツライさん。

今はそっち面も規制が入り、鞭制限がある様だが、残念ながらツライさんの時は、そういうのが無かった。 鞭を打たれるお馬さんも痛いか痛くないかの議論をする者がいるが、其方も残念ながら痛かったらしい。

 

 

「はぁはぁ……やっぱ、アンタも転生者か」

「ふぁ、ふぁい……」

「まだ話せるか。 不健康そうなヒトの癖してタフな奴め。 死んでも構わへんけどな……!」

「ひぃ……っ」

 

 

やっと落ち着いてきたツライさんは問答に掛かる。 拷問に近いが、相手は威張る力もなく、苦痛に屈して答えるしかない。

 

 

「で、例の未来予知染みた記録は貴様の仕業で宜しいな!?」

「そ、そうれす……」

「テメェの世界にも競馬があって、その時走っていたウマ娘と同名の奴がいて、運命まで似たり寄ったり! それに目を付けてこの世界で金稼ぎや地位向上を図った、違うか!?」

「その通りれすっ」

「まんまと利用しやがって!」

「ゲハッ!?」

 

 

床に頭を叩きつけるツライさん。

が、しかし。 ツライさんは飽くまでも偶然この事実に辿り着いただけだし、実害を被っていない。

更に言えば、ヒトやウマ娘が利用されたといっても知らない人からすれば常識の範疇だし、運命とやらに従っているだけならば、そこまで責められる事態では無さそうに思える。

 

それでもボコボコにしたのは、やっぱり八つ当たりであり。

ツライさん……完全に悪党の所業ッ!

弁護……少ない……余地ッ!

 

 

「だが運命とやらと違う結果の娘もいた! 説明しろ!」

「と、トレーナーの存在が……」

「分かった!」

「グフッ!?」

 

 

ツライさん……容赦ないッ!

 

 

「時間や世代差については!?」

「それはわ、ワシにもサッパリ……」

「OKッ!」

 

 

ドゴンッ!

容赦ない……ツライさん、容赦ない……ッ!

 

 

「こ、こんな酷……ッ」

「ワイのヒト時代と馬時代は、こんなモンじゃなかったんやけどなァ!?」

「ひ、ヒトだと? 馬も経験した……?」

「お前にゃ関係ないわッ!」

 

 

バギィッ!

人体が発して良い音でなし……ッ!

相手、既にパンパンな顔……ッ!

逆にソレで済み話せる人体の不思議……ッ!

 

 

「だ、だからか……ワシの記憶でも無かった名があるのは……」

「アンタがどれくらいの競馬好き、いやギャンブラーだったか分からんけども、もう付き纏うのは止めるんやな。 トレーナーとやらの影響で運命が変わっていく……もう若い奴程に手に負えないんじゃね?」

「ふぁ、ふぁい……最近は稼ぎが悪く……」

「それでも、この場所で堂々椅子に座れるんや。 私腹もだいぶ肥えたろうに……」

 

 

やっと駆けつけくる警備員。

潮時か、と両手を上げて無抵抗。

 

 

「後は、たずなさんと話す、か」

「た、たず、な……あの娘、か……元気か?」

 

 

急にしおらしくも、妙な事を言う男。

それに色々思いつつ、ツライさんは一言。

 

 

「元気ですよ。 オイタが過ぎたバ群を追い払うくらいには」

「ふっ、ふはは……でなければ、な……」

 

 

警備員に連れてかれるツライさん。

結局、この行為に何か意味があったのか。

 

いや……きっと、あったと願おう。

少なくともツライさんの存在意義は十分果たされたのではないだろうか。




後書き
【裏の裏】
やよい「逼迫ッ! ツユが何の相談もなく!」
たずな「私が迎えに行きますっ」
やよい「うむ! 頼んだぞ!」
たずな「はいっ!」
やよい「……行ったか」
やよい(分かっている、たずな。 君が今回の……私に出来るのは後始末、か)

【生徒会】
グルーヴ「会長、ツユハライが行動を起こしました。 いかが致しましょう」
ルドルフ「理事長の知る所。 だが傍観は出来ない」
グルーヴ「では……」
ルドルフ「迎えに行こう。 大切な仲間だ。 そうだろう? エアシャカール、アグネスタキオン」
シャカ「お見通しか」
タキオン「ツユは意外と大胆なんだねぇ」
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