反省点もありつつ、終わりへ。
T様の言う通り。
T……ツユかトレセンかトレーナーか
それとも……トキノ……。
東京府中駅の近く、警察署に迎えに来てくれた たずなさん。
器物破損・不法侵入・営業妨害・傷害事件等あるものの、どういう訳か相手は訴えるつもりはないときた。 暫く拘留された後、開放となる。 何処からかの圧力があった様だ。
事件として処理する以上、犯行現場は証拠保持の為に隔離され、警察が入り、事情聴取のみならずワイの発言等から例のアレは白日の元へ晒される運びとなる。
で、あれば一応の自己満足は果たせた結果だ。
が、しかし。 ワイの中ではまだ、陽の元へ晒さねばならぬ事がある。 その件は当人に聞くつもりだ。
「貴女が連絡を入れて来るなんて、驚きました」
当人、たずなさんが言う。
曇り空の下。 痛む節々。
たずなさんと共に歩く府中の街は、どこか音が遠く聞こえる。
「けじめ、ですかね」
「……なぜ、無謀な真似を?」
「気の迷いです」
「そうですか」
そう言う たずなさんの声はハッキリと、けれど空気より冷たい何かを感じさせた。
「やはり貴女は診断テストの通りレースに向いていないのですね」
その言葉も冷たく突き刺さり、問題を起こした者を怯ませるのに十分だ。 普通の相手なら。
「その判断は、ワイの妄想を聞いてからにして下さい」
だが怯まない。
今までの経験と比較すれば、こんなもの平気である。 それより未だ燻る問題をカウンターの様に切り出した。
今回の事件、疑問が残る。
殴りまくったヒトとは別にいる存在、もう1人のアクセス権持ち。 ツライさんが都合良く情報を拾えた事、さも誘導されたかの様な結果。 何故、その様なモノをネットワーク上に転がしていたのか。 色々ある。 答え合わせといこう。
「わざわざ秘匿領域をネットワーク上に作成、転がした思考を追い込んでみたんですよ」
歩きながらも仕掛けた。
以前、暗雲の中でスパートを掛ける。 たずなさんは黙って受け入れてくれた。
「秘密はヒトが少ない方が保ち易い。 あの人の言う運命とやらも独占したい。 けれど、それら事象を捻じ曲げる凄腕揃いの中央トレーナーの存在は後年になる程大きな障害となった。 そんな彼ら、彼女らを現場に出ない理事会では管理出来ない。 すると動向を直接監視出来る現場に観測者を置くのが好ましい。 今回の事件の首謀は、真犯人、観測者は たずなさん、貴女ですね」
そこまで言うも、たずなさんは無言で、けれど穏やかな目をしたままだった。
ひと通りの少ない道に入った時、やっと口を開いてくれた。
「前言撤回です。 貴女は優秀なウマ娘ですね」
認めるか。
だから何だ、という話だが。
「理事長は、いつから"ソッチ側"で?」
「就任して直ぐです。 ウマ娘を第一に考え、行動力のある方でしたから」
で、あるか。
子供っぽい見た目と大胆な行動に騙されそうになるが、やはり中央の理事長という席は安いものではない。 色々な意味で。
「貴女をトレセンに入れ、退学を受理しなかったのはツユハライという記憶が存在しなかった事にあります」
「つまり駒として利用したかった、と。 存在そのものがイレギュラーなのだから、何処かで使い潰す腹だったので?」
「少なくとも下手人は」
「それでウマ娘第一ですか」
「悪い様にはしなかった筈です」
「過ぎた事です。 それにワイはウマ娘としては身体ばかりで中身は違いますよ」
「……ウマソウルの話も、今になって信憑性が高くなってきました」
「そうですか」
使われるのは慣れている。
それに怒るつもりは無い。 いや暴力や理不尽を散々押し付けてきた奴らは赦さないけど。
「それで……ツユハライさんは何者なんですか」
「今更ですか……と、その前に。 たずなさん、貴女が何故ワイを利用してアイツを引き摺り出したので?」
「気の迷いです」
とぼけなくても。
また妄想タイムよ。 付き合って貰おう。
「当てましょうか。 昔、貴女と彼は何か特別な関係で付き合いがあった。 けれど闇堕ちしていく彼を見ているのが辛くなり袂を別ち、彼をしばき倒すべくワイをけしかけた。 記録も貴女が上手く転がしておき、ワイが見れる様に仕掛けて、対立する構図を作り出した」
アイツ、何故か たずなさんの事を気に掛けていたからね。 何かしら関係は疑ったよ。
「少し違いますが、大体その通りです。 誤魔化せないものですね」
「これくらいならば。 昔、ヒト時代は酷い目にばかり遭ってきましたから」
「ヒト……?」
「ウマソウルの伝承があるなら、ヒトソウルもあるやも、と考えれば良いかと。 オカルト方面ですし幾らでも考えられますがね」
その辺、マンハッタンカフェと、オトモダチに聞いても駄目だったけど。
この世界は謎に満ちている。 ロマンだねぇ。
「おや、晴れて来ましたよ」
暗雲の隙間から日差しが入り込む。
綺麗な青空が垣間見えた。
久しぶりに青空を見た気がする。
「さて、ワイの役目は終わりです。 いよいよ退学ですかね?」
「貴女には改めて在学して貰いますよ。 だって知り過ぎたのですから……」
マジで?
たずなさんをバッと見やる。
怖い。 目が笑ってないよ!?
「当然、私の事も調べられたのでしょう?」
「イェ、ナンノコトヤラ」
口に出したら死ぬより怖い目に遭う奴!
アッ、たずなさん、ボディタッチはルールで禁止っすよね!?
ハンドシェイクやめてッ!?
あと、なんで鞭をチラチラさせてんの!?
てかソレって馬に使う奴でウマ娘用じゃないよね、騎手いないしこの世界!
じゃあ何で持ってるん? そいうプレイ?
それともまさか彼女も……!?
「これからも宜しくお願いしますね♪」
「アッハイ」
頷く他、なし……ッ!
社畜……今世でも……ッ!
いや今回は美女の奴隷堕ち!
男に生まれなかったのが悔やまれる……ッ!
「あら、生徒会とお友達の皆様が来ましたよ」
前方にバ群!
これ幸い! 木を隠すなら森の中、ウマを隠すなら何とやら!
「先ず謝罪しなければ……という訳ですので、失礼します たずなさんっ」
遁走するワイ……ッ!
けれど追いかけてくる たずなさん……ッ!
「一生逃しませんよ〜♪」
「早怖ッ! やっぱ たずなさんって……!」
「それ以上言ったら……うふふっ」
「ぎゃああっ!?」
───こうして、1つの事件は幕を閉じた。
秘密を秘密にするのはツライさんであるが、それ以上に共有し縛り合うのもツライさんな時もある。
けれど、ワイは今の状況を楽しんでいるのかも知れない。 機械的にならずに済む、感情持ちが赦された やさしい世界。
一時の夢、いつか消える幻想かも知れないが、今はこの夢を楽しもう。
夢ってのは、そういうものなのだから。
後書き
一応の完結へ。
我ながらorzな気持ちになる時も多々。
不完全燃焼な雰囲気もあったりなかったり。
ダラダラ良く無い……という思いもあり。
指摘があった様にウマ娘に乗っかった別物作品、迷走して転んだナニか、というのは否定出来ません。 大きな反省点でした。 その節はすみません。
今後、皆との繋がりを感じる為、平穏や趣味の為、また反省しつつ新たな作品を作る事になるかも知れませんし、しないかも知れません。
もし、何処かでお会い出来たならば幸いです。 ここまで読んで下さりありがとうございました。