【ヒトソウルが叫びたがってるんだ!】(完結)   作:ハヤモ

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トイレ・ストーリー
曇らせて即雨落ち。

書き直し……ッ!
読者の脳を悪い意味で破壊してしまい、申し訳ナス。 同時に読んでくれている方がいると思うと嬉しく思います。 励みになります。


6.同情するなら退いてくれ。

雨に晒されること暫し。

びしょ濡れになると頭だけでなく腹も冷える訳で、ともなれば腹の悪魔が唸りを上げ始める訳ですよ。

 

あかん。 あかんですわ。

エマージェンシィですわ。

 

見た目美少女でも生理現象には抗えない。

 

だってワイも生き物ですもん!

 

急いで便所に緊急着陸、けれどウマ娘のギアを使えば衝撃で漏れるので、フルフラップ失速失禁なしでのゆっくりと足を引き摺るように移動。

男の体と違い色々手順を踏まねばならず、しかもウマ娘となると尻尾が邪魔するので気を遣う事が多い。 馬時代は垂流しだったが今世はそうはいかない。 畜生めが!

 

くそっ。 今更に雨晒しを後悔!

 

ようやく下駄箱に辿り着きホッとしたのも束の間、今度はアドマイヤベガ、略してアヤベさんなるウマ娘が番人の如く待ち受けているときた。

 

大きめのウマ耳、クールな表情。

 

けれど、どこか遠くを見つめている瞳に浮かぶ憂いと歪みの有無を察せた。

 

伊達に長年社会の荒波に揉まれボロ雑巾にされてきた訳ではない。

 

社畜道2世に渡り養われた漆黒の目は誤魔化せないぞワレェ……同時に辛い事も見えてしまう我が社畜眼が憎いとさえ思っている。

 

けんどもワイには何もしてやれない。

若くして壊れかけの少女を瞳に宿し、その姿に悲しくなり息を吐くのみ。

 

同情。 悲憤。 負の念を向けて結論を出す。

 

 

 

 

 

君も……社畜かい?

 

 

 

 

 

いやそれよりも便所だと脇を通ろう。

ここは美女より尊厳を優先よワレェ!

男がやらかすだけでも社会的に死ぬのに、女の体で、女の花園のど真ん中で花散らしたら、そりゃ成仏出来ないレベルの悪霊となり彷徨ってマンハッタンカフェに世話になってまうッッ!!

その前に悪臭が彷徨うでしょうけどねッ!

そんなお漏らしプレイなんてふざけんなや!

トレセンが腐臭の海に沈み黒歴史確定だわ!

 

 

 

 

「ちょっと良いかしら」

「アッハイ」

 

 

迷いなく即答しちゃう様は哀しき社会の歯車!

 

初対面の同志だとしても、会社(トレセン)の先任の意味では先輩に違いなくっ。

その意味では我が身は全ウマ娘にとっての後輩にあたり、何の権限も有さない奴隷!

 

パイセンの言う事は聞かねばならない。

上司なら神の声。 イエスマンになる運命の社畜。

どんなに自身が辛くても耐える。 耐える事なくして未来はないッ!

 

 

「辛そうな顔してるわね」

「……ああ」

 

 

でしょうねぇ!?

逆に君みたいにクールな顔をする余裕があったら勇者だよ? てか、この状況でクールにする時って、やらかして勇者になる瞬間よ!?

 

 

「貴方も、失ったの?」

 

 

突然何の話をしてるんや、このお嬢さん!

息子を失った苦しみより、今は腹のブツを何とか所定位置に爆撃したいんやワイは!

それには何とか、何とか目の前のアヤベさんを退かさねば。 でなきゃ彼女が被爆してしまう!

ライブじゃなく阿鼻叫喚の渦のセンターに入れる羽目になる事態は避けたい!

 

いや、それとも、まさか?

 

彼女も過去に!?

こんな美少女が!?

 

そんでワイの境遇に同情を?

それともトイレに行かせず道連れにする気か?

 

なんて恐ろしい子……ッ!

けんども、ワイは諦めない、最後まで!

 

 

「……まだ失ってない」

「えっ?」

 

 

そうだ。 まだ失ってないぞワイは!

尊厳は、尊厳はまだ失っていない……ッ!

 

 

「勝手に決めつけるな……ッ、お前と同じ"お仲間"にするな……ッ」

 

 

貴女とは違うんです。

 

例え同じ社畜になるとしても、譲れないものがあるんや、こんなワイにも!

社畜が社会的に殺害されたら、社畜から社の文字が消える。 そうなれば畜生よ!?

 

もう馬じゃないんやでワイは!

ヒトでもないが、ヒトと馬を合わせたウマ娘として、ヒト寄りの種族としても、守るべきものはあると思うの!

 

ましてや見た目美少女!

夢と希望を人々に与える側!

 

それを書き換えて悪夢と絶望とオマケで悪臭を振り撒く存在になってはいけないッ!

 

 

「同情なんていらないッ、私は前に進む! 過去に囚われているお前と違うッ!」

「ち、ちが……私は……ッ」

「ナニが違うんだ! 私はいく、お前を踏み越えてでも、その先に……ッ!」

 

 

そう。 その先のトイレに!

 

 

「ッ、お願い、待って!」

「待てない……ッ! 息子を失って、更にこれ以上失って溜まるかよ!」

「ッ(子供がいるの!? え、いや、でも高等部、えっ)!?」

「もう悲しみ(ブツ)を生まない、私の足はその為にある……ッ!!」

 

 

アヤベさんを振り切り、ワイは最寄りのトイレに向かう。 足を引き摺るようにして、けど歯を噛み締め、少し前屈みになって耐えながら。

 

 

 

 

 

U■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■U

 

 

 

 

 

ゴロゴロゴロ……。

 

 

 

雨音に混ざる雷の音。

その稲妻に照らされて、一瞬強く光ったツユハライの背中は小さく、哀しく、辛そうだった。

 

それでも確かに、自分の足で進むツユハライ。

 

下駄箱に置いてかれたアヤベは、自身と似て非なる彼女に目を点にして、泣きそうで、まさかのカミングアウトに脳がバグってワケガワカンナイヨー状態となっていた。

 

 

(まさか彼女に子供がいたなんて! 幾つで産んだのよ!?)

 

 

と思っても、ストレートに聞くに聞けない。

学生妊娠……子が子を産む事は、少なくとも日本では良い様に思われていない。

法律、倫理観もあるが、母体への負担、医学的な面、経済的な面でも教育的にも悪影響が大きいからだ。 それを理解出来る位にはレースばかりでなく座学……教育を経たアヤベさんにも理解出来るし、ツユハライにも解っている筈。

 

にも関わらず……きっと闇が深いのだろう。 ツライさんの目は漆黒に沈んでいた。 絶望感漂う雰囲気は、トレセンに来るまで想像もつかない過酷な経験を積んできたからか。

子供に関しては避妊を失敗したとか、子の父親が屑だとか、色々妄想は出来るが、詮索するのは無粋だろう。

 

それにしても本人のあの振る舞い。

メンタルが崩壊してもおかしくないのに、なんで。

 

 

(なんで……そんなに強く生きれるの?)

 

 

十分生きた。

 

そういって自分を捨てるくらい過酷な環境に身を投じていたであろうに、その上で亡き者の為に……まさか子供がいたなんて思いもしなかったけど……人生を費やす彼女は自身の影と重なっていたのに。

 

けれど実のところ、それは自分と似た境遇だと勝手に解釈して傷を舐め合う仲間を求めていたに過ぎなかった。

 

その歪みを、ツユハライの目は見抜いた。

 

 

 

───お前と同じ"お仲間"にするな……ッ

 

─── 私は前に進む! 過去に囚われているお前と違うッ!

 

 

 

母強し。

 

思えば、1番辛かったのは自分の母ではないか。

お腹を痛めて産んでくれた母ではないか。

 

子の想いを背負う彼女と、思い出もなく、ただもう1つの片割れの魂を感じて走る私とでは大きく違うのだ。

 

怒らせてしまった。

 

彼女の辛い記憶を、心を土足で踏み荒らした。

 

私より、ずっとずっと辛いのに。

 

その不快感は、自身も知っている筈なのに。

 

最早、気付かなかったでは済まされない。

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……ッ」

 

 

アヤベは泣き崩れ、嗚咽が下駄箱に児玉する。

 

それらは全て雨音に掻き消され、誰の耳にも届く事は終ぞ無かった。




更新未定
作者自身もバグっている関係で作品として成り立たなくなってきている感が否めず。 その節は申し訳ないです。
リアルハザードもあって、色々と難しい中……。

感想、評価等、ありがとうございます。 励みになります。
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