生徒会へのパートが決まったものの、いち学生としての誠意は見せねば示しが付かぬ。
要は座学……ッ!
ウマ娘で走りメインの体育学園とはいえ、普通科目はあり、変わり種にダンスがあるといった様相。
何で走るのみならずダンスまで披露するという疲労困憊な真似をせにゃあかんのか知らんけど、URAの経営方針の一環なのであろうさ。
まま、ワイはレースは出ないからね。
けどもそれを堂々口にすれば、レースに命捧げる先輩達に半殺しにされてまう。
ウマ娘のバリキは恐ろしいぞ……ッ!
成人男性なんぞ一捻り……!
足ばかり注力されがちだが、腕力も半端ない!
ばんえいでなく、前世でいうサラブレッドに当たる彼女らも、個人によってはトラックを浮かせられる程に力持ち!
なので絶対に敵対したくない。
隅っこ労働暮らし……安全第1……ッ!
だが、打ち破るはクラスメート。
やり過ごそうとして早々にクラスメートに陰口を叩かれ始める……闘争心溢れるウマ娘……他者に対する当たりも強い娘は強い……ッ!
「ツユハライはレースしないの?」
「えー、あの陰キャ?」
「編入試験で成績優秀だって聞いたからぁ」
「その癖、トレーナー契約断ってるって」
「まー、選抜出ないしー?」
「それマ? 何の為にトレセン来たし」
「それなー!」
おのれクソアマウマビッチ走法者共めがッ!
キャッキャッヒヒンと……ッ! 何が分かる……貴様ら学生に……ッ! 学園という箱庭で学業とレース成績に一喜一憂するのみの学生に……ッ!
社会に出て社畜となれば、薄給で税金や生活費の捻出、その他の支払いに追われ、追い打ちを掛けるはクソ上司筆頭の屑と増税値上げの波状攻撃だぞ……ッ!
だが分かる。 分かってしまう……ッ!
食うか食われるかのギスギス職場、蹴り落とし他人の成功を掠め取り、這い上がる根性が無ければ生きていかれぬ現代社会……ッ!
未来は暗く、既に共喰いの現代日本……転生しても希望もありやしない……女に産まれようと変りゃしない資本主義!
そんな戦争……一度開戦すれば、収集つかぬ大惨事大戦。 回避するには奴らを黙らす結果を叩きつけねばならない。
それこそウマ娘世界ではレース!
勝ったら良いな、ではない!
勝たなきゃならぬ勝負の世界!
「そんなに……見たいのか……私の力を……」
ゆらりと立ち上がり、グランドへ出る。
選抜に出る気はなくとも、走る事は可能。
「えっ、いや、外は土砂降り……」
「だからどうした……それが仕事……」
「いや危ないって!? さっきの冗談……!」
「冗談に聞こえなかったワイ」
「マジになんなし。 いや、本当に……」
「黙らんかいワレェ!」
「ピィッ!?」
「ワイらの上、URAという名の企業(組織)は重馬場でも走らすやろがい! 収益化、目指すやろ……ッ! 中止と言わん限り、ワイら社畜は従順に走らねばならんのや!」
……全く、エッライ国に生まれたのぅ。
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体を無遠慮に打ち、冷やしていく。
それでも走らば己の地位が為。
ツユハライは土砂降りの中、泥を跳ね雨水が視界を阻害し、ターフだというのに泥濘になった大地を蹴り進む。
他のウマ娘はいない。
こんな雨だ、無理に走れば危険であり、生徒会は外の使用を禁止、トレーナーも皆してトレーニングルームへ行っていた。
雨風凌ぎ、空調の整った部屋で安全に無理なく。
そうで無い者(予約が取れなかった者)は校舎の廊下に溜まり……外で走る者に驚愕する事になった。
「ちょ、ちょっと誰か走ってるよ!?」
メジロライアンが叫び、皆が注目する。
豪雨の白線でよく見せないが、確かに誰かが走っていた。
その光景に同じメジロ家、マックイーンも叫ぶ。
「誰ですの!? この雨です、許可は誰にも降りていない筈ですわ!」
騒つくウマ娘たち。
選手生命である足を大事にするなら、あんな自殺行為ともいえる走りはしない。
確かに重バ場を走る事はあるし、ちょっとくらいの悪天候なら普通に走る。
しかし本番でなし、ここまで酷い中を無理に走ればかえって本番に支障が出る。
だから今日は室内トレーニング、予約が取れなかった者は勉強に励んだり、或いは生徒同士談笑していたのに。
「無理に止めに行けば逆に危ない。 見守るしかないけど、後で生徒会に怒られるだろうね」
「ですが、この重バ場であの力強い走りは場慣れした玄人ですわ」
「まるで雨が彼女を避けているみたいだ」
本人は何か雄叫びを上げていた。
雨音に掻き消され、ウマ耳を持ってしても聞き取れなかったが、悲痛な叫びであった。
まるでこの世を憎悪しているような、その憎しみを無理矢理バネにして雨の弾幕を突き進む姿は見る者全てに悲壮感を与える。
「色々と普通じゃ無いね」
「ウマ娘は様々な想いを持って走っていますが、あの方は……勝ちたいというより」
「生きたい、って感じだね」
「ええ、何がそうさせるのでしょうか。 どれほどの苦しみを味わい、トレセンで走っているのでしょうか……」
「私も他のウマ娘の想いを考えちゃって足が鈍った事はあるけれど……彼女とは、どう話せば良いか言葉が見つからないよ」
暫く、皆は儚く力強い、スタミナの多いツユハライの走りを見守るばかり。
やがて雨具を纏った生徒会メンバー及び秘書のたずなさんに捕縛されるまで、ツユハライは走り続けた。
皆に見せつける様に。
その結果、ツユハライから事情を聞いた生徒会は原因の生徒を呼び出す事に。
以降、口を慎む様になったそうな。
「いやだって、クリスエスさん! 冗談をマジにして怪我されたら目覚め悪いっしょ!?」
「……実際、故障した」
「うっ!?」
「……ツユハライも自分を労らないから叱っておいた。 だが保健室、見舞い……」
「いきます……」
曇るモブ娘。
下手な発言で動いてしまうツユハライは、改めて不安定で危険な存在であった。
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足が痛み、思わず悲鳴を上げつつも営業の為にと無理やり足を前に出し突き進む。
この程度、前世の社畜時期と比べたら!
けれど終わりは来た。
生徒会メンバーとたずなさんに拘束され、校舎に引き摺り込まれて説教をされてしまった。
「何を考えているんですか! この土砂降りの中、走ろうだなんて! 足を見せて……酷い腫れじゃないですか!」
などと言った刹那、雨が上がってきたのでワイ、笑っておく。
いやぁ、何処までも天候には嫌われてますなぁ。
「笑い事じゃありません! 生徒会が担架を持ってきます、それまでジッとして!」
たずなさん、過去に何かあったのか冷静さを欠けた対応やな。
落ち着かせるべく、笑顔を浮かべて会話する。
「足が壊れても、例え死のうとも、意味があれば構わないんですけどね、私は。 そうじゃありませんか?」
「な、何を言って……ッ!」
「だって、それでウマ娘や皆の心に傷物として私という存在が残れたなら、死んでも価値ある存在になれるじゃないですか!」
「貴女は……貴女はもっとご自愛下さい!」
「愛してますよ。 そうじゃなかったら、残りたいなんて思いませんし、そもそも走りませんでしたよ。 ハハッ」
「おかしいですよ……そんなの……!」
「そうですかね?」
なんで、ワイが笑っているのに、たずなさんは笑ってくれないんやろな。
なんで、泣いてるん?
感情ってのは仕事の上ではホンマ邪魔やな。
なくなってしまえば良いのに。
そうすれば……苦しむ事もないんやで。
更新未定