*死ねば 逃げられる と 思うなよ。
救いはないのですか、ツライさん?
ヒトソウルの表現って難しい(今更感)。
怪我をして保健室にブチ込まれナウ。
包帯を脚に巻かれ、移動用に松葉杖、混じり気の無い純白ベッドの上で生徒会に説教を貰う。
最初はシンボリクリスエス、クラスメート、次に会長様。
言っている事は最も。 あるのみ……反省。
反省なら猿でも出来る。
土下座もまた、役に立たない。 何故なら生産性がないからだ。
けれど態度は大切。
言葉だけなら、幾らでも嘘偽りが出来るように、見た目もそうなのだ。
要は目上の人間に媚び諂い、機嫌取りをしてお零れを貰う。 それが大切。
下手に抵抗すれば、虐められる。
その点、学生時点で理解した者もいるだろう。
早めに気付くのは良い事だ。
「生徒会の力になると言った者が、いきなり反する行動をしてどうする」
「済みませんでした」
「事情は聞いているが、場と時を弁えて欲しい。 それと、もう少し自分を大切にしてくれ……君が傷付いても苦しいだけだ」
退室していく会長様。
その表情には憂いの影。
けれど直ぐに終わった。
下手に持論を持ち出してはならない。
たずなさんの時は失敗だったがね。
しかしまぁ……クラスの者もそうであったが、日の浅い新入生に慈悲深い者だ。
否、思えるのみ。
事態が収束に向かい、自身に害がないと判断し、人は気を遣って、さも私は優しい人を演じ始める。
皆無、助ける気……全くなし!
けれど今更蔑む事もない。
立場が逆なら、ワイもそうする。
頻繁にある、ありふれた現実。
偶のニュースにやる学生の虐め問題、しかし社会人にも卑劣な虐めはある様に、表面化しない現実。
仕事正義の風潮、それを逆手に取り後楯、愛国無罪ならぬ仕事無罪、残虐非道の正当化。
大人、その言葉が惑わす幻想、信じた瞬間殺しに来て屍喰らう屑……弱肉強食社会。
またウマ娘も同じくして人と変りゃしない……耳と尻尾が生えた学生ってだけ……ッ!
それでも馬の時より明るい人生。
記憶があると余計ツライさん。
経済動物の枠から外れずとも。
馬刺しにならぬ、鞭も打たれぬ。
最も会社で打たれるだろうけど。
「汝、一切の望みを捨てよ」
そんなウマ娘、絶望する時が来る。
レースとは違う、絶望が。
耐えられるか否か。
超えられるか否か。
知った事ではない。
自分は自分の事で精一杯。
生きろ。
そんな無責任な言葉、幾らでも言える。
ワイも変わらず屑だから。
訪れる静寂。 感じる足の痛み。 空虚な心。
ふぅ、とひと息。
安堵。 やっと動ける。
松葉杖も貰った。 問題ない。
人時代でも似た事例は経験済み。
動けるなら仕事しろ。
労災降りないなんて、良くある事だ。
会社の判断で不利益とし労災隠し、仕事優先命令、これもあるある。
バレなきゃ黒は白。
サビ残、有給消化不良、会社寝泊まり当たり前。
黒の常習化は常識にとって変わる。
この世界に広がる闇、暗黒、跋扈する魑魅魍魎、俗世に巣食う数多の屑。
トレセンに限っては相部屋寮暮らし。
この僅かなプライベート空間に寝泊まり、しかし人時代と異なり飯食い放題、ワイに限っては寮長にバレた猥本。
前世と比較すれば、なんて贅沢なんざましょ。
残酷な世界で己の居場所を切り取る……至難の業であるというのに。
しかし相応の責任と義務……仕事が発生する。
働かざる者、食うべからず、と。
ウマ娘となればレース、URAの財源の糧となりて青春を金に変える。
ワイもウマ娘、されども人時代の社畜経験を活かしてレースよりバックアップに費やし、トレセンでの地位を守りたいところ。
ついでに女の子としても。
内心、未だ男ッ!
精神的BLは申し訳ないがNGッ!
適材適所。
早速行動……が、駄目……ッ!
かの会長、その機嫌を損ねれば捻れるクビ無数……ッ! 窺い小娘達にヘコヘコしながら生きねばならぬ社畜道!
情け無い。
しかし!
そんなの! 関係ないッ! クドイまでに!
老若男女、社畜であるなら、奴隷ならば!
媚びへつらい、命だったものをぶち撒け、せめて役に立って死ぬ。
そして次の者に託す。
それこそが、それだけが残酷な優しさに抱擁された俗世に唯一抗う方法。
その為に耐える……ベッドの上で!
屈辱……身から出た錆!
されど耐える! 耐える事なくして勝利なし!
「取り敢えず生徒を覚えねば。 うん」
仲良しこよしは社畜の頃の裏切り合いの古傷が痛むのでツライさんだが、職場の者達の名前と顔を覚えるは常識。
流石に何千と犇き嘶くウマ娘全てを覚えるのは困難、しかし身近は覚えるべき。
取り敢えず生徒会の主要メンバー、クラスは覚えたとして、他は仕事相手か。
理事長、秘書……それは良い。
現実的……もっと身近な、直接関わる者達。
生徒会が手を焼く問題児……矯正……。
施設を破壊する者、校則を守らぬ者。
他者の人権を考えぬ非人道的な者。
……その前にアヤベさんは大丈夫か?
「挨拶に行くか」
トイレに行く邪魔をされたが、まぁ同情しない訳でもない。
人としての尊厳は社畜道で役立たずとも、まだ悪魔のレールに乗ってない学生諸君。
生まれた瞬間から社畜として生きていた訳でないワイも、理解は出来るつもりである。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
会いに行けば光のない目で、ひたすら謝られるワイ、困惑ッ!
アヤベさん、ウマ耳を横向きにヘタリ、涙を浮かせては流していく。
「いや、まぁ、もう過ぎた事だから」
「貴女の事を知りもせず……」
「ワイもアヤベさんの事、知らんけど」
「……ごめんなさい」
堂々巡り! 会話不成立ッ!
ナニが彼女をそこまで……謝罪だけなら猿でも出来る、涙も飾りに出来る、問題なのはその意図だ。
そこまでして得られる利益ってナニ?
これがトレーナー相手なら金か契約目当てかとも考えられたが、ポッと出の無能編入生にワンワンする理由が分からん。
故にか内側で不思議な感覚に襲われる、そう、深い所で何かが震えている。
「とりま、涙を拭きなよ」
そう、白いハンカチを差し出した拍子、軽く触れてまう乙女の柔肌。
刹那、意識が暗転し───。
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レース面で忘れる者もいるが、ウマ娘世界はオカルトが平然とある恐ろしい世界でもある。
そもそもウマ娘、別世界からウマソウルを継いでウマ娘がいるという、その辺を明言されている時点で片足どころか全身どっぷり浸かっているが、それに触れなくとも世は回っている。
魚の住まう世界が水に満たされている、地上に空気がある、その事実が当たり前過ぎると疑問に思わない、そんな感じに。
目に見えぬもの、気付かぬものなら尚更に。
けれどもツユハライは記憶持ち。
更に言えば馬という4足歩行生物がいた世界からの転生者、ヒト→馬→ウマ娘の経緯を辿り今に至る。
故にウマソウルといえばウマソウル、ヒトソウルといえばヒトソウル。
女神様のミスかバグか。
それともヒトと馬の両方を経験してしまったが故のウマ娘転生(去勢)なのか。
社畜人生が成した現象なのか。
兎に角、そんなツユハライは今、更なるオカルトを経験していた。
魂の違いからか、何故かアヤベさんの精神に意識が溶け込んでいた。 まさかの事態だった。
気が付けば、何処向いても暗闇、地面の感覚すらない、かといって浮いている感覚はなく、普通に歩ける謎空間。
足の痛みもない。
けれど妙なリアル感はある。
これらの情報からツユハライ、自力でひとつの結論に至った!
「ワイ、また死んだん!?」
勘違いであるが、仕方ない回答!
社畜時代が長かったツライさんは現実派、ここがアヤベさんの精神世界、空間というオカルト発想が出来なかった!
出来ても、経験上のものであり、その結果が死後の世界「ワイ死んだ、オワタァッ!」である。
「な、なんで? ワイ、ハンカチ渡しただけ……足の怪我、疲労が身体を上回ったとでもいうんか? 頑丈そうなウマ娘の身体なのに? そんな酷使してないやんワレェ!
こんなん、あんまりや……延々と闇を彷徨えというん……いや待て、3度目の正直言うやん? これで今回こそ永遠の眠りにつくんとちゃいます!?」
後ろ向きのポジティブ思考になり、無理矢理持ち直すツライさん。
元より苦しみから逃れるべく歪んだ人格、不安定な思考をして生きているので、これくらい耐えてみせた。
そうして開き直り、ひゃっほいと他人の意識の中を、少女の心を土足で走り回り始めるツライさん!
「しゃ、社会から逃げられるなら、例え地獄でも……フヘヘ……」
本音、僅かに漏れる!
そんな不審者が、殻に籠るアヤベさんに出会うまで、そう時間は掛からなかった。
続くか毎度未定
アヤベさんを救うか、堕ちるか……
不安定故、急にオカルトだけど元より……タイトルも……ねぇ(精神不安定