‐クリモニア・周子宅‐
周子が実家を設置して数日。空き地に誰も知らない内に竹林に覆われた建物が現れ、その家に狐の女性が住んでいる事が噂になって遠巻きから見物する住民達が多くいるが周子は気にせずに寛いでいた。
周子
(今日も雨か・・・こう連日で降り続けると萎えるな~)
フィナ
「周子お姉ちゃん、今日の分の解体終わったよ。」
周子
「お疲れフィナ―――って!怪我してるじゃんッ!」
フィナ
「ちょっと切っちゃって・・・でも毛皮には血とか付けてないから安心してね。」
周子
「それはいいから傷を見せて。」
解体小屋から戻って来たフィナの怪我をした右手を見た周子はそう言ってフィナの手を取って傷を見る。
周子
「大した傷じゃないね、魔法で治すから待ってて。」
フィナ
「えっ、嘘治った!?周子お姉ちゃんの魔法!?」
周子
「うん。かすり傷だからすぐ治って良かったよ。」
そして仕事を終えたフィナを見送った後、周子は久しぶりに冒険者ギルドへ顔を見せる事にした。
‐翌日 冒険者ギルド‐
冒険者ギルドへ来た周子はヘレンから指名依頼が入ってる事を聞く。
周子
「この街の領主が私に?」
ヘレン
「はい。伯爵のフォシュローゼ様が家に来てほしいとだけ言い付かっています。」
周子
「何で冒険者の私に?」
ヘレン
「周子さん噂になってますからね。」
周子
「噂って?」
ヘレン
「狐の耳と尻尾が生えていて、単独でゴブリンキングや番のタイガーウルフを討伐。新人の討伐数にしては多く、更に召喚獣で狐を呼び出して、竹に囲まれた家まで建てれば噂になりますよ。」
周子
「あ~確かに噂になるよね(この街の領主か。漫画とかの貴族じゃない事を祈ろうかな)。」
それに苦笑いしつつ周子は領主の家に向かおうとした時、1人の少年が冒険者ギルドへ駈け込み、大声で叫ぶ。
少年
「誰か助けてくれッ!俺の村がブラックバイパーに襲われてるんッ!!!」
ヘレン
「本当にブラックバイパーですか?ただのバイパーでなく。」
少年
「ただの蛇が家畜や大人を丸のみにできるかよッ!!」
その言葉に冒険者達はザワつく中、受付から出たヘレンは確認を取ると少年はそう叫ぶ。しかし現実は無情でヘレナは対応できる有力冒険者がいない事を話す。
少年
「そんな・・・それじゃあ村の皆や牛の姉ちゃんが食われちまうよッ!」
周子
(牛の姉ちゃん?)
少年の言葉に気になった周子は声を掛け、その牛の姉ちゃんについて聞く。
少年
「10日前に行き倒れてた所を助けて、それでお礼に村で力仕事とかをやってるんだ。牛の姉ちゃんは変わった鎧を着て追っ払ってくれてるけどこのままじゃあ・・・」
周子
「(変わった鎧、もしかして・・・)分かった。なら私が行くよ。」
ヘレン
「行くって、そんな近所に出かける様に軽く。ブラックバイパーは大きさによってBランクの魔物になるのですよ。」
周子
「それでもだよ、人命が掛かってる以上急がないとね。先行偵察も含めてね。だからお願い。」
ヘレン
「それならまぁ・・・」
少年
「少しでも早くみんなが助かるなら俺はそれでいい。」
周子
「決まりだね。少年、村までの道案内をお願い。」
カイ
「カイだ。よろしく頼むッ!」
そして冒険者ギルドから周子はカイを連れて街を出た後、ブーストライカーを召喚する。
カイ
「狐の姉ちゃんが狐を召喚したッ!?」
周子
「さぁ乗って。あ、ヘルメットを付けてね。」
カイを乗せた周子はアクセルを全開に回して走り出す。
‐1時間後 カイの村‐
カイの案内と近道で村へ着いた周子。カイの村は全体の4割が破壊されていた。周子はスパイダーフォンの探知で周囲を確認し、件の魔物がいない事を確認する。
周子
「例の蛇は近くにいないから一先ず安全だね。声を出しても大丈夫だよ。」
カイ
「皆!いるかッ!俺だ、カイだ!戻ってきたぞッ!!!」
カイは村に向かって叫んだ時、一軒の家のドアが開いて男性が出てくる。
男性
「カイか?早く入りなさい。」
その男性の姿を見たカイはすぐに家の中へ入り、それに周子も続いて入る。
カイ
「父さん!母さんは、村の皆はッ!?」
カイの父さん
「母さんは大丈夫だ。でも、衰弱している。この数日ろくに食事もしてないからな。」
カイ
「他の村の人達は?」
カイのお父さん
「出てこないよ、アイツは音に反応する。逃げ出したエルミナ一家や井戸に水を汲みに行ったロンドが襲われたがキャトルのお陰で食われずに済んだがな。だから、誰も家から出てこない。食われるかもしれないからな。」
カイ
「牛の姉ちゃんとドモルゴさんは!?」
カイの父さん
「2人共無事だよ。ドモルゴは足を怪我したが大した事は無い。キャトルは―――」
キャトル
「カイの親父さん、カイの声が聞こえたが戻って来たのか?」
するとドアを開けて1人の牛娘、キャトルがカイの家に入ってくる。その時周子は彼女の腰に見知ったベルトを見て確信する。
周子
(デザイアドライバー・・・なら彼女も。)
キャトル
「ん?なぁそこの狐のお譲さん。アンタがカイが呼んだ冒険者か?」
周子
「そうだよ。私は浮世周子、クリモニアから来た冒険者。よろしく―同じ地球人としてね―。」
キャトル
「ッ!吾妻キャトルだ・・・よろしく。」
周子が言った最後の言葉にキャトルは驚くものの、少し警戒をしながら返事を返す。そして討伐対象のブラックバイパーの情報を周子に話す。
周子
「つまり朝一に村で食べに来て、物音を立てたり逃げ出さない限り夜は襲わないのね。」
キャトル
「あぁ、最初は家畜を襲ってから村人をな。私が何度も追っ払ってるけどそろそろ村の連中達は限界だ。」
周子
「なら今すぐ倒した方がいいわね。あz「キャトルでいい。」ならキャトル、ブラックバイパーがいる場所へ案内して。」
キャトル
「いいぜ、あの蛇公には引導を渡したいところだったんだ。」
そして2人はブラックバイパーが潜む平地へと向かう。
‐平地‐
平地へ着いた周子達。すると2人の気配を感じ取り、とぐろで大岩に扮していたブラックバイパーが動き出す。立ち上がっ細長く巨大な姿は高層ビルの様に感じる。
周子
「それじゃあ討伐開始といきますか。」
キャトル
「あぁ、今日ここでブッ潰すッ!!」
ブラックバイパーは2人に狙いを定め、大口を開けて襲い掛かる中、周子達は冷静にドライバーへそれぞれのレイズバックルをセットする。
周子・キャトル
「変身ッ!」
『MAGNUM』
『GRAB!CLASHOUT!』 『ZOMBIE』 『Wooooo・・・』
『READY FIGHT』
ギミックを作動させると同時に二手に分かれてブラックバイパーの突進を避けてギーツはマグナムフォームに、キャトルは
ゾンビフォーム
へと変身する。するとブラックバイパーの胴体がクニャと曲がって2人を襲う。ギーツとバッファは咄嗟に受け身を取り、後方に吹っ飛ばされる。
バッファ
「ぐ・・・ッ!」
ギーツ
「中々効くね・・・」
悶える暇もなく二度目の攻撃が迫る。それをギーツがマグナムシューター40Xの牽制射撃で眼の付近を銃撃。それを受けたブラックバイパーは方向を変えて離れる際に尻尾でギーツ達を攻撃する。
バッファ
「やらせるかッ!」
『POISON CHARGE』 『TACTICAL BREAK』
しかし態勢を直したバッファがゾンビブレイカーで放ったタクティカルブレイクが迫る尻尾を切断。切断面が腐食し、今まで感じた事のない苦痛がブラックバイパーを襲う。その瞬間をギーツはライフルモードのマグナムシューター40Xでピット器官を狙い撃ち探知能力を奪う。
ギーツ
「おっと。」
バッファ
「チッ!」
しかしただではやられまいとブラックバイパーは突進攻撃で潰そうとするがそれをギリギリ避けたギーツ達は銃撃や斬撃で攻撃する。しかし通常の個体よりもタフな巨体と元から再生能力を持つブラックバイパーに決定打を与えられずにいた。
バッファ
「クソッ!これじゃあジリ貧だッ!どうする周子ッ!?」
ギーツ
「なら体内に直接魔法を叩き込むしかないね。キャトル、私を思いっ切りアイツの真上に投げ飛ばして。そしたら相手の動きを止めて。」
バッファ
「蛇公の真上に!?食われちまうぞッ!?」
ギーツ
「いいからやって。」
バッファ
「ええい!どうなってもしらねえぞッ!!」
そう言ってバッファは差し出したギーツの左手を掴んでそのままブラックバイパーの真上に投げ飛ばす。そのまま落下するギーツにブラックバイパーは捕食しようと口を開く。
ギーツ
「それを待ってたよッ!」
投げ飛ばされた際にウィザードレイズバックルをセットしたマグナムシューター40Xの銃口を向けるギーツ。その意図に気付いたブラックバイパーは口を閉じようとしたが。
バッファ
「させねえよッ!」
『ZOMBIE STRIKE』
バッファはゾンビレイズバックルのウェイキングキーを回して必殺技を発動し、無数に分身したバーサークローでブラックバイパーの動きを止め、閉じ掛けた口を無理やり開く。
ギーツ
「これで幕引きだッ!」
『WIZARD』 『WIZARD TACTICAL BLAST』
ウィザードレイズバックルのギミックを操作してトリガーを引いて放たれた必殺技が無数の炎の弾丸となってブラックバイパーの口内へと直撃。体内を焼き尽くされたブラックバイパーは地面に転がり、何度か悶えると同時に動きが遅くなり、絶命する。それを確認したギーツはバッファに掌を向ける。意図に気付いたバッファも掌を向けてハイタッチする。
‐カイの村‐
カイ
「死んでる・・・ブラックバイパーは死んでるぞッ!」
村人達
「ワァッーーーーーー!!!」
周子達が持ってきたブラックバイパーの死骸を見てカイを含めた村人達は悪夢の終わりと村が救われた歓喜の声を上げる。
カイのお父さん
「ありがとうキャトル。それにも嬢ちゃん、これで村は救われた。」
キャトル
「気にすんな、ここの人達には助けられた恩があるからな。」
周子
「こっちも気にしなくていいよ。冒険者として当然の事をしただけだから。」
村長
「皆の者!今この場には様々な思いの者がいるだろう。歓喜に震える者、悲しみに暮れる者、気持ちの整理が付かぬ者・・・だが脅威は去ったッ!遅いが宴をしよう、皆ろくに食事をしていないしな。」
村長の言葉で宴が開かれ、村人達はそれぞれの家から食材を持ち合って村の中央に火を焚き、色んな料理を作りだす。踊り、騒ぎ、食べて村人達は大いに騒いだ。死んだ者の為に。これから生きる為に。生き残った事に感謝して明日から始まる日常に備えて。
‐翌日‐
村長宅で一夜を過ごした周子は朝食を食べ終えてクリモニアへの帰路に着く。
カイ
「ありがとう、きつねの姉ちゃん。俺もいつか強い狐になるよ!」
周子
「狐の道は険しいよ。元気でね、カイ。」
カイ
「狐の姉ちゃんもね!」
カイのお父さん
「嬢ちゃん、今朝獲れたお礼のコケッコウと卵だ。また何時でも村に来てくれよな。」
周子
「ありがとう。また来るよ(うん、予想通り鶏だね)。」
キャトル
「なぁ周子、本当にいいのか?ゾンビとブーストレイズバックルを貰っちまって。」
周子
「良いよ。今までシールドだけで戦ってたんでしょ。なら大型バックルは持っていた方がいいし、ブーストはもう持ってるから大丈夫だよ。」
キャトル
「でもコレ1回使ったら「クールタイム式だから大丈夫だよ。」え、マジでッ!?」
周子
「キャトルは残るの?」
キャトル
「本当は路銀が溜まったら街へ行く予定だけど壊された家とかを建て直さないといけないからな。これでも前世は大工だからな。」
周子
「そっか、それじゃあまたね!」
そしてブーストライカーに乗った周子は報告をする為にクリモニアへと戻る。
第5話END
次回「ギーツ、領主に会う」