DESIRE ARCHIVES 作:ベロベロベ
色々か作品を書いては挫折、書いては挫折してきました。
という事で今回は完結させる事を目標に書いていきます。
どうぞ宜しく。
輪廻F/方舟は廻る
「おめでとうございます。今日からあなたは"仮面ライダー"です」
人気の感じられない廃墟の中。1人の女性がそう告げた。彼女の視線の先には1人の少年。
彼はニヤリと笑い、女性が差し出した物を受け取る。
「ああ、知ってる」
世界はまさしく危機の渦中。それを救う英雄を、世界そのものが求めている。
故に彼は笑う。俺が必ず救ってみせると。
理想の世界を、叶えるついでに。
▪▪▪
その日、桜井景和は危機に瀕していた。それはまさしく人生最大の危機と言っても過言ではないレベルだ。
「待って、待ちなよ!」
大量の天狗の面をつけたチンピラが彼を囲んでいる。後ろには小さい二足歩行の子犬が裾をつかんでぶるぶると震えていた。
「うるせぇ! そいつはなぁ、うちらのシマのショバ代すっぽかしやがったんだ!」
「ひいぃ、ウチの様な弱小茶屋にそんな金はぁ…………!」
「ここは皆のものだろ!? そんなの払う義務なんて無いだろ!」
「うるせぇよ!」
チンピラの1人が手にした拳銃をぶっ放す。ドォンと渇いた爆音と共に吐き出された弾丸が景和の膝にヒットする。
「痛っ!?」
「ほらほら、どうしたぁ? あたしらに喧嘩売っといてそんなもんかぁ?」
その他のチンピラも一斉に弾丸を放ち、銃弾の雨が景和と子犬目掛けて降りかかる。子犬を庇うように立ち、それを一身に受ける景和。
しかし、直ぐに限界が訪れた。
「ちょ、やめっ、やめて! ヴ、ヴァルキューレ呼ぶぞ!」
「やってみろぉ!」
「………………この!」
景和も腰の拳銃を抜き出し、そして彼女らに銃口を向ける。
しかしそれが限界。ほとんど喧嘩の経験の無い彼と喧嘩慣れしているチンピラでは銃の扱い一つとっても質が違う。
「よっわ。お前そんなんでよく喧嘩売ってきたな」
「うぅ…………」
景和、秒殺。
守っていた筈の子犬に心配され、嗤っていたチンピラ達もあまりの弱さにすっかり消沈してしまう。
「ま、良いか。ほらアンタさっさと財布を……………………お?」
チンピラの足が止まる。まるで何かに阻まれたかの様に。実際それは間違いでなく、何やら有刺鉄線が巻かれた赤透明の壁が彼女の行く手を塞いでいた。
「は?何だこれ!」
それに拳を叩きつけ、彼女は怒る。しかしすぐにその怒りは収まった。
「な、何だあれ!?」
「…………え?」
────それは、唐突に現れた。
この学園都市には様々な姿の生物が存在している。それはロボットであったり、獣の特徴を持つ人間であったり、獣そのものの容姿をしていたり、羽が生えていたり、角が生えていたり。
ある程度の異形は許容される場所だ。勿論、それは景和とて同じ事。彼が所属している部活にも二名、その様な人物が存在している。
しかしそれでも尚、目の前のそれらには驚愕せざるを得なかった。
唐突に現れたからではない。纏う雰囲気が明らかに異常であったためだ。
「ジャ、ジャ、ジャ………………」
一言で言うならば、植物がヒト型になった様な、そんな姿。明らかに異常な存在にも関わらず、まるで山海経の生徒達の様なチャイナ服を着ている事が更に不気味さを加速させる。
「ひぃっ!」
異常性を察知した子犬が逃げ出した。しかしそれを阻むヒト型。
そして、怯える彼の頭を掴み───────握り潰した。
まるでトマトの様に彼の全身が赤く染まる。
「───────え、し、」
気がつけばチンピラ達も逃げ出し、この場に残るのは景和だけ。
謎のヒト型に目の前での『死』。脳が理解を拒み、脚だけを動かす様に命令する。
「センビツームモキョガヅ」
「テンル」
迫るヒト型。逃げる景和。
しかし走れど、走れど、一向に振りきれない。それどころかヒト型の数は増えるばかり。
気がつけば彼の周囲にはヒト型で溢れかえっていた。
「もう、何なんだよ……………………」
壁に追い込まれ、迫り来るヒト型に怯える事しか出来ない。
恐怖という麻薬に犯された脳では声をあげる事すら出来なかった。
「俺、死ぬのかな……………………?」
思い返せばつまらない人生だった。百鬼夜行連合学園に入り、こんな自分でも何かが成せる様にと修行部に入部したまでは良いものの、チンピラにも勝てず何かを成した実感も無い。
精々、募金したりボランティアに参加したりとその程度。それはこの学園都市では余りにも小さく、つまらないものだった。
(はぁ、何か、もう良いや………………)
既にヒト型が彼の頭に手を添えた。
拳銃も落とした彼に成す術は無い。
ただ、死を待つのみ。
《TACTICAL BREAK》
「うわっ!?」
突如としてヒト型が粉微塵に吹き飛んだ。同時に牡牛の様な姿が飛び出す。
牡牛は咆哮をあげながら、チェーンソー型の武器を振り回す。それはヒト型を容易く蹴散らし、あっという間に目の前の敵を肉塊に変えた。
ヘイローと呼ばれる装備で耐久力を大幅に上げた学園都市の人間を死に至らしめたあのヒト型を、だ。
「おい!何ボーッとしてる!さっさと逃げろ!」
「へ?」
間抜けな声を漏らしながらも牡牛の言う通りに逃げようとする景和。
しかし多少蹴散らした所でどうにもならないレベルにまでヒト型は増えていた。
「よっと!」
しかしそれを粉砕していく者が1人。回転するプロペラでヒト型を押し飛ばす彼はパンダの様な様相をしている。
「相っ変わらず、考え無しだねアイツ。まいっか。ほら君、行くよ」
「へ?えぇ?」
▪▪▪
「うんうん。牛さんもパンダさんも頑張ってる頑張ってる! ………………けど、あの人は何をしているのでしょう」
宙に浮かぶ神殿の中で、ナビゲーターのツムリはモニターに映し出された映像を見て顔を顰めた。
その脳内にはあのいけすかない狐の仮面が浮かんでいる。
このままでは彼は
「いい加減脱落してくれないかなぁ…………」
この
「まぁ、良いか。がんばれー! 特に牛さーん!」
▪▪▪
「はぁ、はぁ……。もう、何なんだよ…………!」
景和は肩で息をしながら、地面に座り込んだ。
もう訳がわからなかった。今までチンピラに追い回される事は幾度となくあったが、正体不明のヒト型に襲われた事など無い。ゲヘナやミレニアムならあるのだろうか、と最早現実逃避染みた事まで考えだす始末だ。
「あの、ありがとう」
「うんうん。感謝しなよ~。君みたいな毒にも薬にもならない人間を助けてあげたんだから、さ」
「な………………!」
目の前のパンダが景和の頭を乱雑に撫でる。その声色はわかりやすく彼を馬鹿にしたものだったが、それに怒る間もなくパンダは後方の牡牛に語りかける。
「ほらぁ、見てみ? スコア現状俺がトップ! さっき言ってた事もっかい言ってみ? はじゅかちぃ~」
「…………はっ。今に見てろ。すぐに追い抜く」
パンダの煽りに牡牛が睨む。この二人の関係はお世辞にも良いとは言えなそうだ。
「…………あのっ! あなた達は何なんですか!? これは一体どういう事ですか!?」
景和は渦巻く疑問を彼らにぶつける。
それに答えたのは牡牛の方だった。
「この世界は、じきに終わる」
「…………はぁ?」
「さっさと隠れてろ。まだまだ来るぞ」
地面が揺れる。大量のヒト型と共に巨大な化け物がその姿を現した。
「うおっ!? 何だあの亀!?」
パンダの発言通り、それは亀の様だった。背中からは中華風の城が生え、その周囲には様々な木々が生い茂っている。
それは咆哮と共に蔦を伸ばし、牡牛とパンダに襲いかかった。
「くっ………………!」
「うわぁ!」
牡牛は避けたが、パンダは捕まった。その姿を見て即座に行動をとった牡牛とただ眺めていただけのパンダ。
その差を一言で表すならば、『経験』だろう。
「ちょっ! おいふざけんな!」
「ちょ…………!」
「ほっとけ! 逃げるぞ!」
咄嗟に両腕を伸ばした景和の肩を掴み、牡牛は走り出す。
パンダが視界から外れた時、肉が潰れる音が聞こえた。
《MISSION FAILED》
微かにそんな電子音が聞こえる。視界の端に赤黒い液体が見え、景和の表情は青ざめた。
「よし、これで一人脱落だな」
一方の牡牛はほくそ笑む。余り良い印象は受けなかったとは言え、仮にも人一人が死んだというのにその態度。景和には到底容認出来るものでは無かった。
「何笑ってるんだよ! 人が死んだんだよ!?」
「他人の心配してる場合か? ………………まだまだ多いぞ」
「……………………!」
彼の言う通り、周囲には多数のヒト型が蠢いている。
その中の大部分は二人に目を付け、拳を構えている。
「隠れてろ!見つかってもとにかく逃げ回れ!」
チェーンソーを振り上げ、牡牛はその集団へと突き進む。
彼とは異なり戦う手段を持っていない景和はただ彼の言う通りにするしか無かった。
「ひいぃ!」
そんな折、一人の少女を見た。彼女の制服は景和のものとは異なるクリーム色の制服。お嬢様学校として名高いトリニティ総合学園のものだろう。
どうしてこの百鬼夜行の自治区に居るのかは知らないが、少なくとも状況は景和と同じ様だ。
「ジャジャジャジャ」
ヒト型が彼女目掛けて拳を振り上げる。
咄嗟に、景和は走り出した。
「やめろぉ!!」
「ジャ!?」
タックルでヒト型を吹き飛ばし、少女の手を掴んで駆け出す。
とにかくどこか安全な所を目指して走る。
後方で大亀が暴れている音がするが振り返る暇も無い。
「はぁ、はぁ…………。ここ、なら…………」
走って逃げて息も絶え絶え。膝小僧を両掌で掴んで、地面目掛けて空気を吐き出す。
ゆっくりと顔を上げれば、そこは景色が一望出来る高台だった。
どうやら相当な距離を走ってきたらしい。
「百鬼夜行が…………!」
「ひどい……」
そこは地獄と化していた。ヒト型と大亀によって景和達が過ごしてきた日常が完膚なきまでに破壊されていた。
見れば百花繚乱やヴァルキューレの面々が赤い壁に阻まれ、途方にくれている。
「………………」
景和は途端に今までの自分の人生が恋しく思えてならなかった。さっきつまらないと吐き捨てた人生も、思い返せば悪くなかったのだと思えてくる。
そしてそう思った時には既に手遅れなのだろう。
淡く儚い桜の様に、彼という存在も美しいと感じた時には既に散りかけている。
「あっ、来てる!」
「え…………?」
ヒト型達が規則正しい呻き声をあげながら迫っている。
既に投げやり気味な景和だがそれでも逃げようと思うのは生物としての防衛本能だろうか。
とにかく足を動かそうとしたその時。
「きゃあ!!」
「うわっ!」
木製の足場が容易く崩れた。それは後ろのヒト型の仕業ではなく、遠くの大亀の口から吐き出された光線によるものであり、それにより景和達は不快な浮遊感に襲われた。
身体が上下反転した状態で景和は目を閉じる。もう助からない。彼は再び、死を覚悟した。
「よっ、とぉ!」
どこからかエンジンの音が響く。気づけば二人は地面に投げ出されていた。しかし不思議と痛みは少ない。
辺りには煙と瓦礫にまみれている。さっきとは違う場所ではある様だ。
「よう、無事か?」
立ち上がれば、目の前には一人の少年が赤いバイクにもたれ掛かっている。紺色のサバイバルスーツを着ており、年は景和と同じくらいだろうか。
その表情は自信に満ちており、この惨状への危機感など微塵も感じさせない。
「えっと…………、助けてくれたの?」
「ああ。ま、お前じゃなくてそこの女子を見つけたからだけどな」
「ああ、そう……」
少年は景和の肩を叩き、微笑む。
彼はとにかく余裕に溢れていた。女子の手を取り、彼氏いるの?などと聞いている。
現状を理解していないかの様に見えるが、その実迫り来るヒト型にもしっかりと視線を向けている。
「やばいよ! 早く逃げよう!」
「逃げるって、どこに!? もう、囲まれてる!!」
景和の言う通り、周囲はヒト型でぐるりと囲まれている。慌てる二人。しかし少年はただ笑みを漏らすだけ。
「騒ぐな、大丈夫だから。諦めなければ、どうにでもなる。今も世界も変えられる」
景和は少年を見る。しかしそれは決してヒーローを見る表情ではない。この状況で言うに相応しく無い妄言に対する嘲りの表情だった。
「俺さ…………なんとなく思ってた。部活楽しんで、勉強して、就職して、結婚して、そうやって幸せに生きていくんだって。それが当たり前なんだろうなって。
でも、いつか突然こんな風に簡単に世界は壊れるんだ。見なよ、この現状。もう百鬼夜行は終わりだよ。俺の学力じゃ編入試験も受からないだろうし。
…………大体どこに逃げるの。もう、終わりだよ」
景和は瓦礫を見つめながらそう漏らす。そこは彼が気に入っていた茶屋。しかしもう見る影もない。
迫る怪物。戦闘力も手段も無い彼が諦めるのは必然と言えた。
「そんな事無いさ、心配すんな」
「え?」
「恐竜が絶滅したって、世界は再生した。トリニティもそうだ。紛争ばかり繰り返してき三つの分派も手を取りあって再生した」
「それ、随分昔の話でしょ…………?」
「変わらないさ、どんな時でも。だからこんな世界は終わらせよう。もう一度、やり直すために」
「やり直す…………?」
少女の呟きには答えず、彼は前を見据える。
大量のヒト型が迫るこの状況でも彼は退かない。自信に満ちた表情そのままに、ポケットから道具を取り出した。
それは、リボルバーの様な装飾があしらわれた白い道具。
見れば彼の腰にはベルトが巻かれていた。
「行くぜ」
《SET》
重く低い電子音が響く。それは先ほど牡牛が使っていたチェーンソーと似た音声。
彼の右には、赤く縁取られたMAGNUMの文字が浮かんでいる。
「変身」
右手の指で音を鳴らし、彼は不敵に微笑んだ。そしてベルトに取り付けた
赤い弾丸が幾つか発射され、ヒト型を数体吹き飛ばす。
そして戻ってきたそれらはMAGNUMの文字を砕く。そこから形成された鎧が彼の上半身に取り付けられた。
同時に降りてくるのは白い仮面。まるで妖の類いを思わせる様な、狐の面だ。
《MAGNUM》
《READY…………FIGHT!!》
「「狐…………!?」」
その姿は学園都市全土を見渡しても、まさしく異様と呼べる。
上半身を白いアーマーで覆った彼は手を持った銃をヒト型に突き付け、宣言した。
「さぁ、ここからが
▪▪▪
《MAGNUM SHOOTER 40X》
電子音と吐き出される弾丸がヒト型、"ジャマト"を貫いていく。
少年、"仮面ライダーギーツ"は見渡す限りに広がるジャマト達の頭上をアクロバティックに飛び越え、そしてまた銃を撃つ。
言ってしまえば非常に単純かつ明快な動き。しかしそれは間違いなくベテランの粋に達しており、とても真似できる物ではない。
実際ジャマト達はされるがままであり、全くギーツに太刀打ち出来ていない。
『ジャジャァ!!』
一対一ではとても勝ち目が無い、とそう判断したらしい奴らはある程度の統制を組みながら襲いかかる。
まるで香港映画の様な動き。その中にはしっかりとした意図が汲み取れ、ギーツの動きをある程度制限出来るものだった。
「へぇ、やるねぇ。
──────けど、甘い」
奴らの動きは悪くはなかった。が、良くも無い。『ある程度』の動きでどうにかなるほど、彼は弱くは無い。
幾度となく潜ってきた修羅場の中に、この程度の状況は数えるのも億劫な程に見てきた。
「よっ、ほっ、よっと!」
繰り出される体術の数々。それらを軽々避けながら、更にはカウンターまで。
悲鳴をあげながら転がるジャマトに銃弾を三発。爆散した際の煙が晴れれば、そこには巨大な亀型のジャマトが咆哮をあげて進撃していた。
「よぉ、バッファ! 頑張ってるな!」
「ギーツ!? …………はっ! お前、今さら何をしてる。もうスコアはひっくり返せない!」
「それはどうかな………………?」
亀ジャマトから逃れつつも、ヒト型のジャマトを堅実に撃破していた牡牛、バッファは遅れてきたギーツを嘲笑う。
しかし彼は仮面の下で微笑みを絶やさない。
俺が勝つことは既に決まっている、とでも言いたげに銃を変形させて構えた。
スコープの中には亀の背中が写っている。
放たれた弾丸も寄せ付けず、奴は進む。
「さっすが鉄壁の要塞。万里を統べるだけはある。じゃ、こいつの出番かな」
ギーツは懐から赤いバックルを取り出した。それはグリップが取り付けられている。
それは先ほど彼が乗っていたバイクのものにそっくりだった。
マグナムバックルを取り外し、同じ箇所にそれを取り付けた。
《SET》
音声と共に出現するBOOSTの文字。グリップを捻れば、バックルから発生した炎をよってそれが砕け、赤い鎧となってギーツの上半身に取り付けられた。
《BOOST!!》
《READY………………FIGHT!!》
「切り札は俺の手の中に、てな」
籠った電子音と同時に飛び降りればそこには先ほどのバイクが。
そのエンジンをふかし、ギーツは亀型ジャマトへと突撃していく。
「どけバッファ!!」
「あぁ!? おい、お前っ…………」
バッファは地面を転がりギーツを避ける。そんな彼を一瞥し、ギーツは進む。
群がるヒト型を蹴散らしながら、豪快に侵入する。
大亀の口の中へ。
「は!?」
バッファは驚愕の声を挙げ、また遠くでみていた景和達もまた状況を端的に示す言葉を漏らす。
「「食べられちゃった…………」」
「アイツ、まさか!」
奴がこのまま終わる訳は無い、というのはこの中ではバッファが一番よく知っている。
つまり、ギーツは討伐不可能と言われたラスボスを倒す手段を持っているという事。
もうバッファには察しがついていた。
「城ってのは内側から崩れるものだ。昔からな」
言えば至極単純。
外から崩せないのなら、体内から。幾ら外皮が固くとも、内側なら柔いだろう。
それが彼の考えていた事である。
そしてそれは大当たり。そこらに適当に攻撃を加えるだけで、彼は確かな手応えを感じていた。
大亀は苦しみ、呻きを漏らす。
彼が城の外壁を突き破り外に出た頃には大亀は苦しみで動けなくなっていた。
「よし、これでフィニッシュだ」
ギーツはバイクから飛び降り、マグナムバックルを左側のスロットに装填、そしてベルトのスイッチを押し、それを180度回転させた。
その時、ジャマト達から必死に逃げ回っていた景和達が同じ場所にたどり着いていた
《REVOLVE ON》
音声と共にリングが出現、ギーツを浮かせ、彼の身体を同じ様に回転させる。
するとどうだろう。鎧と同時に頭と脚もまた移動した。
頭部は脚へ脚は頭部へ。それは完全に人体構造を無視した動き。
《GET READY FOR!!『BOOST&MAGNUM』!!》
「えええええぇぇぇぇぇぇ!!?」
景和は思わず叫び声を挙げる。腰を抜かさなかったのは『あり得ない』の連続で少しでも耐性がついていたからだろうか。
そんな彼を一笑し、ギーツはブーストバックルのグリップを捻る。
《BOOST TIME!!》
エンジン音と共に下半身に熱が充満していく感覚を感じながら、ギーツは飛び上がる。
後方に控えていたバイクは狐の様な形へと変形し、遅れて飛び上がった。
大技が来る。それは大亀もまた察した様で苦しそうに呻き声をあげる。
しかし、それだけ。熱を纏いながら迫り来るギーツをどうにかする手段などもう持ち合わせていなかった。
《MAGNUM・BOOST!!GRAND VICTORY!》
ギーツが大亀を蹴り砕く事は、最早必然だった。
▪▪▪
《MISSION CLEAR》
「くそっ!!」
その音声が流れた瞬間、バッファはチェーンソーを投げ捨てた。
スコア表を見ずとも結果はわかりきっている。勝者はあのいけ好かない狐、ギーツだ。
何せ攻略不可能と事前に言われたラスボスを倒してみせたのだ。このゲームの目的から考えても、彼を勝者に据えるのは道理と言える。
「覚えてろ、ギーツ…………!」
《RETIRE》
次は必ず。そんな闘志を残し、バッファは消えていった。
▪▪▪
「ちょっと、待ってよ!これは、君は一体何なんだよ!!」
「んー……、ちょっと待って?」
「え?」
直後、ベルトに装填されたブーストバックルが煙を吹き出しつつ、勢いよく発射される。
それは景和をスレスレで避けながら、どこかへと吹っ飛んでいく。
「俺はギーツ。仮面ライダー、ギーツだ」
「仮面ライダー…………?」
「ほら見てみろ」
景和は少年が指差した方向へと顔を向ける。そこには転がる瓦礫が光の粒子となり、そしてそれが建物を構築していくという、信じがたい光景が広がっていた。
それに対する疑問を投げ掛けるよりも早く、少年は告げる。
「始まるぞ、新しい世界が」
鐘の音が響く。
それは新世界の到来を告げる音色か、それとも──────
▪▪▪
「景和くん! 景和くん!」
「ふぉえ………………?」
桜井景和は布団の中で目を覚ました。
周りには暖かな朝陽に照らされた畳が広がっており、目の前には桃色の髪をした少女、
「ほら、朝ですよ。起きてください」
「ん…………、ミモリ……?」
「はい、そうですよ。ほらほら、早く起きないと先輩としてカエデちゃんに示しがつきませんよ」
「…………あれ?百鬼夜行って、壊滅しなかった?」
「…………はい?」
景和は寝ぼけた頭で懸命に思い返そうとする。しかしそれはあっさりと霧散してしまった。
「景和君、悪い夢でも見たんですか?」
「いやぁ…………?まぁ、良いか」
ミモリは朝食の準備をしてくる、と部屋を出ていく。
景和は立ち上がり、顔を洗おうと洗面所へ向かった。
「───おめでとうございます!!」
「…………へ?」
水で顔を洗い流した直後。透き通った女性の声が響き渡る。
顔を上げるとそこは鏡。しかしその中には見知らぬ女性が写り混んでいた。
「…………えぇ!? 誰!?」
「厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました」
彼の疑問に答える事なく、彼女は二歩進み、手に持った箱を手渡す。
そこには見知らぬ機械と黄緑の装置が一つ。そこには狸の様なアイコンが描かれている。
「あの、人違いじゃ…………?」
「いいえ?あなたは確かに選ばれました。今日からあなたは"仮面ライダー"です!」
景和は手渡された箱の中身を見つめる。そしておもむろに、黄緑の装置へと手を伸ばした。
「───────────!!!!」
瞬間、彼の脳裏に甦る"記憶"。百鬼夜行連合学園は瓦礫の山と化し、人が死に、化け物が溢れ、そしてそれらを蹴散らしたのは────
「俺が、仮面ライダー…………?」
時を同じくしてトリニティ総合学園、大聖堂。
誰も居ないガランとしたその中で一人の少年は不敵に笑う。
彼は試練を乗り越え、神へと至った。そしてまた人へ堕ち、再び這い上がる。
それは必然。宙に投げたコインが手の中へと落ちる様に、全ては予定調和。彼が理想を叶える、その日まで。
これもまた通過点に過ぎない。
しかし言わねばなるまい。仮初めとはいえ、彼はこの世界の創造主。これからこの世界に暮らす人々に、そしてまた新たに試練を共にする仮面ライダー達に。
「ようこそ。『俺の世界へ』────」
因みに私はギーツではタイクーン。
ブルアカではチヒロ推しでございます。
チヒロは出るかな?