DESIRE ARCHIVES   作:ベロベロベ

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予定とは往々にして上手くいかないもの。
いやマジで難産でした。



虚誕Ⅱ/ゲームと廃墟と先生と

虚誕Ⅱ/ゲームと廃墟と先生と

「何でさぁーー!?」

 

手狭な部屋に響き渡る絶叫。それは小柄な体躯から出たとは思えない程の大きさでガラスや机を小刻みに振動させる。

両隣にいる少女と女性、目の前に仁王立ちする少女、そして何故か近くに置かれているロッカーまでもがビクリと震えた。

 

「ちょっとモモイ! 急に大声ださないで!」

「いやだ!!」

 

モモイと呼ばれた金髪に桃色の猫耳ヘッドフォンをつけた少女は紺色の長髪の少女を睨み付け、彼女の言葉を拒否する。

その眼光は鋭く、まるで理不尽に対抗する反乱軍を彷彿とさせる。

 

「私達は絶対負けない! 例えそれがミレニアムの生徒会、セミナーであっても!! そうだよね、ミドリ! 先生!」

「う、うん……」

「あ、あはは……」

 

モモイは2人の腕を掴んで立ち上がる。モモイのよく似た、妹のミドリは控えめながらも同調する。

 

そしておおよそこの場所に不釣り合いな存在、先生は困った様な笑いを溢した。

「私達は断固として抗議するよ!強い者が弱い者から搾取するなんて間違ってる!革命だー!」

「な・に・が ! 革命よ!」

「ムギューー!!」

 

紺色の少女がモモイの頬を両サイドから強く引っ張る。まるでお餅の様に長く延びたそれを指の腹で弄くりながら、早瀬(はやせ)ユウカは声高に叫んだ。

 

「私達が行っているのは、あくまでも正当な行為よ! 何の成果もあげられず、規定人数にすら満たないこの部活に最後通告を送るのは、そんなにおかしい事かしら!?」

「ユ、ユウカ……、ちょっと落ち着いて、ね?」

「うぅ、先生……。はい、すみません」

 

先生の呼び掛けには素直に応じ、手を離すユウカ。

彼女にとって先生とは少々、否、大分だらしない面を持ちながらも非常に頼れる大人である。

既にいくつもの事件を解決し、あの七囚人の狐坂(こさか)ワカモまでもを在り合わせの人材で鎮圧した経歴を持つ。

ユウカはその場において彼女の指揮下で奮闘した事もあり、彼女の前では出来る限り自分を良く見せようと思う程度には尊敬の念を抱いている存在である。

 

そんな大人の前で悪役の様な立場に置かれてしまっている事はとても恨めしい事であり、その原因となったモモイ、ひいてはゲーム開発部を睨み付ける。

 

「なにさ! ちょーっと人数と実績が足りてない位でさー!」

「ちょっとじゃない! 大分足りてないわよ!

………………はぁ、本当に諦めが悪いのね。廃部を食い止めるために、わざわざ『シャーレ』まで巻き込むなんて」

 

ユウカは腹に貯まった鉛を吐き出す様な重い溜め息を吐きだす。実際問題、これはかなり頭の痛い案件であった。

 

「わかってるの? シャーレは……」

「私達生徒が困った時に手を貸してくれる存在、でしょ? だから今手を貸して貰ってるんじゃん!」

 

モモイの言い分はなんら間違ってはいない。寧ろ正しい。だからこそ厄介なのだ。

 

連邦捜査部、『S.C.H.A.L.(シャーレ)』。生徒間、及び学校間で発生するトラブルを迅速に解決するために連邦生徒会長が造り上げた組織。

そして目的のためならば各学園の自治区への介入、先生が希望するあらゆる生徒達を部員として加入させる事も可能な程の、非常に強い権限を持っている。

 

つまる所、間違ってもモモイ達の様な廃部寸前の弱小部が絡んでも良いような組織ではない───ではあるのだが、先生という人柄を知っている者ならばその様な生徒も決して見捨てないのが彼女であると知っている。

 

とは言え、ユウカには立場というものがある。例え先生が来たからといって「はいそうですか」と意見を撤回する事など出来はしない。

 

「残念だけど、この決定を覆す事は出来ないわ! 例え相手が先生であろうと、連邦生徒会長であろうと! 部活の運営は概ね各学校に任せられてるんだから!」

 

ゲーム開発部の廃部は最早決定事項。それを食い止める方法などありはしないのだとユウカは告げる。

しかし、モモイはそれに待ったをかけた。

 

「言ってたでしょ、部員が規定人数に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果をだせれば良いって!」

「確かにそうね。でも残念ながらあなた達はそのどちらも満たせないまま数ヶ月が過ぎてる……。つまりもう信用が無いのよ。他の部はきちんと守っているのに、例外なんて認められないわ」

 

ユウカはモモイに対して若干心を痛めつつ、それでも心を鬼にして告げる。

彼女は『結果』をこそ尊ぶミレニアム、そのセミナーの会計だ。あらゆる予算管理を任せられている彼女は他の生徒から冷ややかな眼差しを向けられる事もある。

悪役には慣れている。

 

「だったら示せば良いんでしょ!」

「え?」

「えぇ!?」

「どうしてミドリが驚くのさ!?

ふふ───まあ良いよ! 私達には切り札があるんだから! 雲を掴む様な話を実現させる、切り札が!」

 

確かな自信に満ちた目で、モモイは高らかに宣言した。

 

▪▪▪

 

ミレニアムサイエンススクール・セミナー執務室。

ガラスの窓から見える都市風景に背を向けながら、彼女はパソコンのモニターをじっと見つめる。

そこには多数の文字や記号が列をなしている。数字、漢字、平仮名、グラフ。

それらが形作るデータは理系の才能が集まるミレニアムでも理解出来る人間は限られてくるだろう。

 

例えば明星(あけぼし)ヒマリ。『全知』の称号を持ち、学園屈指のハッカー集団の長にして現在はキヴォトスにおける不可思議を解明しようとしている彼女ならば、これを読み解く事は可能だろう。

逆を言えば、そのレベルでないと不可能という事でもあり、しかしそれでも万全を期しておくのが、調月(つかつき)リオのやり方であった。

 

ユーモアの欠片も無い徹底した合理主義。例え汚名を被る事になろうとも学園のためであれば躊躇いなく実行するその様はヒマリ曰く『下水道』。決して好んで近づこうとは思わないが、それでも不可欠である事に違いは無い。

 

そんな彼女は今、モニターを睨むように見つめながらその脳を回転させていた。

 

(近頃キヴォトスで頻発している謎の現象。原因不明の失踪事件。そして、記憶が抜け落ちたかの様な違和感。───これらの正体は一体何?)

 

まるで鉄仮面の様な表情で、リオは思考を続ける。何があろうと変わる事は無いのではないかと思わせる程の顔の下には、確かな情熱が秘められている。

それは渇望。ミレニアムサイエンススクールを、このキヴォトスを守る事は彼女にとっての生きる理由に等しい。そして、それを成せるだけの能力を彼女は持ち合わせている。

 

故に彼女は動く。そこに相談の2文字は存在しない。

近頃出来たシャーレとやらも、彼女にとっては頼る価値のあるものではない。

 

(例の条約も間近。ここはユウカ達に負担をかけるべきでは無いし、C&Cも現在任務中)

「トキ。任務よ ……ええ。廃墟で合流しましょう」

 

ただ最善の未来を導き出すために最も効率的な手段を取るだけだ。

 

▪▪▪

 

「ジャマーエリアが確認されました。皆さんはすぐにミッションに挑んで貰います」

「へぇー、今度はどんなゲームなの?」

「あの~、出来るだけ危険の少ないやつでお願いいたしますね……?」

「そんなの無いよ……」

 

6人のプレイヤー達が神殿内に集う。

浮かび上がったホログラムには今までよりも広い範囲が示されている。

以前のスランピアよりも広いマップである事からまた殲滅系だろうかと景和は思考する。

 

「それでは、今回の舞台へと参りましょう」

 

神殿内の風景が描き変わる。星々が煌めく天から瓦礫と化したビルや千切れた配線が散らばる廃墟へと。

そこは一言で言うならばポストアポカリプスの様な、退廃した世界だった。

元々ミレニアムはゲヘナやトリニティと比較しても相当に進歩した外観を有している。その中でもここはその更に先、進歩の果てにある終末を表している様でどこか不気味な雰囲気を放っている。

 

その風景に真っ先に反応を示したのは、黒崎コユキであった。

続いてヴァルキューレ公安局の尾刃(おがた)カンナ、英寿と続く。

 

「ここはミレニアムの廃墟、ですよね?」

「廃墟?」

「確かにそれっぽいな」

 

ミレニアムサイエンススクールの廃墟と言えば、キヴォトスの間では相当に有名なオカルトスポットだ。

何らかの超常現象が発生すると噂の場所であり、連邦生徒会が直々に進入禁止命令を出している程だ。

 

「こんな所で一体どんなゲームを……?」

「それでは説明致します」

 

カンナが発した疑問に同じく転送されてきていたツムリが声を発する。

ナビゲーター同行という今までに無い事態に、景和は驚いた様な表情を作った。

 

「ツムリさんも一緒なんですか?」

「はい。今回は私も同行しなければならない様ですね」

 

まさに不本意といった様子で彼女がゲームの内容を告げようとした、その時。

 

「出られなーい! 何で!?」

「な、なんなのこれ……、訳わかんない……」

「ど、どうしましょう先生……」

「そうだね、参ったな……」

 

複数人の声が周囲に響く。その声はどれも不安や恐怖に満ちている。

 

英寿達はその声の方向へと足を向けた。そこには3人の少女達と1人の女性。

少女達はミレニアムの制服を着ているが、女性の方は連邦生徒会である事を示す服を着ている。

 

「ジャマーエリアに捕らわれた一般人がいた様ですね」

「あれは……?」

「あれれ? 連邦生徒会?」

 

景和とミカが女性の服に関心を示す。声には出さないものの、カンナやホシノ、そして英寿もそれを見つめている。

コユキだけは?を浮かべている。

 

「あれ? 私達以外にも誰かいる?」

「ホントだ! おーい!」

 

捕らわれていた一般人の内、桃色のアサルトライフルを持った少女が近づいてくる。

 

「ねえ! ここから出る方法知らない?」

 

彼女、才羽(さいば)モモイは赤透明の扉を指差し、そう言った。

指の先にあるその壁は、ジャマーエリアを覆ういつものものとは少々異なっている。

近くには小さな円柱があり、上底面には何かを嵌めるための浅い窪みが3個取りつけられている。

 

「成る程、つまり脱出するためのアイテムを探せって事か」

「はい、その通りです。それでは改めてデザイアグランプリ第2回戦、脱出ゲームを始めます」

 

ルールは単純。巻き込まれた一般人を守りつつ、この閉ざされた廃墟から脱出を目指すだけ。

であればやるべき事も自ずと決まってくる。

 

「とにかく進むぞ。ここに居ても埒が明かないからな」

「いやいやいや! ちょっと待ってよ! 何勝手に納得してるのさ!? 何、ゲーム? 何かのイベントなのこれ!?」

 

英寿を始めとするプレイヤー達はこの事態を飲み込む事にそう時間はかからない。

しかしモモイ達ゲーム開発部は別だ。全く未知の出来事に混乱するばかり。

確かに守る対象である以上はある程度説明する必要がある。

 

「まあ、そんなところだ。俺達は君達を守りながらここを脱出しなきゃならない。手を貸してくれ」

「うぅ、どうしましょう先生……」

 

モモイの双子の妹、ミドリは不安げに先生を見つめる。モモイも、赤髪の少女、ユズも彼女を見つめている。

 

「……わかった。君達に着いていくよ」

「助かる」

 

何にせよ、ここに居てもどうしようもないのは確かだ。

多少怪しくとも着いていくしかない。それにこれは先生の勘ではあるが、彼らは悪人である様な気もしない。

 

「ジャ、ジャ、ジャ…………!」

 

靴が砂利を踏みしめる音が全員の鼓膜を揺らす。明らかに奥の方から聞こえたそれを全員が振り向くと、そこには複数のジャマトが視線を向けてきていた。

 

「えぇ!? 何あれ!?」

「うわぁ、来たぁ!」

「ジャマトです! ライダーの皆さん、お願いします!」

 

《SET》

《SET CREATION》

 

ツムリの声を受け、5人がドライバーにバックルを装填する。

遅れてコユキがそれに続き、バックルを操作した。

 

「「「「変身!」」」」「へ~ん、しんっ!」

「……へんしん」

 

《MAGNUM》《BEAT》《GREAT》《DETROIT POWERED SYSTEM。 GIGANT HAMMER!》

《NINJA》《ARMED・WATER》

 

「「おおおお!!?」」

 

一斉に仮面ライダーへと姿を変えたその様を前にモモイと先生、特に先生は大興奮だ。

いつもゲームやテレビの中にしかなかった光景が今目の前に。

その手のオタクとして興奮しないはずがなかった。

 

「……ジュ、ラピ、ラ」

「……え?」

 

その光景にいち早く気がついたのはタイクーンだった。

我先にと死に物狂いで襲いかかってくる中、1体だけ妙にゆったりとした足取りだ。

その様子からはどこか余裕が見受けられる。

 

その余裕の正体を知るのは数秒とかからなかった。

 

「ジュラピラ……、ヘんしン」

「な……!?」

 

どこからともなく取り出したのはデザイアドライバー。その左側に装填したのは全く知らない、未知のバックル。

 

《JYAMATO……!》

 

バックルから茨の生えた蔓が出現し、そのジャマトの上半身を覆い、その姿を変化させた。

まるでそのジャマトをそのまま金属化させたかの様な頭部の左側に開けられた破損風の穴からは緑色の不気味は複眼が見えている。

刺々しいかつ毒々しい姿へと変わったそれ、ジャマトライダーは足を思い切り振りかぶり、地面へと叩きつけた。

 

《JYA-JYA-JYA STRIKE!!》

「危ない!!」

 

鋭い茨がその場の全員に向けて襲い掛かる。タイクーンは全員を守るための壁を即席で作り出した。

 

「ジャマトも変身するのか!?」

 

カンナが変身した仮面ライダー、ロポが戦慄した声をあげる。

ギーツとタイクーンの脳裏に前回の戦いに紛れていたヴルドンナの姿が過った。

異なるのは変身時に使用するバックルと階級。ヴルドンナはビショップ、今回の個体は最底辺のポーンであるという事。

 

「ぐっ!?」

 

ジャマトライダーの拳によってロポが吹き飛ばされる。そこから発生する極太の蔓。

手裏剣と双剣(ニンジャデュアラー)を用いてそれらを切り裂いていくがその勢いは止まらない。

 

《GIGANT BLASTER》

 

タイクーンが出現させた巨大な銀色の銃が火を噴いた。『ギガント』の名を冠するだけあり相当の威力を有するそれを浴びた事でジャマトライダーを怯ませる事には成功した。

しかし、それ以外のジャマト達は元気に暴れまわっている。大量に蠢くジャマト達を見つめ、ギーツはその場を離れようと動き出す。

 

「数が多すぎる! 一般人を抱えてながら戦い続けるのは無謀だ!」

「……そうみたいだね。おじさんは撤退に一票かな」

「はいはいはいはい!! 撤退撤退! 無理ですこれぇ!」

 

後方でジャマト達を殴っていたラビラビが悲鳴をあげる。それが合図となり、ギーツとファルスはモモイ達を連れて奥へと進んでいく。次いでナーゴもそれに続く。

 

「ちょ!? 置いていかないでくださいよーー!!」

「嘘でしょ、もう!」

 

一方乗り遅れたタイクーン、ラビラビ、ロポは変わらずジャマト達を相手取る羽目になる。文句を言おうにも彼らは既に遠くへと行ってしまっていた。

 

「仕方がない、とにかく私達も離れるぞ!」《NINJA STRIKE》

 

風を纏ったロポがジャマトライダーに突進し、その身体を凄まじい速さで斬りつけていく。大きく吹き飛ばされるジャマトライダー。しかし倒すまでには至らない。再び立ち上がろうとするそれに対し、タイクーンが動いた。

 

《GIGANT STRIKE》

 

先程よりも強い密度かつ高威力の弾幕を解き放つ。周囲のジャマトをも巻き込んだその攻撃はその場から撤退するには十分な時間を作り出した。

 

▪▪▪

――side:GEATS

 

「ここまでくれば一旦は安全だろう」

「ぜえー、ぜえー……! もう、何なのあの化け物!」

「うわああああん! もういや! なんでこんな所であんなのに追われなきゃいけないの!」

「あれが廃墟の怪異……?」

 

モモイとユズがジャマトについて疑問を抱き、ミドリが涙目になっている中、英寿は周囲を見渡してそう言った。ホシノやミカは疲れたのか近くの瓦礫に腰かけている。

 

「へえ、シャーレねえ。噂には聞いてたけど、こんな形で出会うなんて思ってなかったよ」

 

ホシノが先生に向かってそんな言葉を投げかける。一見和やかながらどこか掴みどころのないそれにも彼女は笑顔で応じる。

 

「うん、よろしくね。えっと君は……」

「うへ、小鳥遊ホシノだよー。よろしくね、先生」

 

差し出された先生の手を握り返し、ホシノは彼女を興味深そうに見つめる。特に注目したのは頭上だ。キヴォトスの人間ならば誰しもが持っている筈のヘイローが存在していない。それは彼女が『外』からやってきた人間である何よりの証だった。

 

「それで?ヘイローの無い人がこんな物騒なとこで何してたのさ」

 

彼女のその疑問は至極真っ当なものだ。ヘイローが存在しないという事は肉体強度が生徒達と比べても数段以上に脆いという事を意味する。銃弾一発で死にかねない様な存在が大した護衛もつけずに出歩くなど自殺行為も良い所だ。一応連れている生徒もいる様だが、彼女達が治安維持組織並みに戦闘慣れしているとはとても思えない。

 

「えと、先生はその、私達が連れてきたんです……。私達の部活がピンチで、それで……。そしたらまさか、こんな事になるなんて……」

 

ミドリが気まずそうに告げる。無くなりかけている自分達の居場所を守るために手を貸して貰いにきたのだと。

 

「成程ねえ……。居場所、か」

「…………」

 

シャーレの権限があれば他校の自治区にも介入が可能だ。それを利用すればこのような廃墟にも合法的に進入出来る。

 

ホシノとミカ、そして少し離れた位置にいる英寿も彼女達を咎める事はない。ただ思うところがあるのか、少し俯くのみ。

 

「ま、入っちゃったもんはしょうがないよね。よーし、おじさん達が守ってあげよう!」

「あ、ありがとうございます!」

「おじさん……?あの人高校生だよね?」

 

多少なりとも心を通わせた所で英寿達は集まって今後の方針を会議する。

脱出のためのアイテムを探すにはある程度のヒントは不可欠だ。

 

「ダンジョン探索といえば、まずはマップを見つけなきゃ!」

「マップならここにある」

 

モモイの発言を受けて、英寿が取り出した携帯端末には廃墟の地図が映し出されている。しかし肝心の目的地がわからないのだ。

 

「じゃあ、コンパスかな。ゼルナの伝説とかでは定番のダンジョンアイテムなんですが……」

「あ、なんかそれっぽいのはここにあるねえ」

 

ホシノが指を差した先には謎の丸く平らな機械が。それを英寿が手にすると彼の携帯端末のマップに一点の光が灯った。

 

「これが目的地だね!」

「ちょっとお姉ちゃん、そんな適当で大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫! さあ行こう!」

「あ、ちょっと!」

 

携帯端末を奪い取り、駆け出すモモイの後をミドリが追いかけていく。

 

「おい!……俺達も行くか」

 

あのマップがヒントになるのは間違いない。彼もまた2人の後を追い、残る面子も続いていく。

 

目的地は廃墟の奥に位置していた。途中にも大量に襲い掛かってきたジャマト達を蹴散らしながら英寿達はどんどん先へ進んでいき。意外な程に早く近くまで辿り着く事が出来た。

後は目の前の扉をくぐるだけだ。

 

「凄いね、先生! なんだかすっごく戦いやすかったよ!」

「ああ。こんなにスムーズに倒せたのは初めてだ」

 

ミカと英寿が先生を絶賛する。特に何度もジャマトと戦ってきた英寿はその凄さをより噛み締めている。

彼女らは迫るジャマトを先生から指揮を受けて撃退していた。6人と多くの敵が入り乱れる戦闘で飛ばされる彼女の指示は見事の一言。戦場帰りであると言われれば納得してしまうレベルの精度を誇っていた。

 

「そんな、私はちょっと手助けしただけだよ。むしろあれだけの数を正確にさばいた君達の方が凄いよ」

「確かに、すっごく強かった……」

 

先生の賞賛にモモイが同意する。お世辞でもなんでもなく、ミカやホシノの戦闘力は凄まじいものだった。まるでゲヘナ学園の風紀委員長、ヒナやミレニアムの最強武力集団、C&Cに迫るのではと思ってしまう程には。

そしてそれに劣らない戦闘力を英寿が持っていたのも驚く要素であった。少なくとも彼は戦闘方面で話題にあがる事は無い人物であったためだ。

 

「それにしても、随分と英寿はその武器に慣れてるんだね」

「まあな。それにこれだけじゃない」

 

加えてジャマトライダーに出くわさなかったのも大きいだろう。

 

歩を進めていく中でミドリが疑問を口にだす。

 

「それにしても……連邦生徒会はあのジャマトってのがいるから、廃墟への立ち入りを禁じてたのかな?」

「どうなんだろ……。少なくとも連邦生徒会が隠していた兵器――とかではなさそうなんだよね……」

 

「……ん?」

 

唐突にユズが声をあげた。それによって全員の足が止まる。

 

「どうかした? ユズ」

「あ、いえその……何か声がした様な」

《才羽モモイ、資格無し》

「へ!?」

 

突如として呼ばれた自身の名前。しかも呼んだ声は明らかに人間のものではなかった。

 

「何で!? 何で私の名前知ってるの!?」

《聖園ミカ、資格無し》

「え、今度は私?」

 

《小鳥遊ホシノ》《花岡ユズ》《才羽ミドリ》

《資格無し》

 

その場に居る全員の名前が淡々と読み上げられていく。

 

次に名前を呼ばれたのは、先生だった。

 

《資格を確認しました。入室権限を付与します》

 

「え!?」

 

先生と一同は驚愕の声をあげる。はっきり言って訳が分からなかった。資格とは?この声は?何故先生が?

そんな疑問には答える事なく、音声は淡々と何かを進行していく。

 

《同行者6名を先生の『生徒』として認定、資格を与えます。……承認されました。下部の扉を開きます》

「下部の扉……?」

 

全員が下を見る。そこにあるのはただの床。ありえない、と視線を戻した次の瞬間。

 

ガチャン☆

 

床が落ちた。

 

「うわわわっ!?」「落ちる……!?」「マジか!」

 

襲い掛かる浮遊感、同時に全身にのしかかる星の重み。

重力に忠実に、彼女らは落ちていく。

 

「いってて……。お前ら、無事か?」

「はい……」

「うへ、腰が~!」

「そうか。先生、あんたは?」

「うん大丈夫だよ。ありがとう英寿」

「何、お安い御用だ」

 

英寿は咄嗟に抱きかかえていた先生を降ろし、全員に問いかける。流石はキヴォトスの住民というべきか、誰もが多少の痛みを訴える位でピンピンしている。

 

「……何、あれ?」

「あら」

 

ミカの声に全員の視線が動く。そして目を見開いた。その場に佇んでいた赤と黒のゴスロリチックな衣装の少女に───、ではない。

正体不明の人物。そんな彼女が意識にも入らない程に、彼女らは釘付けになっていた。

 

そこには柔らかな光が降り注がれていた。その中心には大きな椅子――というよりは玉座の様な印象を受ける――が鎮座している。

そこで眠っている少女が1人。彼女は一糸纏わぬ姿をしているが不思議と妙な感じはしない。それどころかまるで有名な彫刻家が拵えたかの様な美しさと神聖さが同居している様な、そんな印象を受ける。

そして今の彼女は眠っているというよりもまるで生命活動を停止させている様にも見える。彼女のその様子からは生気というものが全く感じられない。

 

「あれ、は……?」

 

とても同じ人間とは思えない。彼女らはゆっくりとそれに近づいていく。そして、足を止めた。

 

「これは……!?」

 

英寿が声をあげる。それは今までの彼には似つかわしくない程に戦慄した声。

『これはヤバい』と、本能が訴えかけてくるのがわかった。

 

「ジャジャ!!」

 

ジャマトが一気に乱入してくる。静かであり荘厳だった雰囲気に害意が充満していく。

英寿達がバックルに手をかけたその時。

 

「誰ですか?」

 

声が響いた。それは今まで停止していた少女の声。

ジャマトの動きが止まる。

少女はゆっくりと体を起こし、目を開く。

 

敵意に濡れた、紅色の瞳を。

 

「何者ですか? 私の……『王女』の眠りを妨げる者は」

 

▪▪▪

――side:TYCOON

 

「ここ広すぎ……、皆どこ行ったんだよ……」

 

景和、カンナ、コユキ、ツムリの4人は瓦礫が散らばる廃墟を彷徨い歩いていた。

様々なビルや看板が崩れている事からここはかつてはそれなりに発展した都市であった事が伺える。そうでなくともキヴォトス屈指の勢力を誇るミレニアムの自治区内なのだから、当然その範囲は広大だ。

一切のヒント無くしてでは攻略など不可能である事は間違いない。

 

「一体どうやって脱出しろと言うんだ……」

「ねえ、何かヒントとか持ってないの!?」

 

ツムリに迫るコユキだが、彼女は困った様な表情を作るのみ。あくまでも自身はナビゲーターであり、ゲームの核心に迫る様なものは与えられていないと言う。

 

「それにジャマトまで変身してるし、またジャマトが紛れ込んでるなんて事は……」

「それはあり得ません。今回はゲームマスターがキチンと調査をしています。前回の様な事はもう起こりません!」

「す、すみません……」

 

凄む彼女に思わず景和は仰け反る。

 

結局一切の進展が無いまま無意味に時が過ぎていくと思われたその時。景和が所有している携帯端末が着信音を鳴らしだす。

 

『不測の事態の様だな、仮面ライダー諸君』

「ゲームマスター!」

 

ノイズがかかった様な不気味な声。それに対してツムリが反応を示す。

この電話の向こうにゲームマスターが、デザイアグランプリを運営している者がいる。その事実を認識した途端に3人の表情に緊張が走る。

 

『まず伝えておこう。今回変身したジャマトはプレイヤーの中に潜んでいた訳ではない。安心してほしい。ジャマトは進化する生き物だ、この様な事態は珍しくはあれどあり得なくはない』

 

しかし不測は不測。想定出来ていなかった事態である事に違いはない。彼はそれを運営の落ち度とし、救済措置を用意するという。

 

『ジャマトライダーに対抗できるアイテムを人数分用意した。今転送の準備をしている。もう少し待っていてくれ』

 

そう言って電話は切れた。

顔を見合わせるプレイヤー達。確かに救済アイテムはありがたいが、それ以前に立ちはだかっている脱出へのヒントは一切得られなかった。

 

溜め息を吐いて辺りを見渡していると。景和は何かを発見する。

元は何かの店だったであろう廃屋の中にある、小さな機械。4人はそれに近づいていく。

 

「これは……?」

 

それに触れようとした瞬間。

 

「ケトラサ、オズキョチャ!!」

 

唐突に出現する2体のジャマト。その瞬間廃屋の扉は閉まり、カチャリと施錠されてしまう。

まるでアイテム獲得を妨害する中ボスの様な雰囲気を感じさせるのは内1体が古き良きRPGに登場する様な恰好をしているからだろう。

 

「これは、罠か?」

「いや、多分正解ですよ。俺達をクリアさせない気だ!」

 

変身し、立ち向かう景和とカンナ。一方のコユキはあろうことかツムリの後ろに隠れている。

 

「ちょっと! 何してるんですか、戦ってください!」

「無理です無理です! 私じゃ絶対勝てませんもん!」

「ええ……?」(一体誰ですかこんな人を選んだのは……)

 

呆れる彼女を他所に2人はジャマト達を追い詰めていく。ブラスターの弾幕の圧力からのニンジャの鋭い一撃。勝負は一方的だった。

 

(この人強い……!)

 

タイクーンはロポの動きを見て心の中でそう評した。ナーゴは腕力とセンスに任せたごり押しという印象であったが、こちらは経験によって鍛えられた動きの様に見える。近い人物を挙げるならば錠前サオリだろうか。ヴァルキューレ公安局に所属しているだけあってかなりの修羅場をくぐっている様だ。

 

《NINJA STRIKE》

 

疾風の斬撃が敵を切り裂き、戦闘は終了した。

そして4人は機械を調べ始める。

 

「これは……暗号か?」

 

カンナの言った通り、機械のモニターには数字とアルファベットが複雑に並べられているものが映し出されている。

普段コンピューターを触る事も多いカンナには暗号である事を察した一方で。普段扱うコンピューターといえば専らスマホの景和にはただの羅列にしか見えない。そこに意味が隠されているなど考えられないくらいだ。

 

「うわ、全っ然わかんない……」

「うん?ああ、私こういうの得意ですよ」

 

名乗りを挙げたのはコユキだった。意外な人物に視線が彼女に集中する。

 

「はい出来た」

「はやっ!? え、大丈夫?」

「適当にタッチしている様にしか見えませんでしたが」

 

景和とツムリから向けられる懐疑の言葉。しかしその心配は杞憂に終わる事になる。

正解を示す軽快な音声が流れ、宝箱の様な装飾の箱が出現した。

 

「にはは! 正解でしたー!」

「ええ、凄い!」

 

胸を張って笑うコユキに対して彼は賞賛の声を送る。本当に凄まじい早さであった。時間にして数秒。たった一度の試行であっさりと特定してみせたのだから驚くのは当然といえる。

 

「もしや、ヴェリタスの生徒なのか?」

 

カンナはそんな疑問をコユキに放つ。

ヴェリタスとはミレニアムに所属しているハッカー集団だ。彼女らのハッキング技術はキヴォトスナンバーワンであり、非常に大きな影響力を誇っている。非公認の部活であり、生徒会と敵対する立場にある彼女らが今尚幅を利かせているというのは極めて異例な事である。

 

「いえ? 私はヴェリタスじゃないですよ。まあ元々セミナーにいたので交流はありましたけど……。私はそんな凄いハッキング技術なんて持ってませんもん。今のだって勘、何となくです」

「勘でどうにかなるものなのか、これは……?」

 

カンナはそう言いつつ宝箱を開いた。そこには1枚の小さなチップが入っている。その大きさは出口近くにあった機械の窪みの大きさと同じ。つまりは脱出アイテムの内の1つだ。

 

「おめでとうございます。まずは1つ目のアイテムをゲットです」

 

扉の施錠が解除される音がした。彼らは安堵の息を吐き、そこから出ようと扉を開いた。

 

「……?」

「あ」

 

扉が開いたその先に、1人の女性が立っていた。着ている服が黒いスーツなのも相まってとても高校生には思えない。

しかし胸にミレニアムの学生証をつけているのを見るに、恐らくは生徒だろう。

 

「げえぇぇっ!? 何でここにぃ!?」

 

突如コユキが白目を剥く。次いでカンナが驚愕の表情へと変わっていく。ツムリと景和だけは全く分からずに首を傾げる。

 

「あなたは、コユキ? それにあなた達は……何者? どうしてここに?」

「リ、リオ会長ぉ……」

 

調月リオはその赤く鋭い瞳をもって、ジッと景和達を見つめていた。




急いでブルアカ最終編読まな······!
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