先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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プロローグ
アーカイブ


 

……我は望む、7つの嘆きを。

 

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 

『先生』

キヴォトスの外から招かれた、不可解な存在。

連邦生徒会長が指名した、超法規的部活動の連邦捜査部『シャーレ』の先生。

 

 

彼はその心を持って生徒達と絆を育み、束ね、ついにはその箱庭に訪れる危機をも跳ね返すだろう。

 

キヴォトスの外から来た探求者『ゲマトリア』

神の存在証明を続ける分析システム『デカグラマトン』

「神秘」を「恐怖」に転換する不可解な光『色彩』

 

 

そう、先生がいれば、きっとどんな障害をも取り除くことができるのです。

 

 

 

 

そうでしょう?先生。

 

 

 

 

先生?

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

「うぐ、頭痛い……」

 

 

けたたましく鳴り響くアラームを手探りでどうにか黙らせる。

普段から寝覚めは良い方ではないが、今日は一段と頭が重い。

 

「今何時……?」

 

差し込む日差しからして、とっくに夜は明けている。

未だこの身体は睡眠を求めてはいるけど、それでも起きなければならないのが学生の辛いところだ。起きたら昨日の復習、あゝ無常……

 

 

 

ん?

 

 

「……え?ここどこ!?」

 

 目を開くと、さっぱり見覚えのない視界。

 な、何ここ!?全く知らない部屋だ!

 

今私が居るこの場所は、シンプルな内装に可愛らしい小物がいくつか置かれた部屋。

友達の家に泊まり込んだ記憶なんてないけど、私拉致でもされた!?

 

慌ててベッドから降りようとして落下する。

痛い……妙に視線が高いと思ったら二段ベッドだった。

 

転落したついでに足でも引っ掛けたのか、カーテンが勢いよく開かれる。

 

「眩しっ……!?」

 

差し込む太陽光が視界を一瞬奪う。

眩しさを堪えて見据えた外の景色に……私は言葉を失った。

 

 

目に飛び込んできた青い空に登る、細い線と幾つもの輪っか。

 

 

 

 

 

 

……ブルーアーカイブだこれ!!!

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ほ、本当に……?」

 

鳴り止まぬ心臓をどうにか抑えつけて、鏡を見る。

 

この世界に来るの顔はあんまり思い出せないが、きっとそれより美少女になっているであろう可憐なフェイス。

そして何よりも、頭の上で存在感を放つこの輪っかは……ブルーアーカイブのキャラクターみんなに備わっている『ヘイロー』そのものだ。

 

「わぁ……なにこれ転生?ブルアカ世界に転生!?」

 

思わず笑みがこぼれる。なんてったってあの魅力的なキャラクター達に直接会うことができるのだ。

 

まあちょっとテロとかクーデターとか気軽に起きがちな世界ではあるが...そもそもキヴォトス人は体が丈夫だ。

さっき二段ベッドの上から真っ逆さまに落下しても怪我にはならなかったし、私にもその法則が働いていると見ていいだろう。

 

勉強の息抜きにブルアカのストーリーを何度も読み返していたし、その辺の記憶を使って危険な場所を回避していけば問題ないはず。

 

うへへ……み、みんなに会える……!コハルちゃんにいたずらしたい!ノノミちゃんに耳かきしてほしい!イオリ舐めた──

 

 

 

 

 

「どうしたの、シルベ?」

「ひゃあっ!?」

 

 

 

 

背後から声をかけられて飛び跳ねる。こ、この低めな、かつ可愛らしいこの声はっ!?

 

 

「あ、ごめん。でもどうしたの?そんな鏡ばっかり見て」

 

 

カズサちゃんだ!!!

 

トリニティ総合学園一年生放課後スイーツ部所属の杏山カズサちゃん!

か、可愛いッ!顔が良いッ!キュッとした端正な顔立ちに、その目つき!あのカズサちゃんが目の前で息してる...?こんなことがあって良いのだろうか?いや良い!

 

「あ、ああいやその、寝癖がね?治らないなーって……」

「本当だ。シルベは起きるのゆっくりなんだから、髪のセットは手早くやらないと。ほら、座って」

「え……?」

 

そう言うとカズサちゃんは私の肩を掴んで鏡の前の椅子に座らせ、ヘアミストで私の寝癖を治し始める。

 

 

 

……!?!?

 

 

 

「あわ、あわわわ!」

「……?」

 

細い指が私の髪を優しく撫でる。

 

ああ私今カズサちゃんに髪を梳いて貰っている!?なんだこの状況は!?れれれ冷静になれ!素数を数えるんだ12345……

 

 

無理。全然落ち着かないので、もうこのまま行こう。

そういえば……カズサちゃんがいるということは、私はトリニティ総合学園に居るのだろうか?

 

トリニティか……キヴォトスの中でもマンモス校と呼ばれるほど大きい学園であるここは、Vo.3のエデン条約編の舞台となった学校だ。

エデン条約編は……うん、まあ内紛だの巡航ミサイルだの、ブルアカのストーリー中でも上位の血生臭さだった気もするけど、どちらも学園の中に引きこもってさえいれば直接的な被害はなさそうだ。

 

その辺のヤバそうな事態は先生にお任せするとしよう。

本編も結構なギリギリ具合で解決した部分が多いので、下手な手出しをして悪化でもしたら一大事だし。

 

「ほら、治ったよ」

「あ、ありがとうカズサちゃん…!」

 

彼女の華麗なる手つきによって私の寝癖が治されたあと、ぽんぽんと頭をタップされる。イケメンッ!

 

「うん。じゃあ早く着替えて行こう?授業に遅れるよ」

 

カズサちゃんに急かされ、クローゼットにかけてあった制服に袖を通す。

 

もう一度鏡を覗いてみる。

美少女フェイスに、トリニティの制服に、ヘイロー。どこからどう見ても一般キヴォトス生徒。私は今日からトリニティ総合学園の学生!

 

あぁ、楽しみだ。とりあえず当面の目標は、本編の危ない部分を回避しつつ、ブルアカのキャラクター達と沢山会う!これだ!

 

「……なんか今日楽しそうだね?」

「うん!」

 

そうして私は見知らぬ部屋を出た。これから出会う素敵な人達を思い描きながら。

 

 

 

そんな能天気な私は、これから待ち受ける酷く困難な未来を、まだ何一つ知らないのでした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

四限の授業が始まる。

正直考え事をしすぎたせいでこれまでの授業はほとんど聞けてないが、チラッと見た限りそんなに難しい内容ではなさそうだ。

これでも前世の朧げな記憶では教育実習生だったし、一年生の内容くらいは余裕で解けないとね?

 

 

とりあえず今の私の情報を整理してみよう。

生徒手帳やこの世界の私の記憶を辿る。

 

 

私の名前は『一色(いっしき)シルベ』。トリニティ総合学園の一年生。

 

部活動には入ってないみたいだ。表記的には対策委員会編のヒフミちゃんのように帰宅部だろうか。

トリニティの寮で暮らしており……同室が今朝の彼女、杏山カズサちゃん。

カズサちゃんが同室!?なんて贅沢な奴だ!!!

 

後は大した情報もなく、成績も普通なトリニティ一般生徒。ちゃんとやっていれば補習授業部に投げ込まれる心配もなさそう。

 

……そういえば、銃がないな。

部屋にはなかったし、持っている記憶もない。

ブルアカの生徒はモブ含めてみんな銃を持っていたはずだけど……まあ、アリスとかはエンジニア部に貰いに行っていたし、設定が明かされていないだけで持ってない人もいるのかもしれない。

 

うーん……要るかな?銃。戦う気ないし要らないんじゃない?

でもみんなみたいに自分専用のカッコいい銃があったら嬉しいよね。二丁拳銃とか、マスケット銃とか……あ、私が好きなリロードモーションはミネ団長のやつです。クルッと回すヤツね。

 

 

そんなことを考えているうちにチャイムが鳴る。学習用のBDの再生を止めて、昼休みの時間だ。

 

とりあえず購買のパンでお腹を満たし、散策を開始する。あのトリニティ総合学園を自由に歩き回れるんだから、悠長にご飯を食べている時間はない。

 

早歩きで色々なところを練り歩く。一般生徒もみんな可愛いな……まあこんな美少女達も、エデン条約締結の場ではバチバチにメンチ切ったりするんだけど。

 

 

ふと、廊下にあった掲示板が目に入る。そこには何枚か部活動の勧誘ポスターが貼られていた。

 

部活か……ブルアカに転生したからには、どこかに入ってみるのもいいかもしれない。

 

とはいえ、トリニティの部活動って結構尖ってるのが多い気がする。正義実現委員会は言わずもがな、救護騎士団もミネ団長を筆頭に結構武闘派だし、自警団もシスターフッドも……

そう考えると、安全そうなのは放課後スイーツ部と図書委員会、純文学部に茶道部くらいだろうか?

放課後スイーツ部はカズサちゃんもいるし、荒事もそこまではしないだろうからいいかもしれない。

 

 

と、考え事をしながら歩いていたところ。

 

 

「わわっ!」

「うおっと!」

 

曲がり角から飛び出してきた女の子とぶつかりかけてしまう。

 

「ご、ごめんなさい!少しつまづいてしまって!」

「こちらこそごめん、ちょっとボーッとしてて……」

 

その少女が落としてしまったらしい手帳を拾い、彼女に返そうと──

 

 

「あ、これって……!?」

 

 

こ、このどこ見てるかさっぱり分からない真っ白な鳥のキャラクターは……

 

ペロロ様だ!

 

このデザインの手帳を落とす人物は、それはもう……!

 

「も、もしかしてペロロ様をご存知ですか!?」

 

意を決して顔を上げる!

 

 

「……?あの……?」

 

 

栗色の髪を二つに結んだ……ゆるふわ美少女が、そこに佇んでいた。

 

彼女こそペロロ様大好き阿慈谷ヒフミちゃん!!!本物だぁ!

 

 

 





閲覧ありがとうございます!お楽しみいただければ幸いです。
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